新たな形態の銀行
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新たな形態の銀行(あらたなけいたいのぎんこう)とは、都市銀行や地方銀行、信託銀行など従来の伝統的な銀行にはない業務を行う銀行を指す、金融庁の分類用語である。
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[編集] 概要
具体的には、2000年9月26日に事業免許を取得し、10月12日営業を開始した「ジャパンネット銀行」以降に設立・営業を開始(予定)の銀行を指す言葉として定義されている。
第二日本承継銀行を除き、いずれも実店舗数を最低限に抑え(基本的には対面窓口のない、組織上だけの預金口座のある本店営業部のみ)、入出金業務は提携先・出資元銀行や郵便局、コンビニエンスストアなどのATMやインターネットを利用した形を取ることで、運営コストを低くしている銀行が多く、従来の銀行に比べて各種手数料が安い、預金金利が高いなど特徴を持つ。
2007年1月1日現在、業態としては、次のようなものがある。この他、整理回収機構も「新たな形態の銀行」として扱われている。
- ネット専業銀行
- 全国へのコンビニATMの展開を主体にする銀行
- 中小企業への融資を主体にする銀行
- 破綻した銀行の業務を一時的に引き継ぐ事を主体にする銀行
- ショッピングセンター利用の個人を対象とした銀行(2007年1月時点で開業している銀行はないが、2007年内にも開業予定)
[編集] ネット専業銀行
ネット専業銀行(-せんぎょうぎんこう)とは、利用者に対し直接現金や証券証書類の受け払いを行う実店舗(窓口やATM)を設置せず、営業上必要な拠点のみを設置し、インターネットや電話を介した取引の提供に特化した銀行のこと。インターネット銀行などとも呼ばれる。インターネットバンキングも参照。
顧客の側の利点としては、簡便な口座開設や手続き、24時間取引、手数料の割安さ、有利な預金金利、特色ある金融商品などがあげられる(もっとも、その後一般の金融機関の多くが、インターネットを介した銀行取引サービスを開始しており、存在の独自性から本質的に高いサービスの提供へと、これらの銀行に求められる企業価値や事業展開の質はより高く移行している)。
反面、少人数によるインターネットを通じた運営を行っているため、融資などの場面では弱く、またシステムの脆弱性やインターネットそのものの信頼性に由来する危険度(リスク)は、これらの銀行の事業運営に大きな影響を及ぼす。実際にジャパンネット銀行のシステムにおいて複数回にわたり長時間の停止が発生し、2003年6月12日に金融庁から業務改善命令が出されたことがあるが、その後10月にもシステムの停止が発生している。
この業態では、住友信託銀行とSBIホールディングスの共同設立による準備会社、SBI住信ネットバンク設立準備調査会社が、2006年4月3日に発足(正確には、既に設立されていた住信の子会社の業態転換と社名変更が同日付でなされた)され、また、KDDIのau利用者向けに三菱東京UFJ銀行とKDDIが協同で銀行を新たに設置する動きがあり、すでに準備会社としてモバイルネットバンク設立調査を2006年5月頃に設立、いずれも2007年中には開業する見通しである(名称は未定)。
- ※ジャパンネット銀行は、主要出資者である三井住友銀行とコンビニエンスストアのエーエム・ピーエムが提携して展開している「アットバンク」、イーネット、日本郵政公社と提携している。ソニー銀行は、アットバンク・三菱東京UFJ銀行(旧東京三菱銀行についてはエイティエム統括支店管轄のATMの利用と全ATMでの振込不可、旧UFJ銀行の一部店舗外ATMの利用と全ATMでの振込不可、旧UFJ銀行については、2005年10月3日以降は対応しているATMに識別ステッカーが貼られる)・郵便貯金ATMと提携している(郵貯・セブン銀行を除き、店舗内であれば硬貨入金などにも対応)。
また、各ネット専業銀行は、セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン銀行との提携を行っている。
[編集] 全国へのコンビニATMの展開を主体にする銀行
- セブン銀行(旧アイワイバンク銀行)
- ※セブン銀行は、親会社であるセブン&アイ・ホールディングスのグループスーパー「イトーヨーカ堂」や、グループコンビニ「セブン-イレブン」、グループファミリーレストラン「デニーズ」などの店舗内にATMを展開している。
[編集] 中小企業への融資を主体にする銀行
中小企業への融資を主体にする銀行は、一般の銀行より広く中小企業融資を推進し、中小企業の事業展開や新事業開発を支援する事を企図した銀行。日本振興銀行は、東京青年会議所メンバーを中心に、1都3県を対象として、全くの白紙状態から始めた銀行であるのに対し、新銀行東京は、東京都が外国の信託銀行の日本法人(BNPパリバ信託銀行)を買収した事実上の都営銀行であり、東京都内中心ではあるものの、全国の顧客を対象にしているという点で成り立ちが違う。
また、個人顧客(消費者)に対する商品は、日本振興銀行は100万円以上1000万円以下(1円単位)の定期預金のみ発売しているのに対して、新銀行東京は、総合口座を取り扱い、通常のキャッシュカード(ICキャッシュカード)の他、クレジット一体型ICキャッシュカードも発売している。また、インターネットバンキングの展開、郵便貯金やセブン銀行のATMにおける預金入出金提携、みずほ銀行(みずほ銀行が幹事行となっているコンビニATMを含む)、NTTデータ統合スイッチングサービスに参加している信用金庫、JR東日本のビューアルッテにおける預金引出提携(なお、その他の銀行ネットキャッシュサービスには参加していない)も行っている。
両銀行は店舗施策も違い、日本振興銀行は、本店の他に相談窓口的な役割をする店舗が数十店設置されている(各店舗に支店コードはついているが、口座店は本店のみ)のに対して、新銀行東京は、個人顧客の利便性も重視して、千代田区大手町にある本店(シティバンクも同ビルに入居。三菱東京UFJ銀行とりそな銀行の両東京営業部とも隣接)の他、交通至便な場所に現在9出張所(いずれも口座店である)と融資推進室1箇所を開設。将来的には新生銀行やシティバンクの都内店舗数並みの出店が見込まれ、同時に、都営地下鉄の駅を中心に自社によるATM設置も行われている(JR駅や東京メトロの駅にも一部進出している)。
現在、神戸市や大阪市など関西地域を対象とする、関西版・日本振興銀行の設立の動きがあるといわれている(現時点で、日本振興銀行が大阪と神戸に進出している)。
[編集] 破綻した銀行の業務を一時的に引き継ぐ事を主体にする銀行
[編集] ショッピングセンター利用の個人を対象とした銀行
2006年5月15日に、イオングループによってイオン総合金融準備が設立され、これを母体として2007年中には、「イオン銀行」(仮称)が開業予定である。
[編集] 参考
都市銀行・地方銀行等でもインターネット専業支店が開設されている。
[編集] インターネット専業支店
[編集] 都市銀行
- みずほ銀行インターネット支店(旧・みずほ銀行エムタウン支店←富士銀行エムタウン支店)…当初は、ポータルサイト「エムタウン」の決済用銀行として設立
- 三菱東京UFJ銀行インターネット支店(旧・UFJ銀行←旧・三和銀行)…オールワンe専用支店
[編集] 地方銀行
- 東京都民銀行ハローアクセス支店
- スルガ銀行(支店は提供サービスに合わせ多数)
- 百五銀行イーポケット支店
- 京都銀行ネットダイレクト支店
- 池田銀行インターネット支店
- 泉州銀行ダイレクト支店
- 十八銀行デジタル出島支店
- 西日本シティ銀行NCBインターネット支店
※2006年夏(その後、2007年4月以降に変更)を目処に、東京都民銀行楽天支店が開設予定
[編集] 第二地方銀行
- 関西アーバン銀行いちょう並木支店
[編集] 信用金庫
[編集] 通帳のない口座
ネット専業支店に関連して、通常の形態営業する支店その他の方法での取引によっては、通帳そのものを発行しない金融機関・支店もある。
- 預金通帳#無通帳口座を参照。