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消防車 - Wikipedia

消防車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

消防車(しょうぼうしゃ)は、火災その他災害に際してその鎮圧や防御を行なう際に使用される特殊な装備を持つ自動車である。日本では、朱色に塗られた(道路運送車両法に基づく)特種用途自動車の一つで、用途の関係から、緊急自動車の一つに指定されている。

消防車には、各地の消防本部が保有するものと、消防団で保有するもの、化学工業系の企業、空港、石油化学コンビナートなど危険物保有施設に置かれる自衛消防組織自衛防災組織原子力防災組織が保有するものなどがある。変り種機関では、皇宮警察本部が消防業務を兼務しており、警察でありながら消防ポンプ車を保有する。

また、あらゆる事態に対応するためにエンジンを後方に積んだ車輌、キャビンが大きく前にせり出した特殊なシャシ (自動車)を持つ車輌、クレーン車をベースとする車輌など、特徴が強い車輌が多い。

消防車(大阪市消防局鶴見消防署)左から、はしご車と小型タンク車など
消防車(大阪市消防局鶴見消防署
左から、はしご車と小型タンク車など

目次

[編集] 消防車の表記について

日本では、消防法第26条に「消防車」と表記されている一方、消防庁告示の「消防力の基準」では「消防ポンプ自動車」となっている。(「消防自動車」という表記はない)。道路交通法によると緊急自動車の区分として「消防用自動車」という区分がある。救急車などをふくめての車両全体を「消防車両」という。

[編集] 種類

[編集] 消防ポンプ自動車・水槽つき消防ポンプ自動車

ポンプ式消防車いすゞ・フォワード  (名古屋市消防局港消防署東海橋出張所所属)
ポンプ式消防車
いすゞ・フォワード
(名古屋市消防局港消防署東海橋出張所所属)
ミニ消防車ダイハツ・ハイゼットグランカーゴ(船橋市消防局所属)
ミニ消防車
ダイハツ・ハイゼットグランカーゴ
船橋市消防局所属)

通常は消防車と言えば揚水・放水機能を持つポンプ車を指す。ホース、吸管、小型の3連はしご、ホースカー(一部のみ)等を装備する。消火活動は、消火栓や防火水槽に吸管をセットし、ポンプで水をくみ上げ、ホースから放水することが基本となる。地域によってはウインチ・救急キット(応急処置対応の医療器具や・除細動器)が装着されている車両もあり、火災以外の救助・救急事案等で、救急車や救助工作車が到着するまでに処置をとることが可能である。救急車より先にポンプ車が現場に到着するケースを想定している自治体も多い。(詳細は日本の救急車参照


主な型式区分

消防ポンプ自動車
  • ボンネット型
    • BS-I型
    • BD-I型
    • BD-II型

トヨタ・ランドクルーザー70、三菱・ジープ日産・パトロール等をベースとし以前は優秀な悪路走破性を求める為に主に山間部、地方で多く配備されていたが、ランドクルーザー70が消防車用シャーシを生産中止にした以降はお目にかかることは少なくなった。衰退した理由としてはトラックをベースとする車輌でも悪路走破性は十分であると判断されたからであろう。

  • CD-I型

いすゞ・エルフ三菱・キャンター日産・アトラス等3tトラックシャーシをベースとしたポンプ車。

  • CD-II型

4t以上のトラックシャーシをベースとしたポンプ車。

水槽つき消防ポンプ自動車

通常1500リットル以上の水槽を積載し、現場到着後すぐに放水が可能である。この放水活動を即消活動という。

  • I-A型
  • I-B型

4、5tクラスのトラックシャーシに1500L(1.5t)水槽を装備した型。

  • II型

最低でも5t~10tのトラックシャーシに2000L(2t)~8000L(8t)の水槽を装備した型。

消防団で主に使われる消防ポンプ自動車ももちろんこれと同じ分類のものである。また、通常、小型動力ポンプを積載し、自動車エンジンとは独立したエンジンをもつポンプを積むポンプ積載車は、区別する必要上「積載車」とよび自動車とは呼ばない慣例があるが、この分類である。

[編集] 化学消防ポンプ消防車

水による消火が不可能・危険な場合に化学消火薬剤噴霧・泡消火剤放射で消火する。主な形式は以下の通り。

  • I型・II型(軽化学車)
  • III・IV・V型(重化学車)
  • 大I型及び大II型(大型化学車)

軽化学車は少量危険物火災(例えばガソリン漏れや小規模の工場火災)、重化学車は化学工場火災、大I型大型化学車は石油コンビナート火災、大II型は航空機火災に対処する能力を有する。大I型化学車は、大型高所放水車、泡原液搬送車とともに、石油コンビナート火災対策の「3点セット」を構成する。大II型は、空港消防組織の充実等により、自治体消防組織で保有する例は、現在では千葉県成田市消防本部などに限られる。正式な規格ではないが、装甲化学車と呼ばれるものもある。大型化学車に鋼鉄製の装甲、銃眼付ウィンドウカバー等を艤装したもので、遠隔操作可能な泡放射砲を装備しているなど、爆発の恐れがあったりして火点への接近が極めて危険な石油コンビナート火災への対応を想定している。

  • ダブルキャブ車をベースとすることが多い。

[編集] はしご自動車各種

はしご式消防車(30メートル級)日産ディーゼル・ビッグサム(名古屋市消防局港消防署所属)
はしご式消防車(30メートル級)
日産ディーゼル・ビッグサム
(名古屋市消防局港消防署所属)
屈折はしご式消防自動車三菱ふそう・スーパーグレート(札幌市消防局中央消防署豊水出張所屈折はしご隊)
屈折はしご式消防自動車
三菱ふそう・スーパーグレート
(札幌市消防局中央消防署豊水出張所屈折はしご隊)
  • はしごつき消防自動車
  • はしごつき消防ポンプ自動車
  • 屈折はしごつき消防自動車
  • 屈折はしごつき消防ポンプ自動車

高所の消火及び救助に使用される。日本では最低10メートルから最大50メートル(規格地上高50.3メートル)の高さまで届くものもある。メーカーによってラインナップは異なる。更新時期は地域によって異なり、早い所では10年弱から遅いところでは20年超とバラバラである。長期にわたり使用するためメーカーにオーバーホール(大幅な分解修理・改造)を依頼している組織も少なくない。

はしごが長くなるにつれ車体が大きくなり、道が狭いところには小さなはしご車しか進入できない。市レベルの自治体では平均で30メートルから40メートルのものが普通に配備されている。また、高層ビル・マンションのある地域は40~50メートル級が、道の狭い地域や小規模のニュータウンを管轄する地域には10~20メートルのタイプが配備されている。

はしごの角度は仰角のみではなく、俯角、すなわち斜め下方向にはしごを伸ばす機能を有するものもあり、例えば水難事故等で、はしご車の部署した位置よりも低い位置に要救助者がいる場合に有効である。

はしご部分には、人を乗せる機構として、バスケットやリフターが設けられている。リフターは、はしご部分を上下するリフトであり、はしごを目的とする位置に一度セットすれば、連続的に消防隊員を送り込んだり、要救助者を救出することが出来る。バスケットは、はしご先端部につけられた籠であり、2~3人乗りが標準的である。消防隊員の搭乗や活動のしやすさ、要救助者の安心感はあるが、人員の乗り降りには、毎回、はしごを縮めて、はしご先端のバスケットを地上まで動かす必要があり、非効率な面もある。最近では、バスケットとリフターを併設するはしご車もある。

最近、先端屈折機構を有するはしご車がメーカー各社から発売された。はしごの先端部分、バスケットの手前数メートルの位置ではしごが屈折することにより、電線等の障害物を避けて、はしごを目的とする位置に接近させることができる。はしごの部分が、横から見て、「へ」の字型に変形すると考えるとイメージしやすい。

また、この他にはしごを屈折させる屈折はしご車(標準型、Σ型、先端屈折型)がある。

ダブルキャブ車をベースとすることが多い。

[編集] 救助工作車

詳細は救助工作車を参照
画像:Small ladder fire engine.JPG
はしご式消防車(15メートル級)
いすゞ・フォワード
稚内地区消防事務組合豊富支署所属
機動救助工作車(III型)三菱ふそう・ザ・グレート(横浜市消防局(撮影当時))
機動救助工作車(III型)
三菱ふそう・ザ・グレート
(横浜市消防局(撮影当時))

人命救助活動に使用される。交通事故などで車両に閉じ込められた人を助けることが多く、エアカッター、油圧式拡張機(スプレッダー、俗称ジョーズ)などを搭載している。クレーン・ウインチを装備していることが多い。III型を所有している自治体は緊急消防援助隊に登録しているケースが多い。 ダブルキャブ車をベースとすることが多い。

  • I型
人口や都市の規模が少ない町向けで、車体も小型である。現在、更新時にI型からII型へ切り替える自治体が多く、この車両を目にすることができる地域も限られてきた。
  • II型
現在、国内で多く普及しているタイプで、基本レベルの機材を積載することができる。地域によっては、ウェットスーツやボートを搭載して水難救助を目的としたものや機材入りのコンテナを牽引するものもある。
  • III型
1995年に発生した阪神・淡路大震災を機に定められた規格で、都道府県庁所在地政令指定都市中核市等の規模の大きい消防本部・組合などに導入されている。四輪駆動シャーシ・クレーン・発電式照明・ウインチをはじめ、その他ファイバースコープや毒ガス検知器をはじめとした高度な精密機械を搭載した機材を積んでいるタイプである。
  • IV型
III型と同じく同震災を機に製作されたもので、国が指定した4消防本部(東京消防庁大阪市消防局名古屋市消防局福岡市消防局)に2台1組ずつ配置されている。III型とは違い、災害現場への早期到着を考慮したため、悪路走破性はもとより、機動性を重視した。そのため、高度救助資機材を2台に分散して搭載している。クレーンは無く、ウインチが搭載され、大きさはI型ぐらいの小型車両である。また航空自衛隊C-130輸送機に積むことも可能である。ベースはトヨタ・メガクルーザーで、キャブはダイナのものを流用している。

[編集] 大型水槽車

大型水槽車 II型日産ディーゼル・ビッグサム(札幌市消防局厚別消防署厚別西出張所大型水槽隊)
大型水槽車 II型
日産ディーゼル・ビッグサム
(札幌市消防局厚別消防署厚別西出張所大型水槽隊)

大量の水をタンクに詰め消火栓等の水利が無い火災現場での支援を主目的にした車両。小型動力ポンプを搭載するため、本来の移動水利としての用途のみならず初期消火へも対応可能。 以前は水利が少ない地域での配備が殆んどだったが、阪神大震災を教訓に都市部での配備が急速に促進された。これは、非常時にタンクの水を飲料水として利用できるため(貯水タンク部分はステンレス製)で、そのような車両は給水車としての働きも兼ねられるよう運用されている。 タンクローリーのような赤いタンクを後方に搭載するものが一般的であるが、タンクが銀色の車両や灯油配達車の様な角型の水槽を搭載している車両もある。シングルキャブ車をベースとすることが多い。 なお、搭載するタンクの水量によって2種類の補助規格が存在する。

  • I型

5~8tの水を積載。中型シャシーを用いる場合が多く、狭隘路などの多い地域で有効。

  • II型

10tの水を積載。一般的な大型水槽車。3軸10tシャシーが比較的よく用いられる。

[編集] 指揮車(指令車)

指揮車トヨタ・グランビア(横浜市消防局(撮影当時))
指揮車
トヨタ・グランビア
(横浜市消防局(撮影当時))

指揮車は災害活動の現場で指揮を執る「大隊長」「指揮隊」が搭乗する車両で、各消防署の「指揮隊」によって運用されている。関係機関や現場で活動中の各隊と情報交換ができるように、電話ファクシミリ・使用している全ての周波数を送受信できる無線機などの通信機器、住宅地図帳、作戦図板になる折り畳み式テーブルを搭載している。大型の車両では“移動通信指令室”と言えるような物もある(東京消防庁の本部指揮隊車 無線指令卓が実際に一つ搭載されている)。また、車両によっては大型のLEDボードや幕、サイドオーニング(収納式テント)を装備している。活動中は「現場指揮本部」の幟を立てて目印とする。1BOXタイプの車両については、東京消防庁では「救助先行車」と呼称していた。

  • 指揮車に青色灯を装備する車両が全国的に増加してきた。これは、本部によっては青色灯を現場指揮本部の目印として扱う事による。活動時にはその点灯によって、本部の設置場所・車両がより明確になる事になる。伸縮式のポールに青色灯を装備した車両も見受けられる(写真)。この場合被視認性はさらに向上する。
  • 平成17年、消防庁の消防力整備指針により、消防本部・消防署の指揮隊・指揮車の配備基準が定められた。これにより、従来は広報車、人員搬送車などと混用していた本部も多く存在したが、車両更新を機に新たに指揮車を配備する本部が現れ始めた。これにより、全国的に指揮車の配備が増加すると考えられる。
  • 出動と同時に現場の詳細、出動隊の状態など多くの情報を取り入れる指揮隊は、「原因調査車」の行う役割と近いものがある。このため、本部によっては「原因調査車」と混同している事がある。そのような車両は、スモークガラス、調査資機材などを装備している。ワンボックスカーが多い。

[編集] 司令車

上記「指令車」とは違い、消防長の出動(公務)用車両。主に大災害や視察時などに重役が現場に向かう時に運用される。英語で「Chief car」と呼ばれる車両。車両はセダン型の上級、高級車を用いる事が多いが、本部によってはステーションワゴン型、SUV型なども存在する。赤色灯を装備した朱色の緊急走行ができる車両と、黒塗りの公用車然とした車両に大別できる。一部には通常の塗装のまま、灯火などの緊急車両装備を装備した覆面パトカーのような車両もある。もちろん消防長が直々に運転するわけではなく、機関員がいると思われる。

[編集] 二輪消防車

消防機動二輪隊(横浜市消防局(撮影当時))
消防機動二輪隊(横浜市消防局(撮影当時))

戦後の消防自動二輪は、1960年代に導入された大阪市消防局の赤バイが先駆けとなったが、導入当時は高度経済成長期であった上に自動車の登録が増加、隊員が交通事故などの被害に遭うなどの理由で十数年後に大阪市は赤バイ隊を廃止した。(現在の大阪市の都市計画などを見ても、今後は復活の見通しはないように見られる)

1997年1月、千葉県八千代市消防本部に2台一組で行動する「消防機動二輪部隊(通称ファイヤーバスターズ)」が配備された。250ccのネイキッドオンロード車(HONDAナイトホーク250)を使用し、水タンクとフォグガン(水を霧状にして火元に叩きつけて消す)を装備する。この「消防二輪」は大阪市が廃止して以来の復活である。

1997年12月、東京消防庁はオフロード車(YAMAHAセロー225ベース)に消防資機材を搭載した消防活動二輪隊『クイックアタッカー』の運用を開始した。この部隊は2台1組となり、1号車には可搬消火器具『インパルス』を、2号車には、油圧式救助器具『ユニツール』を装備している。震災時の初動を任務とするほか、渋滞する高速道路での交通事故救助活動、山岳救助等に活躍している。なお、1969年~76年にかけて東京消防庁にも赤バイ隊が存在しており、火災現場に一番乗りした赤バイ隊員が要救助者を救助したことがあったが結局廃止に至った経緯がある。

2004年11月、千葉県四街道市にタンク装備の“放水が出来る二輪ポンプ車”が初めて配置された。(日本機械工業製、車名:ミストドラゴン、250ccスクーターにサイレン、水(60L)、ポンプを搭載)

他にも、横浜市安全管理局の消火装備を有しない震災時情報収集部隊『消防機動二輪隊』や、東京都東久留米市消防本部や群馬県太田市消防本部の救急バイク(HONDA CB400SUPER FOUR)など、近年では二輪車を活用する消防機関も増えてきた。

[編集] 特殊災害対策車

化学物質漏洩災害等に対応する消防車。毒劇物防護服や各種分析機器、除染機器を装備する。1995年に発生した地下鉄サリン事件でオレンジ色の陽圧式防護服(内部から膨らます頭から足まで覆われたオーバーオールスーツ。手足のあるダルマのようなスタイルになる)を着装し検知活動にあたった東京消防庁の化学機動中隊を構成する特殊化学車が一例である。地下鉄サリン事件以降、各地の消防機関に配備された。また、東京消防庁第3消防方面本部消防救助機動部隊(いわゆるハイパー・レスキュー)は、NBCテロ対策の特殊部隊として編成されており、大型の特殊化学車が配備されている。

[編集] 支援車

長期の災害現場で消防隊員への後方支援を目的とした車両。阪神・淡路大震災を契機に、消防の後方支援体制の充実を図るために、大都市消防を中心に配備されてきた。これらや、従来から存在した支援車と同様の任務を担う車両は、その本部独自の装備・名称であった。しかし、緊急消防援助隊の設置後、全国各地の消防本部の度重なる広域派遣によってその重要性が高まり、2006年になってI型とII型に分離された。これで、支援車という新たな規格が誕生し、緊急消防援助隊の明確化と共に、広域派遣の際の消防体制の充実化がなされたといえる。

  • I型

握り飯やカップ麺レトルト食品程度の調理が出来るキッチンシステム、シャワートイレなどを装備する消防のキャンピングカー。テーブル・椅子・エアコンなどの基本的な設備と共に、様々な災害に対応できる資機材を搭載しているため、II型に比べ充実している。その分購入・運用費など負担も大きく、大~中規模消防本部が保有するのが一般的である。また、そのような本部でも支援車としての出動は少ない。そのため、救助隊の予備車や水難救助車として運用する本部もあり、支援車という任務に囚われない、車両を生かした柔軟な運用がされている。

  • II型

後述の資材搬送車の中でもコンテナ式や有蓋車型がこれに当たる。器具や補給物資を輸送する。複雑且つ巨大なI型と異なり安価で済み、資機材の搬送能力も高い。このような点から、小規模の消防本部にも無理なく配備できる支援車規格であるといえる。

  • これらは補助対象として定められた支援車規格であり、実際は装備の差異、配備時期などで規格外の車両が多数である。トラックの荷台に簡易的なキャビンを設置したものや、バスを改造したものなど、各地に様々な支援車が存在する。
  • 指揮車と同様に青色灯を装備する車両があるが、これも同様の理由による。広域派遣時には、支援車を現場指揮本部として運用する事も想定されているためで、そのような車両は屋根に装備した指揮台を活用することになる。現に広域派遣時や訓練などでは、支援車が異なる都道府県の大量の消防部隊を率いて活動する姿が見られる。

[編集] その他

排除工作車と耐熱救助車(横浜市消防局(撮影当時))
排除工作車と耐熱救助車
(横浜市消防局(撮影当時))

活動支援に使用される各種工作支援車。

  • 排煙高発泡車 - 地下街火災などに対応。煙を吸出す蛇腹チューブ付き排気排煙機を搭載し、また泡消火剤を送り込む機能のある車両。
  • 工作車 - 各本部で呼び名が異なるが、クレーンを装備し(移動式クレーンである)、消火活動などの邪魔になる重量物の排除や震災時の道路啓開などを行う車両というのが一般的な任務である。これらを単体で装備している車両は少なく、たいていは2つ以上の装備を備えている。中にはフロントドーザーを装備した車両も見られる。
  • 破壊工作車 - クローラタイヤ駆動方式のショベルカーベースが多い。ショベルバケットではなくグラップル(破壊用マジックハンド)を装備。「排除工作車」等と呼称する消防機関もある。
    • 北海道旭川市消防本部にあるありま号は、隊員の消火活動中殉職を教訓に導入された。車名の由来は殉職者を偲び、姓を頂いたもの。
  • 照明電源車 - 夜間の災害時、現場の明かりを確保する車両である。大型発電機と大きいものでは10基以上のハロゲンライトがついた伸縮式照明塔を搭載。明るさによっては数百メートル先でも新聞を読むことが可能である。また、この発電能力を生かして、停電時の病院などへの電源供給も考えられている。昔の車両は大型で、かつ照明塔が剥き出しの武骨なスタイルだったが、現在はシャッターなどで救急車のようにスマートに艤装された車両も多く、車両の大きさも小型化してるといえる。
  • ボンベ搬送車・空気充填車 - 広義では、火災活動時に消火隊員のボンベの空気(酸素ではない)を補給する車両である。しかし、前者が空気ボンベの搬送に専従するのに対し、後者は現場でも空のタンクに空気を詰める事が可能である。ボンベ搬送車はコンテナ型などがあり、ボンベを効率良く大量に運べるような造りになっている。空気充填車はコンプレッサーを搭載しているために充填活動が可能であるが、その分ボンベの搬送数は少なくなる。これらは主に大都市消防に配備されているが、それでも出動頻度は他車と比べると高くはない。そのため、他の特殊車両の機能を併載した車両も見受けられる。なお、資機材搬送車にもボンベを僅かながら搭載した車両が存在するが、そのような車両はあくまで資機材搬送車である。
広報車トヨタ エスティマ エミーナ(札幌市消防局本部)
広報車
トヨタ エスティマ エミーナ
(札幌市消防局本部)
  • 広報車 - 広報車は住民に災害時の対応などを報告・告知をする車両である。また、大規模建築物の防災設備を監査する査察(立入検査)業務や、署員の移動にも使われる事も多く、消防車両の中では汎用的な任務に就く事が比較的多い車両である。この他にも、資機材搬送車のようなボンベの運搬、トリアージ時の軽傷者の搬送、後述の原因調査車としての任務や、広域派遣時などでの、人員、資機材搬送など、その役割は本部によって大きく異なり多岐に及ぶ。このような点から、消防団が所有している場合も多い。多くは市販車をベースとしているがセダンやライトバン、SUVなど本部と重視する用途によって形は様々である。消防車両特有の朱色ではなく市販車のワインレッド系塗色である車両も少なくない。塗装に関係なく、緊急用装備を搭載している車両とそうでない車両に分類されるが、広報車の名が示す通り、スピーカーと車載アンプを有しているのが一般的だ。宝くじ号としての寄贈車も存在する。
  • 耐熱装甲型救助車 - 横浜市安全管理局北九州市消防局にのみ配備されている車両。その名の通り、耐熱板や自衛噴霧装置、コンバットタイヤなどを装備。危険な災害現場における消防・突破救出活動を目的としている。2000年有珠山噴火の際、緊急消防援助隊として派遣された横浜市消防局(当時)の耐熱救助車が、警戒区域内に取り残された男性を救出した活動事例が有名。ベースはドイツ、ヘンシェル・ヴェアテクニク社製のTM170装甲車である。
資器材搬送車日野・レンジャー(札幌市消防局中央消防署桑園出張所搬送隊)
資器材搬送車
日野・レンジャー
(札幌市消防局中央消防署桑園出張所搬送隊)
  • 資機材搬送車 - その名の通り機材を搬送する車両。その機材とは、救助工作車などに搭載される装備からその車両独自の装備まで様々である。通常のトラックに赤色灯・サイレンを付けている型が多いが、大都市の消防本部を中心にコンテナ換装式の型も増えている。これにより、予め準備された多彩なコンテナ・荷台を災害によって使い分ける事ができる。東京消防庁に配備されている資機材搬送車を例に取ると、一般救助型・化学火災型・林野火災型・平ボディ型の4種類を使い分けている。現在では、支援車II型規格が制定されており、その車両規格はコンテナ換装式の資機材搬送車と近いものであるが、装備品は異なる。また札幌市消防局では大型トレーラー型(Σシステムを称している)を使用している。
  • 人員輸送車、災害弱者搬送車 - 大規模な災害が発生した際など、多数の傷病者を搬送する場合や、隊員を搬送する際に使われる車両。活動現場での隊員の簡易的な休憩場所としても利用される。一般的には市販のマイクロバスが多いが、大都市消防本部では中、大型のバスも存在する。一部の車両は車体塗装の変更や赤色灯・サイレン等の緊急走行用の装備をしている。緊急消防援助隊として派遣されることもあるため、当初から広域派遣を想定した四輪駆動の車両も見受けられる。
  • 原因調査車 - 文字通り、出火原因を調べる為の“動く別室”。建物所有者から事情聴取を行なったり、原因調査官が現場で会議したりする場合に使用される。車両後部は関係者からの事情聴取にも用いられるよう、プライバシーガラスやスモークフィルムの処理が施されている場合が多く、車内には座席の他に原因調査のための資機材が積載されている。ワンボックス型の車両が一般的だが、東京消防庁本庁で保有している車両は反転式警光灯を装備したマイクロバスである(地下駐車場に常置されており、通常型警光灯では梁に擦ってしまう)。
  • 補給車給食車 - 消防活動が長時間にわたって行われる場合や、広域災害派遣などで自炊、炊き出しの必要性に迫られた時に、簡易的な食事を消防隊員に提供する車両。役割としては支援車が行うものと類似しているが、大きく異なるのが車両が給食活動専用に造られている点である。しかし作られるものはあくまでおにぎりカップ麺などで、簡易的な食事を多く作るというものである。なお、似たような車両に、機動隊のキッチンカーがある。
  • 水難救助車 - 主に水難事故に出動し、救助活動を行う車両。ボート船外機ウェットスーツ等の各種水難救助用機材を搭載する。一般的には、ウェットスーツや装備品の着装が容易にできるよう考慮されている事が望ましく、隊員が立ったまま乗車できる車両も多い。冬季活動時の隊員支援や汚染物除去を目的としてシャワーを装備した車両も存在する。
  • 山岳救助車 - 主に山岳事故に出動する車両。バスケットストレッチャー、登降器、登山用のヘルメット、靴、カラビナなどの各種山岳救助用資機材を搭載している。山間部での悪路走破性を考慮し、四輪駆動車が多く用いられている。
  • 林野工作車 - 林野火災に対応した車両。林野火災の持つ特殊性を考慮し、専用の車両・資機材で対応する。これについては、水利が無いことを考慮したジェットシューターや、延焼拡大を防止するためのチェンソーなどが当てはまる。また、林野火災の発生場所上、悪路走破性の高さは重要で、四輪駆動の車両が多く用いられているのも大きな特徴である。車両はトラック型が一般的だが、前述の理由から高床・四輪駆動が選ばれている場合が多い。
  • ホース延長車 - ポンプ車等に搭載されている「ホースカー」を大型化させたものに当たる車両。阪神・淡路大震災の際に上水道の切断により消火栓が使えず消火活動に大きな支障をきたし火災を食い止められなかった教訓から開発された。総延長2000メートルにも及ぶ送水用の大口径(直径15cm)ホースを分割搭載しており、後述の送水車などと連携して湖沼、河川等の規模が大きい水利から現場へ送水作業を行う。ちなみに配備されている消防本部によってはコンテナ式とし資材搬送車として運用するケースもある。
  • 大容量送水車 - 通常型ポンプ車を大幅に超える揚水・送水力のポンプを装備した車両。前述のホース延長車と連携して送水作業を行う。消防本部によっては運用上強力なポンプを装備している大型化学消防車にこの任務を請負わせホース延長車だけ新規購入するケースもある。

上記2種は、東京消防庁など大規模消防本部に配備されていることが多い。

[編集] 過去に存在していた特殊な消防車両

  • 水陸両用車 - 文字通り、陸上では車両、水上ではモーターボートになる車両である。初代の車両は、横浜市消防局に配備されていた。これは本当の船とも思える舟形の何ともユーモラスな造形の車両で、胴体下部が赤色、胴体上部(窓の周囲)が白であった。消防で最後まで水陸両用車を運用していたのが、千葉県市川市消防局であった。ここに配備されていた車両は前述の横浜市消防局とは異なり、ドイツRMA製アンフィレンジャー2000を採用していた。アンフィレンジャーは、1990年前後に少数が官公庁向けに輸入・販売された車両で、市川市消防局は1991年に同車を導入した。ちなみにこの車両は鎌倉市消防本部にも導入されていた。ボートをトレーラーで引いて行く必要がない事や、市川市が江戸川下流と東京湾に面し、水難救助の重要性が高いことも導入の理由であった。一般車と同様に道路を走り、そのまま河川敷の浅瀬から進水出来る同車は、主に川での水難救助を主任務としていた。車内には、当時最新の水難救助資機材を搭載してあり、その珍しいスタイルから子供向けの本に載ったこともある。愛称も「しぶき号」と命名され、車体側面後部、後部にそれが書かれていた。しかし、導入から12年が経過した2003年、老朽化の進行や、メンテナンスコストの上昇等もあり同車は引退した。なお、他官公庁所有の車両も、特殊な輸入車であり、なおかつ生産中止車という事で維持には苦しんでいるようで、現在は消防以外では警視庁機動隊の車両を含め、全国に数台が残るのみと思われる。なお、進水した際には船舶扱いとなるため、小型船舶操縦士免許が必要である。
  • レスキュータワー車 - 垂直に伸びる四角錐鉄塔型梯子(これが梯子と呼べるかは議論の余地があるが)を装備した車両。通常型はしご車が活動出来ない狭隘路での低中層建築物救出に使用されていた。最上部にはステージとはしご車同様のバスケットがあり、救助者は救助袋や別の梯子を使って下へ降りる。この最上部は指揮台としても利用が可能であった。この名を持つ消防車両で最も有名な車両が、東京消防庁丸の内消防署有楽町出張所の車両であろう。同車は1974年に導入し、完成間もない有楽町出張所に配備され1988年まで運用されていた。やはり、その特異な姿が注目され小児用の本などにも記載されているためか、まったく馴染みのない名前でもないようである。現在、模型ではあるが消防博物館でその姿を見ることができる。さらに1982年には、松山市消防局も西消防署に同名の車両を配備している。こちらはポンプを搭載し、前出の車両よりやや大型であった。当時、バスケットなどを搭載した空中作業能力の高い車両の配備が進んでいなかった為、このようなエポックメイキングな車両が登場したと考えられる。現在では、はしご車へのリフターやバスケットの搭載が一般化し、またΣ型アームの屈折はしごつき消防自動車をはじめ、多くの高所活動車両の障害物回避能力も当時より遥かに発展している。よって、同様またはそれ以上の能力を持つ車両で代替可能なため、この装備、名称を持つ車両は確認されていない。しかし近年、大型バスケットを装備した12~15mクラスの高所作業車相模原市消防局奈良市消防局神戸市消防局、加古川市消防本部、釧路市消防本部に配備されており、レスキュータワー車の亜種とも考えられる。画像リンク

[編集] 消防車共通の装備

緊急自動車としての赤色警告灯(パトライトの回転灯、スタンレーの前方集中型点滅灯、ウィレンやフェデラルシグナル(共に米)のストロボ灯)、サイレン、拡声器や、消火器を装備する。

[編集] 車体塗色

  • 原則として赤色、法令上の呼称では朱色である。地域によっては白色の帯などを張っている。
  • 名古屋市消防局や松本広域消防局(本部:長野県松本市)が最近導入している蛍光の赤色(スカーレッド)がある。名古屋市の場合は市内の自動車の交通量が多く、車両同士の事故防止を目的とした事情などからこの塗色が採用されている。

[編集] 主な消防車メーカー

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク


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