伊沢多喜男 (政治家)

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伊沢 多喜男（いざわ たきお、明治2年11月24日（1869年12月26日） - 昭和24年（1949年）8月13日）は長野県（旧高遠藩）出身の内務官僚・政治家。

1895年、東京帝国大学政治学科卒業して内務省に入る。山梨県と岐阜県の各県参事官、岐阜県と福井県と滋賀県の各県書記官、滋賀県事務官、警視庁警視などを歴任した後、1907年に和歌山県知事、1910年に愛媛県知事、1912年に新潟県知事となる。大学時代の同期の友人に浜口雄幸がおり、その引き合わせで加藤高明と親交を結ぶが、1913年に第1次山本内閣が成立すると、与党立憲政友会と対立する加藤と親しいことが災いして休職処分となる。だが、翌年に第2次大隈内閣が成立して加藤が外務大臣に就任すると、警視総監に任命された。ところが内務大臣大浦兼武のスキャンダルに巻き込まれる形で辞職して貴族院議員となる。

政党の党員となる事がなかったものの、立憲国民党→憲政会→立憲民政党の支持者である事を公言して憚らず、1919年には貴族院に同成会（院内会派）を組織して、加藤高明・浜口雄幸の盟友として知られていた。そのため、第2次護憲運動では事実上の与党であった貴族院最大会派の研究会糾弾の先頭に立って加藤ら護憲三派を側面援護した。この功績によって1924年の加藤内閣成立後に台湾総督に任じられ、1926年には浜口雄幸の支援を受けて東京市長に選出された。

政友会の田中内閣が成立すると、立憲政友会に対抗するために憲政会と政友本党の合同を実現させるために奔走、水野文相優諚問題・鈴木内相選挙干渉問題では田中内閣を糾弾した。

その後浜口内閣成立の功労により入閣を要請されるもこれを固辞、続いて朝鮮総督就任の要請をされるも満州事変激化と軍部の反対により実現しなかった。その後、斎藤内閣でも入閣要請を受けるもこれを辞退した。その一方で出身母体である内務省に大きな影響力を持ち、政権交代のたびに反対党系の知事が休職に追い込まれる事態を防止するために斎藤内閣に対して官僚の身分保障規定（文官任用令11条）の復活を提言した事で支持を集めた。とりわけ「革新官僚」への影響力は大きく、後藤文夫と支持を2分した。だが、後藤による政党政治を潰そうとする画策には断固反対し、天皇機関説事件や国体明徴運動に対しても厳しく批判した。このため、後藤系の革新官僚や軍部から「旧体制」の象徴的な存在として糾弾され、二・二六事件などの青年将校によるクーデター計画においても「襲撃候補者」として度々名前が挙がったが、閣僚経験のない伊沢を襲ってもクーデター派が期待する社会的な反響は望めないと見られたために後回しにされて命を救われている。

1935年に内閣審議会委員となり、後に新体制運動にも関与するが、後藤文夫に主導権を奪われる。1940年には枢密顧問官に任命されるが、太平洋戦争敗戦後の1947年に公職追放となった。

[編集] 係累

• 飯沢匡 - 次男。劇作家。本名、伊沢紀（ただす）。
• 伊沢修二 - 兄。音楽教育家。吃音矯正教育家。
• 伊沢甲子麿 - 修二の孫。教育評論家。

[編集] 参考文献

• 伊沢多喜男伝記編纂委員会編『伊沢多喜男』羽田書店、1951年
• 伊沢多喜男文書研究会編『伊沢多喜男関係文書』芙蓉書房出版、2000年　ISBN 4829502517
• 大西比呂志編『伊沢多喜男と近代日本』芙蓉書房出版、2003年　ISBN 4829503327