のび太の日本誕生
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『のび太の日本誕生』(のびたのにっぽんたんじょう)は、月刊コロコロコミック1988年10月号から1989年3月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の作品。および、この原作を元に1989年3月11日に公開された映画作品。大長編ドラえもんシリーズ第9作、映画ドラえもんとしては第10作。
映画監督は芝山努。配給収入20億2000万円、観客動員数420万人。同時上映は『ドラミちゃん・ミニドラSOS!!!』。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] 概説
興業記録は同シリーズでは原作者藤子・F・不二雄存命時には破られることはなかった。没後、配給収入は1998年公開の『のび太の南海大冒険』に破られる事になるが、観客動員数は同作品に破られておらず、現在でも大長編史上最大の観客動員数となっている。
本作の人気からか後に「ドラえもん ギガゾンビの逆襲」という続篇的内容のゲームが発売されている。
[編集] 舞台
[編集] ゲストキャラ
- ククル (声優:松岡洋子)
- ヒカリ族の少年。時空乱流(時空間の乱れ)に巻き込まれて現代の日本に転移したため、辛くもただ1人、クラヤミ族の襲撃を免れた。仲間たちを救うべく、ドラゾンビことドラえもんの力を借りてクラヤミ族に立ち向かう。将来はウンバホ(「日の国の勇者」の意)と改名し、ヒカリ族の族長となる。なお、『チンプイ』の春日エリは、彼の子孫である。
- タジカラ (声優:仲木隆司)
- ククルの父。クラヤミ族に立ち向かうなどかなり勇敢である。
- タラネ (声優:玉川紗己子)
- ククルの母。
- 長老 (声優:北村弘一)
- ヒカリ族の長老。かなりの年寄りで当時の人間にしてはとても長生きであると思われる。
- ヒカリ族
- 7万年前、現在の中国上海市奉賢区付近に住んでいた原始人部族。ドラえもんたちの手助けにより、未開の地である日本に移住する。ドラえもんが変装したゾンビを神様と思って崇拝しており、ウタベ(声優:二又一成)はドラゾンビのために歌も作っている。日本列島に最初に定着したホモサピエンスで、現在の日本人の祖先であると思われる。因みに劇場公開された当時は藤村新一による旧石器捏造事件が発覚する前で、原作漫画には「ヒカリ族以前にも絶滅した人類=原人がいた」との記述があったが、日本に人がいた確実な証拠は劇中の通り3万年前までしか遡らないようである。
- ギガゾンビ (声優:永井一郎)
- 嵐と雷を操る不死身の精霊王。実は23世紀の人間で、クラヤミ族を操り、7万年前の世界の支配を企む時間犯罪者。
- ツチダマ (声優:高島雅羅)
- ギガゾンビの手下で、言葉を話す土偶(形状は遮光器土偶)。形状記憶セラミック製で再生能力を持っており、粉々に壊しても復活する。空も飛べる。岩をも吹き飛ばす衝撃波を発生させることができる。時折「ギーガー」という奇怪な鳴き声をあげる。ドラえもんの秘密道具瞬間接着銃により身動きが取れなくなり、最後にはギガゾンビに見捨てられて瓦礫の下敷きになってしまう。ドラえもんに片手を奪われる。クラヤミ族を操っていた。
- クラヤミ族
- 7万年前の中国に住む、猿人に近い種族。ヒカリ族に比べると身体能力は高いようだが知能が低く、ギガゾンビやツチダマの下僕と化している。
- ペガ・グリ・ドラコ
- のび太がドラえもんの道具で作り出した3匹の架空動物。ペガは馬と白鳥のアンプルを同時に使って作られたペガサス、グリはワシとライオンのアンプルで作られたグリフィン、ドラコはワニとシカとトカゲ(映画ではコウモリ)のアンプルで作られた龍である。因みにのび太はペガに乗ることが多く、また名前を口にする機会もペガが最も多かった。ペガサスや龍に比べマイナーな架空動物であるグリフォンを、のび太が知っていたのは意外とも言えるが、のび太は勉強嫌いの漫画好きである点から、漫画から得た知識であったと推測できる。
- タイムマシン(声優:三ツ矢雄二)
- 言葉を喋り行き先は音声で認識する。ドラえもんと対話したり危機には自分で対処していることから自我があるように思われる。尚、前作映画『パラレル西遊記』で音声機能が搭載されたが、前作は原作漫画が存在しなかったため、原作で喋るのは本作が初めてである。
- 地主(声優:田口昂)
- のび太たちがいつも遊んでいる空き地の地主。家出したのび太が空き地に住もうとしたところ、それを止めた。不動産会社から土地を3億円で売るように勧められていた(当時はバブル景気の真っ只中)。
[編集] 物語のあらすじ
家でも学校でも叱られてばかりののび太は家出しようと思い立つが、どこもかしこも私有地か国有地でどこにも自分の思い通りになる土地がない。ドラえもん以下4人も各々の理由で家出するも行くところがなく途方に暮れていた。それならばいっそのことまだ人間が誰も住んでいない太古の日本へ行こうと思い立ち、史上最大の家出へと出発した。
誰にも邪魔されないユートピアが出来上がったが、一時帰宅したところ、本物の原始人と思しき少年ククルに出会う。ククルの一族であるヒカリ族は、凶暴なクラヤミ族と精霊王ギガゾンビの襲撃を受けたという。のび太たちはヒカリ族を救うため、中国大陸へ向かうことにする。
[編集] スタッフ
- 監督:芝山努
- 脚本:藤子・F・不二雄
- 演出助手:安藤敏彦、平井峰太郎
- 作画監督:富永貞義
- 美術設定:川本征平
- 美術監督:沼井信朗
- 色設計:野中幸子
- 撮影監督:斎藤秋男
- 特殊撮影:三沢勝治
- 編集:渡瀬祐子、林美都子、井上和夫
- 録音監督:浦上靖夫
- 効果:柏原満
- 音楽:菊池俊輔
- 監修:楠部大吉郎
- 制作デスク:市川芳彦
- プロデューサー:別紙壮一、山田俊秀、小泉美明、波多野正美
- 制作協力:藤子スタジオ、旭通信社
- 制作:シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
[編集] 評価
『のび太とアニマル惑星』と並び、映画の評価が原作を上回る数少ない作品の一つ。壮大なストーリーやラストでのペガ達との別れのシーン等から、低年齢層を中心に高い人気を誇る作品の一つとなっている(また、『ドラえもん』原作者の藤子・F・不二雄が亡くなった際の追悼放送にはこの映画が選ばれている)。
一方で構成上の不備(特に、ドラえもんたちが一度未来に帰り再び石器時代にやってきた時既にククルの村はギガゾンビによって破壊されておりのび太が「遅かった」というシーンがあるが、タイムマシンで村が破壊される前に何故戻らないのかという疑問がある)、またシリーズ展開を重ねてきた長編ならではのアイデアの枯渇といった問題点も見られ、初期からのドラ映画ファンを中心に批判も多い。特にストーリーの解決が、ドラえもん達メンバーの努力が殆ど無く、タイムパトロールの力に委ねられている点は、ドラえもん達メンバーの友情や団結を描いてきた長編シリーズとしての良さを失っているとの意見もある。
[編集] 主題歌
「時の旅人」(作詞:武田鉄矢/作曲:堀内孝雄/唄:西田敏行)
「ドラえもんのうた」(作詞:楠部工/作曲:菊池俊輔/唄:山野さと子)
[編集] その他
- てんとう虫コミックス41巻収録の『いつでもどこでもスケッチセット』(『小学四年生』1989年7月号掲載)という話では、ドラえもんの道具により本作品の一部分が描かれている。これは通常の原作と大長編を結び付ける数少ないエピソードの一つであり、また映画の後日談に当たる話としては唯一のものである(以前に通常の原作で登場したキャラが、後の大長編にゲスト出演した例は『のび太と雲の王国』がある)。
- 映画版では、ククルに食べさせるほんやくコンニャクが「お味噌味」となっている。
- 冒頭では、てんとう虫コミックス7巻『山おく村の怪事件』(『小学館BOOK』1974年3月号掲載)に登場した山奥村という廃村のその後が描写されている。
- この作品から、OP「ドラえもんのうた」が山野さと子版になった。なお、本作はOP前のプロローグではククルの登場のみでのび太達が登場せず、ククルが時空乱流に吸い込まれた後、地球の全景が現れて、どこからともなく「ドラえも~ん!」の叫びが聞こえてOPに入る、という珍しい構成である。