畑正憲
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畑 正憲(はた まさのり、男性、1935年4月17日 - )は、日本の小説家、エッセイスト、生物学者。愛称、「ムツゴロウ」。日本エッセイスト・クラブ賞(1968年第16回)、菊池寛賞(1977年第25回)受賞。
目次 |
[編集] プロフィール
[編集] 生い立ち
福岡県福岡市生まれ。その後父が満州国に医師として赴任したため、幼年時代を満蒙開拓団の村で育つ。大東亜戦争(太平洋戦争)のさなかに兄の受験に同行して帰国、中学、高校時代を父親の郷里である大分県日田市で過ごす。この間、終戦を迎え、満蒙開拓団の幼馴染はほとんどソ連軍の攻撃を受け集団自決で死亡、両親と弟だけが必死の逃避行の末帰国を果たす。このことにより、両親と生死を共にした弟と、日本で安全に暮らしていた自分との間に深い溝を感じるようになり、また幼馴染をほとんど全て集団自決で亡くしたことによる、根深い人間不信、人間嫌いの心情を抱くようになったことを、自分自身の随筆やインタビュー記事で告白している。これは、元来の自然史好きの傾向にくわえて、コンラート・ローレンツとの対談で自らを「クレイジー」と言わしめるほどの動物好きに傾斜していったことと無関係ではないかもしれない。
[編集] 学業
大分県立日田高等学校から東京大学理科2類に現役で合格。教養学部前期課程時代は駒場寮に住み、数匹の犬を飼っていたが、その犬が東大駒場寮寮生らにより勝手に学園祭で食用として食われてしまったと自身のエッセイで告白している。駒場寮廃寮問題が持ち上がったとき、「あんな汚い物いち早く潰してしまうべき」と率先して廃寮に賛成。余り良い思い出は無いようである。
当時の理科2類は現在の理科3類を含んでいたため、父からは医学部医学科への進学を望まれていたが、理学部動物学科に進学するか文学部哲学科に傍系進学するか悩み、結局父に無断で理学部動物学科を選択し、動物学を専攻。学部卒業後に大学院理学系研究科修士課程に進学してアメーバの生理学的研究に携わり、この頃、日本における動物行動学の草分けである日高敏隆や、ピジョンミルクの研究で東大の研究室に出入りしていた常陸宮正仁親王とも親交を持つ。しかし、研究の途上で文学の世界で生きるか、研究者の世界で生きるか悩み、自殺寸前まで精神的に追い詰められ、恐らくは未修了のまま逃げるように研究室から姿を消す(本人は書類上修了になっているか未修了になっているのかを確認していない)。
[編集] 就職
その後学習研究社の映像部門に就職し、理科関係を中心に学習映画などの作成に携わる。(ムツゴロウという綽名は、学研時代、徹夜で仕事をしている姿が魚のムツゴロウに似ていたことから命名されたと言われていたが、実際はムツゴロウシリーズを出版する際出版社が名付けたと自著で告白。学研時代の綽名は専らセンセイであった。)しかし、社の成長による巨大企業化と、それによる社風の変質を嫌い、社長に直訴状を送って退職。文筆業に専念することになる。文壇では北杜夫に傾倒し、彼の作品を何度も肉筆で筆写して文体を修行した。のちに無人島に移住した際には、事前にわざわざ北杜夫に手紙を出して報告したとの逸話もある。
[編集] ムツゴロウ王国
日田市の高校生時代の幼馴染と結婚して設けた娘を生物に深く触れさせて育てたところ、魚の命を奪って食べることを拒絶するようになったことに衝撃を受け、もっと深く生の自然に触れさせて、表面的な生き物好き的な精神の虚弱さを払拭させて育てることを決意して東京を離れ、北海道厚岸郡浜中町の嶮暮帰島に移住。さらに対岸の浜中町に移り「ムツゴロウ動物王国」を開園(その後標津郡中標津町にも広大な牧場やログハウスの自宅を有したムツ牧場を開園)。ここで多くの動物を飼育しながら文筆生活を送るうちにヒグマとの生活を描いたエッセイや、天然記念物に指定された動物の保全の現状を追跡したルポなどで文壇の中での成功をおさめる。彼の動物との共生生活を描くエッセイに共鳴して押しかけてこの共同生活に加わる若者が増え、この共同体の姿がテレビ番組としてシリーズ放映されて人気番組になった。しかし、「ムツゴロウ動物王国」は原則非公開だったため、北海道で培ったノウハウを生かし都会の人々に動物にふれあってもらうというコンセプトで、2004年7月28日、東京都あきる野市の東京サマーランド内の約9万m²の敷地に観光施設としての「東京ムツゴロウ動物王国」を開園した。北海道には一部のスタッフや動物が残留したが、事実上「ムツゴロウ動物王国」は東京都に移転したことになる。しかし集客が伸びず、2006年10月14日、「ムツゴロウ動物王国」の運営会社だったグローカル21が破綻し負債総額8億円に上ることが明らかとなった。現在は運営主体を畑正憲のプロダクション「ムツプロ」に暫定的に移している。王国崩壊の危機に瀕しているが、ホームページ上では「動物王国はなくなりません」と声明を発表している。
[編集] 趣味
また、麻雀への造詣も深く、日本プロ麻雀連盟の相談役もつとめる。麻雀の腕は相当のもので、2005年現在も存在するタイトル戦「十段位戦」は、あるプロ雀士が「連盟の最高位は九段だが、ムツゴロウさんは十段の実力の持ち主」と評したことにちなんで創設された。ちなみにこの大会には自ら出場し3回優勝している。徹夜麻雀が大好きで、ムツゴロウ王国で「誰かがぶっ倒れるまで打つ」というコンセプトの下、不眠不休で半荘40回戦を打ち続ける「雀魔王戦」というタイトル戦が行われていたこともある。この大会にも自ら出場し第1回・第2回と連覇している。伝統のタイトル戦「最高位戦」は、畑の提唱により創設された。昭和麻雀十傑の一人にも選ばれた。
氏の上記の雀豪ぶりから麻雀漫画家の片山まさゆきは彼を「ウツゴロウ」と評した。また、アーケードゲーム『麻雀格闘倶楽部5』では、プロの1人としてゲームに参加している。
囲碁は正式に五段の腕前。
絵画、50歳ぐらいより始める。独特なタッチで描く動物たちには定評がある。年に1回のペースで個展を開催。
競馬も好きだが、それを話すと世間のムツゴロウのイメージとのギャップに驚かれるらしい。
元西鉄ライオンズ投手の畑隆幸は従兄弟である。西鉄が東京に遠征に来た時には、彼は球場によく足を運んでいたと言われる。 また珍しい食べ物が大好きなことでも知られる。ミミズやアメーバを集めて食べてみたこともあるらしい。
[編集] 著作
- 天然記念物の動物たち(天然記念物に指定された動物の置かれた現状を鋭く描写したルポルタージュシリーズ)
- オオサンショウウオの川
- 人魚の国
- 北の鷲
- 梟の森
- 雷鳥の山
- 北限の猿
- オロロンの島
- 海亀の浜
- 馬の岬
- ムツゴロウ世界動物紀行(角川書店刊)
- 南米・モーリシャス篇(以下SB文庫)
- アフリカ篇
- ニュージーランド・中国篇
- アラスカ篇
- シルクロード篇
- インド・トルコ篇
- ムツゴロウシリーズの随筆
- ムツゴロウの青春記
- ムツゴロウの結婚記
- ムツゴロウの博物誌
- 続ムツゴロウの博物誌
- 続々ムツゴロウの博物誌
- ムツゴロウの動物巷談
- ムツゴロウの無人島記
- ムツゴロウの大勝負
- ムツゴロウの大漁旗
- ムツゴロウの動物王国
- 続ムツゴロウの動物王国
- ムツゴロウの獣医修業
- ムツゴロウのため息
- ムツゴロウの愛馬行進曲
- ムツゴロウの雑居家族
- ムツゴロウの少年期
- ムツゴロウの絵本1~4
- ムツゴロウの放浪記
- ムツゴロウの根釧原野
- ムツゴロウのオーストラリアふしぎ旅
- ムツゴロウの猫読本
- ムツゴロウの雑食日記
- ムツゴロウの世界博物志
- ムツゴロウの 娘よ
- ムツゴロウの自然を食べる
- 畑正憲の精密麻雀
- ムツゴロウの本音
- ムツゴロウの素顔
- われら動物みな兄弟
- どんべえ物語
- ムツゴロウゆうびん箱
- さよならどんべえ
- ムツゴロウの玉手箱
- 動物王国ラプソディ
- 動物王国ノクターン
- ムツゴロウの野生教育
- ムツゴロウの人間教育
- ムツゴロウの人生航海術
- わが王国の住人たち
- もの言わぬスターたち
- ムツゴロウの純情詩集
- 象使いの弟子
- 生きる
- ムツゴロウの大悦声
- ムツゴロウ麻雀記
- どんべえ物語2
- ムツゴロウのにっぽん大旅行
- ムツゴロウの名人ブルース
- ムツゴロウの人間歩行
- ムツゴロウの人間紀行
- ムツゴロウの人間旅行
- ムツゴロウ動物記ヒグマ再び
- ムツゴロウの千変万化
- ムツゴロウの間奏曲
- ムツゴロウの事件簿
- ムツゴロウの大対談
- ムツゴロウの碁好き六好き
- ムツゴロウの人生読本
- ムツゴロウのブッシュマンを訪ねて
- ムツゴロウの自然教育
- ムツゴロウの大交友日記
- ムツゴロウのさわやか日記
- ムツゴロウの馬読本
- ムツゴロウの馬を訪ねて地球一周 1―最愛の友、馬を訪ねて、ムツゴロウ先生、世界を駆ける (1)
- 自然界の建築家たち 1・2
- 「家族の幸せ」ちょっとした法則―人生って素晴らしい!ことがわかる47の妙薬
- ムツゴロウのどこ吹く風
- ムツゴロウの人生上達の術
- ムツさん ジェルミ 魔の島漂流記―ガラパゴス諸島を行く
- ムツゴロウの犬めぐり
- 命に恋して―さよなら「ムツゴロウとゆかいな仲間たち」
- ムツゴロウの動物交際術
- 人という動物と分かりあう
- 犬はどこから…そしてここへ
- ムツゴロウの東京物語(産経新聞東京23区内版に連載中)
- 小説
- 海からきたチフス(ISBN 4797491957、旧題:『ゼロの怪物ヌル』) ジュブナイルSF小説
- ムツ・ゴーロの怪事件
- 青い闇の記録
- 深海艇F7号の冒険
- 純潔夫婦
- ムツゴロウの馬 ショートショート
- 恐竜物語~奇跡のラフティ(上・中・下)
※余談だが、1970年代後半(?)~80年代、小学館と学習雑誌(小学1~6年生)の記事執筆で専属契約を結んでいた(当然「ムツゴロウシリーズ」や『子猫物語』も多く誌上で連載された)。本家ともいうべき学習研究社の学年誌(1~6年の学習/科学)で、彼の作品掲載が小学館に比べて少ないのはこうした事情によるものである。
[編集] 翻訳
- 愛犬物語 ドクター・ヘリオット著
- 輝ける日々 ダニエル スティール、Danielle Steel著
[編集] カセットブック
- ムツゴロウの動物トーク イヌづきあい
- ムツゴロウの動物トーク ネコづきあい
[編集] 出演番組
- ムツゴロウと愉快な仲間たち(フジテレビ)
- 1980年より21年間に渡り、年数回のスペシャル番組として放送された。動物王国で暮らす動物や住人達の生活をありのままに綴ったドキュメンタリーや、畑氏が世界を巡り風土に根ざして暮らす犬・猫など家畜や貴重な野生動物などのリポートを放送。
- 数々の猛獣と体で当たっていく姿は有名で、ライオンと柵越しに接していたところ、右手中指第一関節から上を食い千切られるという事故も放映された。
- ネプチューンの番組「力あわせてゴーゴゴー!!」にゲスト出演した際に、暴走するボブ・サップを猛獣を扱うようになだめた事がある。同番組にまた出演した時に堀内健に「よぉ~しぃよぉ~しぃ」と撫でられた際「それは俺がやるんだよ!俺の盗るなよ!」とツッコんだ。
- パロディ
- とんねるずのみなさんのおかげです・ノリゴロウと愉快な仲間たち(本人もゲスト出演)
[編集] パチンコ台
2007年1月に三洋物産からパチンコ台「CRムツゴロウの動物王国」がリリースされ、全国のパチンコ店に設置されている。なお三洋物産初のタイアップ機である。
[編集] 映画
[編集] 監督・脚本
[編集] 出演
[編集] 原作
[編集] 字幕監修
- ウォーターシップダウンのうさぎたち(1979年/日本ヘラルド映画)