国鉄ED71形電気機関車
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国鉄ED71形電気機関車(こくてついーでぃー71がたでんききかんしゃ)とは、1958年に登場した旧・日本国有鉄道(国鉄)の交流電気機関車の一形式である。
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[編集] 製造の経緯
東北本線の電化にあたり、北陸本線での実績を踏まえ、黒磯以遠の東北地方全域を周波数50Hzの交流電化が採用されることになった。東北本線の輸送単位を勘案すると、単機で1000t、重連で25‰勾配区間において1200tの貨物列車を牽引可能な性能が求められたが、出力1500kW級のED70形では不十分で、出力2000kW級の大出力交流電気機関車を新たに開発される必要があった。ただ、技術的検証を要する面があり、まず1959年に試作機を製造、この結果を踏まえて1963年まで量産機が製造されている。
[編集] 形態別概説
全部で55両が製造され、1~55の連番となっているが、試作機の1~3号、第一次量産機の4~44号、第二次量産機の45~55号に大別される。
[編集] 試作機(1~3)
1959年4月に製造された試作機はED45形電気機関車と同様、日立製作所、東京芝浦電気、三菱電機・新三菱重工業の3社の競作で、いわばED4511、ED4521号機に続く第3次試作機の様相を呈する。ただし、試作で問われたのは電気部分であり、機械部分に関してはED70形の実績を踏まえ国鉄側が設計しており、3両とも共通である。
[編集] 電気部分
大出力機とするため、起動時は位相制御、中高速域は高圧タップ切換による多段制御とすることが事前に決められていたが、電気回路については3社間の開発競争にゆだねられた。
1号機は日立製。ED4521号機の拡大版と言うべき存在で、送油風冷式変圧器と風冷式エキサイトロン水銀整流器を試用。2号機は東芝製で乾式の変圧器と風冷式イグナイトロンを採用。3号機は三菱製でED70形の50Hz版的な構造。送油風冷式変圧器と水冷式イグナイトロンの組み合わせであった。試験の結果は振動に強いエキサイトロンを採用することとなるが、敗れた東芝が提示した乾式変圧器も捨てがたい一面があったため、後にED72形、ED73形はED712号機をモデルに製作されることとなる。
[編集] 機械部分
2000kW級機関車と言うことで、モーター(主電動機)は出力510kWのMT101形を開発した。実はこれはD級交流機関車では未だに最高出力で、電気機関車用標準モーターであるMT52開発以降に製造された、ED72形以降のD級機は全て1900kWとなっている。駆動方式はクイル式で、台車はED60形に範を採り、車体に腕を設けて揺れ枕に固定する全側受支持構造のDT107を採用している。
[編集] 車体その他
前面は重連運転の為、貫通型となった。車体から受ける雰囲気はED60形、ED61形と同様であるが、直流機と交流機では機器構成が根本的に異なるため、側面のフィルタ形状が全く異なり、田の字形に上下二段に配置されたルーバーが外観上の特徴である。1号機と2号機「田」の字が左右2ヶ所、計8個のルーバーを側面に持つが、ただし3号機については「田」の字のルーバーが2個省略され、代わりに小型のルーバーを乗務員室扉脇に持つ異端機であった。
列車暖房装置はED70形と同様、電気暖房装置を設置した。
[編集] 一次量産機(4~44)
試験の結果、日立のエキサイトロン方式が正式採用となり、ED711号機のシステムを継承し1959年から1961年にかけ上記3社で製造された。量産にあたり機器構成が見直されたことで64tであった自重が増加し、これを台車で吸収するためED70形に範を採った揺れ枕式のDT114に変更となり、最終的には67.2tとなった。
また、この量産機から運転室ドア脇に電気暖房表示灯を設け、電気暖房を使用中に点灯させることとした。
その他はED711号機と大差ない。
[編集] 二次量産機(45~55)
実際に機関車を運用してみるとクイル式駆動装置の弱点が露になり、1962年以降の製造機はモーターを防振ゴムを介して車軸に乗せる「半釣掛け式」に変更となる。ここでは本来釣掛け式を想定していないMT101の防振対策が問題となり、トーションバーをアンチローリング装置として用いることで解決させるが、その反面、機構的には複雑なものになってしまった。車体も側面フィルタが1段式に変更になり、見た目の印象はますますED60形やED61形のそれに近くなった。
その後、取扱効率に優れるED75形が開発されたため、1963年に製造が打ち切られた。本形式の最終製造はED75形試作機の製造とほぼ時期を同じくしている。
[編集] 運用
東北本線の主力機関車として使われたが、1965年に盛岡まで電化が伸びた際も、冬季のエキサイトロン凍結を恐れ運用区間は小牛田まで延びただけに終わり、その後は使用区間に変化のないままED75形の大量投入の前に次第に二線級となる。エキサイトロンは比較的故障が少なかったが、水銀整流器ゆえの取扱い効率の悪さから1970年以降、シリコン整流器に交換されたことで位相制御を失い、同時に一次形は不評のクイル式駆動装置がリンク式に改造された。晩年はD形交流機としては最大の出力を生かし補機仕業を中心に運用されていたが、ED75形700番台の福島機関区転属が引き金となり1984年までに全廃となった。
ED75形以前の黎明期の交流機関車としては長く使われたほうといえる。
[編集] 保存機など
1号機が現在、新幹線総合車両センターに保管中。37号機が東北本線船岡駅前に静態保存されている。
[編集] 主要諸元
- 全長:14400mm
- 全幅:2805mm
- 全高:4240mm
- 運転整備重量:67.2t
- 軸配置:B-B
- 動力伝達方式:クイル式/リンク式/半つりかけ式
- 電動機形式:MT101/MT101A/MT102
- 歯車比:1:5.47
- 1時間定格出力:2040kW
- 1時間最大引張力:16500kg
[編集] 関連項目
- 旧型機関車
- B・D型機(貨物用) - EB10 / AB10 - ED10 - ED11 - ED12 - ED13 - ED14 - ED15 - ED16 - ED17 - ED18 - ED19 - ED23 - ED24
- D型機(旅客用)- ED50 - ED51 - ED52 - ED53 - ED54 - ED55(計画のみ) - ED56 - ED57
- F型機(貨物用)- EF10 - EF11 - EF12 - EF13 - EF14 - EF15 - EF16 - EF18
- F型機(旅客用)- EF50 - EF51 - EF52 - EF53 - EF54 - EF55 - EF56 - EF57 - EF58 - EF59
- H型機 - EH10
- アプト式 - EC40 - ED40 - ED41 - ED42
- 私鉄買収機
- ED20 - ED21 - ED22 - ED25 - ED26 - ED27 - ED28 - ED29 - ED30 / ED25II - ED31 - ED32- ED33 / ED26II - ED34 / ED27II - ED35 / ED28II - ED36 - ED37 / ED29II - ED38 - ケED10 - デキ1(旧宇部) - ロコ1(旧富山地鉄) - デキ501(旧三信) - ロコ1100(旧南海)
- 開発史 - 日本の電気機関車史
[編集] 関連商品
Nゲージ鉄道模型ではマイクロエースが量産一次型・二次型を発売。ワールド工芸が金属製完成モデルで量産一次・二次・試作3号機を発売していた。