新選組血風録
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新選組血風録(しんせんぐみけっぷうろく)は幕末の新選組を題材とした小説家司馬遼太郎の連作短編集および、これを原作としたテレビドラマである。
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[編集] 短編集『新選組血風録』
1962年に新選組副長土方歳三を主人公とした長編『燃えよ剣』を発表した司馬遼太郎は、同年5月から12月に「小説中央公論」で新選組を題材とした15編の短編を連載した。これが短編集『新選組血風録』としてまとめられた。
各話ごとに異なる実在と架空の隊士が主人公となり、主に土方歳三と沖田総司がストーリーの主要登場人物となり構成されている。局長の近藤勇も多く登場するが土方、沖田に比べるとやや脇役的存在となっている。隊士の中では斎藤一と山崎烝も登場回数が多い。
司馬が最も脂が乗っていた時期の作品で巧みな文章とストーリー構成、キャラクター造形で高い評価を受け、新撰組物の定番小説として非常に長い間版を重ねて現在に至るまで書店に並び愛読されている。
読者が多く影響力が強いために、この作品がそのまま史実の新選組と受け取る読者も少なくないが、これはあくまでも大衆小説であり、小説とするために史実を意図的に変えているもの(例:「池田屋異聞」山崎烝の先祖が奥野将監という事実は存在しない)や、根本的に架空のストーリーも含まれている(例:「前髪の惣三郎」加納惣三郎という隊士の逸話は残っているが、実在が確認できず、逸話も男色の話ではない)。
近藤、土方、沖田、斎藤、井上などの人物像もあくまでも小説の登場人物としての性格設定である。
- 司馬遼太郎『新選組血風録』角川書店新装版版、2003年、ISBN 4041290074
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
- 「芹沢鴨の暗殺」
- 「長州の間者」
- 「池田屋異聞」
- 「虎徹」
- 「前髪の惣三郎」
- 「胡沙笛を吹く武士」
- 奥州浪人鹿内薫は寡黙だが勇敢な武士だった。鹿内は京娘と恋仲になり所帯を持つが、やがて妻子恋しさに命を惜しむようになり、ついに局中法度の第一の罪「士道不覚悟」と看做される。新選組において士道不覚悟の運命は死だった。
- 「三条磧乱刃」
- 「海仙寺党異聞」
- 長坂小十郎は同郷の中倉主膳の紹介で入隊した。その中倉は情婦の密通相手に切られて醜態をさらし士道不覚悟として切腹させられる。行きがかり上、長坂はさほど親しくもなかった中倉の仇を討たねばならない羽目に陥る。
- 「沖田総司の恋」
- 「槍は宝蔵院流」
- 斎藤一はほんのささいなことから宝蔵院流槍術師谷三十郎と関わりをもった。谷は新選組に入隊して幹部に迎えられる。腕が立ち、家柄もいい谷は実弟を近藤の養子にして隊内で大変な権勢を持つが、斎藤だけは苦手だった。やがて谷の立場が凋落し、粛清されるまでを斎藤の視点で描く。
- 「弥兵衛奮迅」
- 「四斤山砲」
- 「菊一文字」
以上で、作品の核心的な内容についての記述は終わりです。
[編集] テレビドラマ『新選組血風録』(1965年-1966年)
司馬遼太郎の短編集を原作にNET(日本教育テレビ、テレビ朝日の旧称)系でテレビドラマ化。1965年7月から1966年1月まで全26話放送のモノクロ作品。
非常に高い完成度の作品と評価され、根強いファンが多く1960年代のモノクロ作品であるにも関わらず全話ビデオ化され、またDVD化もされている。特に土方歳三を演じた栗塚旭と沖田総司を演じた島田順司は文字通りのはまり役になった。
司馬の原作小説以外にオリジナル作品も含まれ、原作にはない新選組の没落と近藤の死もあり、最終回は箱館戦争での土方の死となっており、『燃えよ剣』の要素もある。なお、男色を題材とした「前髪の惣三郎」は当時は同性愛の話をテレビドラマで扱うことは難しく制作されていない。
このドラマが好評だったため1970年にほぼ同じスタッフと主要キャストで土方歳三を主人公とした『燃えよ剣』が制作されている。また栗塚主演の時代劇『俺は用心棒』では島田は沖田総司を演じている。島田は後にドラマの体験談を語った「わが青春の沖田総司」(1977年、新人物往来社)を著わしている。
2004年の大河ドラマ『新選組!』はこの作品へのオマージュとして、栗塚は土方歳三(山本耕史)の兄の土方為次郎役で、島田は病に倒れた沖田総司(藤原竜也)を匿う植木屋平五郎役でそれぞれ出演している。
[編集] キャストとスタッフ
- 脚本:結束信二
- 主題歌:春日八郎「新選組の旗は行く」
[編集] テレビドラマ『新選組血風録』(1998年)
テレビ朝日開局40周年記念ドラマとして1998年10月から12月に毎週木曜日、20時から放送。全10話。主演は渡哲也。
渡哲也が演じる近藤勇が主人公でストーリー構成の中心のために、土方と沖田がストーリーの中心だった原作とは雰囲気が違う。近藤の人物像も文武ともに完璧な聖人君子になりすぎ、大器だが間の抜けたところや俗物的なところのある原作の近藤とはかなり異なる。
35歳で死んだ近藤勇を当時57歳だった渡が演じたことを批判されることがあるが、実際には近藤役は大河ドラマ『新選組!』の香取慎吾(27歳)のような実年齢に近い俳優よりも、貫録のある40代、50代の俳優が演じることの方が多い。
初回は二時間スペシャルで池田屋事件(ただし山崎烝の出自にまつわるエピソードではない)。原作からは「芹沢鴨の暗殺」「沖田総司の恋」「鴨川銭取橋」「長州の間者」「油小路の決闘」などがドラマ化された。芹沢鴨は主題歌を担当する歌手の松山千春が演じている。男色を扱った「前髪の惣三郎」もドラマ化された。最終回は年末の12月30日に2時間30分拡大スペシャルで放送されたが、ドラマとしては条件が良くない昼間の放送だった。最終回の時間の半分は総集編で、最後のエピソードは沖田の死を暗示する「菊一文字」。新選組の没落と近藤、土方の死まで描かれたが、この部分は非常に駆け足で5分程度だった。
上記の1965年版が傑作と評価されているためか、本作はあまり高くは評価されておらず、話題となることも少ない。ビデオ化、DVD化はされていないが、衛星放送などで再放送されることがある。
[編集] キャスト
- 近藤勇:渡哲也
- 土方歳三:村上弘明
- 沖田総司:中村俊介
- 山南敬助:三浦洋一
- 永倉新八:堤大二郎
- 原田左之助:小西博之
- 篠原泰之進: 船越英一郎
- 伊東甲子太郎:峰岸徹
- お清:天海祐希
- お孝:酒井美紀
- 芹沢鴨:松山千春
- 主題歌:松山千春『さよなら』
[編集] 外部リンク
- 新選組血風録 - 番組紹介 ・・・公式サイト(東映テレビ)。各話ストーリーなど。
[編集] 関連作品
[編集] 関連項目
テレビ朝日系 木曜20時台 | ||
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