北杜夫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
![]() |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
北 杜夫(きた もりお、男性、1927年5月1日 - )は、東京都港区南青山出身の小説家、精神科医。本名は、斎藤 宗吉(さいとう そうきち)。
父は歌人・斎藤茂吉で、エッセイストとしても活躍した精神科医・斎藤茂太は兄。長女は斎藤由香。
目次 |
[編集] 人物
少年時代は昆虫採集に熱中、旧制高校時代は卓球部のキャプテンを務め、インターハイに出場した。昆虫採集は東京大空襲でコレクションのほとんどを失ってからほとんど行わなくなったが、コガネムシ類にだけは高齢になっても執着心を持ち続けてきたことを自ら証言している。また、幼少期からの自然史趣味は、高校の同級生で後に著名な植物学者となった西田誠を、その該博な植物学の知識で驚嘆させている。
精神科医として働きながら小説を執筆。ナチス・ドイツの「夜と霧作戦」をモチーフにした『夜と霧の隅で』で、1960年に第43回芥川龍之介賞を受賞。小説では『夜と霧の隅で』『楡家の人びと』などの純文学とされるもののほか、『怪盗ジバコ』『父っちゃんは大変人』などのファンタジーと考えられるもの、『船乗りクプクプの冒険』のような中高生向けや童話もあり、多様な作品を執筆し、ほかにエッセー『(どくとる)マンボウ』シリーズなど著書多数。
壮年期より双極性障害(躁うつ病)に罹患。自らの病状をエッセーなどであっけらかんと記し、世間の躁うつ病やうつ病に対するマイナスイメージを和らげるのに一役買った。躁状態の際の株への投資のために破産も経験している。この経験が戯曲風小説『悪魔のくる家』の執筆のヒントになったとされている。
自他共に認める熱狂的阪神タイガースファンであり、エッセイには阪神の成績に一喜一憂しつづける日常を描いたものも多数ある。また1985年の阪神タイガース優勝時にはその興奮ぶりがドキュメンタリー番組として放送された程である。
作家・エッセイストで慶應義塾大学病院精神神経科勤務中から親交のあるなだいなだ、SF作家の星新一、『どくとるマンボウ航海記』出版時の担当編集者で後に鉄道紀行作家となった宮脇俊三との仲が深い。ことに宮脇俊三とは、家族ぐるみで大変親密なつきあいをしていた。購入した世田谷区松草の邸宅も、宮脇宅と隣接していた。高校入学時の先輩に、後に小説家となる辻邦生がおり、終生親友として交流をもった。辻は、留年を重ね、北よりおくれて卒業することになるが、その間北に与えた文学的影響は大きく、トーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』を紹介したのも彼であった。旧制松本高校には、トーマス・マンの翻訳で知られる望月市恵がドイツ語教授として在任しており、『どくとるマンボウ青春期』にもその人物が描かれている。
ペンネームは、仙台(杜の都)在住時に、心酔するトーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』(杜二夫)にちなんでつけたという。本人の談では、まず北の都に住んだので、「北」とつけ、「杜二夫」ではあまりに日本人離れしているので、「杜夫」にしたということである。その後順次「東」、「南」、「西」と、ペンネームを変更するつもりだったが、「北杜夫」で原稿が売れ始め、ペンネームを変更すると、出版社との契約等で支障があると判明し、そのままになったらしい。しかし、北は自身のエッセイでも明らかにしているが、大変な漫画好きで、実はこのペンネームの由来は昔読んだ漫画のキャラクターからとったという噂もある。
[編集] 学歴
- 青南小学校卒業。
- 麻布中学校(現在の麻布中学校・高等学校)4年修了。
- 東京帝国大学臨時医学専門学校入学。
- 麻布中復帰。
- 旧制松本高等学校理科乙類(現在の信州大学理学部)卒業(『どくとるマンボウ青春記』の舞台)。
- 東北大学医学部卒業。
- 博士論文『精神分裂病における微細精神運動の一考察』により慶應義塾大学医学部から医学博士号授与。
[編集] 職歴
- 医師国家試験合格。
- 慶應義塾大学病院神経科助手(1952~1962)。
- 山梨県立精神病院出向(1956~1957)。
- 水産庁の調査船の船医(1958~1959)。(このときの経験を基に書いたのが『どくとるマンボウ航海記』)
- 茂太の斎藤神経科医院非常勤(1953~1964)。このころ患者の一人に小林信彦がいた。
[編集] 受賞歴
[編集] 著書
- 幽霊―或る幼年と青春の物語
- 木霊―或る青年期と追想の物語
- 夜と霧の隅で
- 楡家の人びと (斎藤家の歴史に取材した長編小説)
- 輝ける碧き空の下で(ブラジル移民に取材した長編小説)
- 白きたおやかな峰(筆者が1966年にカラコルムのディラン峰に医師として随行した体験に取材した小説)
- 青年茂吉・壮年茂吉・茂吉彷徨・茂吉晩年(4部作)
- どくとるマンボウ航海記(船医としての経験をユーモラスに描いた随筆)
- どくとるマンボウ昆虫記(少年時代からの昆虫趣味をベースにした随筆)
- どくとるマンボウ小辞典
- どくとるマンボウ途中下車
- どくとるマンボウ青春記(終末期の旧制松本高等学校学生時代の随筆)
- どくとるマンボウ追想記
- どくとるマンボウ医局記(慶應義塾大学医学部医局時代の随筆)
- どくとるマンボウ漂流記
- マンボウ周遊券
- マンボウ交遊録
- マンボウ百一夜
- マンボウ人間博物館
- マンボウ酔族館
- マンボウ氏の暴言とたわごと
- マンボウ万華鏡 物語の中の物語
- マンボウぼうえんきょう
- マンボウ夢遊郷 中南米を行く
- マンボウ狂躁曲 地中海・南太平洋の旅
- マンボウ博士と怪人マブゼ
- マンボウの朝とマブゼの夜
- マンボウVSブッシュマン
- マンボウおもちゃ箱
- マンボウ愛妻記(改題:マンボウ恐妻記)
- マンボウ哀愁のヨーロッパ再訪記
- マンボウ素人乗馬読本
- マンボウ雑学記
- マンボウ阪神狂時代
- マンボウ最後の名推理
- マンボウ遺言状
- マンボウ夢草子(改題:マンボウ夢のまた夢)
- 人間とマンボウ
- さびしい王様
- さびしい乞食
- さびしい姫君
- 月と10セント マンボウ赤毛布米国旅行記
- 怪盗ジバコ
- 怪盗ジバコの復活
- まっくらけのけ
- 神々の消えた土地
- 母の影
- 消えさりゆく物語
- 孫ニモ負ケズ
- 船乗りクプクプの冒険
- 牧神の午後
- 羽蟻のいる丘
- あくびノオト
- 或る青春の日記
- 悪魔のくる家
- 遥かな国遠い国
- 少年
- 奇病連盟
- 天井裏の子供たち
- 黄いろい船
- 酔いどれ船
- 星のない街路
- 大日本帝国スーパーマン
- 大結婚詐欺師
- 高みの見物
- 夢一夜・火星人記録
- 父っちゃんは大変人
- 優しい女房は殺人鬼
- 日米ワールド・シリーズ
- 親不孝旅日記
- 乗らない・乗る・乗れば
- ぼくのおじさん
- マンボウぱじゃま対談 男性かいぼう編
- マンボウぱじゃま対談 美女かいぼう編
- 快妻オバサマVS躁児マンボウ(母・輝子との対談)
- 美女とマンボウ(対談)
- 怪人とマンボウ(対談)
- マンボウ談話室(対談)
- うすあおい岩かげ(詩集)
- マンボウ的人生論 若者のためのエッセイ集
- マンボウ宝島 若者のためのエッセイ集
- むすめよ……―どくとるマンボウのおくりもの(童話)
- ローノとやしがに―どくとるマンボウのとんちばなし(童話)
- みつばち ぴい(童話)
- 地球さいごのオバケ(童話)
- よわむしなおばけ(絵本)
- 酔生夢死か、起死回生か。(阿川弘之との共著)