マスメディア集中排除原則
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マスメディア集中排除原則(マスメディアしゅうちゅうはいじょげんそく、the principle of excluding multiple ownership of the media)とは、放送法(昭和25年法律第132号)に定める「放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、放送による表現の自由ができるだけ多くの者によつて享有されるようにする」為に設けられた放送局の開設の根本的基準(昭和25年電波監理委員会規則第21号)第9条等の法令の別名である。
目次 |
[編集] 概要
放送局の開設や出資に関する規制であり、少数の者により複数の放送局が支配されることを防ぎ、多くの者が表現の自由を享受できるようにするため、複数の放送局に対する出資を制限している。
[編集] 地上放送関係
原則として、同一の者が複数の放送事業者に対し次に掲げる議決権を有することを「支配」とし、規制している。
- 放送対象地域が重複する場合 - 10分の1を超える議決権
- 放送対象地域が重複しない場合 - 5分の1以上の議決権
- 連続放送対象地域(当該連続放送対象地域の各放送対象地域が関東広域圏である場合を除く)で放送対象地域の数が7を超えない場合 - 3分の1以上の議決権
但し、次のような例外がある。
- 放送局の開設の根本的基準第9条第2項第1号
- 同一の放送対象地域に於ける中波放送(以下「AM」)とテレビジョン放送(以下「TV」)の放送局の開設、支配及び被支配は可能(超短波放送とTV、短波放送とTVのような組合せは不可。)。
- 同第3項
- AM及びTVを開設又は支配する者が新聞社を経営し、又は支配する者となる場合(いわゆる三事業支配)は不可能であるが、当該放送対象地域に於いてニュース又は情報の独占的頒布を行うこととなる虞がない時は可能。
- 同第2項第2号
- 連続放送対象地域の内の一つの放送対象地域に当該連続放送対象地域の他の全ての放送対象地域が隣接する位置関係にある場合又は当該位置関係と同程度に地域的関連性が密接であるものとして総務大臣が告示する地域に該当する場合は可能。
[編集] 衛星放送関係
- CS放送及びBSデジタル放送の場合 - 放送法施行規則第17条の8に規定されており、CS放送事業者・BSデジタル放送事業者・衛星役務利用放送事業者による3分の1以上の議決権保有を支配とみなし、規制している。ただし、地上放送事業者によるBSデジタル放送への出資は、2分の1まで行える。 上記の規制にかかわらず、一定の中継器(トランスポンダ)相当の伝送容量以内であれば、参入できる。
- 衛星役務利用放送の場合 - 電気通信役務利用放送法施行規則第7条に規定されており、一定の中継器(トランスポンダ)相当の伝送容量を超える保有を規制している。
[編集] ケーブルテレビ関係
- 有線テレビジョン放送の場合 - 法令上の規定はないが、審査基準で一般放送事業者による有線テレビジョン放送事業者の支配を規制している。
- 有線役務利用放送の場合 - 電気通信役務利用放送法施行規則第7条に規定されており、放送対象地域が重複する地上放送事業者による参入を禁じている。
[編集] 制度改正とその動き
- 2003年の放送政策研究会最終報告を受けて、放送環境の変化に対応し、多額の投資を必要とする地上デジタル放送本格開始に向けたローカル局の経営強化を視野に入れ、放送対象地域が隣接するローカル局に関して議決権保有を緩和する等の制度改正を2004年3月に実施。
- 竹中平蔵総務大臣のもとで2006年1月20日から開催されている「通信・放送の在り方に関する懇談会」では、通信と放送の融合時代におけるマスメディア集中排除原則のあるべき姿について、議論が行われている。特に民放BSデジタル放送は各局共に赤字経営が続いている事や、地方では厳しい経済環境から地上民放テレビ局の新規開局が困難な状況であり、情報格差の縮小も狙って、次のようなことの解禁が検討されている。
[編集] 行政指導等
2004年11月、読売新聞の第三者名義による日本テレビ株の保有問題を受けて、他社も調査した結果、第三者名義によりマスメディア集中排除の制限を超えて出資を行なう行為は広く行なわれていた事が発覚した。2005年2月、総務省は調査結果を公表、71社に対して厳重に注意する旨の行政指導を行い、放送局に株主の報告を強化させるなど対策を行なった。
左側が出資上限(過去も含む)、右側の数字が超過分
- 読売新聞→
- 朝日新聞→
- テレビ岩手(10+5.38%)
- TBS→テレビユー福島(20+4.35%)
- 山形新聞社→
- 青森テレビ→エフエム青森(10+5.95%)
- 河北新報→エフエム仙台→(10+0.5%)
- 秋田テレビ→エフエム秋田(10+7.0%)
- ラジオ福島→エフエム福島(10+12.5%)
- 中日新聞→
- 北海道新聞→
- 信濃毎日新聞→長野朝日放送(10+7.5%)
- 北國新聞→エフエム石川(10+7.0%)
- 名古屋鉄道→(10+0.15%)
- 岐阜新聞→岐阜エフエム放送(10+9.25%)
- 東海テレビ→
- 前田富夫→エフエム大阪(10+10%)
- 山陰中央テレビ→エフエム山陰(10+3.62%)
- 日本海テレビ→エフエム山陰(10+3.06%)
- 中国新聞→中国放送(10+22.37%)
- 高知新聞
- サガテレビ→エフエム佐賀(10+0.7%)
- 熊本日日新聞→エフエム中九州(当時の社名)(10+30.32%)
- 大分放送→エフエム大分(10+5%)
- テレビ大分→エフエム大分(10+1%)
- テレビ宮崎→エフエム宮崎(10+6.4%)
- 鹿児島放送→エフエム鹿児島(10+0.2%)
- 鹿児島テレビ→エフエム鹿児島(10+8.4%)
- 静岡放送→山梨放送(20+3.3%)
- テレビ山梨→エフエム富士(10+7.25%)
- 日本経済新聞社→テレビ大阪(20+0.4%)
- 熊本日日新聞→熊本放送(10+2.5%)
- 琉球放送→琉球朝日放送(10+8%)