電車線・列車線
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電車線(でんしゃせん)・列車線(れっしゃせん)とは、複々線で列車の系統分離を行う際に用いられる線路区分の名称であり、
のことである。これは、近郊列車(注)のみ電車で、長距離列車はみな機関車牽引の列車だった頃の名残でもある。
- 注:国鉄形の区分における「通勤形電車」が投入される路線に相当する。「近郊形電車」は列車線の客車列車置換え用である。もともと客車普通列車置換え用には「長距離用電車」として153系電車のような形態の車両を投入する予定であったが、首都圏や京阪神地区での利用客の大幅増により、クローズデッキ2扉車では対応しきれず、3扉の111系電車を東海道に投入した。153系が「急行形」と呼ばれるようになったのはこの後で、それまでは「中・長距離向け汎用」であった。「通勤形」・「近郊形」区分は現在も続いており、JR東日本では基本形態はE231系電車で統一したが、通勤形と近郊形では装備や仕様が異なる(なお同車は一般形電車で分類されることもある)。JR西日本ではさらに顕著で、321系電車と223系電車と別形式である。
この区別方法は信号・ダイヤの構成や列車の系統による分類であり、本質的には緩急による分離ではない。例を挙げると、東海道本線の列車線である東海道線(湘南電車)と電車線である京浜東北線などの例がある。日中は新橋駅には列車線である東海道線(湘南電車)は停車するが、電車線である京浜東北線快速は通過する。だがこのような例は例外であり、実質的には緩急分離となっている路線が多い。
また、設定されている全駅に停車する場合、電車線の場合は「各駅停車」といい、列車線の場合は「普通」と呼ぶ事が多い。
- 「急行電車」とは、電車線の急行のことで、優等料金を徴収する「急行列車」とは別物であった。阪和線には「特急電車」も存在した。しかし、153系電車が急行列車に投入されるようになると、紛らわしいことから、順次「快速」へと表記が変わって行った。現在でも「快速電車」と「快速列車」は基本的に別物である。例としては、中央本線に於ける東京圏の快速電車と中京圏の快速列車が挙げられよう。両者の性質は明らかに異なり、全く同列には扱えない。ただし、常磐線のように「快速電車<特別快速(列車)<通勤快速(列車、現在は廃止)」のように比較関係がほぼ成立している例もある。
「電車線・列車線」という呼称は、一般的にはJRにおいて使われる場合が多く(特に運行管理者の指令やダイヤ作成担当者の列車設定時など、運転業務で使用される)、私鉄では複々線になっている箇所でも「電車線・列車線」と分類されることはほとんどなく、「緩行線・急行線」と分類する場合が多い。
- 電車・列車の区別の名残は東武鉄道に残っていた(伊勢崎線の「準急」とは「準急行電車」であり、「急行」は「急行列車」の意味である。「急行電車」は「快速」と名を変えて「急行」と「準急」の間に位置していた)が、2006年3月18日のダイヤ改正で解消された。
[編集] 電車線と列車線で複々線を構成している路線
- この区間の中で、兵庫駅~西明石駅間は線路別複々線で緩急分離を行っており、電車線(南側)は快速・普通電車が使用し、列車線(北側)は特急や貨物列車のほか新快速が使用し、また通勤時間帯では、兵庫駅~明石駅間を無停車で走行する快速電車も走行する。信号機の標識にも違いがあり、電車線は「電○閉」(電車線第○閉塞)・列車線は「列○閉」と書かれており、信号喚呼位置標には電車線用は白い縁取りがある(列車線は標準のものを使用)。「新快速」は「関西急電」を発祥とする「電車」であるが、並行私鉄との競争から「関西急電」時代より「列車」に準じる装備がなされていた(貫通幌の装備:一般に電車は編成を貫通していなかった。これが一般化するのは桜木町電車火災の後。本格的2等車の連結など)。
- 草津駅~兵庫駅間も複々線であるが、こちらは方向別複々線となっている。線路の外側(外側線)は列車線の列車が走行し、内側(内側線)は電車線の電車が走行する。但し、通勤時間帯では、快速電車が外側線を走行することもある。また、草津~京都間、新大阪~大阪間では、新快速も内側線を走行する。信号機は内外揃えて設置しており、左側(外側線用)は「外○閉」・右側(内側線用)は「内○閉」と書かれており、信号かん呼標識には内側線用は白い縁取りがある(外側線は標準)。
- 電車線は一般的に京浜東北線と呼ばれ、列車線は「東海道線」または東海道本線と呼ばれる。この区間においては東京駅~品川駅間でこの区間は同様に東海道本線の電車線の扱いである山手線も並走し、東京駅~品川駅間では地下新線、鶴見駅~横浜駅間は品鶴線と呼ばれる貨物線上を走行する横須賀線も並走する。(横須賀線の品川駅~鶴見駅間は品鶴線新川崎駅経由で運転される。)
- 電車線は一般的に京浜東北線と呼ばれ、列車線は宇都宮線・高崎線と呼ばれる。京浜東北線は上中里駅を経由し、宇都宮・高崎線は尾久駅を経由する。このほかに上野駅~田端駅間は同様に東北本線の電車線の扱いである山手線も並走する。また、赤羽駅~大宮駅間は貨物線が存在し、湘南新宿ラインは貨物線上を走行する。
- 線籍上、東北本線である上野駅~東京駅間は、1973年より電車線の京浜東北線と山手線の線路しか営業路線として使用されていない。しかし、将来は上野駅から東京駅までの列車線を建設する計画があり、東海道線と直通運転する計画もある。(→東北縦貫線計画)
[編集] 特異な例
- 常磐線では、線路は緩急分離だが、種別は系統分離も含むという特異な存在である。
- これは、柿岡地磁気観測所への影響を最小限に抑える目的で、首都圏60km圏内(日暮里駅からは約40km強の地点)で交直切替が行われるという同線独特の事情が絡んでいる。これにより近距離電車が取手駅以北に乗り入れられず、また取手駅以北から都心方面まで利用する乗客が多い点などもあり、同じ緩急分離の中央本線・総武本線のように電車特定区間を境に系統を分離しにくい傾向にある。
- また、電車線に相当する緩行線がJR線のみでは都心にアクセス出来ない構造のため、電車種別である「快速電車」は中・長距離列車と共に列車線に相当する快速線を通るという形態であり、電車区間の乗客が安易に「普通列車」にも乗り込んでくるため、中~長距離利用客からは不満が相次いでいた(常磐快速線では線内の輸送力の約2/5弱を普通列車に依存しており、旅客案内上は上野駅以外では両者をほぼ区別していない。このため、乗客も殆ど区別せずに利用している状態にある)。
- 現在、この矛盾を是正する為、取手以北へ向かう「普通列車」も、停車駅を統一すると共に上野~取手間では「快速」を名乗るようになったが根本的な解決にはなっておらず、この傾向はなお強まる傾向にある。