名古屋臨海高速鉄道西名古屋港線
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西名古屋港線(にしなごやこうせん)は、愛知県名古屋市中村区の名古屋駅から同市港区の金城ふ頭駅までを結ぶ名古屋臨海高速鉄道(名臨高)の鉄道路線である。公募によりあおなみ線(英称は「Aonami Line」)の愛称が付けられている。旅客案内は「あおなみ線」に呼称が統一されていて、社名や正式な路線名「西名古屋港線」の名は施設・路線図等に表示されていない。このような呼称の方式は首都圏新都市鉄道の「つくばエクスプレス」とほぼ同様である。
全ての駅でトランパスが使用できる。
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[編集] 路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):
- 軌間:1067mm
- 駅数:11駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線(直流1500V)
- 閉塞方式:複線自動閉塞式
- 保安装置:ATS-ST
- 定位置停止装置(TASC)を採用
[編集] 概要
名古屋市の中心部と鉄道空白地帯であった港区南部を結ぶため、東海道本線の貨物支線である西臨港貨物線(西名古屋港線)を全面改良(複線電化・高架化)し旅客線化した路線である。全線立体交差であり、小本駅付近と南荒子~金城ふ頭間が高架線となっている。沿線には名古屋競馬場や名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)がある。
なお、同線の東海旅客鉄道(JR東海)から名古屋臨海高速鉄道への譲渡後も、日本貨物鉄道(JR貨物)が名古屋~名古屋貨物ターミナル間の第二種鉄道事業者として貨物列車運行を継続して行っており、名古屋~荒子間に乗り入れている。
全駅で名古屋市交通局・名古屋鉄道などとの共通SFカードシステム「トランパス」に対応している。名古屋臨海高速鉄道が発行しているカードは「あおなみカード」として販売されている。
ワンマン運転を実施しており、安全対策としてすべての駅のホームに可動柵やホームドアが設けられた。金城ふ頭駅にはホームドア、そのほかの駅には可動柵を設置している。
車内アナウンスは日本語が加藤純子、英語がクリステル・チアリの声で行われている。これはつくばエクスプレスと同様である。
[編集] 運行形態
朝夕の混雑時は平日毎時6本(土曜・日曜・祝日は朝5本、夕方4本)、閑散時は毎時4本の列車が運転される。
運転系統は、名古屋~金城ふ頭間の列車のほか、朝(平日は夕方にも)の潮凪車庫からの出庫列車として稲永発名古屋行きがある。
[編集] 回送列車
朝夕のラッシュ輸送を終え車庫に戻る列車は、金城ふ頭駅から潮凪信号所まで回送で運転される。朝は9時台、夜は7時台(土曜・日曜・祝日はなし)に各2本運転される。
[編集] ささしまライブ行き臨時列車
2005年の愛・地球博の開催期間中、ささしまサテライト会場「デ・ラ・ファンタジア」が開設されその利用客で混雑したが、その混雑緩和のため名古屋~ささしまライブ間で臨時列車が運転されたことがあった。この臨時に充当される列車は、本来金城ふ頭駅から回送で潮凪車庫に入庫する列車を名古屋まで回送し、折り返しささしまライブまでをピストン運転するものだった。終点のささしまライブ駅には折り返し設備がないため、一度JR東海名古屋工場の側線に入り貨物列車を待避してから折り返す、特異な運行形態が取られていた。3月下旬の週末と祝日に運転されていたが、期待したほどの効果がなかったのか、4月上旬には運転されなくなってしまった。駅の時刻表やホームページなどで運転が発表されることはなく、非常にひっそりとした臨時列車であった。ささしまライブ行きは、2004年9月20日に実施された試乗会でも運転されたことがある(名古屋~ささしまライブは回送扱い)
[編集] 特別ダイヤ
名古屋市国際展示場で大規模なイベントと国家試験などが同時に行われる場合は、列車を増発することがある。過去に沿線でアーティストの無料ライブがあった際には、通勤時間帯でも最大10分間隔の所を7分間隔で臨時運転している。
[編集] 車両
[編集] 歴史
当初、名古屋市港区南部方面への鉄道整備は名古屋市営地下鉄東山線を延伸することが考えられていたが、西端は高畑駅まで開業したにとどまり、以南は近傍を通る既設の東海道本線の貨物支線である西名古屋港線を活用することとなった。国鉄分割民営化の際には、将来の旅客線化のため東海旅客鉄道が西名古屋港線を第一種鉄道事業者として承継した。
1992年の運輸政策審議会答申第12号で名古屋~稲永~金城ふ頭間が2008年までに整備することが適当である路線として位置付けられ、事業主体として名古屋市を筆頭に愛知県、東海旅客鉄道、名古屋港管理組合、日本政策投資銀行を始めとする民間企業複数社の出資により第三セクター会社の名古屋臨海高速鉄道が1997年に設立された。同年に第一種鉄道事業免許を取得し、1999年に着工、2004年10月6日の名古屋~金城ふ頭間開業を迎えることになった。
なお、審議会では名古屋貨物ターミナル駅~笠寺駅~大府駅間のバイパス線として建設が行われたものの、国鉄末期に貨物輸送量の激減で工事が凍結された東海道本線貨物支線(南方貨物線)の旅客化も検討されたが、こちらは実現せず、2002年より完成した路盤が順次撤去されている。
- 1950年(昭和25年)6月1日 国鉄東海道本線貨物支線(西名古屋港線)として笹島(貨物駅)~西名古屋港間が開業。
- 1980年(昭和55年)10月1日 名古屋貨物ターミナル駅開業。
- 1986年(昭和61年)10月10日~12日 団体専用列車「おもしろ列車かたつむり号」を運行。
- 1986年(昭和61年)11月1日 この時のダイヤ改正で笹島駅が廃止されたため、起点が名古屋駅となる。
- 1987年(昭和62年)4月1日 国鉄分割民営化により東海旅客鉄道が第一種種鉄道事業者として承継、日本貨物鉄道が第二種鉄道事業者となり運行。
- 1997年(平成9年)12月2日 名古屋臨海高速鉄道設立。
- 1997年(平成9年)12月12日 名古屋臨海高速鉄道が第一種鉄道事業免許を取得。
- 1999年(平成11年)7月14日 運輸省(当時)より工事施工の認可を受ける。
- 2001年(平成13年)3月31日 名古屋貨物ターミナル~西名古屋港間廃止。
- 2003年(平成15年)8月 駅名を正式決定。
- 2003年(平成15年)11月17日 公募の選考により愛称が「あおなみ線」に決まる。
- 2004年(平成16年)7月 営業ダイヤに沿って試運転が始まる。
- 2004年(平成16年)9月20日 沿線区住民を対象にささしまライブ~金城ふ頭間で試乗会を実施。
- 2004年(平成16年)9月25日 名古屋市民ほか一般を対象に名古屋~金城ふ頭間で試乗会を実施。
- 2004年(平成16年)10月6日 名古屋臨海高速鉄道の西名古屋港線(愛称:あおなみ線)として名古屋~金城ふ頭間が開業。東海旅客鉄道の第一種鉄道事業廃止。
- 2004年(平成16年)10月20日 台風23号の影響より上下全線、初の運転見合わせ。
- 2006年(平成18年)8月10日 名古屋駅~ささしまライブ駅間で下り電車の運転手が上下線の線路の間に50代の男性が倒れているのを発見、20分弱の運転見合わせ。
現在、名古屋市営地下鉄東部線がささしまライブと岩崎を結ぶ路線として計画されており、あおなみ線と地下鉄東部線の相互直通運転も検討されている[1]。
[編集] おもしろ列車かたつむり号
西名古屋港線の旅客化構想が出始めた1986年(昭和61年)の10月10日~12日に、団体イベント列車として「おもしろ列車かたつむり号」が同線に運行されたことがあった。列車の概要は以下の通り。
- 運行区間:名古屋駅→(東海道本線)→岐阜駅→尾張一宮駅→(稲沢線)→名古屋駅→笹島駅→(西名古屋港線)→西名古屋港駅→(西名古屋港線・稲沢線)→稲沢駅→(東海道本線)→名古屋駅
- 使用車両:DD51形ディーゼル機関車2両と12系客車4両(機回しの手間を省くため、機関車は客車両端に連結した)
- 運行時刻:名古屋駅1105→岐阜駅1154・1200→西名古屋港駅1318・1407→稲沢駅1504・1514→名古屋駅1528
- その他:西名古屋港線内は線路規格が悪かったため自転車並みの速度で走った。それが「かたつむり号」の名の由来という。
[編集] 開業後の問題点
地元住民にとっても念願の鉄道であり、また沿線には名古屋競馬場などの娯楽・商業施設があり、また愛・地球博サテライト会場であるデ・ラ・ファンタジアへのアクセス路線であることから、大いに期待された。しかし、実際は乗客数が予想を大きく割り込み、現状において累積債務を一掃するには40年以上かかることが指摘されている。
[編集] 利用者の伸び悩み
- 名古屋市は公共交通機関より自動車利用率が非常に高く、自動車通勤者を公共交通機関であるあおなみ線に転換させるのが困難で、これが利用客数の伸び悩む最大の原因である。
- JR線や名鉄線に乗り換える場合、沿線の東側で運行されている名古屋市営地下鉄名港線各駅から金山駅で乗り換える方が便利であり、また地下鉄名港線各駅から地下鉄だけで名古屋駅のみならず、名古屋市中心部の栄駅・矢場町駅や伏見駅へ行けるため運賃が安く便利なので、従来の公共交通機関が幅を利かせていることも原因である。
しかしながら、開業当初に比べ、少しずつではあるが乗客が増えているのは確かである。定時性・一定頻度の運転、および市街地である名古屋~野跡間においては当初の計画通り市営地下鉄と同料率の普通運賃とされたほか、同社・名古屋市の利用促進の呼び掛けを受け、徐々に市営バス旅客の移行も見られる。そして、開業前に比べ早朝深夜における運行時間帯は大幅に拡大し、始発電車に乗れば名古屋駅に午前6時前に到着できるダイヤである。
[編集] 利用者のモラル
- 名古屋市の条例によりささしまライブ駅・金城ふ頭駅以外の各駅周辺は自転車放置禁止区域に指定されており、駅の側には有料の市営駐輪場が設置されているが一部の利用者は有料を懸念して、放置禁止区域に駐輪したり周辺のマンション・商業施設に長時間の迷惑駐輪をしている。特に荒子川公園駅では改善策を強いても、有料駐輪場が足りない現状と周辺の商業施設との連携策が取られてなく、名古屋市条例違反者を黙認に近い状態で見過ごしている(あくまであおなみ線の運営は名古屋臨海高速鉄道、有料駐輪場の管理は名古屋市土木事務所であり、鉄道事業者には非は無い)。
- 他の公共交通機関同様、老若男女問わず車内で携帯電話を使用してる光景を多々見られる。
[編集] 駅一覧
駅番号 | 駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|
AN01 | 名古屋駅 | 0.0 | 東海旅客鉄道:東海道新幹線・東海道本線・中央本線・関西本線 名古屋市営地下鉄:東山線(H08)・桜通線(S02) 名古屋鉄道:名古屋本線(名鉄名古屋駅) 近畿日本鉄道:名古屋線(近鉄名古屋駅) |
名古屋市 | 中村区 |
AN02 | ささしまライブ駅 | 0.8 | |||
笹島信号場 | |||||
AN03 | 小本駅 | 3.3 | 中川区 | ||
AN04 | 荒子駅 | 4.3 | |||
AN05 | 南荒子駅 | 5.2 | |||
AN06 | 中島駅 | 5.9 | |||
AN07 | 名古屋競馬場前駅 | 7.1 | 港区 | ||
AN08 | 荒子川公園駅 | 8.2 | |||
AN09 | 稲永駅 | 9.8 | |||
潮凪信号場 | |||||
AN10 | 野跡駅 | 12.1 | |||
AN11 | 金城ふ頭駅 | 15.2 |
- 運賃等は名古屋臨海高速鉄道#運賃を参照。
- ささしまライブ~小本間には黄金駅が設けられる予定であったが、需要が当初予測を下回る見込みになったことから、2004年4月開業時点での設置は見送られている[2]。
[編集] 出典
- ^ 運輸政策審議会答申第12号「名古屋圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について(抄)」 運輸省運輸政策審議会 1992年(平成4年)1月10日 で「笹島駅付近においてJR関西線と相互直通運転を行うとともに、西名古屋港線との相互直通運転についても検討する。」としている。
- ^ 黄金駅についての主なソース:
- 名古屋臨海高速鉄道株式会社・名古屋港管理組合「西名古屋港線(名古屋・金城ふ頭間)建設事業に係る環境調査結果報告書(工事中)」平成17年3月 名古屋市環境局 なごやの環境アセスメント
- 『月刊ナゴヤ・ポート・ニュース』平成15年2月号 名古屋港管理組合総務部(広報担当)広報係