ルパン三世 DEAD OR ALIVE
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『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』は、漫画家モンキー・パンチ原作の人気アニメ『ルパン三世』の劇場映画第六作である。「ルパン三世」製作委員会制作、アニメーション実制作は、キョクイチ東京ムービー。東宝配給。
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[編集] 概要
本作品は、1996年4月20日に封切られた。1989年より始まったTVスペシャルの好評を受けて製作された、前作『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』に次ぐ平成劇場シリーズ第二弾である。『ルパン三世』のアニメ映画としては第六作目となる。『くたばれ!ノストラダムス』より、山田康雄の後を継ぎルパン三世の声優としてデビューした栗田貫一が本作品でもルパンを演じている。
本作はまた、原作者であるモンキー・パンチがシリーズ史上初めて監督を担当して話題を呼んだ作品でもある。原作漫画のハードなタッチを指向し、ナノマシンや当時話題のインターネットなど最先端の話題を盛り込んで趣向を凝らした内容だったが、モンキー・パンチ本人は「アニメと漫画の違いから、自分の思うようにやらせてもらえなかった」と感想を述べている。『ルパン三世』シリーズと関わりの深いアニメーターの大塚康生は、「ストーリーはモンキー・パンチ氏が相当変えたと聞いているが、それでも思うような作品が出来るとは思えない。原作者だからといって予算は上がらない。コンテが出来てからラッシュまで三ヶ月という低予算と短いスケジュールで、仮にモンキー氏が百戦錬磨のアニメ作家で、ベテラン・アニメーターを結集させたとしても無理。出来たコンテを海外にバラ撒いて、映像は何も吟味しないで、とりあえず画面が埋まっていればいいというような作品なら出来るだろうが・・・」というようなことを語っている。
モンキー・パンチの監督デビューを祝して、漫画家仲間が「モンキー・パンチ応援団」を結成。各漫画家が提供したキャラクターが作品中に登場させるなど話題作りも行なわれたが、興行的には成功とはならなかった。翌1997年からの、東京ムービー制作、東宝配給のゴールデンウイーク公開のアニメーション映画は、『名探偵コナン』シリーズにその座を譲られた。
なお、監督の決定までには紆余曲折あって難航し、完パケが仕上がるのも公開直前であったという経緯がある。また、監督となったモンキー・パンチも、当初予定していたいくつかのシーンを尺の関係でカットせざるを得なかったことが悔やまれるとも語っている。実際、映画の特報に用いられた次元と賞金稼ぎの殺し屋との決闘シーンなどは、本編にも登場する計画があった。なお途中演出ミスで五エ衛門が斬鉄剣のシーンの時に五エ衛門が表情なしでナノマシンの触手を切りつけるという場面があった。
[編集] 音楽担当者について
本作で、TV第2シリーズ以来、長年ルパン三世シリーズの音楽を担当して来た大野雄二が降板。大野の名前は公開前の本作ポスターにはクレジットされていたが、降板の理由は前年の山田康雄死去と多忙ということである。大野は山田と私的な交流があり、山田がルパンを演じることが出来なくなった時点でもってルパンの音楽担当を降りる計画であったこと、山田康雄以外のルパン三世は考えられないなどとしている。実際に山田存命中に別の声優を起用して製作された1987年の『風魔一族の陰謀』にも大野は音楽を提供していなかった。また、当時の大野はしばしば劇伴音楽の製作環境の悪さを訴える発言を行なっていた。
大野に代わって、本作の音楽を担当したのが根岸貴幸である。根岸は、同年のTVスペシャル『トワイライト☆ジェミニの秘密』の音楽も担当している。本作で根岸は、大野作曲のメインテーマをアレンジし、メインタイトル他、作品内の数ヶ所で同曲を使用した。
なお、バップから発売されたサントラ盤には、根岸アレンジの「ルパン三世のテーマ<'96ヴァージョン>」が収録されているが、本編では未使用に終わっている。
主題歌「Damageの甘い罠」を演奏しているバンドmedia youth(メディアユース)は候補として「Damage~」を含む3曲を提供、その中にはバラードタイプの曲もあり「エンディングというとバラードのイメージあったので、バラードの曲が選ばれると思った」とインタビューでコメントしている。 採用されなかったバラードは後にmedia youthのアルバム「SPIRAL COLORS」に「はかないほどのMOMENT」として収録された。
[編集] あらすじ
「ズフ」という国は民主的であった。刑務所での囚人脱走処刑ゲームは、年に1度しか行われないほどに。 その冷血かつ警護厳重な包囲網を突破して、鮮やかに目的とする男を脱走させ、連れ去った男とは、“盗み”に関する頭脳と腕では世界に名をとどろかせる現代の怪盗「ルパン三世」その人であった。
そして、ズフ国沿岸に孤立している外輪岩礁に守られた漂流島は、地上部分に空母艦体を飲み込んだような奇怪な全容を、ひっそりとした沈黙に包んでいた。 死と破滅と巨億の富の匂いとを塗りこめたかのような、すさまじいまでの沈黙に足を踏み入れたルパン三世と相棒の次元大介、石川五右ェ門の三人は、屍と残骸の横たわる島の地表から内部へと進み、道標のように縫い付けられた死せる科学者を発見した。 それらの情景が物語るのは、今もなお、この島全体が恐るべき防衛システムに守られているという事実だった。 それは、島内部の最も奥にある扉の前に立ちし者が有資格者であるかどうかを判別する。 判定が「NO」と導き出された場合、島全体が無数の自在槍「フィーラ」を駆使して侵入者に襲いかかる殺戮マシーンと化す。
この仕掛けの秘密とは?アプローチしていたのはルパンだけではなかった。 カギの秘密を握っている公女エメラの家庭教師として潜入した峰不二子、そして、数年前に軍事クーデターを勃発させ、政権を奪った現在のズフ国統治者である首狩り将軍でも、その謎を解き明かせていないのは同じだった。 緻密に張りめぐらされた監視の網を束ねるズフ国国家警察長官クライシス、ズフ国国家警察女性捜査官オーリエンダーに、ルパンが首狩り将軍に送りつけた犯行予告状によって乗り込んできた銭形警部も絡んで、仕事はやりにくくなるばかり。 公女エメラ奪取計画の第1ラウンドは、銭形警部考案のダミー作戦をくらい、首狩り将軍の策略によってルパンの首に100万$の懸賞金がかけられたから、さあ大変!
~デッド・オア・アライブ~その、生死を問わずとの条件に世界中から凄腕の殺し屋達が続々とズフ国に集結。 殺し屋達の襲撃を次々とかいくぐる中、自在槍「フィーラ」の断片を分析した結果、システムの正体がナノマシンであることをつかんだルパンは、逆襲のタイミングをカウントしていく。 折しも市街地には、首狩り将軍への抵抗組織を率いる前ズフ国王の遺児であるパニシュ王子が出現し、ズフ国内は一気に混乱状態に陥る。 死んだと思っていた恋人パニシュに再会したオーリエンダーは、命を賭けて協力を誓い、首狩り将軍を漂流島のナノマシン中枢部へと導いていく。 しかし、そこに待ち構えていたのは想像を絶するルパンの大ドンデン返しだった!
煌めく黄金の流れを撒き散らし、ナノマシンが作動する中、ルパンと首狩り将軍の最終決戦が幕を開ける・・・
果たして、漂流島に隠された財宝の正体とは?
[編集] スタッフ
- 原作・監督:モンキー・パンチ(中央公論社・双葉社刊)
- 企画:武井英彦
- 脚本:柏原寛司
- 音楽:根岸貴幸
- メインテーマ:大野雄二
- 音楽監督:鈴木清司
- 録音監督:加藤敏
- キャラクターデザイン・総作画監督:江口摩吏介
- 作画監督:村田雅彦、瀬尾康弘、菖蒲隆彦、佐々木守
- 作画監督補佐:山口晋、田村一彦、山田起生、梅原隆弘
- アニメーション監督:矢野博之
- メカニカルデザイン・メカニカル作画:今掛勇
- プロデューサー:前田伸一郎、松元理人
- 担当プロデューサー:小沢十光
- 音楽プロデューサー:山田慎也
- 文芸ディレクター:飯岡順一
- 撮影:長谷川肇
- 絵コンテ・演出:矢野博之、川越淳、篠原俊哉、日巻裕二
- 美術:東條俊寿、荒井和浩
- トムス・フォト:西山仁、小林健一、野村隆、金井弘、伊藤敦子、白尾仁志、小川隆久、大崎恭子、根本超、早瀬千加代、佐々木明美、小林学、宮川聖美、中小原明典、中村雅江、依田裕子
- スタジオコスモス
- スタジオサキト
- スタジオコール
- 東現アニメルーム
- 音響効果:糸川幸良
- 録音技師:安藤邦男
- 録音技師助手:渡辺愛
- 光学録音:利澤彰
- 音響制作担当:寺澤和宏
- レコーディスト:中野明
- 編集:瀬山武司
- 編集助手:内田経子、水田経子
- デジタルアニメーション:川越淳、西山仁
- CG協力:株式会社セルシス
- 原画:福田紀之、後藤雅巳、南雲公明、前田実、阿部航、高田晴仁、梶原賢二、梅津泰臣、名村英敏、西澤晋、武藤照美、山本天志、宗崎暢芳、若山佳治、安藤幹彦、山本勝也、原田蜂文、鍵山亜子、木村貴宏、森下博光、吉田徹、崎山知明、木下ゆうき、川筋豊、松岡秀明、関野昌弘、北野ヨシヒロ、鍵山仁志、坂田佳江、吉田夫美子、香月邦夫、矢木正之、伊東誠、西村貴世、小川一郎、小船井充、横山広実、渡辺和夫、玉井公子、高橋千代子、相馬満、白土武、吉野高夫、阿部弘樹、細山正樹、岡田正和、青木真理子、青柳重美、大道博政、金沢比呂司、山本佐和子、武田政次、寺沢伸介、奥山憲史、星名靖男、松田宗一郎、堀内博之、後藤孝宏、中島弘明、牟田清司、山田俊也、佐野隆史、西田美弥子、春日香、国枝賢吾、立山信也、宮西多摩子
- 動画検査:小野沢雅子、宇治部まさと
- 動画:鶴山サユリ、楠知津子、小川祐子、家野尚代、柳田勤、後藤由美子、高奥久子、山下聖美、梅津敏文、久保田博和、岩上由武、佐々木猛、田島智久、田名部節也、高村和宏、上津達也、佐伯知津、政岡香織、岡俊夫、塩見靖宏、宮下雄次、橋本誠一、阿部直樹、松原豊、斉藤裕之、川田勇誠、飯田優介
- 中村プロダクション
- はだしプロダクション
- スダジオエッグ
- ドラゴンプロダクション
- ダストスタジオ
- たくらんげウォンバット
- 東京アニメーションセンター
- ミゾ企画
- KOKO ENTERTAINMENT
- 色彩設計:小林照美、笛吹康二
- 仕上:澤井里美、青木晴美、大久保幸枝、菅沼理恵、三津山紀久美、大崎輝美、仙田みずほ、安藤優美、あかほりくみこ、上澤くみ子、後白順子、小川直美、山崎美奈子、川村京子、外井玲子、塚田文子、林敬子、前牟田千代子、桑原和雄、小村多恵子、石井眞美、昇晴子、義山直、楠本みゆき、三関江美、佐々木正子、小林めぐみ、早川恵美、志村仁、日下部真樹子、飯島理恵、村口冬仁、田村智美、高谷知恵、石橋恵美、新倉美佐子、宮村やす子、秋山明美
- スタジオタージ
- スタジオロビン
- シマスタジオ
- スタジオアビグリフォン
- はだしプロダクション
- ミゾ企画
- KOKO ENTERTAINMENT
- 特殊効果:林好美
- 美術協力:飯島由紀子
- 背景:中村靖、遠山麻理子、佐々木友子、永吉幸樹、高橋英次、阿久津美千代、龍池昇、松田三千代、鷲崎博、椿浩幸、鍋谷裕司、小野塚友紀、加藤賢司、高橋久喜、中村豪希、田中真彦、柿本八起、飯野あゆ美、本多敬
- タイトル:田上淑子
- 制作担当:山本清
- 制作進行:高橋勝志、鶴木洋介、山口広
- 宣伝:立沿典子
- 制作デスク:紙谷知子
- DOLBY技術:森幹生、株式会社コンチネンタル・ファーイースト
- 録音スタジオ:アオイスタジオ
- 音響制作:東北新社
- 現像所:東京現像所
- モンキー・パンチ応援団
- マンガジャパン
- ルパン三世製作委員会
- 主題歌「Damageの甘い罠」
- 作詞:松井五郎
- 作曲:KIYOSHI
- 編曲:KAZZ&media yourh
- 唄:media yourh
- オリジナルサウンドトラック:「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」
- 配給:東宝株式会社
- 製作:キョクイチ東京ムービー・日本テレビ放送網・ルパン三世製作委員会
[編集] 声の出演
- ルパン三世:栗田貫一
- 次元大介:小林清志
- 峰不二子:増山江威子
- 石川五ェ門:井上真樹夫
- 銭形警部:納谷悟朗
- オーリエンダー:高山みなみ(全く別人のような声である)
- パニシュ:古谷徹(珍しくこの作品ではほとんど目立たない)
- 首狩り将軍:銀河万丈(普段よりもずっと低い声で演じている)
- クライシス:野沢那智(かなりコワれた演技を見せてくれている)
- エメラ:横山智佐
- スパンキー:千葉繁(同じく、この作品ではほとんど目立たない)
[編集] 参考資料
- DVD『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』の冊子