STB (旅行)
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STB(えすてぃーびー、すてびー)とは、鉄道駅を旅行中の宿泊地として利用すること。station bivouac(ステーション・ビバーク)の略。駅カン(野宿を「アオカン(青姦)」と呼ぶことに対して。品がない言葉と言われた)、もっと率直に駅寝(えきね)とも称する。
「STB」は元々登山愛好家の用語で、登山前夜に最寄の駅で宿泊し、夜明けと共に登山したことに由来すると言われる。現在では登山のみならず、経済的に旅する旅行者の間で用いられている言葉である。広義では鉄道駅以外にバス停・港の待合所など、交通待合所全般での「旅行宿泊としての」宿泊も「STB」と称する。
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[編集] 経緯
- 国鉄末期から人件費削減の一環として、全国で多数の無人駅が出現、また有人駅でも営業時間を短縮する駅が続出した。これらの駅の多くは、駅設置当時からの立派な駅舎を構え、駅舎内の待合室には長椅子があり、付属する設備としてトイレ、水呑場があり、駅前には公衆電話や自販機等が備えられていた。これは同時に、旅行者が夜露をしのぐのに十分な条件でもあった。また当時、日本の治安が海外に比べて(まだしも)良かったことも背景にある。
- そんな中で1987年、同年に結成されたSTB全国友の会により『STBのすすめ 北海道・信州版』(STB全国友の会:編、どらねこ工房)が刊行される。1994年には『全国版』が登場。これらは駅寝ファンの投稿記事によって編集されており、駅寝は大学生を中心にブームとなった。その後『STBのすすめ』は、書籍としての刊行を2000年の『定本/準備号』で終え、その後はサイトのみで情報公開していたが([1])、これも2006年4月現在ではリンク切れとなっている。
- 駅訪問(種村直樹が称するところの「乗ったで降りたで」もその一種)やSTBの流行と共に、「名所」の駅には来訪者が書き記していく旅ノートが、私設で置かれるようになっていった。
[編集] 利点と問題点
- 旅行者にとっての利点は何といっても、宿泊費が浮くことである。発生した余剰費用で、より長く旅行できることにもつながる。また、地元住民や同じく旅する人間同士とで触れ合う機会も、ホテルに泊まるよりは多くなる。
- 一方、夜間に徘徊する旅行者は地元住民にとって「不審な人物」と取られてもやむを得ない。駅舎に宿泊するとあっては尚更である。また、暴走族等とのトラブルも発生している。
- STBの是非については、旅行者や鉄道ファンの間でかなり意見が分かれており、否定派の中には「ホームレスと同じ」だとして、STBを毛嫌いする人も存在する。一方で肯定派は「これこそ旅の原点」と反論したりしている。但し肯定派にしても、公共の場に間借りするのであるから、最低限のマナーを踏み外してならないのは言うまでもない。
- 殆どの鉄道会社は公式には「駅寝を認めない」が、各駅に宿泊しないよう掲示しているわけではないので、黙認しているのが実情である。しかし、IGRいわて銀河鉄道では、「駅での宿泊はご遠慮下さい」との掲示がある。
- 上記『STBのすすめ』では、駅寝に当たってのマナーとして、
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- 最終電車が出るまで寝ない
- 駅舎内で火を使わない
- 始発電車が入るまでに去る
- ゴミはきちんとかたづける
- を提唱している。STBファンの多くは上記マナーを遵守していると思われるが、一部では自らのWebサイトにコンロやストーブなどを持ち込んで使用している様子を堂々と掲載する者や、深夜に大騒ぎして警察が出動するトラブルが発生しているのも確かである。一方で始発前に、自分が出したゴミ以外に駅舎内を一通り掃除してから出ていく、をモットーにしている人もいる。
- しかし、STBファンとて善人の集まりと言うわけでない。昨今の日本人における公共マナーの低下や、一部の心ない利用者のために、非営業時間帯を無人にする駅では、防犯上のこともあって夜間施錠して利用できないようになってきている。
- 実際に夜間駅員不在となるJR八高線明覚駅、無人駅である東武鬼怒川線大谷向駅は失火により焼失しており、夜間に於ける不審者対策上、STB利用者に厳しくなっているのも事実である。
[編集] STBの登場する作品
[編集] 関連事項
[編集] 外部リンク
- STB~駅寝の世界 個人サイト。
- STB(駅寝)のぺーじ 個人サイト。