愛知環状鉄道線
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愛知環状鉄道線(あいちかんじょうてつどうせん)は、愛知県岡崎市の岡崎駅から新豊田駅を経て、愛知県春日井市の高蔵寺駅に至る愛知環状鉄道の鉄道路線である。通称愛環線、または愛環。
愛知県中部の都市である岡崎市・豊田市・瀬戸市・春日井市を結んでいる。ほぼ全区間が立体交差化され高架線などになっており、多くの区間で複線化が進められ、2005年に開催された愛知万博会場へのアクセス路線として、輸送力増強が行われた。
岡崎~新豊田間は旧特定地方交通線の岡多線を転換した区間、新豊田~高蔵寺間は旧日本鉄道建設公団建設線を第三セクター会社設立後に完成させ開業した区間である。また、岡多線は特定地方交通線の中では唯一の第三セクター転換前に電化されていた路線である。
目次 |
[編集] 路線データ
- 管轄・路線距離(営業キロ):
- 軌間:1067mm
- 駅数:23駅(起終点駅含む)
- 複線区間:中岡崎~北岡崎間、北野桝塚~三河上郷間、瀬戸市~高蔵寺間
- 電化区間:全線電化(直流1500V)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 保安装置:ATS-ST
[編集] 沿線環境
沿線には、高校、大学が多く点在する。但し、県立高校は豊田市と瀬戸市の境界が普通科の学区の境界なので(調整特例などはない)、通常境界を越えて通学できるのは、高校の職業科か私立高校だけである。
[編集] 運行形態
全ての列車が愛知環状鉄道線内の各駅に停車する普通列車で、朝・夕は15~20分間隔、昼間は30分間隔で運行されている。線内運転の列車は、昼間は岡崎~高蔵寺間で運転されているが(一部は北野桝塚駅乗り換え)、一部の列車は瀬戸口駅・新豊田駅・北野桝塚駅を始発・終着としている。岡崎~高蔵寺間の所要時間は約1時間である。
このほか、JR中央本線直通列車が運転されている。朝・夕は名古屋~瀬戸口間に6本(土曜・休日は運休)、日中は名古屋~岡崎間(高蔵寺経由)で5往復10本の設定であり、朝は上り(名古屋行)のみ、夕方は下り(瀬戸口行)のみの運行である。すべてJR東海の車両が用いられ、日中4両、朝は10両編成が走る。夕方は7両での運行であるが、高蔵寺方3両は愛環線区間内ではドア扱いをしていない。
[編集] 使用車両
- 愛環線内普通列車
- 中央本線直通列車
[編集] 利用状況
[編集] 輸送実績
愛知環状鉄道線の近年の輸送実績を下表に記す。 表中、輸送人員の単位は万人。輸送人員は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。 運転本数は、当該年度に実施された最終のダイヤ改正以降の平日1日あたりの本数を記す。貨物列車、臨時列車、非営業列車を含めない。
年 度 | 輸送実績(乗車人員):万人/年度 | 運転本数 | 特 記 事 項 | |||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 合計 | |||
1987年(昭和62年) | 19.2 | 12.6 | 36.7 | 68.5 | 79 | JR東海より転換 開業 |
1988年(昭和63年) | 122.9 | 194.0 | 154.9 | 471.8 | ||
1989年(平成元年) | 140.9 | 218.8 | 203.8 | 563.5 | ||
1990年(平成2年) | 143.2 | 244.2 | 238.8 | 626.2 | ||
1991年(平成3年) | 122.3 | 261.9 | 284.2 | 668.4 | ||
1992年(平成4年) | 128.2 | 269.4 | 314.3 | 711.9 | ||
1993年(平成5年) | 127.3 | 277.8 | 326.5 | 731.6 | ||
1994年(平成6年) | 128.2 | 284.4 | 322.2 | 734.8 | ||
1995年(平成7年) | 126.9 | 290.3 | 334.4 | 751.5 | 85 | |
1996年(平成8年) | 129.1 | 294.4 | 338.4 | 761.9 | ||
1997年(平成9年) | 133.4 | 275.6 | 335.0 | 744.0 | ||
1998年(平成10年) | 135.1 | 277.3 | 342.7 | 755.1 | ||
1999年(平成11年) | 129.7 | 274.0 | 337.7 | 741.4 | ||
2000年(平成12年) | 129.8 | 274.4 | 346.9 | 751.1 | ||
2001年(平成13年) | 142.0 | 266.7 | 379.1 | 787.8 | 88 | 一部区間複線化 |
2002年(平成14年) | 152.6 | 263.5 | 420.6 | 836.7 | 93 | |
2003年(平成15年) | 162.3 | 266.9 | 441.1 | 870.3 | ||
2004年(平成16年) | 192.9 | 271.9 | 523.5 | 988.3 | 212 | 一部区間複線化 愛・地球博開幕 |
2005年(平成17年) | 257.5 | 294.9 | 1413.6 | 1966.0 | 123 | 愛・地球博開催 |
2006年(平成18年) |
[編集] 収入実績
愛知環状鉄道線の近年の収入実績を下表に記す。 表中、収入の単位は千円。数値は年度での値。表中、最高値を赤色の枠で、最高値を記録した年度以降の最低値を青色の枠で、最高値を記録した年度以前の最低値を緑色の枠で囲んで表記している。
年 度 | 旅客運賃収入:千円/年度 | 鉄道線路 使用料 千円/年度 |
運輸雑収 千円/年度 |
総合計 千円/年度 |
||||
通勤定期 | 通学定期 | 定期外 | 手小荷物 | 合 計 | ||||
1987年(昭和62年) | 44,557 | 21,374 | 138,857 | 0 | 204,788 | 216 | 8,831 | 213,835 |
1988年(昭和63年) | 255,235 | 239,693 | 631,583 | 0 | 1,126,511 | 1,108 | 72,624 | 1,200,243 |
1989年(平成元年) | 298,657 | 281,678 | 643,391 | 0 | 1,223,726 | 1,715 | 124,926 | 1,350,367 |
1990年(平成2年) | 314,158 | 296,550 | 745,172 | 0 | 1,355,880 | 1,240 | 165,883 | 1,523,003 |
1991年(平成3年) | 249,773 | 333,944 | 873,613 | 0 | 1,457,330 | 1,252 | 250,969 | 1,709,551 |
1992年(平成4年) | 257,051 | 350,313 | 946,737 | 0 | 1,554,101 | 1,410 | 293,200 | 1,848,711 |
1993年(平成5年) | 251,826 | 379,258 | 976,704 | 0 | 1,607,788 | 1,708 | 298,317 | 1,907,813 |
1994年(平成6年) | 249,442 | 398,481 | 970,560 | 0 | 1,618,483 | 2,209 | 301,870 | 1,922,562 |
1995年(平成7年) | 247,346 | 405,139 | 1,003,776 | 0 | 1,656,261 | 1,968 | 299,210 | 1,957,439 |
1996年(平成8年) | ||||||||
1997年(平成9年) | 260,408 | 383,851 | 1,013,290 | 0 | 1,657,549 | 1,963 | 317,148 | 1,976,660 |
1998年(平成10年) | 266,551 | 386,911 | 1,049,445 | 0 | 1,702,902 | 1,963 | 316,397 | 2,021,267 |
1999年(平成11年) | 252,832 | 381,238 | 1,041,587 | 0 | 1,675,657 | 1,005 | 321,998 | 1,998,660 |
2000年(平成12年) | 256,129 | 388,230 | 1,061,272 | 0 | 1,705,631 | 0 | 317,518 | 2,023,149 |
2001年(平成13年) | 283,532 | 376,641 | 1,135,525 | 0 | 1,795,698 | 0 | 311,286 | 2,106,984 |
2002年(平成14年) | 309,084 | 376,158 | 1,254,981 | 0 | 1,940,223 | 0 | 311,490 | 2,251,713 |
2003年(平成15年) | 331,293 | 383,872 | 1,347,419 | 0 | 2,062,584 | 0 | 311,681 | 2,374,265 |
2004年(平成16年) | 391,674 | 396,675 | 1,587,675 | 0 | 2,376,024 | 0 | 324,246 | 2,700,270 |
2005年(平成17年) | 5,457,760 | |||||||
2006年(平成18年) |
[編集] 歴史
鉄道敷設法で「愛知県岡崎ヨリ挙母ヲ経テ岐阜県多治見ニ至ル鉄道」として計画された岡多線と、「愛知県瀬戸ヨリ稲沢ニ至ル鉄道」として計画された瀬戸線が元になっている。1930年には鉄道に先行して岡崎~多治見間に初の鉄道省営バス(のちの国鉄バス、現在のJR東海バス)路線が開設され、1970年に貨物線として岡崎~北野桝塚間が開業した。のちに新豊田駅まで延長され旅客営業も開始されたが、名古屋近郊都市を結ぶ短絡線としての効果は(そもそも中央線高蔵寺以北と東海道線岡崎以東の、沿線間の短絡需要自体がそれほど無いのではあるが)部分開業では発揮できず、利用は伸び悩んだ。また、工事区間沿線の開発が殆ど進んでおらず、開通による沿線利用客の増加が殆ど見込めない状態であった。
岡多線岡崎~新豊田間の平均断面輸送密度は国鉄再建法により廃線対象となる基準の4,000人/日を下回る2,757人/日であったため、国鉄は特定地方交通線第3次廃止対象線区として廃止承認を申請した。更に主要幹線(C線)として日本鉄道建設公団が建設していた岡多線新豊田~瀬戸間、瀬戸線瀬戸~稲沢・枇杷島間の予想平均断面輸送密度も3600人/日程度と廃止対象の基準を下回っていた。これらの事から国鉄は廃止承認の申請前より沿線自治体に対し第三セクターによる運営を申し入れ、当初自治体は「国鉄による早期開業を」と反対を表明したが、後にそれらの営業を受け入れる第三セクターとして愛知環状鉄道を設立し、鉄建公団に支払う賃借料を分割民営化後国鉄清算事業団が継承し転換・開業させる事で決着をみた(地方開発線・地方新線のAB線は無償で国鉄に貸与・譲渡されるのに対しC線は有償貸与であり、実際に国鉄は岡崎~新豊田間の賃借料を支払っていた)。この時開業しなかった岡多線瀬戸~多治見間(AB線)は鉄道敷設法の廃止に伴い計画その物が消滅している。
なお、1973年に並行路線の名鉄挙母線が廃止され一部が岡多線の用地に転用された。また、瀬戸線のうち勝川~枇杷島間は東海交通事業城北線として開業している。岡多線予定区間であった瀬戸市~多治見駅前間に運行されていたJR東海バスの瀬戸北線は2002年に廃止されている。
貨物輸送は、岡多線として開業時から行われていた岡崎~北野桝塚間のトヨタ自動車の自動車輸送は1984年末限りで終了し、1971年から行われていた岡崎~北岡崎間のユニチカ岡崎工場向けの原料輸送も1999年9月で終了したが、日本貨物鉄道(JR貨物)はいまだ岡崎~北岡崎間の第二種鉄道事業者となっている。将来的には全区間複線化し、三河豊田駅からトヨタ自動車本社工場に貨物専用線を設ける計画予定もある。
愛知万博開催を控え、会場アクセス拠点駅となる八草駅は2004年10月10日から2005年9月30日まで「万博八草駅」と一時改称された。万博が開催された2005年には、会場アクセス列車として名古屋~万博八草駅間にJR中央本線直通列車「エキスポシャトル」が3月1日から9月30日まで毎時3往復運転された。車両はJR東海の211系5000番台(日によっては113系)が使用された。また、これを機に万博終了後の同年10月1日のダイヤ改正から名古屋~瀬戸口・岡崎間に直通列車が新設された。
[編集] 年表
- 1970年(昭和45年)10月1日 - 国鉄岡多線 岡崎~北野桝塚間が開業。貨物営業のみ。北野桝塚駅開業。途中に北岡崎信号場を開設。
- 1971年(昭和46年)10月1日 - 北岡崎信号場を駅に格上げし北岡崎駅開業。
- 1976年(昭和51年)4月26日 - 北野桝塚~新豊田間が延伸開業。全線で旅客営業開始。中岡崎駅、三河上郷駅、永覚駅、三河豊田駅、新豊田駅開業。
- 1979年(昭和54年)5月27日 - 豊橋~岡崎~新豊田間で第30回全国植樹祭に出席する昭和天皇の便を図って、お召し列車運行。
- 1985年(昭和60年)1月1日 - 北岡崎~北野桝塚間貨物営業廃止。
- 1986年(昭和61年)5月27日 - 第3次特定地方交通線として承認。
- 1987年(昭和62年)4月1日 - 国鉄分割民営化により東海旅客鉄道(JR東海)が承継。日本貨物鉄道が岡崎~北岡崎間の第二種鉄道事業者となる。
- 1988年(昭和63年)1月31日 - 愛知環状鉄道に転換。新豊田~高蔵寺間が延伸開業。既存区間に六名駅、大門駅、末野原駅、新上挙母駅開業。新規開業区間に四郷駅、保見駅、篠原駅、八草駅、山口駅、瀬戸口駅、瀬戸市駅、中水野駅開業。
- 2001年(平成13年)12月23日 - 中岡崎~北岡崎間、北野桝塚~三河上郷間複線化。
- 2004年(平成16年)10月3日 - 瀬戸市~高蔵寺間複線化。
- 2005年(平成17年)3月1日 - 愛環梅坪駅、貝津駅開業。名古屋駅よりエキスポシャトルが乗り入れ開始(9月30日まで)。
- 10月1日 - 万博八草駅を八草駅に再改称。愛環線と中央本線(岡崎~高蔵寺~名古屋)間の本格直通運転を開始。
[編集] 駅一覧
乗車人員は2004年度の1日あたり。ただし愛環梅坪と貝津の両駅は2005年度。
駅番号 | 駅名 | 営業キロ | 乗車人員 | 接続路線 | 単線/複線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
01 | 岡崎駅 | 0.0 | 2,930 | 東海旅客鉄道:東海道本線 | | | 愛知県 | 岡崎市 |
02 | 六名駅 | 1.7 | 360 | ◇ | |||
03 | 中岡崎駅 | 3.4 | 729 | 名古屋鉄道:名古屋本線(岡崎公園前駅) | ∧ | ||
04 | 北岡崎駅 | 5.3 | 1,027 | V | |||
05 | 大門駅 | 6.5 | 679 | | | |||
06 | 北野桝塚駅 | 8.7 | 534 | ∧ | |||
07 | 三河上郷駅 | 10.7 | 1,260 | V | 豊田市 | ||
08 | 永覚駅 | 12.4 | 364 | | | |||
09 | 末野原駅 | 14.0 | 1,332 | ◇ | |||
10 | 三河豊田駅 | 15.9 | 5,657 | | | |||
11 | 新上挙母駅 | 17.6 | 808 | 名古屋鉄道:三河線(上挙母駅) | | | ||
12 | 新豊田駅 | 19.5 | 8,424 | 名古屋鉄道:三河線(豊田市駅) | ◇ | ||
13 | 愛環梅坪駅 | 21.5 | *1,172 | | | |||
14 | 四郷駅 | 23.5 | 1,159 | ◇ | |||
15 | 貝津駅 | 25.5 | *887 | | | |||
16 | 保見駅 | 26.8 | 1,383 | ◇ | |||
17 | 篠原駅 | 29.2 | 212 | ◇ | |||
18 | 八草駅 | 32.0 | 3,500 | 愛知高速交通:東部丘陵線(リニモ:L09) | ◇ | ||
19 | 山口駅 | 34.6 | 866 | ◇ | 瀬戸市 | ||
20 | 瀬戸口駅 | 36.7 | 1,421 | ◇ | |||
21 | 瀬戸市駅 | 39.1 | 2,017 | 名古屋鉄道:瀬戸線(新瀬戸駅) | ∧ | ||
22 | 中水野駅 | 41.9 | 973 | ∥ | |||
23 | 高蔵寺駅 | 45.3 | 3,682 | 東海旅客鉄道:中央本線(一部直通) | ∥ | 春日井市 | |
JR中央本線名古屋駅まで直通運転 |
- 凡例
- |:単線区間 ◇:交換設備
- ∧:これより下は複線 ∥:複線区間 V:これより下は単線
[編集] 国鉄時代の逸話
- 路線名である「岡多(おかた)線」は湯桶読みである。国鉄は従来、二つの地名から一文字ずつを取った線路名称は、実際に読み方に関係なく音読みのみ(一部訓読みのみの例外あり)としてきたが、当路線は初めてこれを破った路線名となった。
- 上記の通り、トヨタ自動車の自動車輸送を目的として開業し、国鉄末期にトヨタ側がこれを取りやめた。これに関して、国鉄改革を推進する側は「国鉄の非効率」(トヨタが見限る)の典型例として、逆にそれを批判する側は「大企業の都合で敷いた鉄道が、その企業の都合で使うのをやめられてしまう」鉄道政策の無定見さとして取り上げた。
- 旅客営業の開始当時、神領電車区所属の70系電車が使用された。新規開業路線に旧型国電が使用されたケースは当線が最後である。