大阪市営地下鉄御堂筋線
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御堂筋線(みどうすじせん)は、大阪府吹田市の江坂駅から大阪市内を経て大阪府堺市北区の中百舌鳥(なかもず)駅までを結ぶ大阪市営地下鉄の路線。正式名称は高速電気軌道第1号線、大阪市交通局では大阪市高速鉄道第1号線と称し、鉄道要覧では1号線(御堂筋線)と記載されている。
路線愛称の由来は大阪市のメインストリート御堂筋の地下を走ることから。ラインカラーは都市の大動脈をイメージした臙脂色(赤、クリムソンレッド)である。
目次 |
[編集] 路線データ
- 路線距離(実キロ):24.5km(営業キロ(運賃計算キロ)も同じ)
- 軌間:1435mm
- 駅数:20駅(起終点駅含む)
- 複線区間:全線
- 電化区間:全線電化(直流750V・第三軌条方式)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 保安装置:WS-ATC
- 最高速度:70km/h
- 編成両数:10両(1996年~)
- ホーム最大編成対応両数:10両
- 車内案内装置設置率:80.48%〔33編成/41編成〕(10系:65.21%〔15編成/23編成〕21系:100%〔18編成/18編成〕)
[編集] 概要
大阪初の地下鉄、かつ日本初の公営地下鉄として1933年(昭和8年)に開業し、大阪市の交通の大動脈となっている。北大阪急行線から続いて江坂から淀川を渡り中津手前までは高架区間で新御堂筋(国道423号)の中央部を、梅田~難波間は御堂筋、天王寺駅~我孫子間はあびこ筋、我孫子より中百舌鳥までの堺市区間はときはま線の地下を走っている。御堂筋線は、公営地下鉄としては、日本全国でも最も黒字額(2005年度決算で348億円)の大きい路線であり、大阪市営地下鉄の中でも収益の6割を占める最も黒字額が大きい路線である。
東京では都心環状路線の山手線がメインの都市交通機関であるが、大阪では御堂筋線がメインの都市交通機関である。これは御堂筋線が関西私鉄各社と接続していて同線は私鉄との結びつきが強く、「私鉄王国の関西」といわれるほど路線網が充実した私鉄に支えられ利用者が多くなっているからである。戦後では1963年4月に京阪本線、1970年3月に近鉄奈良線(難波線)がそれぞれ御堂筋線の駅まで延長された。
また、千里ニュータウンからの北大阪急行線利用客だけではなく、中百舌鳥駅で泉北高速鉄道に接続していることから、堺市南区の泉北ニュータウンや和泉市のトリヴェール和泉など、泉北地域在住の利用客も多いというのもこの路線の特徴である。最近では、泉北高速鉄道和泉中央駅から通勤・通学をする一部の岸和田市民や、北大阪急行線千里中央駅から通勤・通学する一部の箕面市民や豊能郡豊能町民も利用しており、今後も、更なる乗降客数の拡大が見込まれている。
[編集] 運行形態
千里中央~中百舌鳥間の直通(通称・大運転)と新大阪(朝夕の一部と深夜以降は中津)~天王寺(朝夕の一部は我孫子または新金岡)間折り返し列車(通称・小運転)の2つの運転系統があり、それぞれ朝は約4分、日中は約7~8分、夕方は約5分の間隔で走る。原則として交互に走るので、重複する新大阪(または中津)~天王寺間はその半分の運転間隔となり、朝のピーク時は2分間隔での運行となる。起点である江坂駅折り返し列車は早朝・深夜のみに限られる。平日の終日女性専用車両を6号車に設置している。「ラッシュ時の最混雑区間」は難波→心斎橋間であり、混雑率は151%(2005年度)となっている。関西地区の混雑緩和目標は150%なのでほぼ目標をクリアしている。かつては悪名高い混雑路線であったが、近年は乗客の分散や車両の増結等により、混雑緩和が進んでいる。
1970年に開催された日本万国博覧会の会場アクセスのため、同年に江坂から北大阪急行電鉄東西線(会場線)の万国博中央口駅まで相互直通運転を開始。万博終了後は東西線が廃止されたため、直通運転区間は千里中央までとなった。なお、運転士と車掌については江坂駅で北大阪急行電鉄の社員との交代が行われている。
[編集] 車両
[編集] 自局車両
[編集] 乗り入れ車両
[編集] 建設時の逸話
着工は昭和初期である。当時は不況のまっただ中であり、街にはいたるところに浮浪者があふれていた。そこで当路線は失業対策・景気対策も兼ねて建設された。作業員には失業者を多数起用し、人力でトンネル掘削が行われた。
もっとも、可能な限り多数の雇用を実現すべく、極力人海戦術を用いる方針は、厳しい肉体労働故に採用された労働者が定着せず、工程管理上深刻な問題となった。
梅田付近の地質は非常に悪く、その上当時の土木技術は未熟であったため、梅田駅建設時の崩落事故や淀屋橋駅北側の漏水による崩壊事故など大規模な事故に見舞われた。さらに沿線のビルがいくつか傾斜・沈下し、それぞれの所有者から莫大な補償金を求められた。また当時は土佐堀川・道頓堀川・長堀川などの運河が機能していたため、それらを封鎖せずに建設する技術が求められるなど、かなりの難工事であったという。
これらは結果として日本の土木技術の向上に大きく貢献することとなった。[1]
1933年、トレーラークレーンがない当時、製造された車両は梅田貨物駅から人力または牛に牽かれ、御堂筋の平野町付近(淀屋橋~本町間)に開けた搬入口から徐々に降ろされ搬入された。
御堂筋線は開業当時はわずか1両での運転だったのにも関わらず、すべての駅で開業当初からホームは将来を見越して17m級車による8両編成に対応するように造られていた(当初は17m級車の12両編成対応で建設が進められたが、あまりに過剰投資が過ぎるとして中津以北および大国町以南については8両編成対応に計画変更された)。2006年現在地上設備についてはほとんど手直し無しで、当時よりやや大型の18m級車による10両編成で運行を行っている。ただし、乗降客数が過大でホーム面積の拡大が求められた梅田駅および難波駅については大規模な工事を実施し、北行きと南行きを分離した。また、8両編成対応各駅については障害となる各種施設の移動やホームの延伸工事を段階的に実施し、最小限の手直しで10両編成対応化が実現している。
[編集] 歴史
- 1933年(昭和8年)5月20日 1号線 梅田仮~心斎橋間(3.1km)が開業。
- 1935年(昭和10年)10月6日 梅田駅本駅が開業。(+0.1km)
- 1935年(昭和10年)10月30日 心斎橋~難波間(0.9km)が開業。
- 1938年(昭和13年)4月21日 難波~天王寺間(3.4km)が開業。
- 1951年(昭和26年)12月20日 天王寺~昭和町間(1.8km)が開業。
- 1952年(昭和27年)10月5日 昭和町~西田辺間(1.3km)が開業。
- 1960年(昭和35年)7月1日 西田辺~我孫子間(2.5km)が開業。
- 1964年(昭和39年)9月24日 新大阪~梅田間(3.5km)が開業。
- 1969年(昭和44年)12月6日 御堂筋線と愛称が決まる。
- 1970年(昭和45年)2月24日 江坂~新大阪間(2.9km)が開業。北大阪急行電鉄と相互直通運転開始。
- 1975年(昭和50年)5月8日 ラインカラーを導入。
- 1987年(昭和62年)4月18日 我孫子~中百舌鳥間(5.0km)が開業し全通。9両編成化開始。
- 1987年(昭和62年)8月24日 9両編成化完了。
- 1996年(平成8年)9月1日 10両編成化完了。
- 2002年(平成14年)11月11日 平日朝ラッシュ時に女性専用車両を導入。
- 2004年(平成16年)9月6日 女性専用車両の時間帯を平日終日に拡大。
- 2005年(平成17年)3月26日 駅構内放送を2004年に谷町線で導入されたものに更新。
※上記のキロ数は実キロ
[編集] 駅一覧
駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
北大阪急行電鉄南北線千里中央駅まで直通運転 | ||||||
M11 | 江坂駅 | - | 0.0 | 北大阪急行電鉄:南北線(直通運転) | 吹田市 | |
M12 | 東三国駅 | 2.0 | 2.0 | 大阪市 | 淀川区 | |
M13 | 新大阪駅 | 0.9 | 2.9 | 東海旅客鉄道:東海道新幹線 西日本旅客鉄道:山陽新幹線・東海道本線(JR京都線)・大阪外環状線(2012年春開業予定) |
||
M14 | 西中島南方駅 | 0.7 | 3.6 | 阪急電鉄:京都本線(南方駅) | ||
M15 | 中津駅 | 1.8 | 5.4 | 北区 | ||
M16 | 梅田駅 | 1.0 | 6.4 | 大阪市営地下鉄:■谷町線(東梅田駅:T20)、■四つ橋線(西梅田駅:Y11) 阪神電気鉄道:本線 阪急電鉄:神戸本線・宝塚本線・京都本線 西日本旅客鉄道:東海道本線(JR京都線・JR神戸線・JR宝塚線)・大阪環状線(大阪駅)、JR東西線(北新地駅※※) |
||
M17 | 淀屋橋駅 | 1.3 | 7.7 | 京阪電気鉄道:京阪本線、中之島線(大江橋駅・2008年度末開業予定) | 中央区 | |
M18 | 本町駅 | 0.9 | 8.6 | 大阪市営地下鉄:■四つ橋線(Y13)・■中央線(C16) | ||
M19 | 心斎橋駅 | 1.0 | 9.6 | 大阪市営地下鉄:■四つ橋線(四ツ橋駅:Y14)、■長堀鶴見緑地線(N15) | ||
M20 | 難波駅 | 0.9 | 10.5 | 大阪市営地下鉄:■四つ橋線(Y15)・■千日前線(S16) 南海電気鉄道:南海本線・高野線 近畿日本鉄道:難波線(近鉄難波駅) 阪神電気鉄道:西大阪線(近鉄難波駅・2009年春開業予定) 西日本旅客鉄道:関西本線(大和路線)(JR難波駅) |
||
M21 | 大国町駅 | 1.2 | 11.7 | 大阪市営地下鉄:■四つ橋線(Y16) | 浪速区 | |
M22 | 動物園前駅 | 1.2 | 12.9 | 大阪市営地下鉄:■堺筋線(K19) 西日本旅客鉄道:大阪環状線・関西本線(大和路線)(新今宮駅) 南海電気鉄道:南海本線・高野線(新今宮駅) 阪堺電気軌道:阪堺線(南霞町駅) |
西成区 | |
M23 | 天王寺駅 | 1.0 | 13.9 | 大阪市営地下鉄:■谷町線(T27) 西日本旅客鉄道:大阪環状線・関西本線(大和路線)・阪和線 近畿日本鉄道:南大阪線(大阪阿部野橋駅) 阪堺電気軌道:上町線(天王寺駅前駅) |
阿倍野区 | |
M24 | 昭和町駅 | 1.8 | 15.7 | |||
M25 | 西田辺駅 | 1.3 | 17.0 | |||
M26 | 長居駅 | 1.3 | 18.3 | 西日本旅客鉄道:阪和線 | 住吉区 | |
M27 | 我孫子駅 | 1.2 | 19.5 | |||
M28 | 北花田駅 | 1.9 | 21.4 | 堺市北区 | ||
M29 | 新金岡駅 | 1.6 | 23.0 | |||
M30 | 中百舌鳥駅 | 1.5 | 24.5 | 南海電気鉄道:高野線 大阪府都市開発:泉北高速鉄道線 |
※駅番号は北大阪急行線からの通し番号となっている。
※大阪市営地下鉄と相互乗り入れしている各私鉄との連絡切符を購入した場合、経由する会社境界駅が指定されているため、その他の駅では別会社路線への乗り継ぎが出来ない。
- 阪急電鉄千里線と大阪市営地下鉄堺筋線との連絡切符(天神橋筋六丁目駅経由指定)を購入した場合は、南方(西中島南方)駅、梅田駅(東梅田駅、西梅田駅含む)との直接乗り継ぎ不可。
- 近畿日本鉄道けいはんな線と大阪市営地下鉄中央線との連絡切符(長田駅経由指定)を購入した場合は、難波(近鉄難波)駅、天王寺(大阪阿部野橋)駅との直接乗り継ぎ不可。
※※梅田駅ではJR東西線北新地駅との乗り換えには10分程度かかる。それでも、東京駅の京葉線ホームでの乗り換えよりは便利である。
[編集] 関連商品
- Train Simulator 御堂筋線
- 音楽館より、御堂筋線の中百舌鳥から北大阪急行の千里中央までの全線をゲーム化したソフト「Train Simulator 御堂筋線」が発売されている。プレイステーション2用DVD-ROM。御堂筋線を走る全車種(大阪市営10系、21系、北大阪急行8000系)を選択することが可能で、シリーズ唯一の夜間運転ができる(ただし夜間ダイヤは江坂まで。北大阪急行線での夜間運転はゲーム中にない)。車内放送は駅ナンバリング制度導入前のものだが、走行中にリアルに流れる。またダイヤによって、中百舌鳥駅および千里中央駅の発着番線や、天王寺・なんば・梅田など、主要駅の構内アナウンスが変わるのも特徴。地下区間の映像(新金岡駅-中津駅間)はどのダイヤを選択しても同じ映像が使われている。2006年現在TSシリーズで唯一の非一般販売ソフトで、大阪市交通局および北大阪急行から直接購入できる(「九州新幹線」も発売当初は通信販売限定であったが、2005年9月29日より一般販売を開始した)。
[編集] 脚注
- ^ 大阪市交通局 (1980).大阪市交通局七十五年史. 大阪市交通局.