日韓トンネル
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日韓トンネル(にっかんとんねる)は、日本の九州と大韓民国(朝鮮半島)を結ぶトンネルを対馬海峡に開削しようという構想に対する、日本側の呼び名である。
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[編集] 戦前の大東亜縦貫鉄道構想
九州と朝鮮半島を結ぶトンネルを掘る構想の原点は、1930年代に立てられた「大東亜縦貫鉄道構想」であった。これは当時日本領であった朝鮮半島の南端の釜山を起点とし、京城(現:ソウル)を経て安東(現:丹東)から当時の満州国領内へ入り、奉天(現:瀋陽)を経由して中国領内に入り、北京、南京、桂林を経て、ハノイ、サイゴン(現:ホーチミン)、プノンペン、バンコク・マレー半島を通りシンガポールに至る約10,000kmの路線を建設する構想であった。
さらに1940年代に東京~下関間を結ぶ弾丸列車(新幹線)計画が立てられた後、1942年には東亜交通学会が設立され、日本本土から壱岐島、対馬を経て釜山へ至るトンネルを建設し、上記の大東亜縦貫鉄道と結んで東京~シンガポール間を弾丸列車で結ぶ構想が立てられた。日本本土側の起点は下関、博多、呼子(現:唐津市)などが考えられたが、確定には至らなかったようである。
これらの計画は第二次世界大戦の激化と敗戦によりすべて頓挫した。
[編集] 戦後の構想
1980年代ごろから、韓国側で日韓トンネル(韓国側は「韓日トンネル」の呼称を使用)を開削しようという声が一部の団体から上がった。 1981年11月、韓国のソウルで、統一教会(統一協会、世界基督教統一神霊協会)の教祖、文鮮明が、自ら主催する第10回「科学の統一に関する国際会議」で、世界を高速道路で結び、経済や文化交流を促進し、世界平和を築くという「国際ハイウェイプロジェクト」を提唱したが、その最初の起点となるものとして、「日韓トンネル」の建設を提案した。これに基づき日韓トンネルの推進団体として、翌1982年4月に、「国際ハイウエイ建設事業団」(会長は統一教会と国際勝共連合の会長を兼任する久保木修己)が、同年5月24日に「日韓トンネル研究会」(2004年2月にNPO法人に)が設立された。統一教会ではこのプロジェクトのため信者に献金が奨励され、借金までして多額の献金をする者が多く出た。1986年10月に佐賀県鎮西町(現在は唐津市に属する)に調査抗を掘ったが、その後大きな進展は見られていない。
ルートはおおむね、戦前の弾丸列車計画時のものと同じで、佐賀県の東松浦半島から壱岐、対馬を経て釜山または巨済島へ至る構想である。道路(自動車道)と鉄道(磁気浮上式鉄道か新幹線)の併設を前提にしているようである。工法については海底を掘削するのではなく、コンクリート製のケーソンを一定の深度に並べて構成する海中トンネル方式が提案されている。
その後、「日韓議員連盟」会長の竹下登元首相が自民党での検討を指示したり、羽田孜元首相も自著で「日本再生プログラム」の一環として日韓トンネル構想に言及している。
1990年に訪日した韓国の盧泰愚大統領や翌1991年に訪韓した海部俊樹首相なども推進の意向を示すなど、日韓双方で話し合われた。
2000年には 韓国の金大中大統領が自治体首長会議で海底トンネル建設案について肯定的な発言をしていると報じられ(同年7月1日付『釜山日報』)、同年、訪日の際、「日韓海底トンネル建設」の構想を森喜朗総理に提唱した。
2003年2月25日には韓国の盧武鉉大統領が就任式の直後の小泉純一郎総理との首脳会談で、「北朝鮮問題が解決すれば経済界から取り上げられるだろう」との旨を語った。
同年、自民党では政党アクションプログラムの一つ夢実現21世紀会議(議長 麻生太郎)において実現に向けた政策提言を行なっている。また、同年外交調査会が「日韓トンネル研究会」の高橋彦治・濱建介からヒアリングを行なっている。
2004年8月17日には韓国の建設交通省が約100兆ウォン(約10兆円)とも見られている建設コストに見合う建設の意味はないとする報告書をまとめていたことが報じられた。
「日韓トンネル研究会」は同年のソウルでの「第3回アジア七カ国土木会議」会場にブースを設置し、PRビデオ上映やパンフレット配布などで海底トンネルのPR活動を行った。
同報告書について、日韓トンネル研究会側は「経済性は十分ある」と反論している。
なお日韓両国政府共、現段階では日韓トンネルは“将来計画”として言及する程度であり、掘削に向けた動きは全く取っていない。
[編集] 賛否論
推進論は主に日韓間、ひいては日本とユーラシア大陸各地の物流の活性化を推進理由としている。反対論としては、航空機輸送が主流の時代に巨費をかけて建設する意義への疑問や、国防上の問題、貿易関税の問題などが主な反対理由となっている。特に国防については、近年増加する外国人犯罪や、韓国の反日国家としての側面から、という現実的な意見が圧倒的多数を占めているのが現状である。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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