NHKワールド
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NHKワールド(NHK WORLD)とは日本放送協会(NHK)の行う国際放送及び外国向け番組配信の総称である。
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[編集] 概要
放送法の規定でNHKは総務大臣の命令で国際放送を実施しており、政府は交付金を支給して経費を負担している。このため、NHK自体は公共放送であるものの、国際放送は国営放送の色が濃いともいえる。(ただし、あくまでも公共放送であることに変わりはない。)
最近では政府・与党が広報手段として国際放送の強化を検討しており[1]、NHKの子会社に民放も出資する形態が考えられている。
2006年11月10日には菅義偉総務大臣よりNHKの橋本元一会長に対し、放送法第33条「NHKに対して放送区域、放送事項、その他必要な事項を指定して国際放送を行うべきことを命ずることができる」という規定に基づきNHKワールド・ラジオ日本において北朝鮮の日本人拉致被害者へ向けた放送をするよう命令された[2]。
一方、これらはNHKの独立性を損なうものだとして、ジャーナリストや学者が反対の声を上げている。当のNHK自身も困惑していると報道されている。これに対し政府・自民党は『命令』という言葉が問題という見解から放送法を改正し他の文言に見直すよう検討する考えを示した。
[編集] 国際放送
- NHKワールドTV(えぬえいちけいわーるどてれび)
- テレビジョン放送(日本国内の標準テレビジョン放送と同じNTSCとPALの2つの方式で放送)。ノンスクランブル放送(無料放送)であり、対応チューナーとパラボラアンテナで受信可能。主に外国人向けを対象。
- 海外向けの放送であるため日本国内での受信は想定されておらず、建前上日本国内では受信できないことになっているが、物理的には日本国内でも一般のテレビジョン受像機(地上・BS・110度CSデジタル放送チューナー内蔵の有り無しにかかわらず、ビデオ入力の端子がついていれば接続可能)に海外衛星受信用のチューナーとパラボラアンテナ(日本国内の場合、場所にもよるが直径60~90cm程度のサイズ【東経166度にあるインテルサット〈旧パンナムサット〉8号機で受信する場合】)で受信可能になっているものの、受信者の多いNHKワールド・ラジオ日本とは違い、日本国内で受信している世帯は少ないと思われる[3]。ただし、放送方式が異なるため、地上・BS・110度CSデジタルチューナー〈内蔵テレビも含む〉とBS・110度CSアンテナやJCSAT3、4衛星受信用のスカイパーフェクTVチューナーと専用アンテナなど日本国内で市販されている衛星放送受信装置では受信不可で、別に海外衛星受信用のチューナーと海外衛星受信に対応したパラボラアンテナ・CバンドのLNB(ローノイズブロックコンバーター)が必要となる(受信機材は日本国内ではインターネットなどの通信販売でしか入手できない)[4]。チャンネルスキャンの際「NTSC Japanese」や「PAL Japanese」と表示されていればNHKワールドTVが受信できた証となる。
- ニュース・情報番組中心で、定時のNHKニュースをはじめ、おはよう日本・ニュース7・ニュースウォッチ9・NHK BSニュースなどの番組を日本国内のものと同時放送している。そのほか、全国各地の放送局が制作した地域情報番組、海外安全情報、英語ニュースなども放送される。
- NHKワールド・ラジオ日本(えぬえいちけいわーるどらじおにっぽん)
- ラジオ放送。短波の受信出来るラジオで受信可能(海外衛星テレビ受信装置〈DVB〉でも受信可能な場合もあるが通常はスクランブルがかけられている。日本国内でも受信可能だが、短波の場合、ラジオNIKKEIの周波数のみ受信の専用ラジオでは受信不可)。日本語・英語を中心に22言語で放送されている。在外日本人向けの日本語番組はテレビとは違い、独自制作はごくわずかで残りの多くは日本国内向けのNHKラジオ第1放送(一部、ラジオ第2放送、FM放送の番組もあり)で放送される番組の日本国内との同時放送や時差・再放送を行なっている。
[編集] 外国向け番組配信
[編集] NHKワールド・プレミアム
ケーブルテレビや衛星放送向けのテレビ番組配信(日本国内の標準テレビジョン放送と同じNTSCで放送)で主に海外に滞在している日本人向けを対象としている。ニュース・情報番組の他、娯楽、ドラマ番組、スポーツ中継(総合テレビ同時放送で大相撲、プロ野球ほか主に日本国内でおこなわれるもの 海外のスポーツ中継は放送権の都合上、一切放送なし)等。スクランブル放送である[5]。
北米ではJAPAN NETWORK GROUP, INC.がテレビジャパン、ヨーロッパではJapan Satellite TV (Europe) Ltd.がJSTVとしてそれぞれワールドTV及びプレミアムに一部民放の番組を併せた番組を放送している。
テレビジャパンなどと同様、国内と同時放送のニュース(日本語放送の番組)は内容によっては「放送権の都合によりご覧いただけません(Due to copyright reasons the visual images cannot be seen.)」というお断りの画面が入る(音声部分はそのまま放送されるが、場合によっては音声も放送されないこともある)[6]。静止画(絵画のイラスト~1本の木の風景、蒸気機関車牽引の客車列車の走行風景など)はその季節に合わせたものを使用しているが、時には選手の静止画像(写真撮影)や、サッカーに関係した内容ではサッカー関係の静止画が入るなどその放送内容にあわせた静止画が入る場合もある。なお、選手の静止画像挿入は2007年2月初旬頃までは断り書きがまったくなく、静止画像のみの表示になっていたが、それ以降は画面下に「放送権の都合によりご覧いただけません(Due to copyright reasons the visual images cannot be seen.)」という文字を加えて選手の静止画像を挿入している。
- お断り画面または選手の静止画などに差し替えられる主な例(同時放送の場合は1秒ほど映像が流れた後にお断り画面を表示)
- オリンピックやFIFAワールドカップなど国内での放送しか認められていない(国内での放送権しか取得していない)権利映像
- 海外からのスポーツニュース(但し種目により異なり、内容によっては海外向けへの放送も認められている種目がある。大リーグのように試合のハイライトでは試合終了から36時間以内の条件付で海外向けへの放送を認められているケースもある。まだ試合・競技が終了していない場合はすべてお断り画面に差し替えとなる。また、選手によっては肖像権などの都合で静止画像に差し替えるケースもある)
- 日本国内の民放局からの映像素材を受けた国内のスポーツニュース(内容により異なる)
- スポーツ以外でも一部の外国映画の紹介などNHK以外の権利団体から提供を受けたもの(内容により異なる)
- 特別な例では2007年3月20日放送の「おはよう日本」の外からの中継でレオナルドダビンチ作の絵画『受胎告知』の紹介の際、展示の絵画のみ映る部分はすべてお断り画面に差し替えられた(国内放送だけで展示の絵画のみ映る部分が放送された)。ただし、リポートのアナウンサーと展示の絵画が一緒に映る部分や絵画以外の資料等の展示物は海外向けにもそのまま放送された。
オリンピックやFIFAワールドカップの期間中などでは権利映像が多く含まれていて、カットする部分が多く、国際放送ではこれらの競技映像のニュース素材がそのまま放送されると他国の独占放送権を持っている放送機関などへ侵害にもつながるためこれらの競技映像のニュース素材の放送が行えない。そのために同時放送は無く、日本国内での放送から30分~2時間遅れでの時差放送となり、本来の同時放送枠は時差放送を行ったり、NHKワールド単独で国際放送専用スタジオからのニュースやNHK文字ニュース(日本国内の地上アナログ放送で行われているテレテキストで表示される文字多重放送の受信画面から)が放送される。ただしオリンピックやFIFAワールドカップ期間中でも関連のニュースを扱わない場合や重大なニュースが発生した場合は同時放送となる。なお、アジア競技大会に関しては放送権の問題に支障がないため通常通り競技映像のニュース素材はそのまま放送されるが、ごくまれにお断り画面を表示することもある。
時差放送では部分的にカットして放送されるため、お断り画面などは表示されない。但し、一部の時差放送番組ではカットせず、撮って出しの形式で放送されるため、お断り画面が表示されることがある。一方、NHKワールド・ラジオ日本のニュースは国際放送単独放送とラジオ第1放送・FM放送との日本国内同時放送の2パターンがある。NHKワールドTV 、NHKワールド・プレミアムとは異なり日本国内ラジオ第1放送・FM放送との同時放送ではオリンピック期間中であってもラジオ第1放送単独の中継およびジャパンコンソーシアムによるテレビ中継の実況音源も含めて一切差し替えなしでそのまま同時放送される。
- NHKワールドTV、NHKワールド・プレミアムのテレビの映像比率は国内のアナログ放送と同様4:3で放送されている(番組によっては16:9、14:9もある)。ハイビジョン制作の番組も標準画質にダウンコンバートされ原則として4:3の映像部分をクリップして放送されている。なお、受信の際、日本国内の地上アナログ放送(小笠原諸島を除く関東地方の送信所での受信の場合)とは約1.5秒でBSアナログ放送とは約1秒のタイムラグがあり、日本国内の地上デジタル放送、BSデジタル放送よりもタイムラグの発生時間は少ない。
- 国内のテレビ放送とは異なり、番組と番組の境目には一旦黒画面にするフェードインアウト挿入がある。
- NHKワールドTV 、NHKワールド・プレミアム の音声多重放送はステレオと2か国語のみ(「2か国語」の表示テロップは国内のアナログ・デジタル放送と同様デザイン)。副音声解説、2音声ステレオは行われていない。また、字幕放送(文字多重放送)や時刻出しも行われていない。
- NHKワールドTV 、NHKワールド・プレミアムのテレビ放送は 日本時間午前5時基点の24時間放送であるが、年数回日本時間で月曜日の1:00~5:00まで放送設備の点検整備のため放送・配信は休止される(2006年12月4日は2:00~6:00の間、休止された)。NHKワールド・ラジオ日本も番組の送出自体は24時間行われるものの、放送される周波数は時間帯により変わっている(国際協定のため)。ただし、海外衛星テレビ受信装置〈DVB〉を使用して受信している場合は時間帯により放送される周波数が異なる短波放送とは違い、時間帯に関係なく受信したチャンネルで常時24時間受信可能である(日本語放送は全時間帯で放送されるが、日本語放送のない時間帯は英語放送となる)。
- 日本国内で流れる「NHKニュース速報」や「NHK地震情報」などといった速報テロップは一切表示していないが臨時ニュースがあった場合は随時放送している。
- 日本国内で津波警報・津波注意報が発令された場合、国際放送も全チャンネルで通常番組を中断し、日本国内と同時に津波関連のニュースが放送される。なお、日本国内のように津波警報、津波注意報の発表範囲の地図テロップはNHKワールドでは一切表示されない。
- 日本における国際放送はまだまだ視聴者も少なく、広まっていない。日本をもっと知ってもらうために政府やNHKではNHKワールドTVの改編を計画している。
- 2008年にはNHKワールドTVの英語放送の比率を100%にする計画となっている[7]
- NHKワールドTVの独自制作番組の一部は日本国内でも総合テレビ、教育テレビ(一部番組はデジタルのみ)、衛星第1テレビでも放送されているがスポーツ中継など特別編成で放送されないときもある。また、海外安全情報ではBS1に加えてNHKワールド公式サイトのインターネットの動画でも見ることができる。
[編集] 脚注
- ^ 総務省「映像国際放送の在り方に関する検討委員会」
- ^ 日本放送協会に対する平成18年度国際放送実施命令の変更についての総務大臣談話
- ^ 主にアパートやマンション、敷地の狭い住宅では直径1メートル以上のアンテナがつけられないという現状があるため、耐重量、強風、面積、設置場所などの問題を理由に視聴を断念せざるを得ない世帯も少なくない(Cバンドを使用するため、日本国内の衛星放送で使われているKuバンドとは違い大型のアンテナを使わなければ受信不可能であるため)。
- ^ 日本国内でテレビを視聴する世帯について国内地上波、あるいは衛星放送(BS)の受信契約が必要であるのは言うまでもないが、元々、海外向けのテレビ国際放送は日本での受信を想定せず、受信料も想定していないため、日本国内でNHKワールドTVを視聴することを理由とした追加分の受信料は発生しない。つまり、日本国内ではNHKワールドTVを受信していても実質的に現在支払っている、地上(カラー・普通)契約・衛星(カラー・普通)契約・特別契約といった現行の受信料だけで済まされている。
- ^ ホテル・事業所や海外のCATV・衛星放送局などが対象 日本国内で徴収されるNHK受信料とはまったく異なり、利用料金として同サービスの運営を行っているNHK情報ネットワークへ支払うことになっている(番組の送出はNHK本体で行っている)。日本国内はサービス対象外のため受信・利用・視聴は一切不可である(仮に受信できても放送される番組は日本国内のものと国際放送NHKワールドTVで放送されている番組のほぼすべてが重複している)。また、日本国外でも一般視聴者による直接受信も不可となっている。したがってNHKワールド・プレミアムを視聴する場合、日本国外に於いて法人として受信契約しているCATVや衛星放送局に加入して視聴するか、又は受信に対応しているホテルや現地の事業所での直接受信で視聴するかのいずれかに限定されている。
- ^ いわゆる「かぶせ放送」(「蓋かぶせ」ともいう)。これは日本国内の民放のCS放送ではよくあるケース。同じNHKの地上波同時放送でも日本国内のBSアナログ放送・BSデジタル放送(BS1、BS2、BShi)では同一法人で事業を行っており、放送権の問題もまったく支障がないためお断り画面の表示をする「かぶせ放送」は一切行なっていない(モバイル放送のモバイル.nは「かぶせ放送」があるかは不明)。民放キー局系BSでもほとんど「かぶせ放送」はないがごくまれに「かぶせ放送」となるケースがある。
- ^ 「英語放送の比率」とは英語音声のみの番組、2か国語放送(基本的に日本語主音声・英語副音声だが、英語主音声・日本語副音声の番組もある)の番組、英語字幕の番組(音声は日本語のみ)を合わせた比率を言う。2か国語放送や英語字幕の番組も放送されるので日本語音声の放送が完全に無くなるわけではない。
[編集] 関連項目
- NHKワールドTV 番組一覧
- NHKワールドプレミアム 番組一覧
[編集] 外部リンク
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