ノーム・チョムスキー
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エイヴラム・ノーム・チョムスキー(Avram Noam Chomsky, 1928年12月7日 - )は、マサチューセッツ工科大学教授。言語学者、思想家。
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[編集] 人物
各言語に普遍的な生成文法を提唱し、言語学に変革をもたらした。また生成文法は人間に生得的であるとする言語生得説をも展開した。チョムスキー以前の言語学では表出された言語形式を観察・記述する構造主義的アプローチが支配的であったが、これに対し生成文法は言語を作り出す人間の能力(あるいはそのメカニズム)に着目した点が画期的であった。より具体的に言えば、適切な言語形式を産出する能力(linguistic competence: 言語能力)と、実際に産出された言語形式(linguistic performance: 言語運用)とを厳密に区別し、前者を研究の焦点としている。
彼以降、言語学は認知科学や情報処理と強い親近性を獲得した。また、統語論の自律性を主張したことで、却って意味論や語用論などの隣接分野も浮き彫りにする形となった。この生成文法はチョムスキーがハーバード大学でジュニア・フェローとして過ごした時の考察に端を発する。
一方で、生成文法の徹底した演繹的な手法や言語の自律性を強調する点に関して、いくつかの立場から批判がなされている。たとえば、認知言語学は言語を人間の認知体系から自律させて考えることに批判的な立場であり、人間の脳内に自律的に言語を司るモジュールが存在するとする生成文法の仮説を批判している。
社会哲学的にはヴィルヘルム・フォン・フンボルトやジョン・デューイから、思想的にはスペイン内戦時のカタルーニャ地方バルセロナにおける極度に民主的な労働者自治によるアナキスト革命から強い影響を受け、権威主義的な国家を批判する自由至上社会主義(アナキズム)に関わり、アメリカに台頭するネオコン勢力によるアフガン侵攻・イラク侵攻やアメリカ主導のグローバル資本主義を批判している。特に2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降はその傾向を強めている。
チョムスキーはフィラデルフィアのユダヤ系家庭の出身だが、イスラエルによるパレスチナ入植政策および、パレスチナ人への弾圧や人権侵害を批判し続けていることでも知られている。
[編集] 邦訳著書
[編集] 単著
- 『アメリカン・パワーと新官僚――知識人の責任』(太陽社, 1970年)
- 『お国のために(1・2)』(河出書房新社, 1975年)
- 『言語と精神』(河出書房新社, 1980年)
- 『ことばと認識――文法からみた人間知性』(大修館書店, 1984年)
- 『文法理論の諸相』(研究社出版, 1984年)
- 『統率・束縛理論』(研究社出版, 1986年)
- 『言語と知識 マナグア講義録(言語学編)』 (産業図書, 1989年)
- 『アメリカが本当に望んでいること』(現代企画室, 1994年)
- 『障壁理論』(研究社出版, 1994年)
- 『ミニマリスト・プログラム』(翔泳社, 1998年)
- 『言語と思考』(松柏社, 1999年)
- 『デカルト派言語学――合理主義思想の歴史の一章』(みすず書房, 2000年)
- 『9.11――アメリカに報復する資格はない!』(文藝春秋, 2001年)
- 『アメリカの「人道的」軍事主義――コソボの教訓』(現代企画室, 2002年)
- 『チョムスキー、世界を語る』(トランスビュー, 2002年)
- 『金儲けがすべてでいいのか――グローバリズムの正体』(文藝春秋, 2002年)
- 『「ならず者国家」と新たな戦争――米同時多発テロの深層を照らす』(荒竹出版, 2002年)
- 『グローバリズムは世界を破壊する――プロパガンダと民意』(明石書店, 2003年)
- 『言語と認知――心的実在としての言語』(秀英書房, 2004年)
- 『新世代は一線を画す――コソボ・東ティモール・西欧的スタンダード』(こぶし書房, 2003年)
- 『生成文法の企て』(岩波書店, 2003年)
- 『テロの帝国アメリカ――海賊と帝王』(明石書店, 2003年)
- 『メディア・コントロール――正義なき民主主義と国際社会』(集英社[集英社新書], 2003年)
- 『チョムスキー、21世紀の帝国アメリカを語る――イラク戦争とアメリカの目指す世界新秩序』(明石書店, 2004年)
- 『秘密と嘘と民主主義』(成甲書房, 2004年)
- 『覇権か、生存か――アメリカの世界戦略と人類の未来』(集英社[集英社新書], 2004年)
- 『中東――虚構の和平』(講談社、2004年)
- 『チョムスキー、民意と人権を語る――レイコ突撃インタビュー』(集英社, 2005年)
- 『知識人の責任』(青弓社, 2006年)
- 『チョムスキーの「教育論」』(明石書店, 2006年)
- 『マニュファクチャリング・コンセント――マスメディアの政治経済学(1・2)』(トランスビュー, 2007年)
[編集] 共著
- (M・ハレ)『現代言語学の基礎』(大修館書店, 1972年)
- (M・ハレ)『生成音韻論概説』(泰文堂, 1983年)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- チョムスキー・アーカイヴ日本語版
- chomsky.info : The Official Noam Chomsky Website
- ZNet's Chomsky Archive
- 寺島研究室「別館」
- 益岡賢のページ
- RUR55 チョムスキー・インデックス
- 「田中克彦『チョムスキー』に驚く」
- ノーム・チョムスキー・リンク集
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