JR東日本107系電車
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JR東日本107系電車 | |
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107系0番台(2007年3月13日、日光線日光駅) | |
起動加速度 | 2.0km/h/s |
営業最高速度 | 100km/h |
設計最高速度 | 100km/h |
減速度 | 3.5km/h/s(常用最大)
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編成定員 | 座席48・立席88(クモハ107形) |
全長 | 20,000mm |
全幅 | 2,832mm |
全高 | 3,935mm |
編成重量 | 37.2t(クモハ107形) |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
編成出力 | 480kW(1M1T) |
駆動装置 | 中空軸平行カルダン駆動方式 |
制御装置 | 抵抗制御 |
ブレーキ方式 | 発電ブレーキ,電磁直通ブレーキ,抑速ブレーキ,ハンドブレーキ |
保安装置 | ATS-SN,ATS-P |
107系電車(107けいでんしゃ)は、1988年(昭和63年)から1991年(平成3年)にかけて製造された東日本旅客鉄道(JR東日本)の直流通勤形電車である。
目次 |
[編集] 製造の経緯
1980年代末ごろ、日光線や両毛線といった関東北部の支線区の普通列車には、急行列車の廃止によって転用された165系急行形電車が多く使われていた。しかし、新製後20年以上を経て老朽化が進んでいたうえに、デッキ付き片側2扉という車体構造が大きなネックであった。特に朝夕のラッシュ時には乗客をさばききれないばかりか、3両編成が最低単位であることで、日中の閑散時には輸送力過剰となっていた。このような非効率な状況を打破するため、国鉄分割民営化によって発足してまもないJR東日本に望まれたのは、時間帯ごとの需要に柔軟に対応できる車両の開発であった。
そこで誕生したのが107系である。クモハ107形(Mc)とクハ106形(Tc')の2両編成を基本とすることで、2両、4両、6両と需要に応じて輸送力を調整することができる。また、製造コストの削減を図るため、165系の廃車から発生した主電動機、台車、補助電源装置、ブレーキ制御装置、空気圧縮機、冷房装置など主要機器を再用したほか、車体製作技術の維持向上を兼ね、当時の大宮工場、大井工場、大船工場、新津車両所、長野工場など自社工場での製造となったことも特筆される。165系の改造ではなく、純然たる新車扱いのため、同系列との車籍上のつながりはない。
[編集] 構造
[編集] 車体・接客設備
車体形状は、日本国有鉄道(国鉄)が1981年に新製した105系0番台に準じており、20m級の普通鋼製車体に半自動式の両開き扉を片側3か所に設置している。将来のワンマン運転を考慮して客用扉は105系に比べてやや車端部に寄せられているが、2007年時点でワンマン運転対応改造は実施されていない。客室側窓は、下降式の1枚窓を扉間に2枚と、戸袋窓を設置している。1989年製の100番台2次車からは戸袋窓を廃したうえで下降窓を3枚とし、719系に類似した窓割りとなった。
前面も105系に準じた貫通型であるが、前照灯・尾灯の配置が垂直方向から水平方向に変わり、印象が異なる。排障器(スカート)は105系とは違って新製時から装着しており、電気連結器部分を避けるかたちで左右に分割した形状となっている。
座席は、クハ106形のトイレに対向する部分を除いて全席ロングシートだが、長時間の乗車を考慮して座面の奥行きを確保し、自然に深い位置で座れる「ブリッジシート」と称する座席を採用した。この座席形状は、107系の製造とほぼ同時期に一部車両をロングシートへ改造した113系・115系でも見られたが、これらの系列では2006年までに多くの車両が廃車となったため、107系以外では現在ほとんど見ることができない。また、座席定員遵守のため、1人分の区画が明確になったバケットシートとなっている。
冷房装置は、クモハ107形に集中式のAU79A形を1基、クハ106形に分散式のAU13E形を6基搭載している。この関係で車内の天井構造が異なっており、クモハ107形は平天井のラインフロー吹出式、クハ106形は装置個別の直接吹き出し式としている。
集電装置(パンタグラフ)は、クモハ107形にPS16形を、0番台は冬期の架線霜取り用を加えて2基、100番台は後位に1基を設置している。
0番台・100番台ともに降雪地帯を走行するため、165系からの発生品である雪かき器(スノープラウ)も装備している。
[編集] 電気関係
主回路は、119系に準じた抑速発電ブレーキ付きの1M方式で、165系の主電動機(MT54)を再用したことから、主電動機は4個永久直列で、抵抗制御・弱め界磁制御としている。主制御器は勾配区間での運用に対応するため、力行・抑速時ともノッチ戻し制御が可能なCS54B形で、115系との併結も可能である。ただし、検査のための回送列車以外で併結した実績はない。
[編集] ブレーキ装置
ブレーキ装置はSELD応荷重装置付き発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキで、165系からの発生品に応荷重装置を付加して再用している。
[編集] 台車
台車は165系からの発生品を再用しており、クモハ107形はDT32(DT32B)形、クハ106形はTR69(TR69B)形である。DT32形については、車体重量の増加に伴って軸バネを新設計のものに交換し、歯車比を4.21から5.60に変更している。これにより起動加速度は向上したものの、高速域の性能が悪くなっている。
[編集] 番台概説
[編集] 0番台
1988年6月に日光線の165系置換用として2両編成8本(16両)が小山電車区(現・小山車両センター)に投入された。同線内の急勾配対策のため、クモハ107形の台車には空転防止用の砂撒装置を装備している。また、寒冷地で使用されることから、冬季における架線の霜取用にパンタグラフを前位に増設している。クモハ107-4~8の5両は新製時から霜取用パンタグラフを装備していたが、クモハ107-1~3についても1998年に追加搭載した。
車体の塗装は、公募によって決定した。アイボリー地に緑で日光線の頭文字「N」をあしらい、ワンポイントとして神橋をイメージした赤を前位幕板部に配したものである。
2007年3月現在、日光線のほかに東北本線(宇都宮線)小金井~宇都宮間でも運用されている。以前おこなわれていた宇都宮-黒磯間での運用はない。ただし、前記の通り車両数が少ないうえ、ほぼ全編成が使用されるため車両不足になりがちで、その場合は高崎車両センターの100番台が貸し出されたり、115系も運用に就くことがある。
[編集] 100番台
1988年から1990年にかけて2両編成19本(38両)が新前橋電車区(現・高崎車両センター)に投入された。上越線・吾妻線・両毛線・信越本線などの普通列車用である。耐雪ブレーキの装備、横軽(信越本線横川~軽井沢間・碓氷峠)通過対策が施されている点が0番台と異なる。従来、横軽対策車は重量の重い電動車を麓側に配置していたが、当系列では山側に配置されている。砂撒装置や霜取パンタグラフの装備はない。前述のように、1989年(平成元年)以降に製造された2次車(106~119)は、車体の窓割が変更されている。
車体塗色は、アイボリー地に緑とピンクの帯を窓下に通したものである。
2006年現在は、両毛線、上越線(高崎~水上間)、吾妻線(高崎~渋川~大前間)、信越本線(高崎~横川間)で運用されている。また、一部の両毛線の運用では小山から宇都宮線黒磯まで入線する。その場合、東北本線内では0番台と編成の向きが反転する。
0番台と100番台の併結は可能であり相互に貸し出すこともあるが、日光線へ100番台を貸し出す事例が多く、高崎エリアへの0番台の貸し出し事例はまれである。
[編集] 関連商品
Nゲージ鉄道模型としてマイクロエースおよびグリーンマックスから0番台・100番台のいずれも製品化されている。
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