国鉄EF13形電気機関車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
国鉄EF13形電気機関車(こくてついーえふ13かたでんききかんしゃ)とは、1944年に登場した日本国有鉄道(国鉄・登場当時は運輸通信省)の直流用電気機関車である。
太平洋戦争中に戦時形車両として開発された機関車であり、その特異な出自に起因する複雑な変遷を辿った。
目次 |
[編集] 概要
国鉄の貨物用大型電気機関車としては、1934年からEF10形が41両製造され、続いて1941年にその出力増強版のEF12形が開発されている。しかし、軍需輸送に対応するための輸送力増強が求められる一方で、戦時の資材不足が深刻化すると在来型機関車の生産自体が困難となり、EF12の機能を簡略化した代替機が求められた。こうした状況を背景に開発されたのが「戦時形機関車」EF13形であった。
戦時設計と呼ばれるように、戦争期間中をしのげればよいとする思想で設計された。こうしたコンセプトは外見からして一目瞭然である。通常の大型電気機関車は両端デッキ部まで一杯の全長を持つ箱形車体であるが、EF13は使用鋼材を極力省略するため、車体前後にボンネット状の機器室、中央部に短い車体を備える「凸型」車体を用いた。しかも工作簡略化のため、車体・ボンネット部とも直線基調の粗末な造りで、スタイリングや仕上げ工作といった言葉とは無縁であり、異様で貧相な外観となった。
しわ寄せは内部にも及び、モーターや通風機器、保安機器類の配置、装備ともに安全性を犠牲にした簡素な設計を採っている。高速度遮断器を省略したのは最たるもので、対策たるやヒューズを代用するというていたらくであった。あまりに徹底して部材を省略したために車重が軽くなり過ぎ、動輪上の軸重が不足した。そのため、軸重確保目的の死重としてコンクリートブロックを積んでいる。
EF12の最高出力(1時間定格1,600kW)などのスペックを落とさないという目標で開発され、名目上は同等性能とされたが、簡易設計や代用部材多用等の悪影響から計画性能の達成には至らず、実用上の性能は本来若干出力の低い筈のEF10形(1時間定格1,350kW)並とも言われた。粗悪な造りに加えて酷使も祟り、故障・事故を多発させて稼働率も低く、現場職員からは悪評を買った。
簡素な設計を採ったにもかかわらず、戦争中に完成した車両は7両に留まった。製造は戦後も1947年まで続き、最終的に31両が製造されたところで、後継のEF15形にバトンタッチしている。
[編集] 改造
戦後早々、1948年から約1年に亘り、簡略設計の箇所には高速度遮断器の新設、空気上昇式PS14パンタグラフに取替など安全対策が施されている。
1953年から1957年にかけて、EF58一次形は、デッキを持つ箱形ボディを半流線型車体に載せ替える改造工事が行われた。これに合わせてEF58の旧車体が31両分余剰となり、同じく総勢31両のEF13は凸型ボディを廃棄、全車EF58発生品の箱形車体に載せ替えが行われた。EF58の旧車体の寸法はEF13に転用できるサイズであったが、台車間寸法が僅かに異なり、改造で調整した。また25号機のみ、側面中央部の窓1つが無い。
なお、載せ替えについてはEF58の車番と、EF13の車番とは共通項は無い(例えばEF13 1号機の車体は、EF58 4号機からの流用である。具体的には#車体を載せ替えた車番を参照のこと)。それは車体を譲渡する必要上、両形式とも検査時期の接近している車が種車に選ばれたため、施行が番号順とはならなかった。このようにして生まれ変わった新EF13形と新EF58形の運転室仕切り壁には、それぞれ「EF58〇〇号より車体譲受」、「EF13〇〇号へ車体譲渡」の銘板が取り付けられた。
また、このために「凸型車体=資材節減の為の簡易設計」とされがちだが、乗務員室が台車の芯ざら位置に近く、乗り心地はEF12に比べて優れており、この設計を評価する乗務員も少なくなかった。
[編集] 運用
局 | 機関区 | 両数 | 機関車番号 |
---|---|---|---|
東 京 | 新鶴見 | 7 | 10、26、27、28、29、30、31 |
高 崎 | 高崎第二 | 5 | 21、22、23、24、25 |
新 潟 | 水 上 | 6 | 1、2、3、4、12、13 |
静 岡 | 浜 松 | 13 | 5、6、7、8、9、11、14 15、16、17、18、19、20 |
東海道本線等における貨物列車牽引の他、中央本線や上越線では、低速前提の勾配線運用であることから、他の貨物用機関車同様に旅客列車牽引にも充てられた。中央本線では1960年代まで旅客列車牽引を行っており、貨物用で暖房用ボイラーや電気暖房電源がないことから、冬期には機関車次位に暖房車を連結して旅客列車牽引に就いていた。
戦時設計車両であり、早々に廃車される見込みで開発された機関車であったが、戦後の輸送力不足に伴う機関車需要増大に沿う形で延命した。末期まで東海道本線で用いられていたが、EF60形等の転入により、最後に残っていた立川機関区の24号機も、1979年2月17日単189レを最後に引退、全機廃車。保存機はない。
[編集] 車体を載せ替えた車番
- EF13 1 ← EF58 4
- EF13 2 ← EF58 23
- EF13 3 ← EF58 21
- EF13 4 ← EF58 27
- EF13 5 ← EF58 5
- EF13 6 ← EF58 28
- EF13 7 ← EF58 30
- EF13 8 ← EF58 11
- EF13 9 ← EF58 12
- EF13 10 ← EF58 29
- EF13 11 ← EF58 16
- EF13 12 ← EF58 6
- EF13 13 ← EF58 20
- EF13 14 ← EF58 9
- EF13 15 ← EF58 18
- EF13 16 ← EF58 10
- EF13 17 ← EF58 14
- EF13 18 ← EF58 24
- EF13 19 ← EF58 15
- EF13 20 ← EF58 25
- EF13 21 ← EF58 19
- EF13 22 ← EF58 7
- EF13 23 ← EF58 1
- EF13 24 ← EF58 2
- EF13 25 ← EF58 8
- EF13 26 ← EF58 26
- EF13 27 ← EF58 13
- EF13 28 ← EF58 31
- EF13 29 ← EF58 22
- EF13 30 ← EF58 17
- EF13 31 ← EF58 3
[編集] 主要諸元
- 全長:17500mm
- 全幅:2800mm
- 全高:3867mm
- 重量:99.00t
- 軸配置:1C+C1
- 動輪上重量 84.60t
- 電気方式:直流1500V
- 1時間定格出力:1600kW
- 1時間定格引張力:15100kg
- 1時間定格速度:39.5km/h
- 最高運転速度:65.0km/h
- 主電動機:MT39×6基
- 動力伝達装置:1段歯車減速、ツリカケ式
- 歯車比:20:83=1:4.15
- 制御方式:三段組み合わせ制御
- 制御装置:電磁空気単位スイッチ式
- ブレーキ装置 EL14AS 空気ブレーキ、手ブレーキ
- 台車形式 主台車HT56B,先台車LT113
[編集] 関連項目
- 日本国有鉄道の旧型電気機関車 ■Template ■ノート
- B・D型機(貨物用) - EB10 / AB10 - ED10 - ED11 - ED12 - ED13 - ED14 - ED15 - ED16 - ED17 - ED18 - ED19 - ED23 - ED24
- D型機(旅客用)- ED50 - ED51 - ED52 - ED53 - ED54 - ED55(計画のみ) - ED56 - ED57
- F型機(貨物用)- EF10 - EF11 - EF12 - EF13 - EF14 - EF15 - EF16 - EF18
- F型機(旅客用)- EF50 - EF51 - EF52 - EF53 - EF54 - EF55 - EF56 - EF57 - EF58 - EF59
- H型機 - EH10
- アプト式 - EC40 - ED40 - ED41 - ED42
- 私鉄買収機 - ED20 - ED21 - ED22 - ED25 - ED26 - ED27 - ED28 - ED29 - ED30 / ED25II - ED31 - ED32- ED33 / ED26II - ED34 / ED27II - ED35 / ED28II - ED36 - ED37 / ED29II - ED38 - ケED10 - デキ1(旧宇部) - ロコ1(旧富山地鉄) - デキ501(旧三信) - ロコ1100(旧南海)
- 新性能機関車
- 開発史 - 日本の電気機関車史
カテゴリ: 日本の電気機関車 | 日本国有鉄道 | 鉄道関連のスタブ項目