交響曲第4番 (チャイコフスキー)
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交響曲第4番へ短調作品36はチャイコフスキーが作曲した4番目の交響曲であり、1876年から翌年に掛けて作曲された。チャイコフスキーの代表作のひとつ。
目次 |
[編集] 概要
特別に神経質で感情過多でありながらも重厚なこの交響曲はチャイコフスキーにとって一番ヒットした曲の一つでもある。同ジャンルにおける前作交響曲第3番から本作への飛躍は、ベートーヴェンの交響曲第2番と第3番の関係にも例えられ、この作品によりチャイコフスキーのシンフォニストとしてのキャリアが決定付けられたといえる。また作風も大きな転換点を迎え、これ以後チャイコフスキーは独自の世界に踏み込んでいくことになる。
この交響曲では、彼自身の暗黒の運命に対する絶望とあきらめ、また運命との戦いと勝利が描かれているとされる。
[編集] 作曲の経緯
この時期、メック夫人がパトロンになったことにより、経済的な余裕が生まれた。これによってチャイコフスキーは作曲に専念できるようになり、これが本作のような大作を創作する下地となった。このことに対する感謝の意を表して、本作はメック夫人に捧げられた。
また同時に、結婚の失敗も作曲の背景にある。チャイコフスキーはこの作曲当時ある女性と結婚するが数日のうちに別居に至っている。理由は彼が同性愛に苦しんでいたことであり、ロシアではこれは厳罰が課せられる(注1)重大な問題であった。彼の結婚はこの同性愛を覆い隠そうとするためであったものだったと言われている。結局数日のうちにチャイコフスキーはノイローゼ状態となり、近くの池に下半身まで身を沈め、自殺を図っているところを助け出された。
- 注1:チャイコフスキーが同性愛者だったのかどうか、確実な証拠はない。ただアレクサンドラ・アナトリエヴナ・オルローヴァの研究(1978)のように、チャイコフスキーの死因は従来言われていたようなコレラの感染ではなく、悲愴交響曲の発表当時、同性愛を理由に自殺を強制されたものという説もあるなど、その説には根強いものがある。
[編集] 初演
1878年2月10日(旧暦。新暦では2月22日)サンクトペテルブルクにて、ニコライ・ルビンシテインの指揮で初演。
[編集] 編成
- 木管楽器
- 金管楽器
- 打楽器
- 弦五部
[編集] 曲の構成
4つの楽章による古典的な構成だが、第1楽章が比較的長い。外見上は絶対音楽として解釈することもできるが、チャイコフスキー自身はこの曲に強い標題性があることを告白しており、その方面からの解釈がなされることが多い。
曲想は第1楽章が非常に暗く病的であり、感情過多である。第2楽章は寂しさと夢(この夢とは友人モデストによると男性との関係を描いていると言う)、第3楽章は酒に酔った農民達の踊りの気分を描き、第4楽章は運命に対する勝利を描く。
[編集] 第1楽章 Andante Sostenuto — Moderato con anima
曲頭のホルンとファゴットのファンファーレは運命の警告を意味し、主部の中ほどでも金管群の強奏で容赦なく飛び出してくる。最高潮に達して静まった後、第1主題が弦で提示される。徐々に盛り上がっていき、木管が加わり、最初の悲劇的なクライマックスを築く(この部分は第1主題に基づいているが、新たな主題も加わっている。この部分を第2主題とするか、それとも第1主題の変形とするかについては解釈が分かれる)。続いて、木管に柔らかな第2主題(第3主題または経過部主題?)が現れ、そのまま展開部へ入る。明るく輝かしいクライマックスが大きな起伏を持って築かれるが、徐々に盛り下がっていき、再び「運命主題」が現れて再現部になる。「運命主題」と第1主題、その変形を交えた悲劇的なクライマックスを築き、それに続いて第2主題(前述参照)が再現する。ここでも展開風に高潮するが、前に見られたほどの輝かしさはない。一旦静まった後コーダに入り、行進曲調に変形された第1主題と「運命主題」によって最後の大きなクライマックスを築き、ヘ短調の長い和音で終わる。
[編集] 第2楽章 Andantino in modo di canzona
- 変ロ短調、三部形式
カンツォーネ風の緩徐楽章。オーボエによって奏される主要主題、ヴァイオリンが出すより肯定的な副旋律によって展開する。中間部は農民舞曲風。その後に主部が回帰する。
[編集] 第3楽章 Scherzo: Pizzicato ostinato
ピツィカート・オスティナート(アレグロ):スケルツォ(三部形式)
この楽章を通して奏される弦楽器のピチカートが特徴。 主部は弦のピチカート主題のみによって構成される。中間部では木管のおどけた主題に続き、金管による行進曲が現れる。続いて主部が回帰し、最後は中間部の動機を交えて終結する。
[編集] 第4楽章 Allegro con fuoco
フィナーレ。アレグロ・コン・フォーコ、ソナタ形式。
曲は喜色満面に進むが、再現部の後半から雲行きが徐々に怪しくなっていき、コーダでは第1楽章曲頭のファンファーレが再現される。静かに主題の動機が戻ってきて、最後は一気呵成に終結するものの、幾分曲全体のテンションが下がっていることは否めず、運命の支配的な力による悲劇性はこの曲では完全に解決されない。
しかし、チャイコフスキーがフォン・メック夫人に宛てた書簡では、「この世は暗黒だけではなく、この楽章で示されているように多くの素朴な人間の喜びがある。たとえ我々は馴染めずとも、その喜びの存在を認め、悲しみを克服するために生き続けることができる」としている。よって、この曲は悲しみを超える大きな決意を描いているとされている。
[編集] 演奏例
この交響曲は『悲愴』とともに広く愛好され、高く評価されている。 数ある名演の中で特に評価が高いものをあげると、ロシア音楽の土臭を強く表現したエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮(レニングラード・フィルハーモニー交響楽団)のものと、カラヤンとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との極度の洗練度、正確さ、そしてマジックのように精密なハーモニーで他に勝る演奏などがあげられる。
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