南海2000系電車
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南海2000系電車 |
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起動加速度 | 3.1 km/h/s | ||
営業最高速度 | 100km/h(平坦・準山岳区間) | ||
設計最高速度 | 120km/h | ||
編成出力 | 2両編成:100kW×8=800kW
4両編成:100kW×16=1600kW |
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全長/全幅/全高 | 17725mm/2744mm/4130mm | ||
編成重量 | 2両編成:71.5t
4両編成:140.0t |
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軌間 | 1067mm(狭軌) | ||
電気方式 | 直流1500V | ||
制御装置 | 日立製GTO素子VVVFインバータ制御 | ||
ブレーキ方式 | 電磁直通空気ブレーキ(回生ブレーキ併用、応荷重装置付) |
南海2000系電車(なんかい2000けいでんしゃ)は、南海電気鉄道の通勤形電車。
64両が新製され、製造年次によって1・2次車・3・4次車・5次車~7次車に分かれる。
目次 |
[編集] 概要
高野線の山岳区間の橋本駅-極楽橋駅間に入線することが可能な、車体長17mの2扉車ズームカーである21000系・22000系・2200系の置き換え用として、1990年(平成2年)に運用が開始された。
制御方式は南海では初採用となる、日立製作所製GTO素子によるVVVFインバータ制御で、主電動機は東洋電機製造製で出力は100kW、全電動車方式である。
インバータ制御ゆえに、停止時及び下り勾配での抑速制御時の回生ブレーキが可能となっている。回生ブレーキは運転本数の多い区間では発生した電力を他の列車の力行(加速)に容易に回せるので有効だが、それが少ない山岳区間では、他に電力を消費する列車が無く回生失効となるケースが多い。そこで本系列の導入に当たって、山岳区間の変電所に回生電力吸収装置を設置することにより、回生失効を防止するようにした。
車体は軽量ステンレス製のダルフィッシュ(梨地)仕上げとし、コルゲート板はなくビードラインを入れている。先頭車正面はFRP製で、曲線を多く取り入れた形状となり、行先表示器は種別と行先に分けて左右に配置し、側面も種別用と行先用を独立して配置している。車内は荷棚がポリカーボネート製、蛍光灯にはアクリルカバーが付く。在来車との併結の必要性からブレーキは電磁直通ブレーキとなっている。
7回に分けて製造されたため、途中での仕様変更が多く、製造年によりパンタグラフ取り付け位置、車体外板のビード数、内装、座席配置などに違いがある。
車体長を高野線山岳区間の限界にあわせて17mとしたことや、ドアの数も片側2箇所と少ないので、通勤車としてはやや不向きの面もある。
また、本系列は女性専用車両の設定対象外となっている。
[編集] 1・2次車
4両編成3本12両が在籍する。うち1次車は1本4両、2次車は2本8両。2006年現在は全編成休車中で、2001編成は南海本線の羽倉崎検車区に回送されている。
なお、1・2次車と3~7次車との差異点として、
- シートが灰色では無く、赤いシート生地を採用している。(2次車のみ)
- 過去赤いシート生地を採用していたため、座席端部の袖仕切りのみ赤色。(1次車のみ)
- 座席は全席ロングシート。
- ドア付近の座席が5~7次車より多く、ドア付近が狭い。
- 側面のビード(溶接痕)が他車に比べて上下共に1本ずつ多い。
- 当初は東日本旅客鉄道(JR東日本)が横浜線向けに新製した205系電車に類似した緑の濃淡の帯色であったが、後に現行のカラースキームとなる。9000系と同様に、旧塗装時代の帯の跡がある。
- 連結部に妻窓がある。
[編集] 3・4次車
2両編成4本8両が在籍する。2031編成・2032編成が現在休車中で羽倉崎検車区に回送された。
同時期に新製された1000系と同一の車体カラースキームを採用したが、1000系はステンレス製にも関わらず全面塗装されたのに対し、本系列は1000系と同一デザインの帯のみ貼付している。更に4次車はCI導入後の新製のため、車体の「NANKAI」ロゴはCIと同一のフォントとなっている。3次車も後に同じ仕様となった。座席も1000系と同様にバケット式のロングシートを採用したが、クロスシート設置は見送られている。ドア付近の座席数は1・2次車と同じである。また車椅子スペースを設置している。
[編集] 5~7次車
4両編成と2両編成の合計44両が在籍し、本系列の大半を占める最大勢力だが、2042編成と2043編成が現在休車中で2042編成は羽倉崎検車区に回送された。(ただし、2042編成は2006年12月より本線で試運転を開始。余剰となっている一部の2000系を本線に転用するためかどうかは不明)
車端部にクロスシートを設置、中間部は3・4次車同様のロングシートだが、ドア付近の座席を減らした分立席スペースを広く確保している。
なお、2046編成は、一時期の塗料の配備の問題でスカートが灰色から白色に変化していたが、しばらくして元に戻った。また、2043編成は2002年3月28日に始発の難波行き急行の運用中に紀伊細川駅~紀伊神谷駅で早朝に発生した土砂崩れで積もった土砂に乗り上げてスカートと床下機器、パンタグラフ1基を破損した。
[編集] 運用の推移
南海では1990年前後のバブル期に乗客が増加し、車両増備の必要性も増したが、21m4扉車は当時8200系・9000系からモデルチェンジする構想(現在の1000系)があったが、具体的にその内容がまとまっていなかった。高野線については17m車で増備分を賄う事とし、従前の21000系・22000系との汎用性を考慮した本系列を導入した。
高野線の橋本駅までの複線化、小原田車庫開設を数年後に控えており、この時点では将来21000系の置換えとする必要最小限の増備が考えられていた。
ところが1992年(平成4年)の高野線ダイヤ改正で、金剛駅に急行が追加停車することになり、ズームカー急行への乗客集中から朝ラッシュ時に連日5分以上の遅れが常態化する事態となった。
これが1年以上も続き対策を練る事になったが、今更特急も停車するようになった金剛駅を通過とすることも出来ないため、本系列と22000系および更新2200系を併結した際の相性が悪い事(基本的には22000系までの系列は山岳区間と平坦区間で加速性能が違う方式だが、2000系では一貫して高加速度での運行が可能であり、平坦区間では相当の性能差が出てしまった)が、ダイヤの遅れを回復出来ない原因とした。このため17m車は本系列に全て置換える事となる。
1995年(平成7年)に橋本までの複線化が完成した。従来の計画では橋本まで20m車・山線は17m車とする計画が旧ズームカーの置換えを2000系で賄ったことにより、難波-極楽橋間の「大運転」も相当数残り、朝にズームカー10両の急行が誕生した。
本来なら、老朽化していた21000系の置換え用として山線直通での最低限度の新製であったはずだが、金剛停車の混乱の結果で以前の21000・22000系の合計と同数の64両が新製された。橋本までの複線化が完成し小原田車庫が開設された、21世紀初頭の時点では持て余す存在となってしまった。
2003年(平成15年)5月のダイヤ改正からは快急、橋本以北での区急、各停にも運用されるようになったが、女性専用車両の導入により朝ラッシュ時の急行運用から撤退したため、本系列の10連運用も消滅した。
2005年10月のダイヤ改正後は、難波-極楽橋間の急行は一部を除き系統分割が行われ橋本折り返しとされ、昼間時は快急以外の運用はすべて橋本までの運用となった。また、それらの非直通急行の大半は6000系列などの21m車に代わった。橋本で接続する極楽橋行きの各停も2300系の運用が中心となり、大運転・山岳区間運転の運用が大幅に減り、代わって平坦区間の各停や区間急行の運用などに就く編成も増えたものの、半数近い車両が1年以上の間休車となっている。これらの車両の動向に関して公式的に明らかにはなっておらず、様々な憶測も飛び交っているが、本線での試運転が行われた事もあり、泉佐野駅の工事完成に伴い現在普通 関西空港行きの設定により本数の減った泉佐野~和歌山市間の運用につくとの情報が有力である。
多客期には乗車券のみで利用できる臨時特急にも使用される。
現用車両 |
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南海線:50000系・10000系・7000系・7100系・9000系・1000系 高野線(大運転):31000系・30000系・2000系・2300系 高野線(区間運転):11000系・6000系・6100系・6200系・6300系・8200系・1000系 支線・鋼索線:2200系・2230系・コ11・21形 |
過去の車両(昇圧後在籍) |
南海線:旧1000系・1521系・キハ5501・5551形 高野線:20000系・21000系・22000系・8000系 貴志川線:2270系・モハ1201形・クハ21201形 |
過去の車両(昇圧前在籍) |
南海線:電7系・モハ2001形(電9系)・簡易半鋼車・モハ1501形・モハ1551形・11001系・12001系・2051系・サハ4801形 高野線:モハ561形・モハ1251形・クハ1900形・サハ3801形 貴志川線:モハ1051形 |
機関車 |
電気機関車:ED5105形・ED5121形・ED5151形・ED5161形・ED5201形 蒸気機関車:C10001形 |
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