コロッサス級航空母艦
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コロッサス級航空母艦 | ||
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要目 | ||
排水量 | 13,600t | |
全長 | 211.8m | |
全幅 | 24m | |
吃水 | 7.2m | |
機関 | 蒸気タービン2基 | 40,000hp |
最大速力 | 25ノット 2軸推進 | |
航続距離 | 12,000nm (14ノット) | |
乗員 | 1,300名(航空要員含む) | |
搭載機 | 48機 |
コロッサス級航空母艦 (Colossus class aircraft carrier) はイギリス海軍が第二次世界大戦中に計画した軽空母である。戦時急造空母として設計されたが戦後も多くの国の海軍で使用され続けた。
コロッサス級は全部で16隻の建艦が予定されていた。しかし後期の6隻は一時建艦が中断され、より大型の艦載機を運用できるように改設計されたためマジェスティック級航空母艦と新たに名付けられた。そのためコロッサス級として完成したのは10隻である。また、その10隻のうち2隻(パーシュースとパイオニア)は改設計の後、航空機整備艦として就役した。
目次 |
[編集] 背景
1941年12月、プリンス・オブ・ウェールズとレパルスが日本海軍の陸上攻撃機によって撃沈されたことは、航空機支援の無い主要艦の、空からの攻撃に対する脆弱性を明らかにし、海軍航空戦力の早急なる拡大の必要性を浮彫にした。
大戦開始当初、イギリス海軍は護衛空母と正規空母の2種類を運用していた。しかし、護衛空母は輸送艦隊の護衛を第一に設計されており、攻撃的役割は皆無に等しかった。その速力の遅さとサイズの小ささは、高性能艦上戦闘機の運用母体となることを不可能としていたのだ。一方、高価な正規空母は装備するには数が足らず、さらに建艦にも時間がかかる。商船からの改造もしばらく考慮されたが、輸送船の必要性からそれは拒否された。
この空母の不足を埋めるための窮余の策として登場した戦時急造空母がコロッサス級である。
[編集] 設計
コロッサス級航空母艦はイラストリアス級航空母艦の設計を基礎としながらも、2年で完成できるようにという目標のため、排水量をほぼ半分近くまで縮小したうえ建艦が容易なように軍艦の標準的な方法ではなく商船の設計法で作られている。にもかかわらずその一方で、通常空母並みの航空戦力を維持するために飛行甲板長と搭載機数はほとんど減っていない。
その無理のしわ寄せは防御力に現れている。イラストリアス級を初めとした当時のイギリス空母は装甲甲板を有することを特徴とし、沖縄戦での日本軍の特攻機の命中からも数時間で飛行甲板を使用可能としたことで有名だが、コロッサス級にはその装甲甲板が装備されていない。また、最大速度も通常空母が30ノットを超えていたのに対し25ノットと比較的低速に留まっている。飛行甲板が軟鋼で作られていた為、温度変化などによって飛行甲板が波打ったり罅割れを起こす事があった。
しかし、この飛行甲板長が排水量のわりに比較的長いという点は、戦後のジェット艦載機化時代にもこの級の航空母艦が生き残る事ができた理由の一つともなった。
[編集] 同型艦
当初の目的である第二次世界大戦に間に合った艦は半数ほどしかないが、戦後は貸与・売却などによりイギリス海軍を除いても延べ6カ国で使用された。現在は全て退役しているが、最終的な退役は21世紀になってからという、戦時急造艦としては予想外に長い命脈を保った艦級でもある。
- 1945年8月就役。朝鮮戦争に参加。第二次中東戦争では物資の上陸に重要な役割を果たす。1962年解体。
- 当初はエドガー (Edgar ) の名前で設計されていたが、再命名されて1945年10月に就役。同型艦のパイオニア同様、航空機整備艦とされており、1949年には蒸気カタパルトの実験を行っている。1958年に解体。
- パイオニア(Pioneer:先駆者)
- 当初はイサリオン (Ethalion ) の名称で計画されていた。その後マーズ (Mars )という名に変更され、更にパイオニアと再命名されて1945年2月に就役。航空機整備艦として改設計された。1954年解体。
- トライアンフ(Triumph:凱旋)
- 1946年5月就役。朝鮮戦争に参加。仁川上陸作戦では航空支援を務める。1981年解体。
- 1945年1月就役。第二次世界大戦では太平洋戦線に回され、戦後はそのままカナダ人・オーストラリア人戦争捕虜の本国移送任務に就く。1948年オランダに売却、カレル・ドールマンとなる。さらにアルゼンチンに再売却され、1969年ベインティシンコ・デ・マヨとなり、フォークランド戦争に参加して建造国のイギリスと対戦。1997年に退役し、2000年にインドに曳航されスクラップにされた。
- ヴェンジャンス(Vengeancce:復讐)
- 1945年1月就役。太平洋戦線で終戦を迎えた後香港の再占領に向かい、その後戦争捕虜の移送任務に就く。1953年から1955年までオーストラリア海軍に貸与。1956年にブラジルに売却され、ミナス・ジェライスとなる。2001年に退役、2004年に解体。
- 1946年1月、竣工とほぼ同時にカナダ海軍に貸与。1948年にイギリスに返却され、イギリス最初の水爆実験に参加する。朝鮮戦争に参加の後、1954年に改装を受け、このとき実験的に小角度のアングルド・デッキを設置している。1958年アルゼンチンに売却されてインデペンデンシアとなる。1971年に解体。