八高線
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八高線(はちこうせん)は、東京都八王子市の八王子駅から群馬県高崎市の倉賀野駅(列車運行上は高崎駅)までを結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(地方交通線)である。全線が東京近郊区間に含まれている。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 区間・路線距離(営業キロ):八王子~倉賀野 92.0km
- 軌間:1067mm
- 駅数:23(起・終点駅含む)
- 複線区間:北藤岡~倉賀野(高崎線との共用区間)
- 電化区間:八王子~高麗川(直流1500V)
- 閉塞方式:
- 八王子~群馬藤岡間:特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)
- 群馬藤岡~北藤岡間:自動閉塞式(特殊)
- 北藤岡~倉賀野間:(複線)自動閉塞式
- 保安装置:ATS-PN、(八王子~高麗川間)ATS-Sn(高麗川~倉賀野間)
- 運転指令所:
- 拝島CTCセンター(八王子~高麗川間)
- 高崎輸送指令室(高麗川~北藤岡間)
- Suica利用可能区間:全線
- ラインカラーはグレー
[編集] 運行形態
八高線という線名は、八王子と高崎を連絡する鉄道路線であることから命名されたものであるが、運転系統は1996年(平成8年)3月16日以降埼玉県日高市の高麗川駅を境にして南北に完全に分断されている。そのため、高麗川以南の電化区間を八高南線、以北の非電化区間を八高北線と通称することがあるが、ともに旅客案内上では使用されていない。
[編集] 八王子~高麗川間(八高南線)
川越線川越~高麗川間と完全に一体の運行系統であり、一部に線内折り返し列車が見られるものの、大半は八王子~川越間を直通運転され、毎時2~3本程度運行されている。
ただし、平日朝の上り2本と夕方下り1本については拝島から青梅線・中央快速線経由で東京駅に直通する列車が設定されている(この直通列車に使用される車両は中央線と同じ201系H編成付属4両編成車を使用して運行される。ただし、2007年(平成19年)3月18日以降順次E233系へ置き換えられる)。列車番号末尾はすべてE(川越線内は、{八高線内の番号-1}+Hとなっている)。
東京直通列車(201系使用)を除き、川越車両センター所属の209系(3000・3100番台)と205系(3000番台)の4両編成が使用されている。いずれも扉の半自動化などの対策を施された寒冷地仕様車となっている。
以前は103系の3000・3500番台が使用されていたが、3500番台は2005年(平成17年)3月で運用を終え、その時点では103系は3000番台のハエ52・53の2編成のみだったが、先に前者が引退し、後者も10月2日の「川越線電化20周年号」をもって引退し全車両がステンレス車に統一された。なお、後者は7月~8月中旬に一時的に復帰していた。これはハエ71・63編成(共に209系)が続けて故障し、車両不足が発生したため、急遽運用されたものである。さらに引退後も10月12日に205系の1編成が故障したと同時に209系の1編成が小山へ車輪転削へ行くために車両不足になってしまい、急遽77運用で復帰した。その後高麗川で1777Hから1764H(65運用)に変更し、1765Eで到着したハエ63編成が1876H(77運用)となった。
そのうち、205系3000番台は山手線で使用されていた車両を一部改造したものであり、103系3000番台は仙石線、3500番台は南武線と京浜東北線で使用されていた車両を改修した車両である。209系3100番台は東京臨海高速鉄道から余剰の70-000系を買い取り改造した車両である(中間車の一部は新造)。
[編集] 高麗川~倉賀野(高崎)間(八高北線)
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1996年以降、東京近郊区間唯一の非電化区間である。
線路名称上は倉賀野駅が終点となっているが、運転系統上は全列車が高崎線に乗り入れ、高崎駅まで直通する。朝夕ラッシュ時には高崎駅と児玉駅の間で区間列車が運転される他、小川町駅止まりの列車もあり、毎時1本程度の運行になっている。
高崎車両センター所属のキハ110系が使用されている。ただし一部の列車ではワンマン運転を実施している。
沿線では、高崎周辺を中心に本数増加と、電化複線、八王子までの直通運転を望む声もあるが、JR東日本では浦和駅や中央快速線三鷹~国分寺間・西国分寺~立川間の高架化工事などを行っているため、実施はそれらが終了する少なくとも2015年以降になると思われる。また、北藤岡駅は高崎線と接近しているため、同線の方にホームと駅舎を移設する計画もあり、その工事も同時に行われると思われる。
[編集] 過去の優等列車について
この路線は元々東海道方面と上越線方面の軍事輸送を都心からバイパスする目的で建設された(不要不急の線路が廃止される前にもかかわらず積極的に建設された)ことや、生糸生産地の群馬県と海外輸出港である横浜港とを結ぶいわゆる「絹の道」の近代化や、すでに幹線として輸送量があった高崎線のバイパスの役割があったことから、東武東上線や越生線、西武池袋線・秩父線、秩父鉄道線などの観光路線との接続があるにも拘らず、この路線を主な目的地とした優等列車は設定されていない。例外的に準急行列車が増発された1960年代に上越線水上駅方面へのバイパス列車として新宿駅~水上駅間を運行する「奥利根」や「みくに」が運行されたに過ぎない。詳細は、上越線特急「水上」の方を参照されたい。
[編集] 立川乗り入れ
1996年3月16日の南線電化の際に青梅線立川駅まで乗り入れる列車が2往復設定された。いずれも半自動機能付きの103系3000番台と209系3000番台が乗り入れて、特に209系は青梅線初のVVVFインバータ制御車となった。その後1999年12月3日をもって八高線側からの直通は廃止になったが、現在でも路線図に青梅線立川~拝島間の駅が残っていたり、乗り入れたことのない205系3000番台と209系3100番台にも「立川」の幕が入っている。
[編集] 歴史
[編集] 八高南線
- 1931年(昭和6年)12月10日 【開業】八高南線八王子~東飯能間(25.6km) 【駅新設】小宮、(拝島)、東福生、箱根ヶ崎、金子、東飯能
- 1933年(昭和8年)4月15日 【延伸開業】東飯能~越生間(14.0km) 【駅新設】高麗川、毛呂、越生
- 1934年(昭和9年)3月24日 【延伸開業】越生~小川町間(13.2km) 【駅新設】明覚、小川町
[編集] 八高北線
- 1931年(昭和6年)7月1日 【開業】八高北線倉賀野~児玉間(16.1km) 【駅新設】群馬藤岡、丹荘、児玉 【信号場新設】小野(注1)
- 1933年(昭和8年)1月25日 【延伸開業】児玉~寄居間(12.0km) 【駅新設】松久、用土、寄居
[編集] 八高線
- 1934年(昭和9年)10月6日 【延伸開業・全通】小川町~寄居間(11.1km) 【線名改称】八高線(八高南線に八高北線を編入) 【駅新設】竹沢、折原
- 1945年(昭和20年)8月24日 小宮駅~拝島駅間の多摩川鉄橋上において上り列車と下り列車同士が正面衝突する事故が発生(八高線列車正面衝突事故)、少なくとも105名が死亡。
- 1947年(昭和22年)2月25日 東飯能駅~高麗川駅間で下り列車が過速度により脱線・転覆(八高線列車脱線転覆事故)、184名死亡。
- 1959年(昭和34年)6月10日 【駅新設】北八王子
- 1961年(昭和36年)2月21日 【駅新設】北藤岡 【信号場廃止】小野(北藤岡駅構内となる)
- 1987年(昭和62年)4月1日 【承継】東日本旅客鉄道(第1種)、日本貨物鉄道(第2種)
- 1993年(平成5年)3月18日 キハ110系営業運転開始(寄居~高崎間)。
- 1996年(平成8年)3月16日 【電化】八王子~高麗川(直流1500V) 209系3000番台営業運転開始。キハ35・38系引退。
- 2003年(平成15年)11月10日 205系3000番台営業運転開始。
- 2005年(平成17年)4月1日 【第2種鉄道事業廃止】日本貨物鉄道(全線)
- 2005年(平成17年)4月17日 209系3100番台営業運転開始。
- 2005年(平成17年)9月5日 平日の東京行き2本に女性専用車両を導入。
- 2005年(平成17年)10月2日 川越線電化20周年号をもって103系3000番台引退。
- 2007年(平成19年)3月17日 夜間の中央線からの直通電車よりE233系電車運行開始。
- 2007年(平成19年)3月16日 東京行きの女性専用車両廃止。
- (注1)小野信号場は高崎線上に八高線との分岐点として新設されたもので、小野信号場~倉賀野間(3.5km)は高崎線と重複である。後に分岐点付近の八高線上に北藤岡駅が新設され、小野信号場は同駅構内に統合された。
[編集] 駅一覧
接続路線の*印は線路名称上(戸籍上)はその駅を起・終点とあるいは経由する路線ではないが、運行上はその駅を始発・終着駅としている路線。
路線名 | 通称 | 駅名 | 営業 キロ |
接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
八高線 | 八高南線 | 八王子駅 | 0.0 | 東日本旅客鉄道:中央線、横浜線 京王電鉄:京王線(京王八王子駅) |
東京都 | 八王子市 |
北八王子駅 | 3.1 | |||||
小宮駅 | 5.1 | |||||
拝島駅 | 9.9 | 東日本旅客鉄道:青梅線(直通運転あり)、五日市線 西武鉄道:拝島線 |
昭島市 | |||
東福生駅 | 12.7 | 福生市 | ||||
箱根ヶ崎駅 | 15.7 | 西多摩郡瑞穂町 | ||||
金子駅 | 20.5 | 埼玉県 | 入間市 | |||
東飯能駅 | 25.6 | 西武鉄道:池袋線 | 飯能市 | |||
高麗川駅 | 31.1 | 東日本旅客鉄道:川越線(八王子~高麗川間の電車が川越駅まで直通運転) | 日高市 | |||
八高北線 | ||||||
毛呂駅 | 36.9 | 入間郡毛呂山町 | ||||
越生駅 | 39.6 | 東武鉄道:越生線 | 入間郡越生町 | |||
明覚駅 | 44.8 | 比企郡ときがわ町 | ||||
小川町駅 | 52.8 | 東武鉄道:東上線 | 比企郡小川町 | |||
竹沢駅 | 56.3 | |||||
折原駅 | 60.3 | 大里郡寄居町 | ||||
寄居駅 | 63.9 | 東武鉄道:東上線 秩父鉄道:秩父本線 |
||||
用土駅 | 68.4 | |||||
松久駅 | 71.1 | 児玉郡美里町 | ||||
児玉駅 | 75.9 | 本庄市 | ||||
丹荘駅 | 80.0 | 児玉郡神川町 | ||||
群馬藤岡駅 | 84.7 | 群馬県 | 藤岡市 | |||
北藤岡駅 | 88.4 | |||||
倉賀野駅 | 92.0 | 東日本旅客鉄道:高崎線(上野方面) | 高崎市 | |||
高崎線 | ||||||
高崎駅 | 96.4 | 東日本旅客鉄道:上越新幹線、北陸新幹線(長野新幹線)、信越本線、上越線、両毛線*、吾妻線* 上信電鉄:上信線 |
[編集] 備考
- 八王子~高麗川間の電化開業により東京都内からは気動車が消滅したことになる。これは神奈川県に続いて2番目(当時鉄道路線がなかった沖縄県を除く)である。すべての鉄道路線が電化されている都府県は他に大阪府と奈良県があり、前者には気動車列車が乗り入れているが、後者は2006年3月17日限りで急行「かすが」が廃止されたことにより定期の気動車列車が消滅した。ただし、旅客列車が走らない線区を含めると東京都内には総武本線越中島支線、大阪府内には城東貨物線がともに非電化のままで残っている。
- 全線が東京近郊区間となっているものの、東京都内のJR路線で唯一電車特定区間の対象外路線であり、運賃は地方交通線の運賃が適用されている。このため八王子~拝島間は9.9kmだが、運賃は160円ではなく200円となる。また北八王子・小宮・東福生・箱根ヶ崎各駅の初乗りは130円ではなく140円であり、八王子・拝島両駅から八高線利用の場合も同様となる(八王子は次駅の北八王子までが3.1kmあるため180円)。さらに八王子近辺の駅から青梅線(拝島以遠)・五日市線の駅へ行く場合、八高線利用の方が近くかつ電車特定区間内のみを回る立川経由より安い場合は幹線の運賃が適用される(八高線と青梅線または五日市線がそれぞれ10kmに満たない場合は地方交通線の運賃が適用される)。
- 拝島駅~箱根ヶ崎駅間で複線化の計画があり、用地買収が進められている。このため、同区間には複線化のための用地があり、フェンスで覆われており、番号も用地ごとに振っている。同時に箱根ヶ崎駅~金子駅間に車両基地を設置する計画があるが、こちらも用地買収が進められている。
- 八王子駅~高麗川駅間は夏と冬の期間限定でドアの開閉をボタン式に設定していたが、2006年12月1日から年間を通してドアの開閉がボタン式に変更された。これに伴い、北八王子駅・小宮駅・東福生駅・金子駅・東飯能駅(後に拝島駅・箱根ヶ崎駅・高麗川駅)では接近放送が更新され、「ボタンを押してご乗車下さい」の案内放送が流れるようになった(中央快速線へ直通運転する201系にはドア開閉ボタンが設置されていないが、201系が到着する際にも「ボタンを押してご乗車下さい」の案内放送は流れる)。
- 2005年9月4日から平日朝の高麗川発東京行に女性専用車が導入されたが、従来の201系6+4両編成(H編成)のうちの4両編成が東京方に連結され、八高線に東京方の4両が入線していたため。E233系では4両編成が逆の立川・高尾方に連結と変更されたため、八高線内での女性専用車扱いは2007年3月16日をもって終了した。
またこの措置は、4両編成で運行する区間にまるまる1両を女性専用車とすると、残り3両の車両との乗車バランスが著しく不均衡となるためにとられた策であるとも言えよう。