西日本車体工業
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種類 | 株式会社 |
市場情報 | 非上場 |
略称 | 西工 |
本社所在地 | 803-0801 福岡県北九州市小倉北区西港町11 |
電話番号 | 093-591-6001 |
設立 | 1946年10月 |
業種 | バス車体製造 |
事業内容 | 各種バス車両製造 車体の修理 バス及び電車用品、中古車両の販売 |
代表者 | 代表取締役 金森雄三 |
主要株主 | 西日本鉄道グループ 100% |
西日本車体工業株式会社(にしにっぽんしゃたいこうぎょう)は、北九州市小倉北区西港町に本拠を置く、バス車両の車体部分を製造するメーカー(コーチビルダー)。西日本鉄道の連結子会社(議決権100%:間接保有含む)で、略して西工(にしこう)またはNSKとも呼ばれる。
目次 |
[編集] 概要・沿革
- 1946年 八幡市(現・北九州市八幡東区)昭和町に会社・工場を設立。
- 1953年 小倉市(現・北九州市小倉北区)下到津に工場移転。
- 1955年 フルモデルチェンジを実施。
- 1962年 小倉市西港町に工場移転。
- 1966年 フルモデルチェンジ実施。42MCと命名される。丸みのあるデザインから一変し、車体前後が「く」の字に折れ曲がった直線的なデザインに変更された。これは当時の米国のバスを模したものだといわれており、「アメリカンドリーム」の愛称名で発売されたようであるが、この愛称名はほとんど浸透しなかった。バスファンからは“カマボコ形”のニックネームが付けられており、バスファンの間ではこちらの呼び名が浸透している。
- 1978年 フルモデルチェンジ実施。新モデルは「53MC」と命名された。前代より車体前後の折れ曲がりが小さくなり、ヘッドライトのベセル部分もシャシーを問わない独自デザインに統一した。バスファンからは“はんぺん”のニックネームが付けられた。
- 1980年 ハイデッカーを生産開始。
- 1981年 中型車を生産開始。当初はいすゞ自動車の純正ボディメーカーであった川重車体工業のライセンス生産であったため、いすゞ車のみであったが、1983年より独自のボディに移行し、全メーカー対応となった。
- 1983年 フルモデルチェンジ実施。スケルトン構造の車体に改められ、リベットをなくした箱型車体になった。58MCと呼ばれ、現行モデルの基本設計が完成した。全モデルの一斉フルモデルチェンジは今のところこれが最後となっている。
- 1986年 スーパーハイデッカーを生産開始。
- 1992年 西鉄北九州線廃止に伴う代替バス用として、当時の日産ディーゼル中型車のシャーシ長さを延長し、大型車並みの収容力を持たせたバスを生産(U-JM210GTN改、のちに日産ディーゼルからU-JP211NTNとしてラインナップされる)。
- 1992年 C型・SD型のフルモデルチェンジを実施。丸みを帯びたデザインの92MCとなる。
- 1996年 B型・E型のマイナーチェンジを実施。96MCとなる。バンパー部分の変更や見えない部分の改良が施されている。
- 2002年1月 日産ディーゼルがバス車体の架装を西日本車体工業に集約することを決定。
- 2002年5月 それまで日産ディーゼルのバス車体の架装の多くを手がけていた富士重工業がバス車体架装事業の中止を決定。
- 2005年 B型・E型のマイナーチェンジを実施。側面窓最後部のサクションダクト(吸気口)が廃止、最後部窓の固定窓になる、大型車のホイールアーチが中型車向けと同じく真円型になるなど、いくつか変更が行われている。
日産ディーゼルのバス車体架装の西工集約以前は、親会社の西鉄をはじめ、主に関西以西のバス事業者向けに大型自動車メーカー各社(日産ディーゼル、三菱ふそう、日野自動車、いすゞ自動車)のバス用シャシーに、ボディ架装を行っていた。なお、1996年までマツダのマイクロバス「パークウェイ」の車体も手がけていた。
アフターサービスについては、共栄車体工業(西工内にある西鉄の子会社)、スバルカスタマイズ工房バスアフター部(富士重工業の子会社・富士重工製ボディもアフターサービス対象)が行っている。
2006年7月13日に、日産ディーゼルと三菱ふそうがバス事業で相互に供給しあう提携を発表した([1])。2007年春以降、新長期排出ガス規制に合わせて、ふそうから日デに大型観光バス(MS)や中型車用エンジンなどを、日デからふそうに大型ノンステップバス(RA)、大型車用エンジンや中型バス(RM)を供給することになった。このため、ふそう車についても西工製バスが拡大する可能性がある一方、東日本以北のユーザーを中心に日デ車を含め西工製の一部が三菱ふそうバス製造へ移行することになると思われる。
[編集] 導入地域
もともと西工架装のバスは、主に近畿以西(最東は京都市交通局。四国・山陰・沖縄を除く)のバス事業者に、全メーカーのバスのシャシーに架装していた。従って近畿以西では現在でも、以下に示すように日産ディーゼル以外のシャーシに架装される例も多い。なお、ディーゼル車排気ガス規制のKC-、KK-適用以降は、日野製シャーシへの架装は親会社の西鉄など一部の例外を除いてほとんど存在しない。さらに日野自体もバス部門のジェイ・バスへの統合と生産車種の一本化により、2005年以降はシャーシ供給は皆無となりつつある。また、三菱、いすゞの観光系シャーシについても供給が行われなくなったため、2006年には親会社の西鉄も純正ボディである三菱ふそうバス製造製の三菱ふそう・エアロクイーンを夜行バスに導入するようになった。
他のコーチビルダーに比べ特殊仕様への対応が比較的容易であるため、西工を好んで導入する事業者も多い。代表例として、逆T字窓をいち早く採用した阪急バスがあげられる。
一方、中部以東では、自家用・特定用を除きほぼ存在しないに等しかった。 1970年代には静岡鉄道が42MCボディー架装車輌を導入。1988年に横浜市交通局が日産ディーゼルの中型車P-RB80Gを、1989年にJRバス関東がP-RB80GSを、1993年に松本電気鉄道がいすゞのU-LV318Nを投入した。しかし、いずれも1年限りで終わっている。
また、貸切車では1990年に伊豆箱根鉄道がSD-Iを架装したP-RA53TAE型を導入しているが、これは、当時日産ディーゼルのシャシーの利用で富士重工では2軸スーパーハイデッカーに対応出来なかったためである(近畿以西では1989年に下津井電鉄が同様の高速車を導入している。)。
その中で、車輌の低床化を進めていた京王帝都電鉄(当時、現:京王電鉄バス)が、ワンステップバスの日産ディーゼルのU-JP211NTNに注目。この一部に西工製の車体を架装して導入し注目された。以降、京王グループは西工架装のJPを断続的に導入し、関東地方における西工導入の先鞭をつけた。 貸切・高速車では、JRバス関東が1998年以降、日産ディーゼル高速車の車体を全て西工製で導入している。
1998年には、日産ディーゼルの中型ノンステップバス(KC-RM211GAN改)が西工のみの架装で発売される。また、平成10年および11年排出ガス規制によるモデルチェンジで、同じく日産ディーゼルのJPとRNのボディー架装から富士重工が撤退し、西工のみが対応するようになった。これにより中部以東で西工を導入する事業者が徐々に増えることになる。
そして、日産ディーゼルのバス車体架装が西工に集約された2003年以降は、従来日産ディーゼル+富士重工を採用していた事業者でも、西工架装車を導入するようになる。このような経緯から、中部以東での西工の架装例は一部の例外を除き、日産ディーゼル車になっている。
なお、富士重工のバス事業撤退とは関係なく、関西圏事業者等の中古車で、西工架装車を導入するケースが東日本にも存在し、近年増加している(くしろバス、羽後交通、川中島バス、諏訪バス、関東自動車など)。
[編集] 現在発売されている主な車種
[編集] B型
一般路線バス用。前面窓が左右とも同じ高さの「B-I」と、外部正面から見て右側(運転席から見て左側)の前面窓の縦幅が左側(運転席から見て右側)よりも少し大きい「B-II」がある。
現行モデルは1996年に発売開始された「96MC」。1983年に発売開始された西工初の一般路線用スケルトンバス「58MC」を改良したもので、基本構造は58MCと似ているが、ヘッドライトやフォグランプなどがバンパーに埋め込まれる構造に変わり、より現代的なデザインとなった。また、2005年から発売されている新短期・長期排ガス規制適合車からは、灯火類や窓などの一部を改良したボディとなっており、若干のマイナーチェンジが行われている。
なお、中型車はB-Iのみの設定である。また親会社である西鉄にはB-Iを12mにストレッチした高速仕様車(三菱ふそうエアロスターシャシー、日産ディーゼルUA/RAシャシー)も存在する。
[編集] C型
観光・高速バス用。ハイデッカー。普通のハイデッカーである「C-I」と、最後部の屋根や床が少し高くなっている「C-II」がある。C-IIは最後部の座席を通路に向けて向かい合わせにし、ミニサロンとすることができるもので、かつては親会社である西鉄グループが継続的に購入し、「ロイヤルハイデッカー」の愛称名で中規模団体輸送用に使用していたほか、昭和自動車などでも採用されていたが、別府はとバス(日野シャシー)を最後に現在は生産が途絶えている。なお、JR九州バスには車体はC-IながらC-II同様に最後部の座席を通路に向けて向かい合わせにし、ミニサロンとすることができるものが存在する。C-Iは同じハイデッカーであるS型に比べてデザインの美しさを重視した設計となっており、観光バスとして用いられることが多いが、高速バス用として購入する事業者も少なくない。また、ライバル車より屋根高さが低く、トランクの面積が広いため、空港リムジンバス用としての人気も高い。
1982年に発売開始された。現行モデルは2002年発売開始の「02MC」で、「ネオロイヤル」の愛称名で発売されている。1992年に発売開始された「92MC」と基本構造は同じだが、前面ヘッドライトの形状が若干異なる。
大型車のほか、車体長9mのモデルも設定されていたが、日デRP系の廃止により生産中止となった。9m車はC-Iのみ設定(前代の58MCには西鉄バス筑豊等でC-IIの採用あり)であった。9m車は原則的に日デRP系(2005年8月生産中止)のみへの架装だが、九州観光バスに1台だけ日野製シャシーへの架装例がある。
[編集] E型
観光・高速・自家用バス用。一般路線バス並みの車高であり、一般路線バス用のシャーシに架装することもできる。かつては長距離路線バスや観光バス用として各事業者に採用されていたが、ハイデッカーの台頭により現在では主に短距離を走る高速・特急バスに多く採用されている。また自家用の送迎バスや、検診用・献血用車両など、路線バス用以外の車両はこのボディが多い。 また、灯火機器規制の関係で、2006年からはこれまでのS型に代わって、新たにハイデッカーに対応した96MC E-III型の生産が開始された。
現行モデルは1996年から発売されている96MCである。
[編集] SD型
観光・長距離高速バス用のスーパーハイデッカー。前面形状はC型と同じで、「ネオロイヤル」の愛称を持つ。車高約3.48mの「SD-I」と車高約3.55mの「SD-II」がある。SD-Iは4メーカー全てのハイデッカーシャシーに架装されていた。SD-IIは三菱ふそう・エアロクイーンシャシー(2003年4月からは改造扱い、西工では2005年秋に生産中止)と、日産ディーゼル・スペースウィングシャシー専用ボディである。近年SD-Iの製造は少なく、親会社の西鉄グループを除くと、ほとんど導入例が無く、現在ではSD-IIが増加している。
以前は3列シートの夜行高速バスとして使われる例が多かったが、日デの標準ボディ化以降は4列シートの観光バスも増加している。
1986年発売開始。現行モデルは2002年から発売されている02MC。大型車のみ設定。
[編集] すでに生産中止となった車種
[編集] S型
観光・高速バス用。ハイデッカー。前面デザインは90MC E型と同じである。C型の廉価型といえるもので、デザイン的にはC型に比べ見劣りするが、接客設備・サービスレベルはC型と同等の水準にすることができるため、主に高速バスとして用いられる。
1980年、高速・観光バスのハイデッカー化の流れに対応して発売開始された。2005年に灯火規制に適合できないため、モデルを廃止した。最終モデルは1991年から発売されている90MCだった。
[編集] その他
- いすゞ
- ジャーニーE(西工の呼称は「プレビス」)
- エルフUT
- 日産ディーゼル
- スペースランナー
(なお、「スペースランナー」の愛称は日産ディーゼル製大型一般路線車――つまりはB型――に引き継がれている)
[編集] 2003年4月以降に日産ディーゼル以外にボディ架装を行った例
2003年4月以降、日産ディーゼル以外のシャーシに架装される場合台数が少なく それゆえ、日産ディーゼル以外は生産台数が絶対的に少ないため、必然的に製造コストが高くなる。また、日野・いすゞ・三菱ふそう観光系シャーシへの架装は2005年秋以降全面的に中止となっている。
- 京都市交通局(京都市バス)
- いすゞ ノンステップtype-A KL-LV280N1改(B-I型)
- いすゞ ノンステップ PJ-LV234N1改(B-I型)
- 日野 ノンステップ PJ-KV234N1(B-I型)
- 日野 ワンステップ PJ-KV234L1(B-I型)
- 高槻市交通部(高槻市営バス)
- いすゞ ワンステップ KL-LV280L1 (B-II型)
- いすゞ ノンステップtype-A KL-LV280L1(B-II型)
- いすゞ ノンステップ PJ-LV234L1(B-II型)
- 阪急バス
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-II型)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(C-I型)
- 三菱ふそう ノンステップ KL-MP37JK,KL-MP37JM(B-II型)
- 三菱ふそう ワンステップ KL-MP35JM,KL-MP35JP(B-II型)
- いすゞ ノンステップtype-A KL-LV280L1改,KL-LV280N1改(B-II型)
- いすゞ ワンステップ KL-LV280N1(B-II型)
- いすゞ ツーステップ KL-LV280Q1(E型・スクールバス仕様車)
- いすゞ ワンステップ PJ-LV234L1,PJ-LV234N1(B-II型)
- いすゞ ノンステップ PJ-LV234L1(B-II型)
- いすゞ ツーステップ PJ-LV234Q1(E型・スクールバス仕様車)
- 日野 ワンステップ PJ-KV234L1(B-II型)
- 阪急観光バス
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-II型)
- 大阪空港交通
- 三菱ふそう KL-MS86MP(C-I型)
- 阪神電気鉄道(阪神電鉄バス) - 日産ディーゼルの導入実績はない
- 三菱ふそう ワンステップ KL-MP35JK(B-II型)
- いすゞ ワンステップ KL-LV280L1(B-II型)
- いすゞ ワンステップ PJ-LV234L1(B-II型)
- 金剛バス - 日産ディーゼルの導入実績はない
- 三菱ふそう ワンステップ KL-MP35JK(B-I型)
- 神姫バス - 日産ディーゼルの導入実績はない
- 日野 ワンステップ PJ-KV234N1(B-II型)
- 岡山電気軌道(岡電バス) - 日産ディーゼルの導入実績はない
- 三菱ふそう KL-MS86MP(C-I型)
- 両備バス - 日産ディーゼルの導入実績はない
- 三菱ふそう ワンステップ KL-MP35JM改(E型・特急仕様車・S尺へ延長改造)
- 広島交通
- 三菱ふそう KL-MS86MP(C-I型)
- 西日本鉄道(西鉄バス)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-II型)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-I型)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(S型)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(C-I型)
- 三菱ふそう ツーステップ KL-MP35JP改(B-I型・高速仕様車・S尺へ延長改造)
- 日野 KL-RU4FSEA(S型)
- いすゞ ワンステップ PJ-LV234N1(B-II型)
- いすゞ ワンステップ PA-LR234J1(B-I型)
- 九州観光バス
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-I型)
- 西鉄バス北九州
- 三菱ふそう ツーステップ KL-MP35JP改(B-I型・高速仕様車・S尺へ延長改造)
- 西鉄観光バス
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-I型)
- 西鉄北九州観光
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-I型)
- 九州急行バス
- 三菱ふそう KL-MS86MP(C-I型)
- 昭和自動車
- 日野 KK-RJ1JJHK(B型)
- 大分バス
- 日野 KL-RU4FSEA(C-I型)
- 日野 KK-RJ1JJHK(B型)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(S型)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(C-I型)(貸切仕様)
- 大分交通
- いすゞ KL-LV781R2(C-I型)(貸切仕様)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(S型)
- 三菱ふそう ツーステップ KL-MP35JP改(E-II型・高速仕様車・S尺へ延長改造)
- 日野 KK-RJ1JJHK(B型)
- 亀の井バス
- 三菱ふそう KL-MS86MP(S型)
- 三菱ふそう KL-MS86MP(SD-I型)(貸切仕様)
- 宮崎交通
- いすゞ ワンステップ PA-LR234J1(B-I型)
日産ディーゼル以外への車体架装はその殆どが三菱ふそう製シャーシへの架装で、ユーザーは西日本に集中している。
[編集] 参考
1970年前後の一時期、京成電鉄の子会社「京成自動車工業」が、京成電鉄のバス部門(現在の京成バス)や新京成バス(新京成電鉄自動車部)向けに、西工バス車体(当時の「カマボコ」と通称される車体)のライセンス製造を行っていたことがある。同社製のバスは現在は京成グループには現存していない。
1997年には三菱自動車のパジェロ商用車をベースに11人乗りパジェロバス(ミニミニバス)を開発し西鉄グループの京築交通で使用されていたが路線廃止により除籍されている。
[編集] 外部リンク
※公式ウェブサイトは今のところ存在しない。
- 個人サイト。西工のバスに関して非常に詳しい記述がある。
- 個人サイト。京成ボディを架装したバスの写真あり。