ストロー効果
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ストロー効果(ストローこうか)或いはストロー現象(ストローげんしょう)とは、交通網の開通により都市が発展したり衰退したりすることを指す。細かく見ていくと以下のようなものがある。
- ある交通網の分岐点が発展して分岐先が衰退する。
- ある交通網の起点・終点が発展して中継地点が衰退する。
- ある交通網の中で規模の大きい都市が発展して小都市が衰退する。
[編集] 概要
コップの中の水がストローによって吸い上げられる事に例えた語。交通網が整備されると、交通基盤の「口」に当たる市町村・地域に経済活動が集中し、「コップ」に当たる市町村・地域の経済活動が逆に衰える現象である。 特に長く細い(=1本の)通り道だけで大量の移動が起き、途中の中継地に移動に伴う経済効果が殆ど無いのを特徴とする。
交通の利便性の悪さや所要時間の長さによる制約は、通勤・通学・買い物など日常行為には強く働くが、旅行などの非日常行為にとってはそれほどの重要性はない。このため、高速交通網などが整備され制約から開放されると、地元住民はより魅力的な商品や品揃えを求め、より多く良い仕事を求め、より良い学校に通学するため域外に出る。その一方、域内への流入は殆ど増えず、観光客についても殆ど変わらないばかりか、むしろ宿泊や食事などの減少を招くことになり客単価が低下する面がある。これらのため、より大都市へと購買力などが集中し、田舎側の地方都市は衰退することが殆どである。
大都市に通じる高速道路や新幹線など高速交通網を整備しさえすれば、企業の支店や拠点、大学キャンパスなどが進出してくる、観光客も訪れやすくなるので多くなる、と考えた地方都市が積極的に誘致してようやく開通したが、実際に運用が始まるとこのストロー効果で地元商店が大きな地盤沈下を起こし、目論見とは全く逆に企業の支店や配送などの拠点は県庁所在地などの上位支店に統廃合されて地元雇用の喪失を招き、学生はより大都市の学校に流出し、期待された程の観光客増などもなく、結局は過疎化に拍車を掛け、経済効果も幻想であったと思い知ることが少なくない。 このため地方都市でも勝ち組、負け組といわれる隆盛と衰退が発生し、それに対する綱引きが地方都市間で激化しつつある。(九州新幹線開通に伴う北九州市-熊本市-鹿児島市など)
ストロー効果ではないが、同時に流通上のネックも解消されることで、地方都市へ郊外型大型店やコンビニエンスストア、全国規模なスーパー・家電量販店などが進出できるようになる。 これにより、ストロー効果で消費者が減った地域のスーパーや地元商店街等が、更なる追い討ちを受けることも多い。
[編集] 事例
- 瀬戸内海沿岸東部
- コップ:高松都市圏、ストロー:瀬戸大橋(橋:鉄道・高速道路)、口:岡山都市圏
- コップ:徳島都市圏、ストロー:神戸淡路鳴門自動車道(橋:高速道路)、口:京阪神
- コップ:高松都市圏、ストロー:高松自動車道、口:京阪神
- 長野県北部・東部
- コップ:東北地方、ストロー:高速バス路線、新幹線など、口:仙台都市圏
- 2001年2月の改正道路運送法施行による規制緩和により、東北地方各都市と仙台市を往復する高速バス路線や便数が激増して、JR(新幹線・在来線)と高速バスとの間で熾烈なシェア争いが起きている。この結果、仙台都市圏の商圏が拡大して、宮城県に隣接する岩手県南部、山形県東部、福島県北部にまで及ぶ仙台経済圏が形成されている。特に、高速バス仙台~山形線の影響で、仙台都市圏と奥羽山脈を挟んで隣接する山形都市圏とは「双子都市圏」の様相を呈するに至っている。仙台経済圏の外側と見なされる東北地方の各都市圏との間でも高速バス路線が発達し、東北各地から仙台に集まる傾向がある。近年の東北地方各都市~仙台間では、高速道路や新幹線の開通直後にストロー現象が起きた、というよりは、規制緩和を契機として安価な高速バスが発達し、対抗してJRが安価な仙台発着商品を開発したことがストロー現象を惹起している。すなわち、ストロー現象は運賃の価格競争(と仙台一極集中)によるものと言える。
架橋や高速道路・新幹線の開通によるものでも、上記の通り枚挙に困らないほど起きているが、それ以外でも名古屋市中心部に消費者を吸い取られた岐阜市、一宮市、刈谷市(いずれも駅前商店街)など、列車の増発等鉄道の利便性向上によっても同様の現象が発生している。