トヨタ・4A-GE
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トヨタ・4A-GEは、トヨタ自動車の過去のスポーツツインカム系エンジンの一つである。
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[編集] 概要
1983年5月に登場したカローラレビン/スプリンタートレノに初めて搭載された。直列4気筒1600ccで前輪駆動、後輪駆動及びミッドシップ用で、DOHC16バルブもしくは20バルブの、自然吸気もしくはスーパーチャージャーつきエンジンである。
それまでのトヨタ自動車の過去のスポーツツインカム系エンジンである直列4気筒1600ccの2T-GEUの後継として開発された。これは、2T-GEUが度重なる自動車排出ガス規制に対応するために、当初よりもパワーダウンして陳腐化したことが原因となっている。ベースとなったエンジンは直列4気筒1500ccの3A-Uで、SOHC方式のヘッドユニットをDOHC方式に変更したものである。
ヘッドユニットについては当初、ヤマハ発動機にて製作されたもの搭載していたが、後にトヨタ内製のものを搭載するように切り替えられた。このようなヤマハ発動機-トヨタ内製の流れは後の20バルブ型ヘッドユニットにおいても同様である。レギュラー仕様の初期型では可変吸気システムであるT-VISが採用されていたが、その後、廃止されたうえでハイオク対応となり、最終型では20バルブ方式を採用した上でトヨタのメカニカル式可変バルブタイミングシステムであるVVTが採用されるに至った。
また、アフターマーケットの一部では排気量をアップして4.5A-G、5A-G、5.5A-G、7A-G、8A-Gと名づけられたチューニングエンジンが存在する事が知られており、それぞれのボア・ストローク/排気量は
- 4.5A-G ‥ ボアアップ
- 83×77/1666cc
- 5A-G ‥ HKS 5A-Gキット等によるストロークアップ
- 81×83/1710cc
- 5.5A-G ‥ HKS 5A-Gキット等を用いたものをさらにボアアップ
- 83×83/1796cc
- 7A-G ‥ ハイメカツインカム7A-FEのブロックを流用
- 1810CC
- 8A-G ‥ ハイメカツインカム7A-FEのブロックを流用しボアアップ
- 1850cc程度
となっている。これらはトヨタのエンジン名称規則から外れた名前で呼ばれているため誤解を生むケースも多々あるが、概ね名称規則から大きく逸脱していないために俗称として呼ばれている。
なお、4A-GEUと4A-GELUの違いはエンジンの搭載方法が縦置きか横置きかの違いだけであり、縦置き形式のエンジンの生産が終了した後には"L"の表記は無くなった。
現在の生産車には一切搭載されておらず、後継の2ZZ-GEもエリーゼ用としてロータスに供給されているものの、トヨタに搭載車種は無い。 しかし4A-GEは現在もフォーミュラ・トヨタで使用されている。
[編集] バリエーション
[編集] 自然吸気
[編集] 16バルブ
- 1983年5月(AE86型カローラレビン スプリンタートレノ搭載時)
- 名称 4A-GEU
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 9.4
- 最高出力 130ps/6600rpm
- 最大トルク 15.2kgm/5200rpm(いずれもグロス値)
- 使用燃料 レギュラーガソリン
- 通称 青文字
- 1984年6月(AW11型MR-2前期型搭載時)
- 名称 4A-GELU
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 9.4
- 最高出力 130ps/6600rpm
- 最大トルク 15.2kgm/5200rpm(いずれもグロス値)
- 使用燃料 レギュラーガソリン
- 1987年5月(AE92型カローラレビン スプリンタートレノ前期型搭載時)
- 名称 4A-GELU
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 9.4
- 最高出力 120ps/6600rpm
- 最大トルク 14.5kgm/5200rpm
- 使用燃料 レギュラーガソリン
- 通称 赤文字、キューニー前期
- 1989年5月(AE92型カローラレビン スプリンタートレノ後期型搭載時)
- 名称 4A-GEU
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 10.3
- 最高出力 140ps/7200rpm
- 最大トルク 15.0kgm/6000rpm
- 使用燃料 プレミアムガソリン
- 通称 ハイコン、カバー付、キューニー後期
[編集] 20バルブ
- 1991年6月(AE101型カローラレビン搭載時)
- 名称 4A-GE
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 10.5
- 最高出力 160ps/7400rpm
- 最大トルク 16.5kgm/5200rpm
- 使用燃料 プレミアムガソリン
- 通称 銀ヘッド
- 1995年5月(AE111型カローラレビン搭載時)
- 名称 4A-GE
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 11.0
- 最高出力 165ps/7800rpm
- 最大トルク 16.5kgm/5600rpm
- 使用燃料 プレミアムガソリン
- 通称 黒ヘッド
[編集] 過給機付
- 1987年-月(AW11型MR-2および前期型AE92型カローラレビン スプリンタートレノ搭載時)
- 名称 4A-GZE
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 8.0
- 最高出力 145ps/6400rpm
- 最大トルク 19.0kgm/4400rpm
- 使用燃料 プレミアムガソリン
- 1987年5月(後期型AE92型カローラレビン スプリンタートレノ搭載時)
- 名称 4A-GZE
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 8.9
- 最高出力 165ps/6400rpm
- 最大トルク 21.0kgm/4400rpm
- 使用燃料 プレミアムガソリン
- 1991年5月(AE101型カローラレビン スプリンタートレノ前期型搭載時)
- 名称 4A-GZE
- 排気量 1587cc
- ボアストローク 81.0×77.0
- 圧縮比 8.9
- 最高出力 170ps/6400rpm
- 最大トルク 21.0kgm/4400rpm
- 使用燃料 プレミアムガソリン
[編集] 評価
4A-GEは丈夫さには定評があるものの、燃費は決していいとは言えず、他の一昔前の高回転型エンジンと同じように低~中回転域のトルクに乏しく(「スカスカ」とも言われる)、一般に街乗りには不向きとされる。
馬力に関しては80年代後半の16バルブ後期と比べ、90年代前半の20バルブ前期を自動車雑誌の編集部がテストしたところ、公称160馬力でありながら実際に計測してみたら大半が130馬力台であったと言う話もある。これはほとんどが車載された状態で”シャシ台”にて計測された値であり、実際にエンジン単体で計測を行った場合はそれほど悪い値ではなかったとも言われるが、同じ90年代前半に登場した1.6Lクラスのライトウェイトスポーツカー、VTECエンジンを搭載したシビックやMIVECを搭載したミラージュと比べても、馬力・トルク・燃費全ての面で劣る4A-GEは、嘲笑の意味を込めて「ヨタ馬力」と評されて評判を落としてしまったこともある。
しかしエンジンの流通量が多いことからチューニングパーツが豊富にあり、またその丈夫さと作りの簡単さから様々なチューニングができることから、改造を好む人には未だに愛好者が多い。