小室直樹
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小室直樹(こむろ なおき、1932年9月9日 - )は、日本人の評論家、社会学者、政治学者、経済学者、法社会学者。東京都世田谷区生まれ。
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[編集] 来歴
5歳の時に同盟通信の記者であった父が死去。その後、母の故郷である福島県会津若松市に転居する。1951年、福島県立会津高等学校卒業。京都大学理学部数学科入学。位相幾何学を専攻。
1955年、京都大学卒業。ジョン・ヒックスの『価値と資本』を読み経済学に興味を持つ。大阪大学大学院経済学研究科進学。『価値と資本』の解説を書いていた市村真一や高田保馬らのもとで理論経済学を研究する。市村の家に泊まり指導を受けた。
1959年、阪大大学院博士課程を中退。市村の推薦で、第2回フルブライト留学生としてアメリカのミシガン大学大学院に留学。同大で1年間学んだ後マサチューセッツ工科大学とハーバード大学の奨学金を得てポール・サミュエルソンのゼミに入るが、ヒックス、サミュエルソン、ケネス・アローなどにより理論経済学の研究は完成されてしまったと考え、社会学と政治学の理論化を研究しようと決意した。当時経済学と並び理論化が深まっていた心理学を学ぶことが、社会学や政治学の理論化に有益であると考え、1年後に再びミシガン大で社会学、政治学、心理学、文化人類学を学んだ。
フルブライト留学生の限度が3年だったため1962年、帰国。経済学から転向することを告げると市村に破門された。1963年、東京大学大学院法学政治学研究科進学。丸山眞男が指導教官となり政治学を学ぶが、小室が心理学ばかり勉強しているので、丸山の弟子の京極純一に預けられた。社会科学の統合を目指し様々な分野の勉強をするため、65年からは富永健一から社会学を、中根千枝から社会人類学を、川島武宜から法社会学を、篠原一から計量政治学をそれぞれ学んだ(この他、小室は文化人類学の山口昌男を訪ね師事を請うたが、山口は目前でいきなり土下座した小室の行動に恐れをなし断ったというエピソードが伝えられている)。また大塚久雄の近所に引越し、直接マックス・ヴェーバーについて学んだ。東大時代は金がなく、田無寮に10年以上暮らし、近くの田無小学校で夜警の用務員に就職した。
1972年、東大から「選挙区の特性分析」で法学博士号取得。博士号取得の数年前から、ボランティアで所属・年齢・専攻を問わない自主ゼミナール(小室ゼミ)を開講する。数学、経済学、社会学などを無償で教授していた。小室ゼミ出身の研究者として、橋爪大三郎・宮台真司などが、また評論家として副島隆彦が挙げられる。
その後富永健一の紹介で『思想』に書いた「社会動学の一般理論」という論文が川島武宜の目に止まり、川島が編集する『法社会学講座』執筆に加わることとなった。この『法社会学講座』は、現在においても法社会学の分野で大きな学術上の評価を受けている。
1980年に山本七平の紹介で光文社から初の一般向け著作である『ソビエト帝国の崩壊』が刊行されベストセラーになり、著名な評論家として認知されるようになる。『ソビエト帝国の最期』には、富永健一による推薦文が載っている。そこで富永は、小室を天才だと評し、しばらくしたら再びアカデミズムの世界に戻ってくるようにと書いている。しかし、その後現在まで小室はジャーナリズムの世界で活躍している。
社会学・経済学の学説を解かり易く説明することについては定評がある一方、著作における歴史上の事実や経済事象についての記述に関して、個別の事柄を取り上げているにもかかわらずミクロ的視点を欠いた粗雑な分析が目立つという批判もある。ソ連の崩壊とその過程を10年以上も前から予言していたとされる。 またロッキード事件では渡部昇一らと共に田中角栄の無罪を主張する論陣を張った。現在は、現代政治研究所(東京都千代田区)の所長。2006年秋からは東京工業大学世界文明センター特任教授に就任している。
著書には各分野の深い教養と、幼少の頃から親しんだという漢籍に基づく表現、一方で「二つ木魚のアホダラ経」「言うだけ谷保の天神様」といった駄洒落がちりばめられており、評価は分かれるものの、小室特有の文章世界を形成している。
無類の猫好きであり、ある国のお国柄はそこに住む猫を見れば判別できるという。勉強ができなかった少年であったが、英文の猫事典を与えられてからむさぼる様に読み、学友たちがABCを学ぶころには、ウェブスターの事典を読んでいたという。
[編集] 著書
- 『ソビエト帝国の崩壊』 ISBN 4334011101 ISBN 4334707130
- 『偏差値が日本を滅ぼす』
- 『アメリカの逆襲』
- 『新戦争論』
- 『日本教の社会学』 山本七平 共著 ISBN 4061458159
- 『危機の構造』
- 『奇蹟の今上天皇』 ISBN 456921536
- 『韓国の悲劇』 ISBN 4334011853
- 『田中角栄の遺言』 ISBN 4877120157 ISBN 4883970213
- 『日本国民に告ぐ』 ISBN 4877120491 ISBN 4883970345
- 『歴史に観る日本の行く末』 ISBN 441303130
- 『日本人のための宗教原論』 ISBN 4198611688
- 『日本人のためのイスラム原論』 ISBN 4797670568
- 『痛快!憲法学』 ISBN 4797670312
- 『数学嫌いな人のための数学』 ISBN 4492222057
- 『論理の方法』 ISBN 4492222308
- 『大東亜戦争ここに甦る』
- 『小室直樹の資本主義原論』
- 『小室直樹の中国原論』
- 『悪の民主主義-民主主義原論-』
- 『経済学をめぐる巨匠たち』
- 『封印の昭和史-戦後50年自虐の終焉-』(渡部昇一との共著)
- 『太平洋戦争、こうすれば勝てた』(日下公人との共著)(文庫化の際、『大東亜戦争、こうすれば勝てた』に改題)
- 『硫黄島栗林忠道大将の教訓』 ISBN 9784898311028
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 研究サイト