金色夜叉
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金色夜叉(こんじきやしゃ)は、尾崎紅葉著の明治時代の代表的な小説。読売新聞に1897年1月1日~1902年5月11日まで連載された。未完。昭和に入って、度々、映画、ドラマ化されるようになった。
熱海で貫一が追いかけ許しを乞うお宮を下駄で蹴り飛ばす場面が有名である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] あらすじ
一高の学生の間貫一の許婚であるお宮(鴫沢宮)は、結婚を間近にして、目先の金に目が眩んだ親によって、無理やり富豪の富山唯継のところへ嫁がされる。それに激怒した貫一は、熱海で宮を問い詰めるが、宮は本心を明かさない。貫一は宮を蹴り飛ばし、復讐のために、高利貸しになる。一方、お宮も幸せに暮らせずにいた。やがて、貫一は金を捨て、お宮と再会する・・・。 富山は、共同印刷株式会社(博文館)創業者 大橋佐平の息子がモデルと言われている。
[編集] 評価
作者が未完のままに亡くなったため、作品の全体像がつかめないという難点はあるが、雅俗折衷の文体は当時から華麗なものとして賞賛された。だが、自然主義文学の口語文小説が一般化すると、その美文がかえって古めかしいものと思われ、ストーリーの展開の通俗性が強調され、真剣に検討されることは少なくなった。
1940年頃に企画された中央公論社版の『尾崎紅葉全集』の編集過程で、創作メモが発見され、貫一が高利貸しによってためた金を義のために使い切ること、宮が富山に嫁いだのには、意図があってのことだったという構想の一端があきらかにされた。しかし、戦渦の中でこの全集が未完に終わったこともあって、再評価というほどにはならなかった。
1980年代になって、硯友社文学全体の再評価のなかで、典拠や構想についての研究が進み、アメリカの小説にヒントを得て構想されたものであるという説が有力になり、2000年7月、堀啓子北里大学講師が、ミネソタ大学の図書館に所蔵されているバーサ・M・クレー『WEAKER THAN A WOMAN(女より弱きもの)』が種本であることを解明した。
[編集] 文学碑
[編集] 映画版
- 1912年『金色夜叉』 - 製作:横田商会
- 1912年『金色夜叉』 - 製作:吉沢商会
- 1918年『金色夜叉』 - 製作:日活向島撮影所/貫一:藤野秀夫、お宮:衣笠貞之助
- 1918年『続金色夜叉』 - 製作:日活向島撮影所/貫一:藤野秀夫、お宮:衣笠貞之助
- 1921年『金色夜叉』 - 製作:日活向島撮影所/貫一:横山運平、お宮:中山歌子
- 1921年『続金色夜叉』
- 1921年『金色夜叉』 - 製作:小松商会/貫一:伊藤芳夫、お宮:三浦清
- 1922年『金色夜叉』 - 製作:松竹キネマ蒲田撮影所/貫一:諸口十九、お宮:川田芳子
- 1922年『傑作集枠 金色夜叉(明治文壇海岸の悲劇)』 - 製作:松竹キネマ蒲田撮影所/貫一:岩田祐吉、お宮:栗島すみ子
- 1923年『金色夜叉 宮の巻』 - 製作:マキノ映画製作所等持院撮影所/貫一:宮島健一/お宮:田中嘉子
- 1923年『金色夜叉 貫一の巻』 - 製作:マキノ映画製作所等持院撮影所/寛一:宮島健一/お宮:田中嘉子
- 1924年『金色夜叉』 - 製作:日活京都撮影所第二部/寛一:鈴木伝明/お宮:浦辺粂子
- 1924年『金色夜叉』 - 製作:帝国キネマ/寛一:松本泰輔/お宮:歌川八重子
- 1925年『絵巻金色夜叉』 - 製作:アシヤ映画/寛一:松本泰輔/お宮:歌川八重子
- 1930年『剣戟から生れた金色夜叉』 - 製作:市川百々之助プロダクション/寛一:市川百々之助/お宮:久野あかね
- 1930年『続金色夜叉 前後篇』 - 寛一:広瀬恒美/お宮:不明
- 1932年『金色夜叉』 - 製作:松竹キネマ蒲田撮影所/寛一:林長二郎/お宮:田中絹代
- 1932年『金色夜叉』 - 製作:不二映画社/寛一:高田稔/お宮:佐久間妙子
- 1933年『金色夜叉』 - 寛一:鈴木伝明/お宮:山田五十鈴
- 1933年『間貫一』 - 製作:新興キネマ/寛一:中野英治/お宮:中野かほる
- 1934年『金色夜叉』 - 寛一:片桐敏郎/お宮:西条麗子
- 1937年『金色夜叉』 - 製作:松竹大船撮影所/寛一:夏川大二郎/お宮:川崎弘子
- 1948年『金色夜叉 前後篇』 - 製作:東横映画/寛一:上原謙/お宮:轟夕起子
- 1954年『金色夜叉』 - 製作:大映東京撮影所/寛一:根上淳/お宮:山本富士子
[編集] テレビドラマ版
- 1962年『近鉄金曜劇場 金色夜叉』 - 放送:TBS系列/寛一:和田孝/お宮:朝丘雪路
- 1963年『コメディフランキーズ 笑説金色夜叉』 - 放送:TBS系列/寛一:菅原謙二/お宮:朝丘雪路
- 1965年『金色夜叉』 - 放送:NHK/寛一:川崎敬三/お宮:冨士真奈美
- 1966年『金色夜叉』 - 放送:フジテレビ系列/寛一:勝呂誉/お宮:高須賀夫至子
- 1973年『水曜ドラマ 金色夜叉』 - 放送:NHK/寛一:山本亘/お宮:佐久間良子
- 1982年『土曜劇場 金色夜叉』 - 放送:テレビ東京系列
- 1990年『新金色夜叉 百年の恋』 - 放送:フジテレビ系列/寛一:石橋保/お宮:横山めぐみ