キムチ
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キムチ | |
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各種表記 | |
ハングル: | 김치 |
漢字: | 沈菜(死語) |
平仮名: (日本語読み仮名): |
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片仮名: (現地語読み仮名): |
キムチ |
ラテン文字転写: | Kimchi |
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キムチ(김치、gimchi)は野菜の塩漬けを水洗いしたのちに、オキアミやイシモチなどの魚醤(チョッカル)、ニンニク、生姜、唐辛子粉を加えたものを基本とした韓国・朝鮮語でヤンニョム「薬念(やくねん)」と呼ばれる薬味を混ぜて漬けた、漬物の一種。日本では朝鮮漬とも呼ばれる。
韓国・朝鮮語で「野菜を漬けたもの」の意である「沈菜」(チムチェ・ちんさい)が語源であるとされる(沈漬(チムチ・ちんじ)、鹹菜(ハムチェ・かんさい)、等、各種の説が複雑にある。
朝鮮半島を発祥とする食べ物で、朝鮮半島では伝統的な韓定食の献立だけでなく毎日の食卓に欠かせない食品である。文献上キムチがはじめて登場したのは13世紀初頭、李奎報の詩においてだが、少なくともそれ以前から存在していたと考えられている。
現在では日本でも馴染みが深い。単独であるいは付け合せとして食べられるほか、豚肉と一緒に炒めた「豚キムチ」などの材料やチゲの具(キムチチゲ)としても用いられる。ソビエト連邦時代に沿海州から朝鮮系住民(高麗人)が強制移住させられたウズベキスタンでは、市場やレストランでキムチ(「シムシャ」とも呼ばれる)がよく見られるほどに普及している。
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[編集] キムチの種類
キムチの種類としては、白菜キムチ(ペチュギムチ(배추김치))、胡瓜のキムチ(オイギムチ(오이김치))、大根キムチ(カクトゥギ(깍두기)、一般的にはカクテキ)等が有名だが、それら以外の具材を使ったキムチも多数存在し、その数は200種類を越す。
唐辛子、ニンニクを用いないムルギムチ(水キムチ)も一般的である。ムルギムチの汁は冷麺の汁には欠かせない。
キムチのうまみを出すのに、アミ、イカ、イシモチ、イワシなどの塩辛の他、牛肉や煮干し、昆布などの出汁も用いられる。リンゴ、梨、栗、棗など果物を加えて味をまろやかにすることもある。開城地方の名物ポサㇺキムチは生のイカや牡蠣などを白菜の葉で包んで漬けるが、保存がきかないため2、3日で食べきる。
もともと「キムチ」とは朝鮮語で「漬物」を表す言葉なので唐辛子の有無は関係ない。日本と異なり朝鮮では仏教が伝来したものの、仏教の後に伝来した儒教が勢力を伸ばし、仏教で食べることを禁じられた五葷三厭(ごくんさんえん:「くん」は草冠に軍)についても儒教では禁止されなかった。このため、五葷(ニラ、ラッキョウ、ショウガ、ニンニク、ネギ:なお、三厭は魚肉、鳥肉、獣肉)を漬物にも使うようになった。これらの食材を漬物にすることは日本ではラッキョウの甘酢漬けなどを除いて稀である。
日本では、単に「キムチ」と称した際は白菜キムチを指すことが多い。キムチといえば赤々とした物を連想するが、唐辛子が伝来した以後の姿である。なお唐辛子は豊臣秀吉の朝鮮出兵によって日本から朝鮮半島に渡来したと言われている。当初、朝鮮では唐辛子のことを倭芥子、若しくは倭椒と呼び、毒があるとして忌避していたが、後にキムチをはじめとした料理に用いられるようになって現代に至る。 唐辛子と一緒に漬物も朝鮮に伝わり保存するため唐辛子が使われたとされる。(漬物は中国から日本、日本から朝鮮に伝わった。){{要出典}} 朝鮮半島北部ではキムチ自体が一般的ではない地域もある。
[編集] 製造と定義問題
日本では主に日本の伝統的な漬物の製法(日本式の白菜漬に調味料を加える方法)で作られており、韓国で主流の伝統的な製法とは違いがある。日本国内においては、コリアタウンで韓国式の製法でキムチが製造販売されるほか、一般のスーパーマーケットでも売られている。一般のスーパーでは当初、日本国産のキムチが売られ、1990年代前半から韓国から輸入されたキムチが流通しはじめた。
韓国式伝統製法のキムチと、日本風のキムチの違いは、主に乳酸発酵の有無にある。韓国式伝統製法では乳酸発酵が行われる。時間の経過で乳酸発酵が進み、酸味が強くなるので、食べ頃には好みが生ずる。キムチチゲの具には酸味の強いものが好まれる。一方、日本風のキムチは浅漬けに唐辛子のキムチ風辛み味付けをした物で、日本人の好みに合わせあっさりした味付けの物が多い。どちらの品もスーパーで各種販売されている。それぞれの味が受け入れられ、各種料理にも取り入れられている。
また、キムチの英語表記について、Kimuchi(日本語・カナから転写)と表記し発売・輸出したものが日本で定着し世界に広がりつつあったが、韓国側は正しくはKimchi(朝鮮語音から転写)であると主張し、論戦となった。そのため、1996年3月に国際食品規格委員会(CODEX)のアジア部会にて韓国側のメンバーから国際的な「キムチ」の定義を行おうと提案があり、韓国側の主張が認められた。
日本では1990年代後半から急速に消費量が増えた。なお、漬物の業界団体より発表された統計資料において、日本国内でもっとも多く消費される漬物はキムチとされていたことがあったが、算出方法のミスで実売量の2.5倍が計上されていたことが2005年3月に明らかにされ、それまで日本の漬物消費でキムチが1位になったことは無いと判明した。実際の消費量トップの漬物は浅漬けで、キムチの消費量は多いとはいえ2位に留まるものであった(2004年時点)。なお、これが白菜キムチだけなのかそれ以外のキムチも含んでいるかは定かではない。 また、キムチダイエットのブームが廃れてきたため日本でのキムチ生産量は下降傾向にある。
[編集] 辛さ
キムチに代表される韓国料理は唐辛子を頻繁に用い、辛いことで知られる。そのため韓国人は辛いものは何でも食べられると思われがちだが、彼らが強いのは唐辛子だけであり、中には嗜好的に好まない者や体質的に受付ない者も当然いる。そして好む者でも例えば、大抵わさびが苦手であり、カレーも日本ほどの人気はない。
韓国人は、子供の頃からキムチを食べて、その辛さに慣れていく。しかしキムチは子供が嫌いな食べ物の一、二を常に争っている。近年は、若者がキムチを食べるよう強いられる機会も減り、キムチの消費量は減少傾向にある。
[編集] その他
- 本場のキムチは醗酵食品であるためガスが発生する。そのため、完全な密閉容器にキムチを詰めて室温で保管していると、数日で破裂する恐れがある。
- 韓国では写真を撮るときの合図に「キムチ」と言うことがある。
- 韓国では、日本でいう味噌汁にあたるほど家庭の味を象徴する料理であり、「良いキムチを作れる女性は良い妻となれる」という言葉まであるが、最近はスーパーなどで既製品のキムチを買う主婦も多い。
- 韓国ではポピュラーな家電製品として、醗酵や保存に適切な温度を保つことが出来るキムチ専用の冷蔵庫が存在する。LG電子では日本でも「食品貯蔵庫」として発売している。
- 朝鮮半島では毎年秋に越冬用として大量のキムチを漬ける。これを「キムジャン」というが、韓国では各地区別に「キムジャン」に最適な気候となる時期を告げる、「桜前線」ならぬ「キムチ前線」という予報がある。その際に学校も休みとなり、「キムチ休暇」と呼ばれる。更に企業によっては従業員に材料購入費として「キムチ手当」が支給される。ただし、都市部ではこの風習は廃れている。
- 韓国には「キムチ債」と称する債券がある。これは日本でいう「サムライ債」に該当するもので、外国企業が外貨建てで韓国において募集する外貨建外債を指す。
- 味付けによく用いられる唐辛子は、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本から伝来したとされている。また、江戸時代に朝鮮通信使が日本から持ち帰ったという説もある。唐辛子の原産地は中南米(ペルー説が有力)であり、当時、スペイン・ポルトガルとの直接の交易路を有していなかった朝鮮半島には、朝鮮出兵時は極端としても、同時期に日本経由で伝来したものと考えられる。
- 韓国は自国産のキムチを日本などに輸出する一方、安価な中国産キムチを輸入しており、輸入量が輸出量を上回るほどである。安価な中国産キムチの用途は、主として飲食店で出される「突き出し」である。喫茶店で出される水や寿司屋のガリが基本的に無料であるのと同様に、韓国の飲食店ではキムチを含む副菜は無料で、無くなるつど補充される(韓国料理の特徴を参照)。
[編集] 参考文献
- 家永泰光、盧宇炯(共著)『キムチ文化と風土』古今書院、1987年12月、ISBN 4772211012
- 李連順『キムチ物語』光村推古書院、2002年12月、ISBN 4838199163
- 李御寧、李圭泰、金晩助(共著、金淳鎬訳)『キムチの国』千早書房、2000年12月、ISBN 488492259X
- 李信徳『韓国料理 伝統の味・四季の味』柴田書店、2001年12月、ISBN 4388058955
- 講談社編『極辛版キムチ大探検』(講談社文庫)講談社、1988年8月、ISBN 4061842285
- ジョン・キョンファ『キムチの味』晶文社、1993年12月、ISBN 4794961510
- 田村研平『在日キムチにおける誤解 食と難民をつなぐ関係』情報センター出版局、1988年4月、ISBN 4795807426
- 谷川彰英(監修)『国際理解にやくだつNHK地球たべもの大百科 9 韓国』ポプラ社、2001年4月、ISBN 4591067149
- 崔弘植(盧宇炯訳)『キムチ力』YB出版、2001年6月、ISBN 4901337130
- 鄭大聲『焼肉・キムチと日本人』(PHP新書)PHP研究所、2004年2月、ISBN 4569634001
- 豊田有恒、豊田久子(共著)『豊田さんちのキムチ大作戦 キムチの漬け方、食べ方、健康法』有楽出版社、1999年3月、ISBN 4408591246
- 韓福麗(守屋亜記子訳)『キムチ百科 韓国伝統のキムチ100』平凡社、2005年9月、ISBN 4582127215
- Visson, Lynn. The Art of Uzbek Cooking. Hippocrene, New York, 1999. ISBN 0781806690
[編集] 外部リンク
- キムチ物語(韓国農水産物流通公社(AFTC: Korea Agro-Fisheries Trade Corporation)サイト)
- 韓国料理-キムチ@Life in Korea - 文化特集
- 韓国農協キムチ(韓国農業協同組合中央會による100%出資の子会社・ 韓国農協インターナショナルの日本語版キムチ専門サイト)
- キムチネット(在日本大韓民国民団のサイト)
- 韓国食品開発研究院: Kimchi(ハングル・英語)
- <午後余談>‘キムチ’の根 [1](韓国語)
[編集] ディレクトリ
- Google Directory: Kimchi(英語)
- Yahoo! Categories: Kimchi Recipes(英語)
[編集] 中国・韓国産キムチ問題
- 朝鮮日報: ニュース特集 - 韓中のキムチ紛争