Fixed Mobile Convergence
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Fixed Mobile Convergence(FMC、固定網と移動網の収束) は、有線通信・移動体通信を組み合わせた電気通信サービスを言う。狭義には、有線通信・移動体通信の双方の電気通信サービスを、同一の端末で利用者に提供する物を言い、広義には、電気通信事業者の提供サービス形態として有線通信・移動体通信の双方が密接に連関している物まで含めて言う。
目次 |
[編集] 概要
FMCは、2000年代後半から、次のようなことを背景にして注目されるようになった。
- 携帯電話の普及による固定電話の顧客離れを緩和したい。
- 移動体通信に都合の良い周波数帯域が有限なので、トラフィック密度の高い場所で別の通信手段を提供したい。
- 電気通信事業者間の激しい顧客獲得競争に勝ち抜く手段としたい。
次のようなサービスが考えられている。
- 無線LAN・Bluetooth・UWBで固定通信網に接続できる場合は、安価で高速なサービスを提供する。
- 移動時にも、ほぼ同一のサービスを移動体通信・無線アクセスで提供する。
- サービスの利用料金は、1つの請求書にまとめて請求する。また、複数サービスを提供する場合の割引料金を設定する場合も多い。
[編集] 主なサービス
国 | 事業者 | 商標 | 電話 | パケット通信 | 通信規格 | 顧客層 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
英国 | BT | Fusion | 固定・携帯(ボーダフォン) | Bluetooth(将来Wi-Fiへ移行),GSM | 住宅 | 米キネト・ワイヤレスなどが2004年8月に規格化した、UMA(unlicensed mobile access)採用 | |
フランス | FT | Business Everywhere | 無線LAN (ADSL / PSTN )・携帯 | WI-Fi,GPRS | 企業 | ||
ドイツ | O2 | surf@home | 無線LAN・携帯 | Wi-Fi,W-CDMA | 住宅 | ||
米国 | シンギュラーワイヤレス | Fastforward | 固定・携帯 | GSM | 住宅 | SBC、ベルサウスがPSTNを提供。在宅時、クレードルに携帯電話機を入れておくと、携帯宛の着信は、あらかじめ登録した自宅の有線電話機に転送される。 | |
韓国 | KT | Du | 固定・携帯 | Bluetooth,cdmaOne | 住宅 | ||
日本 | NTTドコモ | Passage Duple | IP・携帯 | 無線LAN・携帯 | Wi-Fi,W-CDMA | 企業 | SIPを独自拡張 |
[編集] 日本の状況
日本国内では2005年現在、さまざまな形態でFMCが提供され、またはされようとしている。
- PHSの自営対応端末を使用し、企業や家庭の内線ではコードレス電話の子機として、屋外ではPHS事業者の基地局に接続し公衆PHS回線により、音声通話が利用可。
- 携帯電話・PHS端末等に無線LANを搭載し、VoWLAN(Voice over Wireless LAN)としてSIP等によりモバイルセントレックスサービスに対応した物
- その他、将来的には各携帯電話事業者が無線アクセスとのデュアルモード端末を投入することを表明している。
- 事業者の提供サービス形態としてのFMC
- ジュピターテレコムが仮想移動体通信事業者としてウィルコム回線を利用しPHSと直収電話の統合サービスを2006年に開始することを発表している。
- ソフトバンクのBBフォン(Yahoo BB ADSL上)と、ソフトバンクグループが事業開始予定の携帯電話とを将来的に連携させる意向。
- ウィルコムはアッカネットワークスのADSLをホールセールし、PHSとの連携を図る。セット割引料金プランを開始したほか、将来的に同ADSL上でIP電話を開始し、既に音声通話定額制を開始しているPHSとの連携をする意向。
- 携帯電話の法人向け定額制など料金制度によるアプローチ
- ボーダフォンの「ボーダフォンモバイルオフィス」 : 登録した特定グループの携帯電話に限り、同社携帯電話間や、携帯電話→固定電話の音声通話定額制の適用による。
- au by KDDIの「OFFICE WISE」 : 登録した特定の携帯電話に限り、同社携帯電話間による法人等内での内線通話に通話定額制を適用。内線通話エリア外に端末が移動した場合にも自動的に転送されるため、FMCの一種とも言える。
FMC向けの電話番号計画については審議中。(060番号(UPT: Universal Personal Telecommunication)の番号帯などが候補として検討中。)
[編集] 課題点など
[編集] 技術面
次のような技術課題がある。
- デュアルモード端末 : 移動体通信(無線アクセス・携帯電話)と無線LAN・Bluetoothなどとを利用可能時間・待ち受け時間を長くした小型携帯端末として安価に大量に提供する技術。
- Next Generation Network : Internet Protocolを利用した有線通信・移動体通信を統合した次世代電話網の標準化と相互接続。
- 電波帯域の有効利用 : 移動体通信に適した周波数帯域が限られているため、現在使用している固定無線通信の移転先の技術開発。また、現在使用されていない周波数の活用法の開発・他の無線局との周波数帯域の共用技術の開発も行われている。(超広帯域無線など)
[編集] 利用面
利用上、次のような問題が起こる可能性が指摘されており、対策が検討されている。
- 掛ける先の電話番号と、実際に掛かる回線や料金との間で、認識のずれが発生する(例えば、固定回線に掛けたつもりが携帯電話宛の料金が課金されるなど)。
- 掛ける先の市外局番と、実際に掛ける先の相手が居る地方との間で、認識のずれが発生する。固定電話に掛けたつもりが、移動体電話に繋がるため、この様な問題が発生する。(例えば、東京03に掛けたつもりが、実際には相手は携帯電話で全く別の地方に居て電話を受けるなど)。