ポリフェノール
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ポリフェノール (polyphenol) とは、ポリ(たくさんの)フェノールという意味で、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環、ナフタレン環などの芳香環に結合したヒドロキシ基)をもつ植物成分の総称。ほとんどの植物に含有され、その数は 5,000 種以上に及ぶ。光合成によってできる植物の色素や苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きをもつ。
香料や色素として古くから食品、化粧品に使われていたが、1992年、フランス、ボルドー大学の科学者セルジュ・レヌーが「フランスやベルギー、スイスに住む人々は、ほかの西欧諸国の人たちよりもチーズやバターといった乳脂肪、肉類、フォアグラなどの動物性脂肪を大量に摂取しているにもかかわらず、心臓病の死亡率が低い」という説を打ち出し、彼らが日常的に飲んでいる赤ワインに着目。人間をはじめとする動物が、赤ワインに豊富に含まれる「ポリフェノール」を摂取すると、動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用、ホルモン促進作用が向上すると発表した。
学者の中には、フランスで心筋梗塞が少ないのはワインのポリフェノール効果ではなく、「ワインの飲みすぎで肝疾患で死ぬ人が多いから、相対的に心疾患で死ぬ人が少ないだけだ」、あるいは「フランス人の心臓疾患の発症率がアメリカ人の1/3なのは、単にアメリカ人に比べて1回の食事量が少ないからだ」と考える者も存在する。が、その理論は世界保健機構 (WHO) などによって「フレンチ・パラドックス(フランスの逆説)」と呼ばれ、1990年代初頭、世界的に広まった。1991年11月、レヌー教授は米国CBSネットワークのニュース番組60ミニッツに出演。その後、米国だけでなく、白ワインの消費量のほうが多かった日本でも、赤ワインブーム、健康ブームを巻き起こすきっかけとなる。
以来10数年間、研究者の間では化学的見地からではなく、食物繊維や5大栄養素(たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)に次ぐ栄養素として、細かい研究が行われている。これまでにも様々な種類のポリフェノールが発見・抽出・開発され、医薬品、健康食品として多くの商品を生み出した。
同様に抗酸化作用を持つ物質として抗酸化ビタミンであるビタミンAやビタミンEに関して心筋梗塞の予防効果があるかなどの研究が1990年代に行われている。
[編集] 代表的なポリフェノール
- フラボノイド
- フェノール酸
- エラグ酸 — イチゴなどに含まれるポリフェノール。美白効果があり、化粧品に多用されている。
- リグナン — ゴマに多く含まれる。セサミンもこの一種。
- クルクミン — ウコンに多く含まれるポリフェノール。
- クマリン — サクラの葉、パセリやモモ、カンキツ系に多く含まれるポリフェノール。甘い香りのもと。軽油識別剤として、灯油及びA重油に添加される。
[編集] 抗酸化作用に関する参考文献
- Rapola, J. M. et al. (1997). "Randomised trial of alpha-tocopherol and beta-carotene supplements on incidence of major coronary events in men with previous myocardial infarction". Lancet 349 (9067): 1715–1720. PMID 9193380.
あくまで抗酸化ビタミンにおける疫学データであり、ポリフェノールで行ったものではない。心筋梗塞を起こした患者に抗酸化ビタミンを投与したところで心筋梗塞の再発に関して、この論文では効果がないという結論を出している。