三國志 (ゲーム)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
三國志(さんごくし)は1985年に株式会社光栄(現コーエー)が発売した、パソコン用の歴史シミュレーションゲームである。後に任天堂のファミリーコンピュータにも移植された。三國志シリーズの第1作である。
目次 |
[編集] ゲームの概要
中国の古典物語『三国志演義』の世界を題材にしている。『信長の野望シリーズ』で導入した領国経営型シミュレーションを軸に、人材運用の概念を導入。国を富ませ戦争に勝利するには、多数の優秀な人材を登用し、経営や戦争に適材を配すことが必要。このあたりは、戦国大名による国盗り合戦の雰囲気で制作された『信長の野望シリーズ』に対して、様々な武将が物語の中心になって活躍する原作三国志のイメージを表現するために考え出されたシステムだと思われる。これによってプレイヤーは、関羽や諸葛亮などといった武将達を縦横に動かし、原作さながらのシチュエーションを再現することが出来た。また、ゲーム中に用意された各種コマンドも、原作の名場面を彷彿とさせるようなものが各種取り揃えられており、こうした雰囲気を盛り上げることに一役買っていた。こうした追加要素により、同じシステムを下敷きにしながらも、それぞれの差別化と新たなファン層の開拓に成功し、三國志シリーズは『信長の野望シリーズ』に続いて光栄の二大看板となった。
[編集] 「三國志」のインパクト
三国志の世界が題材に選ばれた原因は、吉川英治著『三国志』と、横山光輝著の漫画『横山光輝 三国志』の影響が強いと思われる。また前年までNHKにおいて『人形劇 三国志』が放映され人気を博しており、ゲーム化の題材としては追い風といえたのは確かである。また、本作によって初めて三国志の世界にのめり込んだ人間も多く、日本における三国志普及の強力な牽引役となっているのは間違いない。
もうひとつの衝撃として、このゲームの定価が14,800円という、当時としてもずば抜けて高価なものであった事が挙げられる。これはファミリーコンピュータ本体と同じ値段であり、ゲームソフト一本の値段としては常識を超えた価格設定であった。しかしそれがむしろ「他のゲームと一線を画す高度な内容である」というブランドイメージにつながり、多くの販売本数につながったとする説もある。
しかし光栄側もあまりに高価であると判断したのか、後に『抄本三國志』という8,800円の廉価版を発売した。これは本家「三國志」に対して、一部のコマンドを省略しシナリオをひとつだけにした簡略版であり、何でもいいからとりあえず遊びたいというユーザー向けの配慮だったのだろうが、当然のことながら支持はされなかったようで、今では存在すら知られていない。
[編集] バージョン違い
[編集] 三國志(初代PC版)
初期に発売されたスタンダード版。PC-8801、X1、FM-7など各機種向けに発売された。BGMが演奏されない機種もあった。初めての武将の登場ということもあってか、武将の顔については、今見るとかなり貧相なグラフィックが使われている。
[編集] 抄本三國志
初期版から計略、突撃、略奪などのコマンドを削除し、シナリオ1のみプレイできる簡易版。定価が安かった。
[編集] 三國志(PC9801,X1ターボ版)
400ラインモニターに対応したパソコン向けに、データを追加した改良版。政治画面での計略コマンドや、イベントグラフィックと武将の顔グラフィックが追加され、文字も高解像度の読みやすいフォントを採用している。BGMもFM音源に対応した美しいものになっている。また、88版では「戦いの手を休めてはなりません」であった軍師の助言が98版では「なにをぐずぐずしておられるのです。戦いの手を休めてはなりません」になるなど、一部の台詞の追加もされた。
Windows版のコーエー25周年記念パックのVol.2に復刻収録されているもの、及び後にコーエー定番シリーズで単品発売されたものではPC-9801版が採用されている。
[編集] 三國志(ファミリーコンピュータ版)
さすがにファミコン本体と同じ値段で発売する勇気がなかったのか、9,800円の価格設定だった。内容としては、初期版と抄本三國志の中間といったところで、シナリオは全部入っているが、戦闘時の突撃と計略コマンドが削除され、政治画面での略奪や美女の数といった概念も省略されているほか、人材登用の「手紙を書く」や、外交交渉の「姫ごと皆殺し」コマンドも無く、もちろん9801版で追加されたコマンドも存在しない。ただ、これだけ内容を削られていても、このファミコン版に対する不満の声はそれほど多くない。顔グラフィック等に関しては、かなり力が入っており、すべて描き直されている。バッテリーバックアップに対応。 ちなみにまだ一騎打ちがない
[編集] 三國志(X68000版)
信長の野望・全国版と共に発売された。音声とグラフィックを当時最高水準のPCであったX68000向けに一から描き起こしてあり、三國志の決定版といえる豪華な内容に仕上がっていた。もちろんコマンドなどは全てPC9801版に準拠しており、全ての要素が遊べた。
[編集] 三國志リターンズ
Windowsやプレイステーションなどで発売されたリメイク版。グラフィックがポリゴンになっている。
[編集] 初代三國志の特徴・小ネタ・裏技
- 能力値は「知力」「武力」「カリスマ」(『II』以降の「魅力」)の他に、今作のみの能力値として「身体」「運勢」が存在した。身体は寿命を過ぎると毎年1月に2割ずつの割合で減少していき(例:75→60→48→…)、おおよそ30以下になると死亡する危険が高まる(シナリオ1でコンピュータ専用君主として登場する初期身体が28の陶謙は、ゲーム開始の次の年に死亡することが多い)。ちなみに今作での総合能力値トップは『II』以降で常連になる曹操ではなく、孫権であった。
- プレイヤーが選んだ君主はルーレットで能力値を基本値-5~+5の範囲で変えることができた。これによって、劉備を知力100にしたり、袁術を武力100にすることが可能だった。また、馬騰は身体・武力・カリスマの3つを100にできた。
- プレイヤーの選んだ君主が死亡した場合でも、領地と武将が残されていれば後継者を選んでゲームの続行が可能。
- データのミスで、龐徳と郭図の能力値が入れ替わっていた。しかしゲームの進行に直接影響を及ぼすものでなかったためか、結局どのバージョンでも修正されることは無かった。
- 初期版では、君主のカリスマ性が武将における忠誠度とごっちゃに扱われているのか、この数値の低い君主は引き抜きが可能だった。シナリオ1なら劉表などが狙い目。これを実行すると君主の家臣に別の君主がいるというややこしい状態になる。
- また、シナリオ2では呂布が君主になっているが、そこに曹操が攻め込むと君主の呂布自ら曹操側に寝返るという珍事が起きる。
- 呂布など、武力の高い武将に、訓練武装共に最高値の兵士を与えると、ほとんど無敵の軍隊が出来上がる。
- しかし最も恐ろしいのは、知力の高い武将による火計で、どんな武将でも着火して1ターン経過すると部隊ごと焼け死んでしまう。(X1等の初期ロットでは、機動力さえあれば火の海を移動できた)
- 戦場で計略コマンドが使えるバージョンでは、火計+計略(機動力を0にする)コマンドのコンビネーションが極悪。知力の高い武将2人が守っている城は難攻不落になった。
- 同時期の信長の野望・全国版と違い、戦場マップで城ヘックスを全て占拠しても勝利となる。
- 住民が反乱を起こすと、武力の高い武将でも簡単に殺される。特に初代の住民は最強だった。
- 天災のイナゴの被害が非常に大きく、1ターン目にイナゴに襲われればほぼクリア不能に追い込まれるほどであった。
- 人材登用の「自ら出向く」は三顧の礼の故事を表現したもの。
- 人材登用の「名馬を贈る」は赤兎馬のエピソードを表現したもの。
- 人材登用の「美女を贈る」は貂蝉のエピソードを表現したもの。
[編集] 陸遜のイメージ
このゲームに登場する武将達の顔グラフィックは、三國志連環画を資料にしていると推測される。陸遜という武将は、この連環画においては、いかにも中年のおっさんという顔で描かれている。ところがゲーム上での顔グラフィックは、まるで昔の少女漫画に出てくる長髪の美少年という場違いな雰囲気である。これは陸遜だけに見られる現象であり、他の武将は概ね連環画のイメージに合わせたグラフィックになっている。当時ささやかれた噂によると、光栄の三國志制作スタッフに、相当の陸遜ファンがいたらしく、どうしても陸遜の顔を美形にしてくれとねじ込んだと言われている。その成果といえるのか、このゲームから三国志を知った人にとっては、むしろ連環画のイメージ通りに作画された横山光輝 三国志の陸遜のほうに違和感を感じるようである。ちなみにファミコン版の三國志では、比較的大人しいグラフィックに描き直されていた。しかしながら、以降のシリーズでも一貫して陸遜が美形武将として描かれているのは、この初代PC版での設定に端を発しているのは間違いのないところである。
[編集] 関連項目
|
|
---|---|
本編 | I - II - III - IV - V - VI - VII - VIII - IX - X - 11 |
携帯機用 | GB - GB2 - WS - WS2 - GBA - DS - DS2 |
オンライン | Internet - Battlefield - Online |
携帯電話 | 1 - 2 - Mobile - Mobile2 |
その他 | 無双 - 真・無双(TCG - 麻雀) - 戦記 - 英傑伝 - 孔明伝 - 曹操伝 |