気象通報
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気象通報(きしょうつうほう)は、気象庁が発表した日本全国各地と周辺近隣諸国主要都市の天気と気温、並びに気象庁海洋ブイと船舶からの天気(NHKの気象通報は船舶からの報告のみ)、漁業気象概況を発表する番組で、毎日、NHKラジオ第2放送が1日3回放送を行っている。
ラジオの気象通報をそのまま聞き流すだけでは、各地点の実況・天気概況を知ることしかできないが、放送された各地点のデータを『ラジオ用地上天気図用紙(NHK第2 気象通報受信用)』に記入し地上天気図を作成することにより、天気予報に役立てることができる。天気図用紙にはNo.1とNo.2さらに携帯用があり、No.1にはデータを記入する一覧表と地図、No.2は地図のみが記載されている。No.1が初心者向けとされる。携帯用は高く、登山者向きに作られている。
また、船舶、航空などにむけ、専門的な気象資料を迅速に提供するための、「気象無線模写通報」(JMH)が、ラジオファクスの送信形式で、短波により放送されており、天気図や予報資料を画像で受信することが出来る。 航空用気象無線模写放送(JMJ)があったが、2001年に廃止されているため、厳密な意味での航空向けではない。
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[編集] 放送時間
ここでは全て日本時間表記である。
- NHKラジオ第2放送(制作はラジオセンターが担当)
- 毎日9:10~9:30(6:00発表分)
- 同16:00~16:20(12:00発表分)
- 同22:00~22:20(18:00発表分)
- 担当はNHKアナウンサーだが9:10放送分と22:00放送分はOBのアナウンサー(日本語センター所属も含む)の担当が中心である。(前日22:00放送分と当日9:10放送分は同じアナウンサーの担当。)
- 16:00放送分については、女性アナウンサーが担当するケースが多い。
※2006年11月15日22:00放送分は津波警報発令による「全13波臨時ニュース」として英語(ラジオ第2のほか教育テレビ以外のテレビ放送副音声で放送)による津波関連のニュースの放送のため放送中止となった。放送が中止されるのは津波警報発令による「全13波臨時ニュース」がある場合のみに限られている。
※ラジオNIKKEI第1放送でも、「気象通報・海上気象解説」として、毎日15分間(当初は12:20~12:35だったが、東京証券取引所の後場開始時刻変更に伴って早朝5:30~5:45に移行、3:00発表分)放送されていたが、2005年3月31日の放送を最後に終了している。
※韓国でもKBS第1ラジオで朝5時前頃から気象通報が行われている模様で、日本でも一部地域で聴取可能。韓国に加え、日本の各地の気象も放送される(一部省略されている)。
[編集] 放送の内容
各地の天気→気象庁海洋ブイおよび船舶からの報告→漁業気象(台風〈まれにハリケーンもあり〉や高気圧、低気圧、前線の位置及び海上警報に準ずる風速、濃霧等の情報)→日本付近を通る○ヘクトパスカルの等圧線の位置2本(1本、3本や4本のときもある)→(海上保安庁からのお知らせ)→終了アナウンス→コールサイン
- 以前は冒頭で「全国天気概況」として高・低気圧の所在、日本各地の大まかな天気分布、気温の平年差などを伝えていたが、漁業気象等の情報量の増加に伴い省略され、最初から「各地の天気」に入る。
- 船舶からの報告では、気温だけが放送されない。他の要素は陸上の観測地点と同じ。
- 全ての放送内容が終了してもなお時間が余った場合、漁業気象の最初の部分を時間まで再度読み上げる。
- 台風が日本に接近または上陸している場合は、定時の発表時刻の2時間後の台風情報も放送。
- 随時、海上保安庁からのお知らせも放送(末尾の1分間を利用して、日本付近を航行中の船舶に向けて海上自衛隊やアメリカ軍の訓練が行われる海域や黒潮などの海流推測などの情報が提供される)。
- 終了時には担当アナウンサーによって多少異なるが、おおよそ「この時間の気象通報をお伝えしました。時刻は間もなく○時○分になるところです。NHK(『エヌ・エイチ・ケイ』と区切った形でいうことが多い)」とアナウンスが入る。「NHK」は省略される場合や、内容が多い場合など終了アナウンスが尻切れになって、次のコールサインの送出になってしまうことがある。
- その後、各局の識別信号(コールサイン)の送出(東京の場合、女性アナウンサーによる「JOAB、NHK東京第2放送です」)が行われ、次の番組に移る。
[編集] 気象通報の内容を読み上げるパターン
気象通報における気象要素の読み上げには定まった様式があり、以下に示すように放送される。
- (観測地名)では(最近は「では」を省略する場合も多い)、(風向)の風 風力(数値)、(その時点の天気)、(気圧)hPa、(気温)度。
- 気圧については1000hPaを超える場合は下二桁のみ読み上げる。ただし石垣島は放送の最初に出る観測地点であるため、後続の地点の参考になるよう各気象要素名を告げ、1000hPaを越える場合でも全ての数値を読み上げる。ただし、一部のアナウンサーは石垣島から上二桁を省略して読み上げる。
- 気温がマイナスの場合は、氷点下(気温)と読み上げ。
- 時には、気象要素の一部或いは全てが気象庁に入電せず、放送されないこともある。国内の観測地点ではまず無い(南鳥島でごく稀にある)が、外国(多いのはロシアやフィリピン)や船舶からの報告ではしばしばある。
- 例:石垣島では、北東の風、風力4、天気曇り、気圧1016ヘクトパスカル、気温11度。那覇では、北北東の風、風力3、にわか雨、15ヘクトパスカル、12度。・・・浦河では、西北西の風、風力9、にわか雪、02ヘクトパスカル、氷点下2度。根室では、西の風、風力5、曇り、997ヘクトパスカル、氷点下4度。・・・ウラジオストクからは入電ありません。・・・長春では、風向・風力は不明、快晴、22ヘクトパスカル、氷点下15度。・・・
- 船舶の報告では、(大まかな海域名)、(緯度・経度)、以下気温が報じられない他は陸上の観測地点と同じ。なお、一部では部分的に記録不明となる場合もある。(風向・風力・天気不明で、気圧のみ発表される場合とか、その逆で風向・風力・天気は記録されているが、気圧が不明となるケースなど)
- 例:南シナ海の北緯16度、東経117度では、北北東の風、風力6、天気曇り、気圧15ヘクトパスカル。フィリピン東方の北緯17度、東経129度では、北北西の風、風力3、晴れ、14ヘクトパスカル。・・・北海道東方の北緯43度、東経150度では、南南東の風、風力8、天気不明、998ヘクトパスカル。
- 漁業気象では、台風・高気圧・低気圧の位置と勢力、進行方向が、前線の場合は位置が報じられる。他に、強風が吹いている海域や濃い霧が発生している海域も報じられる。台風や勢力の強い低気圧の場合は予報円の位置と大きさも発表される。
- 最後に日本付近を通る主な等圧線の位置を報じる。
- 例:三陸沖の北緯39度、東経146度には、988ヘクトパスカルの低気圧があって、東北東に毎時45キロで進んでいます。中心から温暖前線が北緯38度、東経151度に伸び、寒冷前線が北緯32度、東経142度、北緯29度、東経138度に伸びています。中心から900キロ以内では、15メートルから20メートルの強い風が吹いています。南シナ海の北緯20度、東経118度、北緯15度、東経116度、北緯14度、東経112度、北緯17度、東経112度の各点で囲まれた海域では、北東の風が15メートルから18メートルに達しています。・・・華北の北緯41度、東経117度には、1046ヘクトパスカルの高気圧があって、南東に20キロで移動しています。・・・日本付近を通る1016ヘクトパスカルの等圧線は、北緯16度、東経118度、北緯23度、東経124度、北緯・・・の各点を通っています(一周りする場合は「・・・を通って、元の北緯16度、東経118度に戻っています」となる)。
[編集] 観測地
【 】内は代替地点
- 石垣島(沖縄県石垣市)
- 那覇(沖縄県那覇市)
- 南大東島(沖縄県島尻郡南大東村)
- 名瀬(鹿児島県奄美市)(奄美大島)
- 鹿児島(鹿児島県鹿児島市)
- 福江(長崎県五島市)(福江島)
- 厳原(長崎県対馬市)(対馬)
- 足摺岬(高知県土佐清水市)←(注1)
- 室戸岬(高知県室戸市)
- 松山(愛媛県松山市)、以前は広島
- 浜田(島根県浜田市)
- 西郷(島根県隠岐郡隠岐の島町)(隠岐島島後島)
- 大阪(大阪府大阪市)
- 潮岬(和歌山県東牟婁郡串本町)
- 八丈島(東京都八丈支庁八丈町)
- 大島(東京都大島支庁大島町)
- 御前崎(静岡県御前崎市)
- 銚子(千葉県銚子市)
- 前橋(群馬県前橋市)
- 小名浜(福島県いわき市)
- 輪島(石川県輪島市)
- 相川(新潟県佐渡市)
- 仙台(宮城県仙台市)、以前は石巻
- 宮古(岩手県宮古市)
- 秋田(秋田県秋田市)
- 函館(北海道渡島支庁函館市)
- 浦河(北海道日高支庁浦河郡浦河町)
- 根室(北海道根室支庁根室市)
- 稚内(北海道宗谷支庁稚内市)
- ロシア連邦(サハリン州の2地点については日本政府は「国際法上所属未定地」との立場をとっているが、ロシア連邦が実効支配しており、日本以外の国もロシア連邦の主権を認めているため、ここではロシア連邦に分類する。)
- 大韓民国
- 台湾(中華民国)
- 中華人民共和国
- フィリピン共和国
- バスコ 【ラワーグ】(最近はラワーグからの入電のみ)
- マニラ (観測場所は ニノイアキノ国際空港)
(注1)足摺岬は現在、正確には「清水測候所」と言い、国際名は「清水」で扱っている。以前は「清水測候所足摺分室」だった。
(注2)テチューヘとは、日本海に面したルドナヤプリスタニから30キロ以上山中に入った町「ダリネゴルスク」の旧名であるので、テチューヘという町が「改名」してルドナヤプリスタニになったわけではなく、1995年に、観測所の移設に伴う観測所名の変更があったことによる。
(注3)2006年8月下旬に南鳥島に接近した台風12号により、事前に観測員が避難したため、しばらく入電なしの状態が続いていたが、同年9月末ごろより復帰した。休止の報道リンク
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 気象無線模写通報(JMH)スケジュール(PDF)(気象庁予報部)
- 気象無線模写通報(JMH)用最新天気図(気象庁予報部・隠しサイト)
- 気象庁 | 天気図の解説(気象通報で読み上げられる各地の観測値および低気圧や前線の位置が掲載)
- 気象庁 | 過去1週間の「各地の観測値と低気圧や前線の位置」(気象通報で読み上げられる各地の観測値および低気圧や前線の位置がを一昨日までの過去1週間分掲載)
- 気象通報の部屋
- blog 「天気図」を描こう!(毎12時の気象通報データを掲載)
- Yahoo!ブログ - 気象通報データ(毎18時の気象通報データを掲載)
- 気まぐれファリオン(6時・12時・18時の気象通報データを掲載)
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