AirMac
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AirMac(えあーまっく、日本市場以外ではAirPort)はアップルコンピュータが提供する無線LANのシステムである。
アップル社はAirPortの名称で発売されているが、日本ではすでに関西電機により商標登録されていたことから、日本ではAirMacの名称を使うことになった。なお、関西電機との提携により、アイ・オー・データ機器が「AirPort」ブランドにより無線LAN製品を販売している。
なお、以下の記述においてAirPortは日本国内におけるAirMacを指す。
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[編集] 概略
1999年7月に発表された AirPort は無線LANの標準規格であるIEEE 802.11b に基づいており、他のIEEE 802.11b 装置と互換性があるとして Wi-Fi Alliance によるWi-Fi の認定を受けている。2003年1月には IEEE 802.11g 仕様に基づく製品ファミリーとして AirPort Extremeとして発表され、54Mbps へのスピードアップおよび古い 802.11b 互換の AirPort 製品との相互運用性が提供された。2004年6月には AirPort Express モバイルベースステーション が発表され、より小型で安価でありながら AirPort Extreme と同様の IEEE 802.11g 仕様に準拠し 、iTunes との運用で家庭内のオーディオ機器に無線でストリーミング送信する機能が提供されている。最新の製品ではIEEE 802.11nドラフトに基づいた AirPort Extreme が 2007年1月に発表され、最大 270Mbps へのスピードアップおよび USB 機器の共有機能、従来の AirPort 製品との相互運用性が提供されている。AirPort 製品の一般的な用法は、プロトコル(802.11b および 802.11g、802.11nドラフト)と拡張カードおよびベースステーションを参照のこと。
AirPort カード及び AirPort Extreme カードは Macintosh コンピューターにだけ利用できる。しかしすべての AirPort ベースステーション及びカードは、Wi-Fi の認定を受けたサード・パーティーのベースステーション及びワイヤレス・カードと互換性がある(それらがIEEE 802.11bまたはIEEE 802.11g 、IEEE 802.11nドラフトに適合している限り)。この相互接続性により、新旧の MacintoshおよびWindows、そしてLinux システムにさえもサービスする何種類かの AirPort ベースステーションからなるワイヤレス・ネットワークを見ることは珍しくない。
なお、AirPort カードと AirPort Extreme カードは物理的に互換性がない。AirPort Extreme カードは古いMacに装着できず、AirPort カードは新しいMacには装着できない。AirPort カードの生産終了後はこれが入手困難であるためオークション等で取引したり、Windows向けの市販の無線LANカードを自己責任で装着したりしている。また、USB接続の無線LANクライアントの中には Macintosh に対応している製品もあり、速度の面 (IEEE802.11g仕様に対応できる)から、こちらを利用する者もいる。
[編集] 歴史
AirPort はニューヨークで開催された Macworld Expo において1999年7月21日に初登場した。最初に提供されたのはAirPort ベースステーションに加え、アップル社の新型の iBook ノートブック向けオプションの拡張カードが含まれた。AirPort カードは、PowerBook、eMac、iMac、及びPower Macを含むほとんどすべてのアップル社製品にオプションとしてその後追加された。Xserve だけは AirPort カードオプションがない。初代の AirPort システムは最大11 Mbpsの転送レートが可能であり、複数のコンピュータの間でインターネット・アクセスの共有とファイル共有を行うためによく使われた。
2003年1月7日、アップル社は802.11g仕様に基づくAirPort Extremeを発表した。AirPort Extreme は最大54 Mbpsのデータ転送が可能で、45m範囲まで使え、競合相手となる802.11aとは違い既存の802.11b ワイヤレス・ネットワーク・カード及び ベースステーションと完全に下位互換性 がある。 PowerBook、iBook 及び iMacを含むアップル製デスクトップコンピュータ及びポータブルコンピュータのいくつかは、AirPort Extreme カード標準装備で出荷された。AirPort Extreme 発表後、現在まで発表されているすべての Mac (XServeを除く)は、AirPort Extreme カードのための拡張スロットを備えている。
初代の AirPort カードは2004年6月で生産中止となった。
2004年6月7日、アップル社は802.11g仕様に基づくAirPort Expressを発表した。AirPort Express は AirPort Extreme と同等の最大54 Mbpsのデータ転送が可能でありながら、手のひらに収まるサイズと低価格化を両立しモバイルベースステーションと形容して発表された。また、デジタルとアナログの複合オーディオ端子を内蔵しており、家庭内のオーディオ機器等に接続し、iTunes と連携して無線でストリーミング送信する機能が追加されている。
2006年現在、Power Mac G5・Mac Proを除く現在のアップル製デスクトップコンピュータ及び全てのアップル製ポータブルコンピュータは、AirPort Extreme カード標準装備で出荷される。Power Mac G5およびMac Proもカードのための拡張スロットを備えておりBTOなどにより装着可能である。
2007年1月9日、アップル社は802.11nドラフト仕様に基づくAirPort Extremeを発表した。この新型 AirPort Extreme は最大270Mbps のデータ転送が可能となり、USB インターフェースを備え、プリンタやハードディスクドライブなどの USB 機器を共有する機能が追加されている。
[編集] ベースステーション
ベースステーションとは、AirPort を利用可能なコンピュータをインターネット、あるいは他の AirPort 利用可能なコンピュータ、あるいは有線LAN、あるいはその他の装置へ接続するために使われる、いわゆるアクセスポイントの、AirPort シリーズ製品における通称である。
[編集] AirPort
グラファイトとして知られる初代 AirPort ベースステーションはモデムポート及びイーサネットポートを1つ備えている。これは Lucent社製WaveLan PC Card をベースにしており、組み込み型486プロセッサーが使われていた。1999年7月21日に発売された。
デュアル・イーサネットまたはスノーとして知られる第二世代モデルは2001年11月13日に発表された。これは2つ目のイーサネットポートが追加され、有線及び無線クライアントの両方と有線ネットワーク接続を共有することを可能にした。このモデルはモトローラのPowerPC860プロセッサーが組み込まれていた。
[編集] AirPort Extreme
AirPort ベースステーションは、2003年1月7日の、AirPort Extreme ベースステーションの発表[1]後に生産が中止された。最高54Mbps にスピードアップされたワイヤレス接続の提供に加え、外部アンテナ・ポート及びプリンター共有用の USB ポートが追加された。
アンテナポートは信号ブーストアンテナの追加を可能にし、USBポートはUSBプリンタの共有を可能にした。 接続されたプリンタはBonjourの "Zero configuration" 技術と IPP を通じ、ネットワーク上のすべての有線あるいは無線クライアントが利用できるようにされる。モデム及び外部アンテナポートのない第2モデルが短期間提供されていたが、これは後述する AirPort Express の登場後生産中止された。
2004年4月19日、第3モデルが公開された。これはPower over Ethernet(PoE) をサポートし、つり天井の上のエリアのようなエア・ハンドリング・スペースでの安全な利用のための規格 UL2043 (プレナム定格) に従っている。3つのモデルすべてが、Wireless Distribution System(WDS)標準規格に対応する。
2007年1月9日、第4モデルが発表された。筐体デザインが一新され、Mac miniと類似した形状の薄く四角いデザインとなった。ワイヤレス接続に関しては、802.11.n規格ドラフトに対応したことにより最大270Mbps のデータ転送が可能となった(但し、2007年2月現在、国内の法規により帯域幅は仕様上可能な上限の半分に制限されている)。また、従来の AirPort 製品との相互接続も可能である。その他、USB接続のハードディスク共有機能も新たに取り入れられた。
なお、Macのうち、802.11.n規格に対応するのはCPUにIntel Core 2 Duoプロセッサを採用する製品(iMacの最下位モデルをのぞく)とAirMac ExtremeカードのあるMac Proに限られる。また、802.11n Enablerが必要となる。802.11n Enablerはベースステーションに同梱されるほか、Appleから1.99ドル(日本では250円)で提供される。
[編集] AirPort Express
AirPort Express はシンプルかつコンパクトな AirPort Extreme ベースステーションであり、AirTunes と呼ばれる新機能を持つ。これは AirPort Extreme ベースステーションに取って代わるものではない。これは2004年6月7日にアップル社より発表された。アナログ/光オーディオ・ミニジャック出力、プリンター共有用のUSBポート、1個のイーサネット・ポートを内蔵する。 AirTunesは、iTunes 音楽プレイヤーを持ちAirPortを利用可能なコンピュータが AirPort Express に接続されたスピーカへ音楽を配信することを可能にする。
AirPort Express は、WDSブリッジングの利用によって既存の AirPort Extreme ネットワークの範囲を拡張するためにしばしば用いられる([2])。そしてそれは、インターネットアクセスやファイル共有・プリンタ共有と同じように AirTunes の機能もより遠くの、より多数の有線・無線クライアントに広がる。
AirPort Express の主要なプロセッサーはBroadcom社製BCM4712KFB ワイヤレス・ネットワーキング・チップセットである。これは200MHz MIPS プロセッサーが組み込まれている。オーディオはテキサス・インスツルメンツ社製PCM2705 デジタル/アナログ・コンバーターによって処理されている。
USBポートの他の使い方はKeyspan社製USB接続型赤外線リモコンを使用して AirTunes を制御する事である。
[編集] セキュリティー
AirPort 及び AirPort Extreme は、盗聴(あるいは「傍受」「漏洩」)及びネットワークの不正アクセスを防ぐための多様なセキュリティ技術に対応する。有線ネットワークがほとんどの場合物理的に保護できるのと違い、全ての無線ネットワークは本質的に盗聴に対してぜい弱である。このため、暗号化は主要な役割を果たす。
一般的に、WEP は「破られた」とみなされている。早くも2001年には WEP プロトコルに穴が見つかっていたが、2005年3月のFBIによる実演はインターネットから自由に入手できるツールを使ってWEPキーを3分間でクラックできることを示した。
WEP の非セキュアへの増大する懸念に応えて、WPA 規格は2003年6月に、より永続的で安全なプロトコルが開発され得るまでの「つなぎの解決策」として利用可能になった。WPA2 あるいは IEEE802.11i として知られる新しい規格は2004年6月24日に承認され、Advanced Encryption Standard(AES) を用いる。
AirPort ベースステーションの初代製品ファミリーは他の Wi-Fi 製品と同様に 40ビットまたは128ビットの Wired Equivalent Privacy (WEP) を用いている。AirPort Extreme ベースステーション/カードおよび AirPort Express ベースステーションも互換性の観点から WEP を使用することもできる。 AirPort Extreme ベースステーション/カードおよび AirPort Express では Wi-Fi Protected Access (WPA) もサポートしていたが、2005年7月14日からは WPA2 の使用が可能となり、また推奨されている。AirPort カードも当初は WEP のみのサポートであったが、2006年現在は WPA が追加サポートされている。
[編集] 関連項目
1998年以来のアップル社製ハードウェア | |
一般向けマック: | iMac | Mac mini | eMac | iBook | MacBook |
プロ向けマック: | Power Mac | Cube | Mac Pro | Xserve | PowerBook | MacBook Pro |
コンシューマエレクトロニクス: | iPod | iPod mini | iPod shuffle | iPod nano | iPhone | Apple TV |
アクセサリー : | AirMac | iSight | Cinema Display | Xserve RAID | Mighty Mouse | iPod Hi-Fi | Apple Remote |