野球の概要
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野球の概要(やきゅうのがいよう)
この項では野球の試合における流れやルールなどをある程度まとめて解説する。
目次 |
[編集] ゲームの目的
野球は二つのチームが対戦する競技。両者が攻撃と守備を交互に行い、攻撃中に得た点数の合計点が多い方が勝者となる。両者の点数が等しい場合は、延長戦を行う、引き分けとするなどルール体系によって対応が分かれる。攻撃と守備の一巡はイニングと呼ばれ、硬式野球では、1ゲームは9イニングからなる(1ゲームにおけるイニング数はルール体系によって異なる。1ゲーム7イニングの場合もある)。
目的は勝つことであり、これは公認野球規則1・02に明示されている;
「各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。」
規則書に勝敗の判定方法は書かれていても、「勝つことを目的とする」と明示する競技は少ない。これが野球ルールの際立った特徴の一つでもある。
[編集] 野球場の概要
ある一点から正方形(公式規定では一辺が27.431m。以後括弧の中の数値は全て公式規定)を描き、それぞれの角に目印となる塁を置く。中の一点は本塁(ホームベース)と呼び、以下反時計回り順に一塁(ファースト)・二塁(セカンド)・三塁(サード)と呼ぶ。本塁から二塁への線分上の真ん中付近(本塁から18.44mの位置)に板を置く。これは投手板(ピッチャーズプレート)と呼ばれる。本塁は五角形をしており、投手板は長方形、他は正方形である。これらは原則として白色である。
本塁と一塁とを結ぶ直線と本塁と三塁を結ぶ直線との二塁側の間をフェアゾーンと呼び、それ以外をファウルゾーンと呼ぶ。本塁と一塁・三塁を結ぶ直線をファウルラインと呼ぶ。なお、ファウルライン上の部分はフェアゾーンとなる。
外野の広さについては「本塁よりフェアグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げにになる施設までの距離は250フィート(76.199メートル)以上を必要とするが、両翼は320フィート(97.534メートル)以上、また中堅は400フィート(121.918メートル)以上あることが優先して望まれる」(公認野球規則1.04)と規定されている。両翼とは、本塁と一塁・三塁とを結ぶファウルラインの延長線上を指し、中堅とは本塁と二塁を結ぶ直線の延長のことをいう。
また、この規定には野球場の広さについて注記があるが、これについては野球場の項を参照されたい。
[編集] 試合
[編集] 試合の概要
球審の「プレイ」の宣告で試合を開始する。
攻撃側は、相手チームの投手が投げたボールを打って、一塁・二塁・三塁の順に走り、本塁まで到達することで得点を得る。守備側は相手チームの走者が本塁に到達しないように走者をアウトにする。相手チームの選手を3人アウトにできれば、攻撃に移ることができる。
[編集] 試合開始までの準備
9人以上の2チームに分かれ、先攻・後攻を決定する。先攻・後攻の決定方法は、ルール体系などにより異なる。両チームはあらかじめ9人の攻撃時の打順と、守備時の守備位置を決定しておく。投手の代わりに打つ指名打者(DH)ルールを使用する場合には、あわせて指名打者とその打順も決定しておく。
[編集] 守備位置
守備の際はそれぞれの選手(野手という)はおよそ次の図および解説に示す位置(守備位置という)に立つ。ただし、守備位置は試合の状況により変化することがあり、投手と捕手以外は目安である。
- 投手(ピッチャー) プレートの上に立つ。
- 捕手(キャッチャー) 本塁の少し後ろに位置する。
- 一塁手(ファースト) 一塁の付近に立つ。
- 二塁手(セカンド) 二塁から一塁に少し寄った所に立つ。
- 遊撃手(ショート) 二塁から三塁に少し寄った所に立つ。
- 三塁手(サード) 三塁の付近に立つ。
- 左翼手(レフト) 遊撃手の後方に立つ。
- 中堅手(センター) 二塁の後方に立つ。
- 右翼手(ライト) 二塁手の後方に立つ。
投球前は、投手と捕手の守備位置は上記に示した位置でなければならないが、それ以外の野手はフェアゾーン内であれば、打者の邪魔をしない限りどこにいても良い。また打者がボールを打った後は、投手と捕手も含め全ての野手が、フェアゾーン・ファウルゾーンを問わず自由に移動することができる。
[編集] 投手対打者
まず、投手がマウンドから18.44メートル先にいる捕手に向かってボールを投げる(投球という)。打者はバットを使って、バッターボックスの中から投球を打つ(バッティング)。ただし、実際に投球を打つかどうかは、打者の判断に任される。打者が投球を打った場合には、打者は走者となり、次節に示すルールに基づく。
打者が打たなかった(打てなかった)場合は、球審によりストライクまたはボールが宣告される。
- 次の条件に当たる場合には、ストライクが宣告される。
- ストライクの条件のいずれにも当てはまらない場合はボールが宣告される。
- 同じ打席でストライクが3回に達することを三振といい、打者はアウトになる。ただし、一塁に走者がいないときかアウトカウントが2つのときに、捕手が投球を正規に捕球できなかった場合には、打者は直ちにアウトとはならず、走者として一塁に向けて走ることができる。この場合、守備側は打者走者にボールをタッチするか、打者走者が一塁に達する前に一塁に送球しなければアウトは成立しない(日本ではこれを振り逃げという)。
- 同じ打席でボールが4回に達することを四球(フォアボール)という。打者はアウトにされることなく一塁に進むことができる。
- 投球が打者に当たった場合を死球(デッドボール)という。打者はアウトにされることなく一塁に進むことができる。ただし、投球がストライクゾーンを通過した場合や、打者が空振りした場合はストライクである。
打者がアウトになるか、走者として一塁に達したら、次の打者の打順となる。
[編集] 打者が打った場合のルール
- フェアゾーン内のフェンスの向こう側や川など、これ以上球を選手が追っていけない所に打者が打ったボール(打球という)が出た場合
打球がバウンド(着地)せずに出た場合は本塁打(ホームラン)となり、打者はアウトにされることなく4つ(本塁まで)進塁することができる。バウンドした後にフェンスの向こう側(ファウルゾーンかフェアゾーンかを問わない)に出た場合はエンタイトルツーベースとなり、打者はアウトにされることなく2つ(二塁まで)進塁することができる。
- 打球がグラウンドに落ちる前に野手が捕球した場合
捕った場所がフェアゾーン・ファウルゾーンであるかを問わず、その時点で打者はアウトとなる。このとき高く上がったものをフライ、水平に飛んだものをライナーという。ただし両者の厳密な区別はなく、フライかライナーか判断しづらい打球も存在する。そのような打球を「ハーフライナー」と呼ぶこともある(審判員はフライかライナーかの判定を行わない)。
- 上記以外の場合
打球の飛んだ方向などにより、審判員によって打球がファウルボールかフェアボールの判定がなされ、その判定により下記のようになる(ファウルボールおよびフェアボールの詳しいルールは、上記のリンク先を参照されたい)。
- 打球がファウルボールになった場合
- そのファウルボールを打った球が投球された時点でいた塁まで走者を戻し、投球をやり直す。このとき打者にストライクが1つ追加される(ただしすでに2つストライクがある場合は数えない)。
- 打球がフェアボールになった場合
- 打者は走者として一塁へ進まなければならない。この間に、下の走者の節で説明するフォースアウトの状態になると、打者はアウトとなる。途中で障害物(審判、フェンス、塁など)に球が当たった場合はその真下の地点でバウンドしたとみなされる。アウトにされることなく一塁に到達すれば、打者は一塁の上で安全に待機することが出来る。また、アウトになる危険を冒して更に二塁、三塁、本塁への進塁を試みることも出来る。
野手の失策(エラー)や野手選択(フィルダースチョイス)によらずに一塁に達した場合を、安打という。
[編集] 走者
打者が四球・死球や安打などで出塁した場合は走者となる。走者は一塁・二塁・三塁・本塁の順番に進み、本塁まで進塁した時は攻撃側に1点が与えられる。
走者は常に進塁を試みることが出来るが、走者が塁に触れていない状態で野手が持ったボール(あるいはボールを持ったグローブ)に触れられる(タッチ)とアウトになる。野手からのタッチを避けるために塁と塁とを結ぶラインから3フィート(約91cm)以上離れた場合もアウトになる。また、走者は自分の前を走る走者を追い越してはならず、これに反してもアウトとなる。
一塁に走者がいる場合に打者がボールを打ち一塁に走ってきた時には、一塁走者は二塁への進塁を試みなければならない。このとき二塁にも走者がいれば二塁走者も三塁へ、さらに三塁にも走者がいれば三塁走者も本塁へ、それぞれ進塁を試みなければならない。このように、打者が一塁に走ってきたときには必ず走者が進塁しなければならない状態を「フォースの状態」といい、これによって起こるプレイをフォースプレイという。打者走者を含め、フォースの状態にある走者が次の塁に触れるまでの間に
- 野手が持ったボール(もしくは球を持ったグローブ)にタッチされる
- ボールを持った野手が、走者が進まなければならない次の塁に、ボール(もしくはボールを持ったグローブ)あるいは体の一部を触れさせる
とアウトになる。フォースプレイの状態で上記のアウトになることをフォースアウト(封殺)という。ある走者がアウトとなったとき、その走者より前を走る走者はフォースの状態から解かれるので、フォースアウトとなることはない(例えば進塁しようとしている塁に球を触れられても、それだけではアウトにならない)。
走者がフォースの状態にあるときに、打者が四球や死球などで安全に1つ以上進塁する権利を得た場合、フォースの状態にある走者は打者にその塁を明け渡すため、次の塁に進まなければならなくなる。例えば満塁のときに打者が四球や死球で一塁に進むことになった場合、一塁走者は二塁へ、二塁走者は三塁へ、三塁走者は本塁に進塁しなければならなくなる。この場合は結果として1点があたえられることになる。これは押し出しと呼ばれる。
- なお、打者が本塁打やエンタイトルツーベースを打った場合など、塁上にいるすべての走者に打者と同じ数だけ安全に進塁する権利が与えられることもある。これらについての詳細は安全進塁権の項を参照されたい。
フライやライナーを捕球されてアウトとなった場合、捕球後に走者はその打者が打つ直前にいた塁に触れ直さなければならない。触れ直す前にボールを持った野手がその塁に触れた場合、走者はアウトとなる。走者が塁に触れ直すことができたら、再び走者はアウトになる危険を冒して進塁を試みることができる(これをタッチアップという)。
[編集] 攻守交替
アウトが3つになったら攻守交替をする。
[編集] 試合終了
先攻側の攻撃を表、後攻側の攻撃を裏と言い、表と裏の攻撃をあわせて1つのイニングと呼ぶ。規定回数までに得点の多いほうが勝者となる。一般に規定回数は9回であるが、ルール体系により異なる。球審の「ゲーム」の宣告で試合が終了する。
最終回の表が終了した時点で後攻側の得点が先攻側を上回っている場合は、最終回の裏を行う必要がなくなるので、その時点で試合が終了する。したがって最終回の裏の攻撃については、最終回の表が終了した時点で、後攻側のチームが、先行側のチームと同点かそれ未満の得点の場合に行われる。最終回の裏の攻撃中に、後攻側が先攻側の得点を上回った場合、それ以上の攻撃を行う必要がなくなるので、その時点で直ちに試合終了となる。これをサヨナラゲームという。
- 先攻側の立場で言えば「サヨナラ負け」、後攻側の立場では「サヨナラ勝ち」という。また試合を決することになった得点が安打による場合は、その安打を「サヨナラヒット」というなど、しばしば「サヨナラ」という言葉が冠される。
最終回の裏が終了した時点で先攻側・後攻側の得点が等しい場合は引き分けであるが、決着をつけるため延長戦を行う場合もある。延長戦を行う場合も、決着が付くまで永久に続ける場合、規定回数または制限時間を設けてそれでも同点の場合は引き分けとする場合、再試合とする場合など様々である。
降雨・天災・日没などで試合続行が困難になった場合、最終回まで達していなくても試合を打ち切る(コールドゲーム)場合や、試合を一時停止(サスペンデッドゲーム)にすることがある。試合の打ち切りや一時停止については各リーグなどの規定や試合の進行状況などで判断し、また打ち切った場合の扱い(試合の勝敗や記録の有効・無効など)についても各リーグどの規定に基づく。
また、試合中に選手が怪我などで出場できなくなり、チームから9人の選手を出場させることが不可能となった場合は、没収試合として棄権負けとなる。
[編集] 選手交代
選手の交代は、一旦審判員にタイムを要請した後に任意の選手交代をする事が出来る。控え選手と交代させる場合、交代させられた選手は二度とその試合に参加できない。普通は交代できる控え選手の上限をあらかじめ決めておく。また公式戦では交代要員の数はルールに決められており、あらかじめ登録しておかなければならない。交代要員無しで行ってもかまわない。
交代して新しく試合に参加した選手のことを、打者においては代打(ピンチヒッター)、走者においては代走(ピンチランナー)、投手においては救援投手(リリーフピッチャー)という。アマチュアでは少ないが、プロやセミプロなどでは投手には役割分担が為されている。この理由には投手の体力の点が大きいが、投手の投げる球に打者の目が慣れる事で打たれやすくなる事から、細かく投手を交代する事でアウトを取ろうと言う理由もある。それぞれの役割ごとに先発(スターター)、中継ぎ(セットアッパー)、抑え(ストッパー、クローザー)と呼ばれる。
- 先発は最初から6、7回程までを投げ、その後に中継ぎが1、2回を投げ、最後の1回を抑えが投げる。この数字は固定したものではなく、先発が最後まで投げ切る(完投)事もあるし、中継ぎを使わない場合もある。
[編集] 戦術
[編集] 先攻・後攻
野球において、先攻・後攻のどちらが有利かは意見の分かれるところであるが、後攻有利とする意見がやや多い。プロ野球などではホームのチームが後攻となることが決まっている。大学野球のリーグ戦では2勝先取なので先攻と後攻を交互にすることが多い。その他の試合では、それぞれのチームの思惑でくじ引きやじゃんけんなどの方法で先攻と後攻の選択が行われる。