ミニFM
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ミニFM(ミニFM放送局)とは、電波法で規制されていない微弱電波を使ったFM放送及びその無線局を指す。 無線局免許や無線従事者免許が必要なく、正式な「放送局」と認められない。微弱電波を超える出力にすれば違法となり当局(日本では総務省総合通信局)による取締りの対象となる。
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[編集] 免許の不要な微弱電波の定義
「微弱電波」とは、電波法第4条で「発射する電波が著しく微弱な無線局に該当するもの」で、「無線設備から3メートルの距離において、その電界強度が毎メートル500マイクロボルト以下のもの」と規定されている(出力による制限ではない)。以前は、100メートルの距離において毎メートル15マイクロボルトだった(計測する距離が変わっただけで基本的に同じ)。
市販されているFMラジオの実用感度が大体100マイクロボルト程度なので(放送局の放送エリアが毎メートル250マイクロボルトの電界強度で定義されているのもこのため)10m~50m程度の範囲(カーラジオなどの高感度な受信機では100m~1km程度)でしか到達しないが、この微弱電波で送信しているFM放送がいわゆる「ミニFM」と呼ばれる。かつて日本では八王子市で微弱電波を超える出力で送信していた「FM西東京」(現在のコミュニティ放送局「エフエム西東京」とは無関係)なる局が摘発されたことがある。違法行為には刑事罰が定められており、出力には十分注意する必要がある。
電波法の範囲内の電波であれば誰でも簡単に開設出来るため、場所を選ばず放送する例が多い。学園祭や運動会など、町の話題や地域のコミュニケーションの場としての放送や、商店街や町興し、イベントの会場案内、スタジアムや競馬場での実況放送などに使われる場合もある。
[編集] 近年のミニFM
個人規模での発信の場合、近年では「インターネットラジオ」による同時放送やストリーミングによる全国ネットなども行われることが多くなった。
現在では特定地域に密着した放送を行うための発展形としてコミュニティ放送がある他、競馬場ではAM局やグリーンチャンネルの再送信を場内ミニFMを利用して行っていたり、モータースポーツのサーキットや大相撲の両国国技館ではミニFMを使って場内実況放送をしているケースがあるため、決して個人の無線マニア的な放送のみでは無くなってきたのが実情である。
このような団体の存在意義としては、地方のミニFMが互いに中継をしあうことにより、広範囲にわたって微弱な電波のネットワークで街をカバーする目的もある。これは、キー局を決めて、互いに送信周波数を少しずつずらしながら、連携して放送する方法が主流である。かつてはこれらのネットワークで、たとえば同級生からのリクエストを受け付けたりといった一種のブームも存在した。
現在ではこのようなサブカルチャーは、主にインターネット上のストリーミングやPodcastなどで行われており、中高年者を除いてミニFMを続けている者は少なく(但し、微弱電波は著作権などの規制・取り締まりも皆無に等しく、設備が簡素でも手軽に放送できるため、小中学生などの個人放送初心者が開局する例も多い)、トランスミッターなども、デジタルオーディオプレーヤーをカーステレオやラジカセ・ミニコンポに飛ばす物や、パーツ・キットの物などを除けばほとんど見かけなくなるに至った。
[編集] ミニFMの技術的解説
ミニFM局を開設するには、FMトランスミッター(FM電波送信機)と、それに繋ぐ送信用のアンテナが必要である。
通常、市販されているFMトランスミッターの出力は数ミリワット程度であり、通常であれば、近隣の数十~数百メートル程度でしか聞けないほどであるが、FM用の八木アンテナなどを設置して受信可能地域を増やす方法もある。
但し、トランスミッターによっては、予想以上に聴取範囲が広がることもあり得るため、アマチュア無線用のグランドプレーンアンテナの長さを調節する事などで送信される電波の強さをコントロールする。
トランスミッターとアンテナとの間の接続は同軸ケーブルを利用するが、一般にトランスミッターの出力インピーダンスは、50オームのため、受信用に用いられている75オームの同軸をそのまま使用するよりも専用の物を用いるのが好ましい。
トランスミッター(送信機)は、PLLシンセサイザー(周波数安定回路)を積んだ安定度が高いもので、かつ高セパレーション(ステレオ受信時に左右の音が交わらない)の物が好ましいが、"TR-10RDX"など一部を除いては組み立てキットタイプが多く、電子技術の知識が無い場合は製作が難しい。
[編集] 災害に活躍したミニFM
そもそも「放送」とは免許が必要であるが、災害時の情報の提供を含めた目的で、神戸市長田区の「FMわぃわぃ」(および前身の「FMヨボセヨ」「FMユーメン」)は、阪神・淡路大震災発生時に地域の支援放送を多言語で行って話題になった(県域以上のFM局ではカバーできる範囲が広すぎるため、全体的な情報のみの災害放送になりやすい)。震災後、「FMわいわい」は、コミュニティ放送の免許を受けて放送局として開局し放送を行っている。
同じ現象は西宮のFMラルース(後にさくらFMとなる)にもみられる。
[編集] ミニAM
ミニFMだけではなく、ミニAMステーションもかつて存在した(現在も少数ながら存在していて、復刻版電子ブロックや自作回路でも組める。当時、電子ブロックでもAMトランスミッターが組めたため、70年代の小学生は、電子ブロックのブーム時には使われていたが、2SA172もしくは2SA353の発振回路に直接ベース変調を掛け、高周波増幅を持たない回路であったため、実用性は乏しかった。ミニAMは周波数の特性上電波がFMより広範囲に届く利点がある(直進性がFMより弱いので建物の影でも回り込んで受信できる)が、ある程度長いアンテナが必要なことと夜間は他の局と混信しやすい欠点がある。
[編集] ミニテレビ
また、ミニテレビも少数ながら存在する。著作権の制限も皆無(アダルトビデオを流しても捕まらない、とまで言われている)であるが手軽に開局するというのは難しい。しかもUHF帯の場合の微弱電波の定義が「無線設備から3メートルの距離において、その電界強度が毎メートル35マイクロボルト以下のもの」となるため、エリアも狭い場合が多い(もっとも、ビデオデッキなどから部品を取り加工しない限り微弱電波のVHF送信機がほとんどないのが実情。また、デジタル対応の微弱電波送信機もまだ発売されていない)。本物のTV局の送信波は6MHz幅の残留側波帯であるのに対し、ミニテレビの送信波は9.5MHz幅の両側波帯である(特に安いUHFトランスミッターなど)場合があるので、放送がある周波数の隣のチャンネルを使用すると放送受信に妨害を与えてしまう可能性があり、注意を要する。場合によってはチャンネル数を離しても受信に妨害を与えてしまうこともあるため、放送を行う前に他の局の受信に影響を受けていないか確認をし、問題があれば対処してから放送を行うのが望ましい(ビデオデッキなどに使われるVHF送信機などはあまり影響を受けないが)。
[編集] ミニFMをテーマにした映画作品など
[編集] その他のFMラジオの種類
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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