ジュドー・アーシタ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジュドー・アーシタ(Judau Ashta, U.C.0074年10月10日~?)は、テレビアニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場する架空の人物(声優:矢尾一樹)。同作の主人公である。物語開始時の年齢は14歳。血液型はB型。[1]
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 劇中での活躍
[編集] 機動戦士ガンダムΖΖ
宇宙世紀0088年初頭、ジュドー・アーシタはサイド1のスペースコロニー「シャングリラ」にて暮らしていた。同コロニーの福利厚生政策はお世辞にも充実していたとは言えず、また彼の両親は出稼ぎに出たまま不在の状態だったこともあって、ジュドーは学校にはあまり通わず、生活費の捻出と妹のリィナ・アーシタを「山の手の学校」へと通わせる為、仲間達と共にジャンク屋家業に精を出していた。
そんな折、グリプス戦役で疲弊したエゥーゴの巡洋艦アーガマが修理と補給のため、彼の住むシャングリラへと寄港する。ジュドーと仲間のビーチャ・オーレグらは、アーガマに所属するモビルスーツ (MS) Ζガンダムを盗み出し大儲けしようと画策する。彼らは、シャングリラに流れ着いたティターンズの敗残兵ヤザン・ゲーブルと共にアーガマに侵入するが、ジュドーは成り行きからΖガンダムに乗り込んでしまう。ヤザンのクルーに対する横暴に憤りを覚えたジュドーはΖガンダムで戦いを挑み、彼の乗り込むミドル・モビルスーツを撃退する。アーガマの艦長ブライト・ノアは、初めてとは思えぬ操縦でΖガンダムを操るジュドーを見て、彼の行動にかつてのガンダムのパイロット達の面影を重ね、ニュータイプの素養を感じ取る。
それと前後してシャングリラにアクシズの先遣隊・巡洋艦エンドラが入港、同艦を率いるマシュマー・セロは自ら新型MSに搭乗し、アーガマを襲撃する。しかし、再びΖガンダムに乗り込んだジュドーがこれを退け、その後ブライトやファ・ユイリィの頼みもあり、ジュドーと仲間達はアーガマの乗員となる。ちなみに、彼らが志願兵ルー・ルカと出会ったのもこの時期である。ジュドーはブライトの期待に応え、その後幾度かの実戦を経て、Ζガンダムを見事に乗りこなすようになる。パイロット候補生となったジュドーは、攻め来るエンドラのMS部隊に対して臆することなく戦い、アーガマの窮地を救う。そして、エゥーゴの最新鋭機ΖΖガンダムのメインパイロットとなった彼は同機の性能を存分に奮い、第一次ネオ・ジオン抗争に参加していく。
ジュドーはMSパイロットとして天賦の才を備えており、百式やΖガンダム、そして配備後間もない時期からΖΖガンダムを乗りこなした。その後も、ジュドーは状況に応じてΖガンダムとΖΖガンダムを使い分けるなどの機転を利かせている。彼は正面からのMS戦闘にも怯える事なく臨み、純粋な操作技術以外にも、ΖΖガンダムの分離合体機構や周囲の地形、ダミー隕石等を利用した奇抜な戦術を駆使し、窮地を切り抜ける場面も多く見られた。パイロットとして成長していったジュドーは、持ち前の天性の操縦センスに加えニュータイプとしての能力も行使して高機動を誇るモビルアーマージャムル・フィン3機による連携攻撃を退けた他、キュベレイ等のオールレンジ攻撃を封じている。但し、軍属(正式ではないが)のパイロットとしては些か緊張感に欠ける点もあり、戦闘中に虚を突かれる場面も見られた。また、コロニー内を航行中の艦艇やMSに生身で取り付くなどの、生来の行動力と高い身体能力を持っていた。
ジュドーは当初、アーガマの戦闘艦としての任務には然程積極的ではなかったが、彼の妹リィナは同艦の援助に熱心であった。そのため、彼女の身の安全を第一と考えるジュドーとしては、妹を護るためには戦闘に参加せざるを得なかった。しかし、そのリィナがネオ・ジオンに捕われの身となってからは自ら戦闘に身を投じるようになり、独断による出撃や単身アクシズに投降、潜入を試みるなどの怪行を繰り返す場面も見られた。またエゥーゴの出資者ウォン・リーに反発し、彼の「修正」を切り返し蹴りをくれるなど、ジュドーやその仲間達の無鉄砲ぶりはブライトらアーガマクルーの頭痛の種でもあったという。その様な奔放なジュドーであったが、その後ムーン姉妹やエルピー・プル、セシリア、その他多くの人物との出会いと彼らの死、そして人間の持つエゴイズムと直面していく中で成長していく。
また、ジュドーはニュータイプとしての資質を備えていた。彼はアーガマに潜入した際に前任のΖガンダムのパイロットであるカミーユ・ビダンとのニュータイプ同士の交感を交わしている。その際の体験が、後にジュドーのニュータイプ能力の覚醒へと繋がっている。また、ジュドーはネオ・ジオンのエルピー・プルやハマーン・カーンとも精神を感応させている。プルはジュドーの感性に惹かれエゥーゴに寝返り、ハマーンは彼の気配をかつての恋人シャア・アズナブルに重ねている。ハマーンはジュドーを見初め、幾度か彼にニュータイプとしての在り方を説き、同志とするべく誘いをかける。しかし、ジュドーは「妹を助ける」という単純な動機によって戦争に参加しており、その素直な感性はハマーンを拒絶した。ハマーンはジュドーにニュータイプの同志となることを期待していたが、彼はその後の誘いにも靡くことはなかった。
ジュドーにはアムロ・レイやカミーユにはない、精神的な逞しさがあった。カミーユはニュータイプとして最も優れた資質を持っていたと言われ、後に「究極的なニュータイプ」と称されている。しかし、その能力はカミーユ自身の精神を追い詰める要因となった。彼は先のグリプス戦役においてその能力を過剰肥大させ、その先鋭化し過ぎた感覚は戦場の悪意や哀しみを吸収し、自らの精神を疲労させていった。そして、最終的に彼の強過ぎる力は精神のキャパシティを超え、自我を崩壊に導いてしまった。[2]しかしジュドーはニュータイプの資質を持ちつつも、それに起因する自負や観念的な囚われを抱くことは無く、最後まで自分を見失うことなく戦い抜いている。
ジュドーの力の源は、仲間達との絆、そして理不尽な人の死やエゴイスティックな独善への怒りといった、人間としての素直な感性に根ざしたナチュラルなものであった。ダカール迎賓館にてハマーンがリィナを傷つけた折にジュドーはその怒りを爆発させ、彼の気迫はハマーンを激しく怯えさせた。その後の戦闘でリィナの身体は戦火に呑み込まれ消息不明となり、ジュドーは激しい失意に沈む。しかし仲間の叱咤もあり、ジュドーはリィナの生存を信じるとともに、戦争を終結させるために新たに決意し、ニュータイプとして覚醒していく。彼は持ち前のバイタリティによって過酷な現実を乗り越えていった。ジュドーは人間の可能性を信じ、彼の発した意思は遠く離れていたリィナにも届いている。ジュドーの優しさは強化人間プルツーを呪縛から解き放ち、最後にはハマーンの精神をも彼女の今際の際に救っている。
ジャンク屋時代からの仲間エル・ビアンノはジュドーに好意を寄せていたが、彼は同じく仲間であるビーチャの彼女に対する想いを知っていた為、気持ちに応える事は出来なかった。Ζガンダムのメインパイロットであったルー・ルカとは、立場の違いもあってか喧嘩の絶えない仲であったが、共に戦う中で互いに惹かれ合っていった。ネオ・ジオンの女性士官キャラ・スーンとも浅からぬ縁があり、ジュドーは彼女が彼とハマーンを庇って死亡した際に悔やんでいる。ネオ・ジオンから寝返ったプルからは兄の様に慕われ、また、彼女の分身と言えるプルツーも最終的にはジュドーのもとに奔っている。
戦争終結後、ジュドーは依然として変わらぬ連邦政府高官やエゥーゴ上層部の実態に愕然とし、激しい憤りを感じ涙する。しかし、それでも彼は人間に対する希望を失わず、ルーと共に木星船団ジュピトリスIIに志願する。月面フォン・ブラウン市にて仲間達に見送られる中、彼は消息不明となっていた最愛の妹リィナと再会、抱擁を交わす。また、公式な記録ではないが、彼らと共に戦い抜いたΖΖガンダムも同時にジュピトリスIIに搬入されたという。宇宙世紀0089年3月、こうしてジュドーは木星圏を目指して旅立つ。
[編集] その後のジュドー
ジュドーは『機動戦士ガンダムΖΖ』最終話で木星へと旅立って以降の消息に付いては公式には語られていない。ただし長谷川裕一などによる漫画などガンダムシリーズの「正史」には含まれていない非公式作品のいくつかには『機動戦士ガンダムΖΖ』以後のジュドーが登場する。
- 『GUNDAM EVOLVE../10』
- CGアニメ (OVA) 作品。
- 木星に向かうジュピトリスにネオジオン残党からの亡命希望者とその追手のMS部隊が迫る。ジュドーは地球から持ち出していたΖΖ-GR (下半身を失っていたΖΖガンダムをジムIIIのパーツで補修した機体)で出撃。これに対応する。
- 『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』
- 長谷川裕一の漫画。非公式作品ではあるが宇宙世紀0091年が舞台。
- 木星圏のコロニーで暮らしていた(ルーとは離別したらしい)ジュドーのところにアムロ・レイが現れる。二人は協力してネオ・ジオンの残党が発掘した巨大機動兵器「巨神」の発動を阻止し、「巨神」のパイロットとして利用されていたミネバ・ラオ・ザビを救い出す。
- 『機動戦士ガンダム ムーンクライシス』
- 松浦まさふみの漫画。宇宙世紀0099年が舞台。
- この作品ではジュドーはルーと共に仕事を続けており、木星からヘリウム船団の一員として率いて地球へ帰還し、ビーチャと再会した描写がある。シャアの反乱など地球圏での騒動は知らない様だが、何らかの変化は感じ取ったようだ。
- 『機動戦士クロスボーン・ガンダム スカルハート』、『機動戦士Vガンダム外伝』
- 長谷川裕一の漫画。『スカルハート』は『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の後日談で、宇宙世紀0133年~0135年頃が舞台。『Vガンダム外伝』は更に20年後の宇宙世紀0153年が舞台。
- これらに登場する、地球と木星を往復するヘリウム船団のリーダーである「木星じいさん(自称)」ことグレイ・ストークは、かつてのジュドー・アーシタであると示唆されている。例えば彼の搭乗するMSガンプは、様々な機体の部品を寄せ集めて原形が判らない程改造されているが、実はかつてのΖΖガンダムの成れの果てである(『Vガンダム外伝』で、偽装された頭部のカバーが外され、ΖΖガンダムの頭部が現れている)。
- 『スカルハート』では『最終兵士』というエピソードに登場。主人公トビアとともに木星軍の残党と戦った。『Vガンダム外伝』では同志たちと共にスペースコロニー2基を連結して世代宇宙船ダンディ・ライオンを建造し、太陽系外へ旅立とうとする。またリガ・ミリティアとも協力関係にあったらしく、ダンディ・ライオン内にはVダッシュガンダムやV2ガンダムなども置かれていた。
[編集] アニメ本編での搭乗機
- MSZ-006 Ζガンダム
- MSZ-010 ΖΖガンダム
- FA-010S フルアーマーΖΖガンダム
- MSN-00100 百式
[編集] その他の搭乗機
[編集] 脚注
- ^ 尚、2006年に公開された新訳『機動戦士Ζガンダム』劇場版三部作の世界では『機動戦士ガンダムΖΖ』のストーリーに繋がらないため、劇場版『機動戦士Ζガンダム』の世界観とはパラレル的な扱いとなっている。
- ^ 劇場版『機動戦士Ζガンダム』では、カミーユは精神的な疲労を受け流す術を身に付けたことで過剰肥大したニュータイプ能力をも制御できるようになり、富野監督の言うところの「究極的なニュータイプ」となった。
[編集] その他
- 名前の由来は山下泰裕(「柔道の山下」)から。またビートルズ最大のヒットナンバーと呼ばれる『ヘイ・ジュード』にも由来している(これは脚本家の鈴木裕美子が放送当時、アニメ雑誌のΖΖ特集に寄せた文で明かしている)。愛用パイロットスーツの色が白地に赤ラインという「日の丸カラー」なのも山下の影響なのかもしれない。
- ジュドーを演じた矢尾は、このジュドー役と『超獣機神ダンクーガ』で演じた藤原忍で一気に人気声優となる。しかし矢尾は、当時駆け出しだった自分はジュドーと忍の演じ分けがちゃんと出来なかったため、苦い思い出でもあると言う。
- ΖΖの脚本家である鈴木は、ジュドーはニュータイプ能力はアムロやカミーユに劣るが、自然に力を身につけることができ、その大地に根ざした能力こそが、それまでのニュータイプが持っていなかった力。その力をハマーンは恐れたと当時のアニメ誌で述べている。
- 富野監督は『逆襲のシャア』の舞台挨拶で「操縦技能最高はアムロ。ニュータイプ能力最高はカミーユ。総合的なパイロット最強はジュドー」と発言しているとされている(ジュドーにおける「パイロット最強」とは、「パイロット適性」「適応能力」が最も優れていることであると思われる)。また、「迷いを捨てたシャアはアムロの敵ではない」とも語っているため、条件が整えば「シャアが最強」というのが富野監督の中にはあるようだ。
[編集] 関連項目
ガンダムシリーズ (カテゴリ) | ||
シリーズ一覧: | ガンダムシリーズ一覧 - ゲーム作品一覧 - SDガンダム | |
世界観: | 宇宙世紀 - 未来世紀 - アフターコロニー - アフターウォー - 正暦 - コズミック・イラ - SDガンダム | |
ガンダムシリーズの映像作品 | ||
テレビシリーズ: | 機動戦士ガンダム - Ζガンダム - ガンダムΖΖ - Vガンダム - Gガンダム - ガンダムW - ガンダムX - ∀ガンダム - ガンダムSEED - SEED DESTINY - SDガンダムフォース | |
OVA: | 0080 - 0083 - 第08MS小隊 - Endless Waltz - MS IGLOO - SEED STARGAZER - SD外伝 ジークジオン編 - - GUNDAM EVOLVE | |
劇場版: | 逆襲のシャア - ガンダムF91 - G-SAVIOUR - GUNDAM THE RIDE - グリーンダイバーズ - SD外伝 聖機兵物語 | |
ガンダムシリーズの劇中項目 | ||
劇中項目一覧: | 人物一覧 - 機動兵器一覧 - 艦船及びその他の兵器一覧 - 用語一覧 | |
テンプレート |