大韓民国の政治
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
韓国の政治体制(かんこくのせいじたいせい)は、軍政期を除いて、建国以来一貫して採用されている共和憲政体制である。主にアメリカ合衆国の政治体制を参照しており、行政、立法、司法の三権分立による政治体系を通じて、円滑な政府の国家運営を保持している。
目次 |
[編集] 憲法
国家体制を定める憲法は、大韓民国憲法である。建国直前の1948年7月17日に採択され、当初から一貫して、国会、裁判所、行政府が立法、司法、行政の職能をそれぞれ行使する三権分立体制を規定している。
制定以降、憲法は9回の改憲を経て現在に至っている。特に、国家体制を大きく変えた5回の改憲は韓国憲政の歴史的な一区切りとされ、それぞれの時期に存続していた憲法は第一憲法~第六憲法と呼称されている。それにともない、各憲法に基づいて構成されていた政体も、第一共和国~第六共和国と呼称されている。しかし、歴代改憲の中には、大統領が政治的な事件を引き起こし、再任を求めて実施した事例もある。そのため、幾多にもわたる改憲は、韓国が反復的な体制改革を進行させ、徐々に大統領の権威主義的体制から民主的体制へと向かった歴史を反映している。
現在の憲法は第六共和国憲法と呼ばれ、1987年10月29日に採択された。この憲法は、5年毎の直接選挙による大統領選出を定めている他、大統領の再選禁止など大統領権力に対する制限も数多く設けられており、韓国憲政史上最も民主主義的な体制(民主主義の実施保証)を規定した内容とされている。第六共和国憲法に基づいた第六共和国は、1988年2月25日に盧泰愚が大統領に就任して以来、今日まで持続している。 憲法の詳細は以下参照。
[編集] 行政
[編集] 政府首班
行政権は大韓民国政府(行政府)にある。行政府は、直接選挙で選ばれる大統領が統率し、国会(立法府)が法律として定めた事案などを処理する。大統領は、国会の同意を得て国務総理(首相)を任命し、自らが議長となる国務会議(内閣)の助力を得ながら行政を執行する。国務総理は、行政に関する大統領の命令によって、行政機関(部処庁)を統括する。 詳細は以下を参照。
[編集] 行政機関
韓国の国家行政機関は、部処庁(日本の省庁に相当)と独立委員会に大別される。部処庁は、18部4処18庁から成り立っており、各機関の長官は国務会議(内閣)の国務委員となる。また、独立委員会は部処庁とは別途に存在する機関であり、大統領と国務総理の直属機関、及びその他委員会に分けられる。その他委員会は更に、常駐独立委員会と一時的組織とに大別される。
- 部処庁
- 18部:財政経済部、教育人的資源部、科学技術部、統一部、外交通商部、法務部、国防部、行政自治部、文化観光部、農林部、産業資源部、情報通信部、保健福祉部、環境部、労働部、女性家族部、建設交通部、海洋水産部
- 4処:企画予算処、法制処、国政弘報処、国家報勲処
- 18庁:国税庁、関税庁、調達庁、統計庁、気象庁、検察庁、兵務庁、防衛事業庁、警察庁、消防防災庁、文化財庁、農村振興庁、山林庁、特許庁、中小企業庁、海洋警察庁、食品医薬品安全庁、行政中心複合都市建設庁
- 独立委員会
- 大統領直属機関:大統領秘書室、大統領警護室、監査院、国家情報院、中央人事委員会、国家清廉委員会、国家安全保障会議、民主平和統一諮問会議、国民経済諮問会議、国家科学技術諮問会議、中小企業特別委員会、労使政委員会
- 国務総理直属機関:国務調整室、国務総理秘書室、公正取引委員会、金融監督委員会、国民苦情処理委員会、非常企画委員会、国家青少年委員会
- その他委員会
- 常駐独立委員会:放送委員会、国家人権委員会
- 一時的組織:日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会、親日反民族行為真相糾明委員会、軍疑問死真相糾明委員会
[編集] 国務会議
国務会議(内閣)は、憲法に基づき、政府の権限に属する重要な政策を審議する機関として設けられている(憲法第88条第1項)。議長は大統領、副議長は國務總理が務め、15人以上30人以下の国務委員によって構成されている(第88条第2項、及び第3項)。憲法は、以下の17事項に対し、国務会議での審議を義務義務付けている。
- 国政の基本計画、及び政府の一般政策
- 宣戦、講和など、重要な外交政策
- 憲法改正案、国民投票案、条約案、法律案、及び大統領令案(大統領の命令については、大統領 (大韓民国)#憲法の規定参照)
- 予算案、決算、国有財産処分の基本計画、国の負担となる契約など、財政関連の重要事項
- 大統領の緊急命令、緊急財政経済処分、及び命令・戒厳と、それらの解除(大統領 (大韓民国)#憲法の規定参照)
- 軍事に関する重要事項
- 国会の臨時会集会要求
- 栄典授与
- 赦免、減刑、及び復権
- 行政各部処庁間の権限の画定
- 政府内の権限の委任・配定に関する基本計画
- 国政処理状況の評価・分析
- 行政各部処庁の重要な政策樹立、及び調整
- 政党解散の提訴
- 政府に提出・回付された政府の政策に関係する請願の審査
- 検察総長、合同(韓国全軍)参謀議長、各軍(陸・海・空軍)参謀総長、国立大学校総長、大使、その他法律が定めた公務員、及び国営企業体管理者の任命
- 1~14項目の他に、大統領、国務総理、又は国務委員が提出した事項
[編集] 地方行政
- (編集中)
[編集] 立法
立法権は、一院制の国会(立法府)にある。2004年4月に、議席数が273議席から299議席へと増やされた。大統領弾劾訴追する権限を有する。弾劾詳細は以下を参照。
韓国は複数政党制を採用しており、幾つかの主要政党が合作して国会の職務を執行している。政党の一覧については、以下を参照。
[編集] 司法
韓国では、司法権を有する裁判所(司法府)を法院(법원)と呼ぶ。最高裁判所は大法院(대법원)と呼ばれ、首都のソウルに所在している(2005年時点)。大法院の下には高等法院(고등법원、高等裁判所)があり、5つの主要都市に置かれている。高等法院の下には地方法院(지방법원、地方裁判所)があり、全国に配置されている。他に、家庭法院(가정법원、家庭裁判所)も存在する。民事、刑事ともに、事件は最初に地方法院で扱われ、日本と同様に三審制が採られている。なお、各裁判所の設置場所は以下の通り。
司法分野では、憲法裁判の制度も定められており、以下のような機能を果たしている。
- 他の裁判所から求められた場合に、法律の合憲性を判断する(違憲立法審査権)。
- 裁判官を弾劾する。
- 国会で弾劾訴追された場合に、大統領の弾劾裁判を実施する(詳細は大統領 (大韓民国)#弾劾参照)。
- 政党への解散命令を出す。
- 大法院
大法院は、「法院組織法」第4条2項に基づき、大法院長(日本の最高裁長官に相当)を含む14人の裁判官で構成されている。大法院には、司法行政事務を管掌する法院行政処が設置されており、全裁判官の人事と、司法府の行政を管轄している。現在は、第14代大法院長の李容勳(イ・ヨンフン)が司法府を率いている。
大韓民国大法院長 | ||||
# | 氏名 | 任期 | 憲政期 | 備考 |
1 | 金炳魯 | 1948年8月 - 1957年12月 | 第一共和国 | |
2 | 趙容淳 | 1958年6月 - 1960年5月 | 同上 | |
3 | 趙鎭滿 | 1961年6月 - 1964年1月 | 第二共和国→軍政期→第三共和国 | |
4 | 趙鎭滿 | 1964年1月 - 1968年10月 | 同上 | |
5 | 閔復基 | 1968年10月 - 1973年3月 | 同上→第四共和国 | |
6 | 閔復基 | 1973年3月 - 1978年12月 | 同上 | |
7 | 李英燮 | 1979年3月 - 1981年4月 | 同上→第五共和国 | |
8 | 兪泰興 | 1981年4月 - 1986年4月 | 同上 | |
9 | 金容喆 | 1986年4月 - 1988年6月 | 同上→第六共和国 | |
10 | イ・イルギュ | 1988年7月 - 1990年12月 | 同上 | 漢字未詳。ハングル:이일규。 |
11 | キム・ドクジュ | 1990年12月 - 1993年9月 | 同上 | 漢字未詳。ハングル:김덕주。 |
12 | ユン・グァン | 1993年9月 - 1999年9月 | 同上 | 漢字未詳。ハングル:윤관。 |
13 | 崔鍾泳 | 1999年9月 - 2005年9月 | 同上 | |
14 | 李容勳 | 2005年9月 - (現任) | 同上 |