アーバンネットワーク
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アーバンネットワーク(Urban Network)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)が大阪近郊路線群をまとめて呼ぶ愛称。URBAN(都市)とNETWORK(ネットワーク)を合わせた造語である。
目次 |
[編集] 概要
首都圏の膨大な通勤輸送を持つ東日本旅客鉄道(JR東日本)や、東海道新幹線を持つ東海旅客鉄道(JR東海)に較べ、収益性が弱いとされたJR西日本は、会社発足時に山陽新幹線と大阪の近郊路線に経営資源を集中し、経営基盤を強化する方針が立てられた。大阪近郊路線の強化では、新型車両の導入・速度向上による所要時間の短縮、直通運転などの施策により、並行する関西大手私鉄に流れている乗客を獲得することになった。
アーバンネットワークという名称は乗客になじみを持ってもらう目的で、1989年(平成元年)3月11日ダイヤ改正を機にJR西日本が使い始め、線区名への愛称導入(JR京都線、琵琶湖線、JR神戸線、JR宝塚線、学研都市線、JRゆめ咲線、大和路線)とラインカラーの導入などと合わせ、各種路線図や駅案内に使用されている。また、事業報告書や会社案内にもアーバンネットワークとして路線図などが上げられており、従来の「国電」、「大阪近郊区間」のいわば読み替えということができる(運賃制度上の大阪近郊区間の呼び名は残っている)。 このアーバンネットワークは、大阪を中心とする湖西線永原・琵琶湖線長浜・大和路線加茂・阪和線和歌山・JR神戸線姫路・JR宝塚線篠山口・嵯峨野線園部で囲まれる範囲(草津線・桜井線・和歌山線は含まず)とされ、アーバンネットワーク内の駅の駅名標や運賃表、207系・223系・321系電車の種別幕にはこのラインカラーが使われている。
私鉄対抗の主な施策は以下のようなものがある。
- 東海道・山陽線=JR京都線・JR神戸線(阪急・阪神・京阪・山陽電鉄/新車導入、速度向上、快速運転の拡大=新快速の終日運転)
- 片町線=学研都市線(京阪/快速運転、直通運転=JR東西線開業とJR神戸線・宝塚線への直通)
- 奈良線(京阪・近鉄/新車導入、快速運転=みやこ路快速の新設、速度向上、増発)
- 関西本線=大和路線(近鉄/新車導入、速度向上、大阪環状線への直通運転拡大)
- 福知山線=JR宝塚線(阪急/新車導入、快速運転=丹波路快速の新設、JR京都線・東西線への直通運転、増発)
- 阪和線・関西空港線(南海/新車導入、直通運転=大阪環状線への乗り入れ)
この区間の各駅では、駅の利便性向上にも重点が置かれており、自動改札機の設置では、磁気券の自動改札に加え、Jスルーカードの利用、さらに現在はICカードICOCAの利用が可能になるなど自動化と利便性向上を進めている。また、列車司令所による列車制御の一元化に合わせ、ホーム上案内表示器の設置、自動放送装置の導入なども進めている。 さらに、駅商業施設の拡充も進め、大阪・京都では駅ビルの増築が進み、またその他の駅でも構内の各種店舗開発など駅自体の集客能力の向上も狙いとされている。
ネットワークを利用した直通運転の拡大も進んだ。ならシルクロード博覧会をきっかけにした梅田貨物線の旅客使用は、紀勢線特急くろしおや一部阪和線快速の新大阪乗り入れを生み、関西空港線の開業では、貨物線を利用した京都~関西空港間の特急が運転開始された。JR東西線京橋~尼崎が1997年に開通し、片町線(学研都市線)の大阪キタ(梅田)乗り入れ、学研都市線電車のJR神戸線・宝塚線の直通運転が開始された。また、2001年3月のUSJ開業に際しては、線内運転のみだった桜島線電車が環状線へ終日乗り入れする増発が行われた。また1991年には田村~長浜間が直流化され、新快速が長浜へと乗り入れた。のちに新快速のネットワークは播州赤穂、さらには敦賀へと拡大していく。
アーバンネットワーク制定と同時に運転を開始した221系は大きな窓や明るい車内、快適な座席などが利用者から好評で、その後に登場した223系とともにアーバンネットワークの象徴的な車両となっている。また通勤型4扉車は、東西線開業準備用として片町線に投入された207系はその後京阪神緩行線やJR宝塚線にも運転範囲を広げ、その後継車321系も緩行線に投入されている。
一方、私鉄との競争を意識し、列車を増発し所要時間を短縮した余裕の少ないダイヤは、わずかの事象で大きなダイヤの乱れにつながることとなった。また、直通運転の拡大はダイヤの乱れの影響を広範囲に広めることとなった。その状況下で2002年11月6日、塚本~尼崎間で消防隊員死傷事故が起き、安全の確認より列車運行優先の姿勢に批判が出た。さらに2005年4月25日の福知山線脱線事故では、余裕のないダイヤが乗務員に過度のプレッシャーをかけているのでは、と批判を大きく浴びることになった。 そのため、その後のダイヤ改正では運転時間が拡大されることなり、特に2006年3月改正では、新快速の所要時間が運転開始以来初めて延びることとなった。今後はダイヤの安定性を高める施策が進められることになっている。
利便性の向上とネットワークの拡大は今後も続く。 外環状線が開業予定で、大和路線久宝寺から外環状線・東西線経由の快速が北新地へ直通運転させる予定である。また天王寺駅構内の関西線~阪和線の連絡線を複線化する工事が進んでおり、完成後は阪和線からの環状線直通電車を増発する予定である。また、2007年3月18日のさくら夙川駅開業に続き、西大路~向日町、山崎~高槻、鷹取~須磨、明石~西明石間にそれぞれ新駅が開業予定で、他交通機関からの利用者の転移による利用者の拡大を見込んでいる。
なお、2006年10月21日の新快速敦賀延長後、主に敦賀~上郡・播州赤穂間で運用されている本線系の車両(223系・221系・321系・207系など)には車内掲示の路線案内地図から「アーバンネットワーク」の表記がなくなっている(「路線図」と記載されている)。
[編集] 路線
色 | 路線・区間 | |
---|---|---|
大阪環状線 | ||
* | JRゆめ咲線(桜島線) | |
北陸本線 敦賀駅 - 長浜駅( - 米原駅) | ||
* | 琵琶湖線(北陸本線 長浜駅 - 米原駅、東海道本線 米原駅 - 京都駅) | |
* | JR京都線(東海道本線 京都駅 - 大阪駅) | |
* | JR神戸線(東海道本線 大阪駅 - 神戸駅、山陽本線 神戸駅 - 姫路駅) | |
* | 学研都市線(片町線) | |
JR東西線 | ||
* | JR宝塚線(東海道本線 大阪駅 - 尼崎駅、福知山線 尼崎駅 - 篠山口駅) | |
* | 嵯峨野線(山陰本線 京都駅 - 園部駅) | |
奈良線 | ||
* | 大和路線(関西本線 加茂駅 - JR難波駅) | |
阪和線(天王寺駅 - 和歌山駅) | ||
関西空港線 |
- *印の路線名は愛称。このうち、JR京都線、JR神戸線、JR宝塚線は、それぞれ阪急電鉄にも同じ名称(京都線、神戸線、宝塚線)の路線があるため、後からつけたことと混同防止という観点からJRを愛称に付けている。
なお、駅の運賃表などでアーバンネットワークのラインカラーが用いられるのは、京都支社・大阪支社・神戸支社・和歌山支社・福知山支社管内の駅となっており、それ以外の支社の管内の駅では使用されない(特に岡山支社は広島支社ともども独自のラインカラーを使用しており、管内の駅ではJR神戸線の区間も、姫路以西同様に同支社の山陽本線用ラインカラー(緑色)で案内される)。
マスメディアで愛称線名を使用しているのは朝日新聞と神戸新聞のみである。
[編集] 追加予定路線
[編集] 旅客案内
アーバンネットワーク内の各路線の行先案内は、1997年3月8日のダイヤ改正以降、駅の電光掲示板や構内放送で「湖西経由敦賀」「宝塚方面新三田」「姫路方面網干」「東西線経由松井山手」など、「○○方面△△」という他事業者にはあまり見られない案内や「××線経由◇◇」「□□線直通」という表現により、どの方向に行くのか分かりやすくしている(東西線関連以外の本格実施は1999年5月10日以降)。近畿地方は京阪神を初め主要都市が分散し、かつJR西日本各線はそれらの都市の中心駅が始発・終着でない場合が多いためである。特に方面に使われる駅名(地名)は、姫路、宝塚など知名度が高いので効果がある。
- LED
- 殆どの駅に設置されている(但し阪和線や学研都市線など、快速停車駅のみ設置されている路線もある)。首都圏で使われているものとはサイズが一回り大きく、最近変えられたものは文字も大きいため比較的見やすい。行先案内表示には、特急と一部の列車を除いて乗車位置が表示される。ホームには目安となる印(△、↑、○、◇など)と番号がセットで書かれている。ドア数や編成数などで乗車位置がかわるので、乗客はこれに表示された所に並ぶ方式となっている。また列車が接近すると『電車がまいります』と表示され(特急は『列車がまいります』と表示)、点滅する。さらに、上郡~米原間各駅と東福寺・六地蔵・宇治・城陽・木津の行先案内表示板には、「遅れ約○分」という遅れを表示する機能があり、運行管理システムに連動して情報提供をしている。(列車固有の遅れを表示しているが、旅客にとっては次の電車がいつ来るかが関心事であり、最近は「到着まで約○分」表示されることも見られるようになった)
- PDP
- アーバンネットワークの天王寺・京都・大阪などの主要駅及び福知山線・伊丹~新三田間各駅には、PDPが設置され、自社宣伝や運行情報などが表示される。神戸支社管内の一部駅ではLEDの行先案内に変わってコンコースにはPDPによる行先案内を行っている。
- 車内表示
- そのほか
- アーバンネットワークを運転する車両には、列車種別や停車駅が書かれたアーバンネットワーク全体の路線図(その周辺も含む)のシールが貼付されている。最近は、時刻表と共に路線図を掲出しているほか、ドア上には走行する路線の停車駅案内がある。なお、敦賀駅まで書かれている路線図(シール貼付での修正を含む)からはアーバンネットワークの名称が外れている。
[編集] 乗車券等
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
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