ツァラトゥストラはこう語った
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- ドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェの著作。本項の「著作」を参照。
- リヒャルト・シュトラウスが作曲した交響詩の曲名。本項の「音楽」を参照。
目次 |
[編集] 著作
『ツァラトゥストラはこう語った』(Also sprach Zarathustra)は、1885年に発表された、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの後期思想を代表する著作。「ツァラトゥストラはかく語りき」、「ツァラトゥストラはかく語れり」、「ツァラトゥストラはこう言った」等とも訳される。4部からなり、その内容はよい意味でも悪い意味でも、現代社会に大きな影響を与えた。
初期のディオニュソス概念がツァラトゥストラに結実したこと、また永劫回帰の思想がはじめて本格的に展開されたことなど、ニーチェ思想にとってもこの書物の意義は大きい。ツァラトゥストラとは、ゾロアスター教の開祖の名前であるザラスシュトラをドイツ語読みしたものである。しかしこの著作の思想はザラスシュトラの思想とはあまり関係がない。ニーチェ自身の解説(『この人を見よ』)に拠れば、ニーチェがツァラトゥストラの名を用いた理由は二つある。第一に、最初に善悪二元論を唱えたゾロアスターは道徳についての経験を最も積んだ者であり、道徳の矛盾を最も知る者である筈という理由。第二に、ゾロアスター教では「誠実」を重んじ、ニーチェの重んじる「真理への誠実さ」も持つ筈という理由である。
この著作は、「神は死んだ」など、それまでの価値観に対する挑発的な記述によって幕を開け、ツァラトゥストラの口を通じて超人の思想が説かれている。第三部あたりから、この作品を決定づける思想である永劫回帰が説かれる。
この作品の中には、スイスのシルス・マリーアから、まだら牛の町(トリノ-市の紋章を参照)を経て、ナポリまで下っていく途中の風物が、そこここに盛り込まれている。シルス・マリーアはスイスのエンガーデン地方にあり、彼がそこによく避暑に出かけた土地である。ツァラトゥストラが、山を下りていく道は、スイスの高原から南イタリアへの下っていく空間的な道、地理的な距離とも重なっている。そして、その道をまたもどっていく。
プラトンの『国家』第7巻冒頭の洞窟の比喩の上り下りの道とも暗合しているという解釈もある。
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『ツァラトゥストラはこう語った』はリヒャルト・シュトラウスが1896年に作曲した交響詩の曲名。一般的には『ツァラトゥストラはかく語りき』と呼ばれることが多い。
ニーチェの著作にインスピレーションを得て作曲されたが、原作の思想を具体的に表現したというわけではなく、原作のいくつかの部分を選び、そこから受けた印象・気分を表現した9部から成り立ち、切れ目なしに演奏される。
- 1.Einleitung (導入部)
- 2.Von den Hinterweltlern (現世に背を向ける人々について)
- 3.Von der großen sehnsuche (大いなる憧れについて)
- 4.Von der Freuden und Leidenschaften (喜びと情熱について)
- 5.Das Graslied (墓場の歌)
- 6.Von der Wissenschaft (学問について)
- 7.Der Genesende (病より癒え行く者)
- 8.Das Tanzlied (舞踏の歌)
- 9.Nachtwandlerlied (夜の流離い人の歌)
初演時から賛否両論に分かれ、評論家エドゥアルト・ハンスリックや作曲家フーゴー・ヴォルフは非難し、作家ロマン・ロランや指揮者アルトゥール・ニキシュは好意的であった。
[編集] 初演
1896年11月27日、フランクフルトで、作曲者指揮の第4回博物館協会コンサートにて初演された。
[編集] 演奏時間
約35分である。
[編集] 編成
オルガンを含む4管編成。100名必要。弦パートは細かくプルト指定になっている箇所が多いのが特徴。
- ピッコロ 1
- フルート 3 (3rdフルートはピッコロ持ち替え)
- オーボエ 3
- イングリッシュホルン 1
- Es管クラリネット 1
- B管クラリネット 2
- バスクラリネット 1 (B管クラリネット持ち替え)
- ファゴット 3
- コントラファゴット 1
- ホルン 6
- トランペット 4
- トロンボーン 3
- バスチューバ 2
- ティンパニ
- バスドラム
- シンバル
- トライアングル
- 鐘 (低E音)
- オルガン
- 1stヴァイオリン 16 (1~8プルト指定)
- 2ndヴァイオリン 16 (1~8プルト指定)
- ヴィオラ 12 (1~6プルト指定)
- チェロ 12 (1~6プルト指定)
- コントラバス 8 (1&2プルト指定)
[編集] この曲が用いられている箇所
映画、『2001年宇宙の旅』冒頭部分で第1曲「序奏」(Einleitung)が使われて非常によく知られている。この部分は、WWEのリック・フレアーのテーマとして世界的には有名であるが、日本ではボブ・サップのテーマ曲で有名である。
70年代のエルヴィス・プレスリーの公演のオープニングにしばしば使用されている。
特にその冒頭部はオルガンの低音を含むなど、LPレコード時代には録音技術者泣かせの曲として知られる一方、優秀録音盤がしばしばオーディオ機器のデモンストレーションに用いられた。
1972年、ブラジル出身のジャズ・キーボード奏者/アレンジャー、デオダートのアレンジによるクロスオーバー作品も、ポップスとしてヒットした。
[編集] その他
グスタフ・マーラーの『交響曲第3番』の第4楽章に、ニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』の第4部の詩が、歌詞として用いられている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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