カーナビゲーション
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カーナビゲーション(Satellite navigation system)は、GPS(全地球測位システム)や車速パルス、ジャイロなどの自律航法装置を利用して、自動車の運行時に運転者に対して、ディスプレイ画面上に現在位置や目的地への走行経路案内を行なう電子機器。よくカーナビと略して呼ばれる。
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[編集] 概要
開発初期には、自律航法のみを用いて自車の現在位置を割り出していたため、走行開始後一定の地点で走行する方角の微調整を要した。また、車輪の回転を検出して移動距離の情報とするため、フェリー乗船時などには実際の移動を全く反映せず、上陸時に再設定の必要があった。
またGPS単独の装置の場合、かつては軍事上の理由から民間利用に対しては100m程度の誤差を含んだ位置情報しか提供されていなかったことや、長大トンネルなどの中ではGPS衛星からの電波を受信できないことなどが、位置表示の誤差の原因となる問題があった。その反面、走行距離の情報が無くても位置情報は得られるので、フェリーでの海上移動も反映できる。
現在は、GPSと自律航法を組み合わせて使用して、双方の欠点を補う装置が多く、さらにCD-ROMディスク、DVD-ROMディスクに記録された道路地図情報を必要に応じて読み出し、自車走行経路の情報と照合する事で、正確に自車位置を特定するマップマッチングという方式も取られている。また「ディファレンシャルGPS」や「高精度情報の開放」など、さらにGPS利用が高度化され、VICSによる交通情報(渋滞情報や規制情報)を考慮して、経路案内を行う製品も一般的になっている。
近年では、DVDに代わりハードディスクドライブを搭載することにより動作の高速化が図られた製品や、通信機能(VICSの他、携帯電話・PHS等の回線に接続)により地図情報などを更新できる製品なども登場している。また、音楽再生機能やインターネット接続機能などとの融合によるカーコンピュータ化も進んでいる。(携帯機器も参照)
なお日本では、1999年11月から運転しながらのカーナビ等の画面の注視が法律で禁止されたが、カーナビは手に保持しない物のため、単純な注視は2004年11月以降の法改正後も依然罰則対象にはなっていない(道路交通法第百二十条第一項第十一号)。しかし、カーナビ等の画面の注視により交通の危険を生じさせた場合は依然罰則対象となっているため、注意が必要である。
あと、カーナビには大抵の場合、テレビ機能も搭載しているが、地上デジタルテレビジョン放送開始にともない、地上アナログテレビジョン放送は2011年7月までに停波される予定なので、それ以降はアナログしか受信できないものはテレビとして番組を表示できない。
- カーナビ迷子(-まいご)
- 利用者本人の目的地の入力によって、目的地に一番近いルートが選択されその通りに進むと違う道に迷い込んでしまう場合と、走行しているのにもかかわらずカーナビ地図にはないルートを走るケースを指す。
- 例えば、ある山を目的地として入力した場合、その山に一番近い道が選択され、林道や通行区分などで通行できない道に出くわすことがある。実際の通行ルールを守るように呼びかける注意書きが本体に書かれていたり、あるいは画面に表示されることがあるので利用者自ら注意が必要である。
- 国際マーケットにおけるカーナビ事情
- あまり知られていない事であるが、世界ではじめての民生用カーナビを上市したのは日本メーカー(ホンダ)であり、また全世界で販売されているカーナビ製品の8~9割が日本メーカー製であるとされる。ただしその半数は日本国内で販売されており、海外でのカーナビ普及率は低い。日本は世界一のカーナビ大国であるといわれる。海外では航法支援システムは軍事用、あるいは緊急・救急車両等の用途が主流であり、民生用としては依然として嗜好品、高級品としての位置づけが強い。海外メーカーにはLG(LGフィリップス)、Garmin、TOMTOM、モトローラ、IBM、フィリップスなどがある。
[編集] カーナビゲーションの種類
[編集] オンダッシュ型
かつて主流だったタイプで、ダッシュボードの上にディスプレイを置くタイプ。視認性は良好な一方で、見栄えがよくなく、かつては車上狙いの標的にされやすいと言われていたが、このタイプの人気が落ち、盗品を転売する際にあまり値がつかないこと、実際に窃取するために車両から取り外す際には、モニターとナビ本体が別体になっているために作業が煩雑になることから、被害が減少傾向にあると言われている。
[編集] ポータブル型
カーナビ本体を取り外せるタイプで、多くの機種がオンダッシュ型と同様にダッシュボードの上にカーナビ本体を設置するタイプ。CD-ROMを搭載した廉価版から、DVD・HDDのデュアルドライブを搭載したハイエンド機までバラエティに富んでいる。家庭用テレビに接続できるタイプも多く、DVDビデオ再生可能機種はDVDプレーヤーとして利用できる。三洋電機のゴリラやソニーのXYZなど。
[編集] インダッシュ型
モニターを1DINスペースに収めた機種。性能はオンダッシュ型と同等。純正及び市販のカーオーディオと組み合わせて使う。
[編集] AV一体型
2005年現在、主流となっているタイプ。カーオーディオ(CDプレーヤー/ラジオチューナーなど)とカーナビ、液晶ディスプレイが一体化したタイプなので、別々に買うよりも安く済む。2DINタイプのオーディオスペースを使うので車種に限りがある。操作はタッチパネルが主流だが、リモコンや音声認識による動作も可能な機種もある。
かつてはCDを聞きながらナビゲーションができない機種もあったが、現在では、HDDやSDカードなど、別の記録媒体との併用により、現在は後席モニターなどでDVDの再生をしながら、同時にナビゲーションが可能な機種も存在する。[1]近年、人気の高さを背景に、転売目的の車上荒らしによる盗難被害の拡大が指摘されており、防犯対策が問題となっている。特にあとづけタイプでは、窃取するため取り外す際に、一体型であるが故に短時間で済むことも増加傾向に拍車をかけていると言われている。
[編集] 簡易型
記憶媒体にフラッシュメモリーを使用し、液晶モニターを小型化することによって片手で持てる程度の一体型匡体とし、機能を簡易化した低価格機種。PND(Personal Navigation Device)と呼ばれる。内蔵バッテリーで駆動できるものが多い。PDAにGPS装置とナビゲーションソフトを組み込んだものも含まれる。
以前から欧米では、防犯上の理由や日本ほど街路が入り組んでいないことからある程度のシェアを占めていたが、日本でも高機能を必要としない層への普及、セカンドカーへの搭載、オートバイ・自転車あるいは徒歩での利用などへの市場が拡大している。
また、携帯電話やPHSにGPS機能を搭載したもので、同様のサービスが提供されている機種も存在する。
[編集] 歴史
- 1981年 ホンダがジャイロ式カーナビを発売。
- 1986年 ITナビゲーションシステム研究会(ナビ研)発足。
- 1987年 トヨタ(デンソーが開発)がCD-ROMの電子地図を搭載したモデルを発売。
- 1990年 マツダが三菱電機と共同開発したGPS式カーナビを搭載した「ユーノス・コスモ」を発売
- 1991年 パイオニアが市販モデルで世界で初めてGPS式カーナビを発売。人工衛星からの電波で誘導することから、「サテライト・クルージング・システム」と呼ばれた。
- 1992年 アイシン・エィ・ダブリュが世界初のボイスナビゲーションの開発に成功。初代トヨタセルシオに搭載される。以後、アルパインをはじめとする各カーナビメーカーに供給が開始され、音声案内は現在のカーナビのグローバル・スタンダード機能となる。
- 1996年 VICSサービスが開始
- 1997年 パイオニアがDVD-ROMカーナビを発売。
- 2001年 パイオニアがハードディスクドライブ内蔵カーナビを発売
- 2002年 パイオニアが通信型カーナビを発売
- 2002年 日産自動車がテレマティクス「カーウイングス」を開始。
[編集] 主なメーカー
- パイオニア
- 三菱電機
- 富士通テン(現在カーナビ部分はOEMを受けるのみで自社開発は行っていない)
- クラリオン
- ザナヴィ・インフォマティクス
- 三洋電機
- アイシン・エィ・ダブリュ(カーメーカー及びカーナビメーカーへのOEM供給のみ。世界シェアは約14%。)
- デンソー(カーメーカー及びカーナビメーカーへのOEM供給のみ。世界シェアは約17%。)
- 松下電器産業
[編集] うちナビ研会員メーカー
ITナビゲーションシステム研究会に参加している企業は下記のとおり。
- かつてはジョグダイヤル対応機種リリースするなど、パイオニアとともにカーナビの黎明期を歩み続けたメーカー。ナビ研にも加入していた。しかし2DIN AV一体型搭載機の投入を自社開発せず、オンダッシュ型にこだわったことにより、2006年に日本でのカーエレクトロニクス部門から一旦撤退した。しかし2007年3月に簡易型カーナビを販売し再参入した。
- カーナビゲーション用地図最大手
[編集] かつて市販機を製造販売していたメーカー
- 住友電工
- ナカミチ
- 住友電工製とナカミチ製は、機種によっては同じソフトウェア(CD)を使用することが出来る。但しCDは、2000年を最後に更新されておらず、両社とも市販カーナビ市場から撤退したことにより更新の可能性は途絶えている。
- いずれも、ナビゲーション機能だけを搭載した製品を投入し、早い時期から画面の360度スクロール表示を実現し、VICS対応機器、ヘッドアップディスプレイの拡張に対応していた。
- 純粋にナビゲーション機能を追及するメーカーの姿勢と、進路変更やスイッチ操作に対する素早い反応など製品の機能を評価し、絶版となった今でも愛用するユーザー、CD-ROMの更新を待ち望むユーザーは少なくない。
- かつてはナビラ(NAVIRA)という名称で販売していた。2001年7月に発売の機種以降、アフターマーケット向けの新製品の発売は無い。現在はケンウッドと技術・業務提携している。
[編集] カーナビの都市伝説や逸話
- 北朝鮮との関係が緊張するにつれ、「北朝鮮の工作員が軍事目的で日本製のカーナビを買いあさっていた」という都市伝説が出来た。これは、技術の発達により、誤差が10メートル以内と言われるGPS精度を持つ日本のカーナビを、北朝鮮が長距離ミサイルのGPSとして流用しようとしたという話である。当然都市伝説ではあるが、日本のカーナビの精度の高さを物語るジョークである。
- 湾岸戦争の開戦直前、カーナビの測位精度が向上する現象が起きた。これはアメリカ軍地上部隊で軍用受信機の調達が間に合わず民生機を導入したことから、民生用のC/Aコードに加えられていた誤差データ操作(SA)が一時的に解除されたためであった。GPSがアメリカ政府の所有物であることを物語るエピソードである。[要出典]
- 古舘伊知郎がフジテレビでF1の実況中継を担当していた当時、1991年~1992年頃のジャン・アレジの走りを「サテライトクルージング走法」と呼んでいた。当時アレジはスクーデリア・フェラーリに所属しており、スポンサーのパイオニアのGPSカーナビゲーションシステムのCMに出演していたことから名付けられた。
[編集] 関連項目
- 高度道路交通システム(ITS)
- 道路交通情報通信システム(VICS)
- カーオーディオ
- テレマティクス
- G-BOOK
- カーウイングス
- グローバル・ポジショニング・システム(GPS)
- 車速信号
- パソコンカーナビ
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