必殺仕事人
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『必殺仕事人』(ひっさつしごとにん)は、必殺シリーズの第15弾として、朝日放送と京都映画撮影所(現・松竹京都映画株式会社)の制作により、1979年5月18日から1981年1月30日にかけてテレビ朝日系列で放映された時代劇。全84回。
藤田まこと演じる中村主水シリーズの第7弾でもある。 2007年4月現在、時代劇専門チャンネルにおいて再放送されている。
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[編集] 作品内容
江戸には、晴らせぬ恨みを晴らす商売人と呼ばれる闇の稼業が密かに存在していたが、その一人がある悪人を仕置した事で、奉行所の厳しい取締りが行われ、江戸中の商売人たちは姿を消した。商売人の一人だった主水も南町奉行所の人員整理で、八王子の甲府勤番所に左遷されていたが、勘定奉行稲葉から再び南町への異動を命じられた。全てを裏で仕掛けていたのは、江戸の闇の裏稼業の元締鹿蔵であった。鹿蔵は、この江戸に再び闇の裏稼業を復活させるため、主水を江戸に呼び戻した上で、彼を仲間にしようとしたのだ。しかし、主水は裏稼業への復帰を断る。
その直後、主水はある浪人に命を狙われる。この浪人・畷左門は、さる藩の藩士であったが、藩の家老の息子が妻の涼を襲い、手篭めにしようとしたため、家老の息子を斬り殺し、脱藩。その後、江戸に逃亡していたのだ。偶然にも家老の息子と主水の顔がうり二つだった事から、左門は鹿蔵の差し金で主水を襲う様命令されていた事がわかり、主水は再び鹿蔵と向かい合う。鹿蔵はもう一度仕事を主水に依頼し、主水は躊躇するものの、鹿蔵の説得と大量の小判を前に心動かされ、裏稼業への復帰を決意する。
左門も、逃亡生活に疲れていた現状を打破したいと考えており、鹿蔵の心意気に心動かされ、妻と一人娘の美鈴という「二つの宝」を守るため、闇の世界に自ら足を踏み入れる。しかし、左門は初仕事のためか、慣れぬ戦いに苦戦する。そこに何者かの加勢が入り、悪人は始末された。
一夜明け、主水は仕事の現場に残された遺留品から、飾り職人の仕業と睨み、捜査を開始。そこに現れたのが、現在は裏稼業から足を洗い、左門一家の隣に独り住む、若き飾り職人の秀であった。秀は自分の恋人が事件の被害にあい、殺された事から犯人を始末しようとしたものの、犯人は偶然にも主水たちの標的と同一人物と判り、仕事に加勢していたのだ。鹿蔵は主水たちと同様に、秀を仲間にしようとするが、秀は申し出を断る。秀曰く「殺しは血沸き肉踊るもので、スカッとした後は何も残らない」からだという。
だが、標的を始末しても一向に嗚咽が止まらなく涙する頼み人の姿を見て、秀は自分の信念を打ち砕かれてしまう事となった。主水はそんな秀に対し、「殺しという物は、いつも苦いものだ」と吐き捨てる様に言い、立ち去ろうとしたその時、秀は主水や鹿蔵たちに、素直に仲間入りを志願した。かくして、鹿蔵を元締とする「仕事人」チームがここに結成されたのである。
[編集] 制作の背景
前作『翔べ! 必殺うらごろし』が、オカルトに主軸を置いた内容から、視聴率が大きく低迷し、必殺シリーズの終了も噂される中で、「それならば、必殺の決定版を作ろうじゃないか。」という事で、必殺の顔・中村主水を主役に、従来の主水シリーズでは登場しなかった、主水が直接仕える元締・鹿蔵役に歌舞伎の大御所・文化功労者・人間国宝・2世中村鴈治郎を迎え、妻子持ちの剣豪・畷左門役に伊吹吾郎を、血気盛んな飾り職人・秀に三田村邦彦を配し、タイトルも『必殺仕掛人』を意識したネーミングにして制作、放映が開始された。その内容は、これまでの必殺シリーズでは行えなかった内容を扱い、好評を博していたが、早くも第6話で軌道修正を余儀なくされる。
まず成駒屋(鴈治郎)が体調不良を理由に降板。次いで、鹿蔵の妻・おとわ役で、これまでも度々必殺に出演していた山田五十鈴を迎えるも、彼女もスケジュールの関係からか、第21話で降板。また半吉役の山田隆夫も26話を最後にあっさりと降板。第29話からは、左門が浪人からおでん屋に変わり、お加代とおしまが登場、そして元締・六蔵役に演劇界の重鎮・木村功を迎えるなどの大胆なテコ入れがあった、彼もまた放送期間中に降板するが設定上は、彼扮する「木更津の元締」・六蔵が最終回まで仕事人グループを仕切っていた)。
かくして、主要なレギュラー陣が次々と降板する中で、秀役の三田村邦彦の人気が若い女性を中心に急上昇し、それが視聴率を上昇させる結果となり、番組の作風も従来の物からソフトな一般時代劇的な物へと変わっていき、全84話という歴代最長の放送期間を終えた。
この番組は、出演者にまつわるハプニングが多く、その度に内容の軌道変更を余儀なくされたが、逆にこの事が、或る種のキワモノ扱いされていた必殺シリーズを老若男女を問わず楽しめる時代劇として、認知させた功績は大きいと言えよう。この番組のタイトルがそのまま「必殺シリーズ」の代名詞とされる場合が多い。しかし、世間的には「新・必殺仕事人」や「必殺仕事人V」など、後の続編が「仕事人」のイメージとして強く定着している。それだけにこの“元祖”「仕事人」は通好みの作品といえる。
そして、平尾昌晃も久々に劇中音楽の担当に復帰した。
[編集] 殺し技
- 中村主水…太刀・脇差で、悪人を斬る、刺す。槍を使った事もあった(第22、58話)。
- 第34話からは、スローバラードの殺しのテーマに乗せて、殺しを行う。これ以降、『必殺仕事人V・激闘編』まで、一部の例外を除いて、このパターンが定着する(他のメンバーは、アップテンポのBGMに乗せた殺しのテーマで、仕事を行う)。同時に、これは第20作「必殺渡し人」以降の「非主水シリーズ」において、リーダー格(または元締格)の殺し屋がスローバラードで、それ以外のメンバーは、アップテンポの殺しのテーマに乗せて、殺しを行う先駆けとなった(次作「必殺仕舞人」、及びその続編の「新・必殺仕舞人」は、「必殺仕掛人」から殺し用のBGMを流用しており、スローテンポではない)。
- また、劇中終盤頃から、相手を油断させながら一瞬の隙を突いて脇差で急所を刺す、自身の体力を温存させた「一撃必殺」型の殺し技に変更した。
- 柄が抜ける細工をした刀を悪人に渡し、油断した相手が鞘を抜き動揺した隙を突いて斬り倒した事があり、これは『必殺仕事人V』において使用した、刀の柄に仕込んだ刃で、悪人の急所を突き刺す変則技の原型である(第1話)。
- シリーズ2作目『必殺仕置人』(第22話)以来の床下突きも復活した(第77話)。
- 畷左門…愛用の名刀・胴田貫で、悪人を斬り殺す(第1~28話)。
- 第29話より、柔術を応用し悪人の腰骨を外して、人体二つ折りにする豪快な技を使う。尚これと時を同じくして、屋台のおでん屋を開業。刀を捨て、坊主頭にイメチェンしている。
- スペシャル『恐怖の大仕事』では、悪人相手に再び刀を使用した。
- 秀…簪作りの細工用のノミで、悪人の首筋を刺す(第1~32話)。
- 第33話より、金属製の房が付いた簪(本作では銀色。『新・必殺仕事人』以降は金色)を使用したが、オープニングの画の中では最終回までノミを振るっていた。
- 鹿蔵…匕首で、悪人の急所を刺す。
- 第1話の回想シーンでは、投げ縄を使い、悪人の首に巻き付けて絞殺していた。
- おとわ…三味線の撥で、悪人の首筋を斬る。
- また、全体が武器で仕込まれた「仕込み三味線」も使用した。
[編集] キャスト
- 中村主水 …藤田まこと
- 畷左門 … 伊吹吾郎
- 秀 … 三田村邦彦
- 半吉 … 山田隆夫(第1~26話)
- 加代 … 鮎川いずみ(第29~84話)
- おしま … 三島ゆり子(第29~84話)
- 畷涼 … 小林かおり
- 畷美鈴 … 水本恵子(第1~52、54~56、58~66、68、69、71~80、82~84話)
- おふく … かわいのどか(第1~9、11~13、18、21~23話)
- 与力伊沢 … 唐沢民賢(第4~21、23~28話)
- 筆頭同心早川 … 早崎文司(第29~43、45、55~57話)
- ※エンディングでは、同心早川と表記。
- 筆頭同心荒巻 … 芝本正(第58~84話)
- ※エンディングでは、同心荒巻と表記。
- ナレーション
[編集] 主題歌
- 「浜千鳥情話」
- 作詞:茜まさお 作曲:平尾昌晃 編曲:竜崎孝路 歌:金沢明子
- 発売:ビクターレコード(現・ビクターエンタテインメント)
挿入歌
- 「いま走れ! いま生きる!」(第39~58話。第53、56話では、歌う三田村の京都映画撮影所内でのプロモーション映像を披露。第57、58話は、エンディングに使用。ただし、主題歌テロップは「浜千鳥情話」のまま)。
[編集] 放映リスト
- 主水の浮気は成功するか?
- 主水おびえる! 闇に光る眼は誰か?
- 仕事人危うし! 暴くのは誰か?
- 主水は三途の川を避けられるか? - 丹波哲郎が助っ人の仕事人・壬生蔵人役でゲスト出演。
- 三十両で命が買えるか? - 歌手デビュー前の岩崎良美が被害者役でゲスト出演。
- 主水は葵の紋を斬れるか? - 目黒祐樹が悪役で将軍の弟・松平誠二郎に扮してゲスト出演。目黒はのちに『必殺仕事人・激突!』に同心・成川役でレギュラー出演。同時に鹿蔵が一度退場。
- 主水を操るバチの音は誰か? - おとわが登場。
- 仕事人が可愛いい女を殺せるか? - 静岡けんみんテレビ(現・静岡朝日テレビ)がこの話から同時ネットを開始(前作『うらごろし』の終盤で静岡放送からネットを移行)。
- 蛍火は地獄への案内か?
- 木曽節に引かれた愛のその果ては?
- 極悪人ほどよく眠れるか?
- 三味の音は七つの柩のとむらい唄か?
- 矢で狙う標的は仕事人か?
- 情は人のためにならないか?
- その仕事の依頼引き受けるのか?
- 綺麗な花にはなぜ刺があるのか?
- 鉄砲で人を的にした奴許せるか? - 鹿蔵が再登場。
- 武器なしであの花魁を殺れるのか?
- 仕事人が女に惚れてなぜ悪い?
- この世の地獄は何処にあるのか? - 鹿蔵がこの話をもって完全に退場。
- 子隠しで昔の恨みを晴らすのか? - おとわが退場。
- 登城する大名駕籠はなぜ走るのか?
- 渡る世間は鬼ばかりか?
- 冥土へ道連れを送れるか?
- 裏の裏のそのまた裏に何があるのか?
- 半吉は女の愛で立ち直れるか? - 半吉が殉死。
- 死を賭けて虎の尾が踏めるのか?
- 尼寺に鬼女は棲むのか?
- 新技腰骨はずし - 六蔵、おしま、加代が登場。同時に左門が髷を落として坊主頭になりおでん屋を開業、殺し業も腰骨外しに切り替えた。以降タイトルのつけられ方も変わっている。
- 酔い技田楽突き
- 弓技標的はずし
- 隠技待伏せ斬り
- 炎技半鐘撲り - この話から秀の殺し道具が簪に変更。
- 釣技透かし攻め
- 飛技万才踊り攻め
- 合掌技地獄落し
- 落し技替玉斬り
- 闇技船中殺
- 櫛技斬!子守唄
- 昇り技字凧落し業
- 織技重ね裏返し
- 隠し技暗闇とどめ刺し
- 情技衣替え地獄落し
- 艶技鬼面潰し
- 裏技欺しの十手業
- 怨技非業竹光刺し
- 悔し技情念恋火攻め
- 表技魔の鬼面割り
- 偽技浮かれ囃子攻め
- 嘘技無用試し斬り
- 覗き技天地入れ替つぶし
- 潜り技隠し黄金止め
- 惚れ技情炎半鐘割り - 六蔵が退場。
- 呪い技怪談怨霊攻め
- 離れ技孤立水火攻め - 必殺シリーズ400回目。
- 外し技釣鐘からくり割り
- 逆さ技大どんでん崩し
- 暴れ技田楽垂直刺し
- 彫り技喜悦観音一刀斬り
- 狙い技仁義無用斬り
- 脅し技闇医術千両潰し - 中条きよしが『商売人』以来2度目の悪役ゲスト。
- 恨み技悲愁稲妻刺し
- 誘い技死霊からくり岩山落し
- 崩し技真偽友禅染め落し
- 散り技花火炸裂乱れ斬り
- 描き技絵筆逆手屏風突き
- 詣り技暗闇丑の刻重ね斬り
- 願い技奉納絵馬呪い割り
- 盗り技乱調お神楽刺し
- 慕い技神輿暴れ突き
- 絞り技一揆助命脳天突き
- 念じ技偽説法ざんげ斬り
- 断絶技激走!一直線刺し
- 引き技強奪押し込み斬り
- 訴え技火だるま身替り消し
- 詰め技王手飛車駒落し
- 盗み技背面逆転倒し
- 疾風技浮世節無情斬り
- 隠し技潜入喉輪攻め
- 踊り技回り舞台振り落し
- 捜し技高利蟻地獄斬り
- 激闘技地獄道暴れ斬り
- 沈め技花嫁偽装返し突き
- 散り技仕事人危機激進斬り
[編集] 関連項目
[編集] 必殺仕事人シリーズ
テレビ朝日系 金曜22時台(当時はABCの制作枠) | ||
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