吾妻線
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吾妻線(あがつません)は、群馬県渋川市にある渋川駅から群馬県吾妻郡嬬恋村にある大前駅を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(地方交通線)である。
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[編集] 路線データ
[編集] 沿線
利根川支流の吾妻川に沿って西進する。沿線の見どころはなんといっても温泉。天下の名湯草津温泉はもちろんのこと、四万温泉・沢渡温泉・川原湯温泉・尻焼温泉と野趣豊かな温泉が目白押しで、浅間山と草津白根山にはさまれた渓谷美も格別である。全線単線のため距離のわりには乗車時間がかかる。また沿線の環境から大雨が降るとすぐに運転規制がかかり、バス・タクシーによる代行輸送となる。
[編集] 運行形態
渋川駅始発・終着の列車は設定されておらず、全列車が上越線高崎方面に直通する。大前駅まで運行されるのは普通列車の1日5往復のみで、他は万座・鹿沢口駅か長野原草津口駅で折り返しとなり、1~3時間に1本の割合で普通列車が運行されている。また上野駅~万座・鹿沢口駅間に特急「草津」が1日3往復運行されている。
[編集] 使用車両
[編集] 過去の使用車両
[編集] 歴史
吾妻郡六合村にあった群馬鉄山からの鉄鉱石の輸送のための路線として1945年、渋川~長野原(現長野原草津口駅)間が長野原線として開業。長野原から群馬鉄山(太子(おおし))までは、日本鋼管の専用線が敷設された。開業当初は貨物専用であったが、1946年までに渋川~長野原間の旅客営業を順次開始した。
なお、渋川から中之条までは吾妻温泉馬車鉄道が1912年に開業しており、同線はその後吾妻軌道と社名を改めて1920年には路面電車となり、そして群馬電力・東京電力(現在の東京電力とは別)・東京電燈と経営者が変わりながらも1933年まで営業を行っていた。吾妻線のルートは、規格は普通鉄道なので曲線は少ないながらも、これにほぼ並行する形となっている。
群馬鉄山専用線(長野原~太子間)は、1952年に国鉄に移管され、1954年に旅客営業を開始した。1963年に群馬鉄山が閉山すると1966年に貨物営業を廃止、1967年の電化にも取り残され、1970年に休止。翌年に廃止された。
今でも長野原草津口駅付近の車窓から、廃止された太子支線の鉄橋が見られるほか、旧太子駅跡には小さな公園として花壇が整備され、当時のトイレも残され、地元の人により管理されている。太子駅跡には、長野原草津口駅から六合村方面花敷温泉行きのJRバスで行くことができる。
長野原からは、嬬恋線として嬬恋までの予定線が1953年に鉄道敷設法別表(第54号の2)に加えられ、1971年3月7日、長野原~大前までが延長開業したと同時に、線区名も吾妻線に改称された。1961年には第54号の3として嬬恋から飯山線豊野に至る予定線が追加されたが、こちらは未着工に終わった。大前~豊野間の建設を断念した理由として、当時の国鉄の財政力が弱まっていたこともあるが、調査により、大前以西の嬬恋村内の地熱が高く(浅間山の影響といわれる)、長大トンネルを掘削して列車を通過させるのは危険との判断もあったとされる。
- 1945年1月2日 【開業】長野原線 渋川~長野原(42.4km) (貨物営業のみ。日本鋼管群馬鉄山専用線 長野原~太子間も同時開業) 【駅新設】金島(信号場)、中之条(信号場)、岩島(信号場)、(貨)長野原
- 1945年8月5日 【旅客営業開始】渋川~中之条(19.8km) 【駅新設】(貨)群馬原町 【信号場→駅】金島、中之条、(貨)岩島
- 1945年11月20日 【旅客営業開始】中之条~岩島(10.7km) 【駅新設】小野上、市城 【貨物駅→一般駅】群馬原町、岩島
- 1946年4月20日 【旅客営業開始】岩島~長野原(11.9km) 【駅新設】郷原、川原湯 【貨物駅→一般駅】長野原
- 1952年10月1日 【開業】長野原~太子(5.7km) (貨物営業のみ。日本鋼管専用線を移管) 【駅新設】(貨)太子
- 1954年6月21日 【旅客営業開始】長野原~太子(5.7km) 【貨物駅→一般駅】太子 【改キロ】川原湯~長野原(-0.1km)
- 1959年2月10日 【駅新設】祖母島
- 1959年11月10日 【駅新設】矢倉
- 1966年10月1日 【貨物営業廃止】長野原~太子(-5.7km)
- 1967年6月10日 【電化】渋川~長野原
- 1970年11月1日 【休止】長野原~太子(-5.7km) 【駅休止】太子
- 1971年3月7日 【延伸開業】長野原~大前(13.3km)(羽根尾~大前8.9kmは旅客営業のみ。全線電化) 【線名改称】長野原線→吾妻線 【区間分離】渋川~大前、長野原~太子 【駅新設】群馬大津、羽根尾、袋倉、万座・鹿沢口、大前
- 1971年5月1日 【廃止】長野原~太子(-5.7km) 【駅廃止】太子
- 1982年4月1日 【貨物営業廃止】渋川~羽根尾(-46.7km)
- 1987年4月1日 【承継】東日本旅客鉄道
- 1991年12月1日 【駅名改称】川原湯→川原湯温泉、長野原→長野原草津口
- 1992年3月14日 【駅新設】小野上温泉
[編集] その他
岩島駅~長野原草津口駅間は、八ッ場ダムの建設により水没するため、線路の付け替えが予定されている。日本一短いトンネルとして知られる樽沢トンネル(全長7.2m)は、水没区域外に位置しており、水没は免れるものの、新線付け替えにともない用途廃止となるため、一部の人々は、旧線部分を何とか活用できないかと思案中といわれている。川原湯温泉駅は温泉街と同様に南側の高台へ移転し、新川原湯温泉駅(仮称)となる予定である。
[編集] 駅一覧
路線名 | 駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
上越線 | 高崎駅 | 21.1 | 東日本旅客鉄道:上越新幹線・北陸新幹線(長野新幹線)・高崎線・湘南新宿ライン・信越本線・両毛線*・八高線* 上信電鉄:上信線 |
群馬県 | 高崎市 |
高崎問屋町駅 | 18.3 | ||||
井野駅 | 17.1 | ||||
新前橋駅 | 13.8 | 東日本旅客鉄道:両毛線(高崎駅まで直通) | 前橋市 | ||
群馬総社駅 | 9.0 | ||||
八木原駅 | 3.4 | 渋川市 | |||
渋川駅 | 0.0 | 東日本旅客鉄道:上越線(吾妻線は高崎駅まで直通) | |||
吾妻線 | |||||
金島駅 | 5.5 | ||||
祖母島駅 | 7.7 | ||||
小野上駅 | 11.9 | ||||
小野上温泉駅 | 13.7 | ||||
市城駅 | 16.4 | 吾妻郡中之条町 | |||
中之条駅 | 19.8 | ||||
群馬原町駅 | 21.9 | 吾妻郡東吾妻町 | |||
郷原駅 | 26.3 | ||||
矢倉駅 | 28.0 | ||||
岩島駅 | 30.5 | ||||
川原湯温泉駅 | 36.4 | 吾妻郡長野原町 | |||
長野原草津口駅 | 42.3 | ||||
群馬大津駅 | 44.5 | ||||
羽根尾駅 | 46.7 | ||||
袋倉駅 | 49.6 | 吾妻郡嬬恋村 | |||
万座・鹿沢口駅 | 52.5 | ||||
大前駅 | 55.6 |
- 接続路線の*印:線路名称上(戸籍上)はその駅を起終点とあるいは経由する路線ではないが、運行上はその駅を始発・終着駅としている路線。
[編集] 廃止区間
長野原駅 - 太子駅
- 駅名はこの区間廃止時点のもの。