女性差別
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女性差別(じょせいさべつ)とは、被差別者が女性であることを理由として行なわれる差別のことである。事例は各国によって異なる。
目次 |
[編集] 日本の事例(内閣府男女共同参画局による)
内閣府男女共同参画局は主に以下の事例を女性差別として挙げている[1]
[編集] 女性労働問題
労働における女性差別的な制度は改善されつつある一方、欧米等の先進国に比べれば、まだまだ改善が足りないとする意見が多い。例えば、「男女共同参画に関する世論調査(2004年度)」によると職場において女性の方が差別されていると感じている国民は女性62.8%、男性55.5%と共に過半数を超えている。
以前は男性は総合職、女性は一般職と分けることによって、昇進・給与等に格差があったが、男女雇用機会均等法以降、総合職・一般職といった区分が曖昧になったり[2]、区分を廃止する企業が増え、女性が管理職や社長になることも珍しくなくなってきている。ただし、割合としては、女性の管理職率は部長相当職では1.6%(1998年度1.2%)、課長相当職が2.6%(同2.4%)、係長相当職が7.7%(同7.8%)とまだまだ低い。他国の例では米国は女性の管理職率の割合は49.1%である。(2000年度)[3] また、日本の裁判官(特にキャリアの長い年配の裁判官)は圧倒的に男性が多いことから、裁判で扱われる女性の労働事件(人事処遇や解雇)において、女性労働者の要求を汲んだ判断がされているかどうか不安があるとの意見がある。(『司法における性差別 ―司法改革にジェンダーの視点を』日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会・2001年度シンポジウム実行委員会 明石書店)
[編集] 女性の就業に関する意識
女性が職業を持つ事に対する国民の考えは、2006年に「子どもができてもずっと働きつづけるほうがよい」と考える「継続就業」支持が、「子どもが大きくなったら再就職するほうがよい」と考える割合よりも上回った。出産を機に退職したいと思う女性の割合は年々減っており、大卒女性では57.1%が勤務を継続したいと回答しており、出産結婚で中断したいと思う割合28.1%を大きく上回った。[4]
[編集] 賃金格差問題
男性一般労働者の給与水準を100とした場合、女性一般労働者の給与水準は、増加傾向にはあるものの、2004年時点で68.8に留まっている。パートタイム・フルタイムについては、男性が低下傾向にある一方で女性は上昇傾向にあり、差は縮まっているものの、2004年時点で男性50.6に対し女性45.2となっている[5]。
なお、2007年4月1日より改正男女雇用機会均等法が施行され、雇用や給与におけるあらゆる女性差別は違法となった。
[編集] 女性の教育問題
「男女共同参画に関する世論調査(2004年度)」によると、学校教育において男性の方が優遇されていると考えている者は、女性15.8%、男性11.0%となっている。
戦前の大学は、ほとんど男性しか進学する事ができなかったが、戦後の米国指導による男女平等により共学化が進んだ。女性の進学率は上昇傾向であるが、2005年度の大学への進学率は男子51.3%、女子36.8%と依然として男子が15%高い。但し女子は、全体の13.0%が短期大学へ進学しており,これを合わせると,女子の大学進学率は49.8%となる。[6]。
[編集] 女性の専攻分野の偏り
平成17年度の工学専攻の女子の割合は10.5%と最も低い。理系は全体的に女性の割合が低い。 女子の理系への進学率が低い状態に対し、内閣府は女子の理工系への進学・就職を応援するためのチャレンジ・キャンペーン[7]を始めた。また、大学側も女子の理系への進学率を上げる事に取り組んでいる。例えば 東京農工大学は理系志望の女子高校生に大学を知ってもらうために女性教授によるアドバイスをしている[8]。以前は理系だけではなく全体として男女の偏りがあったが、97年度の社会科学は23.9%(92年度17.4%)、農学(同29.4%)など、女子生徒は全体的に増加傾向にある。
[編集] 女性と家事育児
「家事・育児・介護などは女性がすべき」「仕事をして妻子を養うことは男性の役割」という習慣により起こる差別である。「男女共同参画に関する世論調査」では家庭において男女は平等であると感じている人は女性31.5%、男性49.0%と低い数字となっている。
80年代から増加傾向にある共働き夫婦では、共働きの家庭において女性にのみ家事の負荷がかかるケースが増えた。例えば、総務省「社会生活基本調査」(平成13年)によると、共働き世帯における妻の平均家事関連時間が 4時間12分であるのに対し、夫の平均家事関連時間は 25分にとどまっている。ジャーナリストのマイケル・レージンガーによると、女性は専業主婦になると家から出られず、完全な孤独に追い込まれる。典型的な日本の父親は平日の夜、10時か11時まで帰宅しないからである。女性にとって赤ちゃんを産んで、フルタイムの仕事を持って、家事もこなすというのは殆ど自殺行為だという。欧米では父親は1日に最低2~3時間は子育てに時間を費やすが、日本の父親は平均して45分しか費やさないという。原因の一因として、欧米の子育てには子供が自立するために育てる意識があるが、日本の子育てには常に「甘え」という母親との上下関係が付きまとうためだという。[9]
しかし一般に夫の収入が多い場合は女性は家事、育児に専念でき共働きする必要自体が無い。 なお、この家事への負担格差が女性の結婚に対する負担感となっている(平成12年男女共同参画白書)。
男性の育児については、企業側の理解が少ないことも指摘されている。例えば、法律によって認められている育児休暇については、女性の取得率が 73.1% なのに対し、男性の取得率は 0.44% に留まっている(平成15年度・女性雇用管理基本調査(厚生労働省)より)
[編集] 日本の事例(その他)
世界経済フォーラムが2006年に発表した、世界各国の男女差別の度合いを指標化した「男女格差報告」(Global Gender Gap Report 2006)では、日本は世界115カ国中79位と、途上国並みの評価となった。これは、日本女性が責任を伴った影響力のある仕事に就いている割合が低い等による。
その他の社会習慣について、山や土俵への女性の立ち入りを制限している事例がある。詳細については女人禁制を参照。
[編集] 他国の事例
[編集] イスラム諸国
イスラム教を信仰する中東諸国では、イスラム教の教義が欧米の観点からみると女性差別として映る部分があるため、しばしばの論争の火種となる。
なお、イスラム教のコーランは、宗教的な教義だけでなく日常の生活における決め事も定めているため、イスラム教を信仰する者は日常生活でもイスラム教の教えに従っている。ただし、地域によって生活に対する決め事をどれだけ守るかどうかには差がある。
以下にいくつかの事例を挙げる。
- 女性の肌の露出の禁止
- 教育を受ける権利
- 特に初等教育を受ける権利が侵害されることによって、イスラム教国を中心に女性の方が男性よりも識字率が低くなっている地域がある(特にイエメンでは、男性69.5%に対し、女性は28.5%となっている)[10]
- イランでの女性のスポーツ観戦の禁止
[編集] 兵役の有無と男女差別との関連性
女性の参政権が最も初期に認められたのがイギリス、アメリカであるが、その理由は第一次世界大戦で女性が通信や看護の面で軍に協力したことが大きい。すなわち、兵役などの社会的な義務を負担する者に参政権などの社会的な権利が認められるべきであると考えられていたためである[要出典]。
このことからイスラエルのフェミニスト団体は、徴兵制の女性への拡大を強く主張し、女性徴兵制を実現させることで、世界有数の男女平等社会の確立に成功したと言われる。しかし、兵役の期間や任務内容などは男性よりも短かったり、楽な後方支援が中心であり、戦死者数も男性に遠く及ばない[要出典]。
[編集] 過去の日本における事例
以下では、日本における事例を挙げる。なお、戦前においては、参政権や教育を受ける権利も議論となっていた。婦人参政権、男女共学、性差別なども参照。
- 高等学校等への進学率は、昭和35年度は男子55.5%、女子47.4%と差があったが、平成17年度では女子96.8%、男子96.1%と女子の方が高くなっている。
- 最高裁が男女別定年制を違憲とした判例
・伊豆シャボテン公園事件昭和50年8月29日 ・日産自動車事件昭和56年3月24日 ・放射線影響研究所事件平成2年5月28日
- 1981年(昭和56年)3月24日、那覇地裁においてトートーメー継承問題(女性に財産相続権が認められない慣習)を違憲とする判決が下る。トートーメーは沖縄式の位牌。現在でも沖縄では先祖崇拝心の厚さから、長男優位の相続慣習が根強い。
- 1985年(昭和60年)6月第102回国会外務委員会において、外務政務次官森山眞弓が小金井カントリー倶楽部でのコンペ参加を「女性である」という理由で断られた件について、大変に遺憾である旨の答弁を行った。
また、外務大臣安倍晋太郎はこの事実を直前に知り、強い遺憾の意を示すために同コンペの参加を見送ったと述べている。参議院会議録情報
ちなみに、第102回国会に於いて女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約締結を承認している。
- 1995年(平成7年)8月、住友金属工業の女性社員4人が昇給・昇進で差別されたとして訴訟を起こす。
やがて訴訟は他の住友グループ各社にも広がる。内訳は住友電気工業(2人)住友化学(3人)住友生命(12人)。
10年以上続いた一連の裁判は、2006年4月の住友金属工業と原告との和解を以って終止符が打たれた。
- 2003年(平成15年) 7月、中高一貫の男子校海陽学園設立構想に対し、名古屋の女性グループ「ワーキングウーマン」など15団体が連名でトヨタ自動車・中部電力・JR東海の三社宛に女性を排除せぬよう抗議。その後弁護士会や男女共同参画局に審議を要請するが、愛知県は設立を許可、2006年開校。
開校当初の同校への批判は女性差別の観点からではなく、同校のエリート養成方針に対して教育格差の観点からなされることが多かった。
[編集] 出典
- ^ http://www.gender.go.jp/whitepaper-index.html
- ^ 『最近では、規制緩和などで業務の多様化が進み明快な線引きがむずかしく、一般職・業務職・総合職の垣根が低くなり、実務上での大きな差異はなくなってきている。』「揺れ動く一般職・総合職の選択」より(2007年3月1日 読売新聞)
- ^ 日本における女性の就業の現状 - Women's Online Media のページ
- ^ 就業分野における男女共同参画 - 内閣府男女共同参画局のページ
- ^ http://www.gender.go.jp/whitepaper/h17/danjyo_gaiyou/danjyo/html/zuhyo/G_23.html
- ^ http://www.gender.go.jp/whitepaper/h18/gaiyou/danjyo/html/honpen/chap01_08.html
- ^ チャレンジキャンペーン - 内閣府男女共同参画局のページ
- ^ 「女子の理系進学 後押し」教育ルネサンス 夏の学校(13) - 読売新聞
- ^ マイケル・レージンガー著「ひきこもりの国」
- ^ 「世界の統計」(総務省)
- ^ 「革命後は状況が一変。女性のスポーツは宗教上好ましくないと見なされ、異性の競技を観戦することも許されなくなった。」(2006年11月22日 千葉日報より)
[編集] 関連項目
- 性差別
- 男尊女卑
- 男性差別
- 間接差別
- 積極的差別是正措置
- 女子差別撤廃条約
- 男女同権
- 男女共同参画社会
- 世界女性会議
- 国際女性デー
- 世界経済フォーラム
- 女性参政権
- 女性政治家
- 現職女性政治家の一覧
- 男女雇用機会均等法
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
- 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
- 女性学
- フェミニズム
- 反フェミニズム
- ジェンダー
- ジェンダーフリー
- アンドレア・ドウォーキン
- 女人禁制
- セクシャルハラスメント
- ドメスティックバイオレンス
- 育児休暇
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