JR東海313系電車
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JR東海313系電車 | |
東海道本線名古屋地区用5000番台 |
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編成 | 2両編成・3両編成・4両編成・6両編成 (MT比はいずれも1:1) |
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起動加速度 | 2.7km/h/s |
営業最高速度 | 130km/h *1 |
設計最高速度 | 130km/h |
減速度 | 4.3km/h/s(通常) |
定員 | 56(席)+100(立)=156名*2 |
最大寸法 (長・幅・高) |
20,000(20,100)*3×2,978×4,020mm |
編成重量 | 128.4t(0番台4連) 127.9t(1000番台4連) 68.3t(3000番台2連) 100.6t(8000番台3連) (いずれも新造時) |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
モーター出力 | 185kW/基(C-MT66A) |
歯車比 | 1:6.53 |
駆動装置 | TD継手式(中実軸)平行カルダン |
制御装置 | VVVFインバータ制御(IGBT素子 1C2M) |
ブレーキ方式 | 電気指令式ブレーキ (回生ブレーキ・応荷重対応・T車遅れ込め制御・抑速付) 直通予備ブレーキ・耐雪ブレーキ 発電ブレーキ*4(回生とのブレンディング) |
保安装置 | ATS-ST形、EB装置、TE装置、列車防護無線装置 |
製造メーカー | 日本車輌・近畿車輛・東急車輛製造 |
備考 | *1 - セントラルライナーにて実施 *2 - 0・1000番台中間車 *3 - ()内は先頭車を示す *4 - 一部の車両 |
313系電車(313けいでんしゃ)は東海旅客鉄道(JR東海)の直流近郊形電車。
目次 |
[編集] 概要
1999年(平成11年)当時、JR東海は国鉄形車両から省エネタイプの自社形車両への置き換えを進めており、特急形車両では定期列車の車両置き換えを完了していた。一方、近郊形車両においても、211系5000番台や311系などを投入してきたが、103系・113系・165系などの国鉄形車両が半数以上を占めていた。313系はこれら国鉄形車両の置き換えを目的として登場した車両である。
車体断面は同社における最小の車両限界である身延線を基準に決定され、同社のすべての電化路線での走行が可能である。また、従来の自社形車両と比べてもパワーアップが図られており、過酷な高速運用で傷みの目立ってきた311系に代わり、東海道本線におけるほぼ全ての快速列車にも充てられている。
このように313系は都市部の近郊輸送のほか、後述するローカル区間でのワンマン運転や有料制ライナー列車まで、あらゆる需要に対応しており、同社の標準車両と位置づけられる。そのため車内仕様や機器構成により、当初から細かな番台区分が設定されている。
1998年度末に77両、1999年度に104両が投入され、共に1999年に営業運転を開始した。これにより同社の103系が全車廃車となり、165系も定期運用から外れた。また、東海道本線名古屋地区では113系の定期運用が消滅するなど、国鉄形車両の淘汰を進め、同社における自社形電車の比率を55%にまで向上させた。
その後2001年に6両、2006年度に204両の増備が行われ、総計391両を有する同社の最大両数系列電車となるとともに、同社の旧型車両である113系・115系・123系を淘汰した。
[編集] 性能・仕様
[編集] 基本構造
313系は、同社の特急形車両である373系を基本とし、近郊形に応じた変更および改良が加えられている。また、編成は番台区分に応じ2・3・4・6両編成が存在するが、ここではおもに共通事項を述べる。編成については後述する。
[編集] 車体構造
- 近郊形としてオーソドックスな軽量ステンレス製の片側3扉を有する車体であり、先頭部のみ普通鋼製として貫通扉を備える。側窓は連続窓であり、戸袋窓、妻窓は設けられていない。先頭部は白色に塗装され、前面から側面にかけ同社のコーポレートカラーであるオレンジ色の帯を巻いている。ただし、8000番台は有料制ライナー列車であることを示すため、カラーリングを変えている。
- 用途により多様な番台区分があるが、車体の構造はいずれも同一であり、共通化のための配慮が見られる。側面の連続窓は吹寄(中間の間柱)に荷重を受持たせない構造であり、番台区分による窓割りの違いに対応している。また、先頭車のうち運転席と隣接する側扉は、運転席側に210mm寄せており、ワンマン車両への対応にも配慮されている。
- 客室内の騒音低減のため、床下には廃ゴムタイヤ破砕再用品である吸音材が詰められている。
[編集] 主電動機・制御装置・台車
- 主電動機は373系で実績のある三相誘導電動機(185kW)を基本に、近郊形であることからMT比を1:1に向上させている。MT比1:1は、編成にかかわらず固定される設計となっており、3両編成には主電動機数を半分にした車両が組み込まれる。また、制御装置は373系のGTO素子に代わり、東芝製IGBT素子によるVVVFインバータ(3レベルPWM制御、1両2群1C2M)が採用されている。
- 台車は、211系の流れをくむ円錐積層ゴム式の軽量ボルスタレス台車であり、空気バネ位置に改良を加えるとともに、ヨーダンパを装備する。付随台車は1軸2ディスクブレーキを採用するとともに、踏面清掃装置を備え、踏面ブレーキを省略している。また、全軸に滑走検知装置を備えている。
- 運転台は373系に準拠しており、貫通式であるためコンパクトにまとめられている。左手ワンハンドル式マスコン、右側にはタッチパネル式液晶モニタ装置を配備し、ボタン式のEB装置、定速制御を装備する。力行は5段、ブレーキは抑速ブレーキと常用ブレーキ7段、非常ブレーキの計9段階である。
- 211系・213系・311系といった異系列との併結も可能であり、中央線を中心に併結運用が数多く見られる。この場合、編成間の性能不均衡を防ぐため、併結する系列に対して313系が性能(引張力)を合わせる設計となっている。
[編集] 車内仕様・サービス設備
- 転換クロスシート仕様車と、ボックス式クロスシートとロングシートを組み合わせたセミクロスシート仕様車、全席ロングシート仕様車に大別でき、さらに後述のように番台区分に応じて差違が見られる。このうち、転換クロスシートは、まくら折れ機構を有する背ずりを採用し、座り心地の改善を図っている。いずれの仕様も立客スペースを大きく確保しているため、座席数は比較的少ない。
- 側窓は固定窓であり、車端部の側窓の上部のみが内側に折れて開く構造を採用し、非常時の換気に備えている。窓ガラスに紫外線(UV)カットの複層ガラスを採用しながら日除けも省略しておらず、フリーストップ式ロールカーテンもしくは横引きカーテンを備える。
- 交通バリアフリー法への対応として、ドアチャイムやバリアフリー対応トイレ(洋式便器とおむつ交換台)のほか、各扉上には単色のLED式旅客案内表示器を備える。これは文字を小さくすることで2行表示も可能である。その他、乗降促進チャイム機構を備えており、車掌スイッチにより車外スピーカーから、発車メロディとドア閉め注意喚起音声を鳴らすことができる。
- 一部の車両には、押ボタン式の半自動ドア機構を備えている。
[編集] その他の仕様
主要性能は右上の表を参照のこと。
- 台車 - 軽量ボルスタレス台車(動力台車:C-DT63A形、付随車台車:C-TR251形)
- 集電装置 - C-PS27A形シングルアーム式パンタグラフ
- 冷房装置 - C-AU714A形
- 製造 - 日本車輌製造・近畿車輛・東急車輛製造
- 備考 - 1999年度グッドデザイン賞受賞[1]
[編集] 形式
313系は以下の4形式から構成される。各形式とも番台区分により機器・車内構成が異なるが、番台ごとの詳細は次節で述べる。
[編集] クモハ313形
- 熱海方(塩尻・亀山・富士・国府津方)制御電動車(Mc)
- シングルアーム方式のパンタグラフ、および一体型のVVVFインバータ制御装置と補助電源装置(SIV)を搭載。
- 一部の車両は発電ブレーキ(ブレーキチョッパ装置・抵抗器)を搭載する。これは回生・発電のブレンディングを行うもので、ブレーキチョッパ装置により、回生ブレーキを併用しながら不足分のみを発電ブレーキで補うシステムである。JR東海では373系から採用されている。
- 本形式および後述のクハ312形に主要機器を集中搭載しており、両形式による2連で最小構成が組むことができる。これは、ローカル区間も含めたJR東海のあらゆる運用を想定したものである。
- 機器の構成により以下の4つに分けられる。
- Mc1 - 3・4両編成に組み込まれる。SIV容量150KVA(0/1000/1100番台、1500/1600番台、2500番台、8500番台)。
- Mc2 - 2両編成に組み込まれる。SIV容量80KVA(300番台)。
- Mc3 - Mc2の機器構成に加え、発電ブレーキ装置を搭載(3000/3100番台、2300/2350番台)。
- Mc4 - Mc1の機器構成に加え、発電ブレーキ装置を搭載(1700番台、2600番台、5000番台)。
[編集] クハ312形
- 米原方(名古屋・甲府方)制御付随車(Tc')
- 空気圧縮機(CP)蓄電池(BAT)を搭載するほか、車内にトイレが設置されている。
- 機器の構成により以下の2つに分けられる。
- Tc'1 - 初期車の3・4両編成に組み込まれる。CP容量2kl/min(0番台、8000番台)。
- Tc'2 - 初期車の2両編成および増備車のすべてに組み込まれる。CP容量1kl/min(300/400番台、3000/3100番台、2300番台、5000番台)。
[編集] モハ313形
- 中間電動車(M)
- VVVFインバータ制御装置を搭載する。
- 313系は前述のとおり2連が最小構成であり、3両編成以上となる場合に本形式が組み込まれる。
- 機器の構成により以下の5つに分けられる。
- M1 - 後述のサハ313形とともに4両編成に組み込まれる。パンタグラフを搭載(0番台、1000/1100番台)。
- M2 - 3両編成に組み込まれる。編成全体のMT比を1:1とするため片側の台車のみに主電動機を搭載しており、いわば0.5M0.5T車と言える。パンタグラフは搭載されない(8500番台、1500/1600番台、2500番台)。
- M3 - M1の仕様に発電ブレーキを搭載(5000番台)。
- M4 - M2の仕様に発電ブレーキを搭載(1700番台、2600番台)。
- M5 - 6両編成に組み込まれる。M3の仕様に加えSIVを搭載(5300番台)。
[編集] サハ313形
- 中間付随車(T)
- 4両編成および6両編成に組み込まれる。
- 増備車には空気圧縮機(CP)を搭載するほか、6両編成には蓄電池(BAT)を搭載する車両がある。
- 機器の構成により以下の3つに分けられる。
- T - 初期車に組み込まれる。特筆すべき機器の搭載はない(0番台、1000番台)。
- T2 - 増備車に組み込まれるもので、CPを搭載する(1100番台、5000番台)。
- T3 - 6両編成に組み込まれ、CPのほかBATを搭載する(5300番台)。
[編集] 初期車の番台区分・編成
[編集] 初期車の概要と投入線区
本節では、1998年度から2000年度にかけ新製された番台区分について記載する。初期車における番台区分は、車内仕様により以下の4つに大別できる。各番台区分は、編成両数や搭載機器の違いにより、さらに細かな区分がなされる。詳細は各番台の項を参照のこと。
番台区分 | 車内仕様 | 編成両数 | おもな運行路線 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
0番台 | 転換クロスシート (車端部固定シート) |
4両・2両 | 東海道本線(浜松~米原) | 2両編成は300番台 |
1000番台 | 転換クロスシート (車端部ロングシート) |
4両・3両 | 中央本線(名古屋~中津川) | 名古屋方制御車は0番台 3両編成の電動車は1500番台 |
3000番台 | セミクロスシート ワンマン運転対応 |
2両 | 中央本線・篠ノ井線(中津川~松本) 関西本線、身延線、御殿場線 |
|
8000番台 | 転換クロスシート (特別仕様) |
3両 | 中央本線(名古屋~中津川) | 電動車は8500番台 |
東海道本線名古屋地区(浜松~米原)においては92両に及ぶ0番台(300番台含む)が投入され、快速列車の大半が置き換えられた。それまで新快速運用にあった311系は主として同線の普通列車の運用を担当することとなり、快速として用いられていた117系はラッシュ時のみの運用となった。本系列は最高速度こそ311系と同じ120km/hであるが、加速性能の向上により所要時間を一部で短縮している。また、120km/h運転を快速列車全般に拡大することにより、平均所要時間の短縮も実現している。
中央本線のうち名古屋~中津川・南木曽間には、1000番台および8000番台が投入されている。同線では路線の性格上ロングシートの211系5000番台が主力であることから、一般向けの1000番台は合計21両の投入にとどまり、ほぼ1時間に1本運行の名古屋~中津川を結ぶ快速に充当されている。また、新たに設定された有料指定制快速セントラルライナー向けとして、専用車両の8000番台が投入された。一方、同線のうち中津川~塩尻間および篠ノ井線の塩尻~松本間では、ワンマン対応車である3000番台が投入され、ワンマン運転が開始されている。
3000番台は、さらに関西本線・身延線・御殿場線にも投入され、各線でワンマン運転を行っている。関西本線では日中のワンマン化にともない、それまでの主力であった213系5000番台はラッシュ時のみの運用となっている。
次項より各番台区分について解説する。編成の向きは左側が熱海・浜松方(塩尻方・亀山方)である。
[編集] 0番台
- 東海道本線名古屋地区用。4両編成と2両編成が存在する。
- 所属はすべて大垣車両区であり、4両編成15本(60両、Y1~Y15編成)、2両編成16本(32両、Y31~Y46編成)、計31本92両が配置されている。
- 2両編成は300番台と称し、補助電源装置、空気圧縮機の容量を編成長に合わせ小さくしている。
- 車内のカラースキームはブルー系でまとめられ、座席は転換クロスシート(シートピッチ875mm)が扉間に5列配置されている。ただし、扉に隣接する座席は固定式、車端部はボックスシートとなっている。扉間の座席数が少ないため、クロスシート車でありながらロングシートの211系より座席定員が少ないが、扉付近に広い立席スペースを有しラッシュ時の輸送に備えている。
- 扉間の窓配置はクロスシートのピッチに合わせ、等間隔の5分割タイプとなっている。
- 1999年7月12日に営業運転を開始。当初は中央本線でも用いられた。1999年12月4日のダイヤ改正から、東海道本線(浜松~米原)における快速列車は、大半が本番台により運転されることとなった。
- 2006年10月1日のダイヤ改正では、後述の5000番台投入により、普通列車にも運用の場を広げている。これにより、211系5000番台は運用から外れ静岡車両区へ転属している。
- 2両編成は、4両編成の増結編成として東海道本線の快速列車に用いられるほか、大垣~米原・美濃赤坂間の折り返し運転や飯田線で運用される。また、日中の東海道本線の普通列車として、単独2両編成での運用も多い。
- 後述の1000番台編成に組まれるクハ312形も0番台である。
- 編成
- 4両編成 クモハ313(Mc1) - サハ313(T) - モハ313(M1) - クハ312(Tc'1)
- 2両編成 クモハ313-300(Mc2) - クハ312-300(Tc'2)
[編集] 1000番台
- 中央本線(名古屋~南木曽間)用。4両編成と3両編成が存在する。
- 所属はすべて神領車両区であり、4両編成3本(12両、B1~B3編成)、3両編成3本(9両、B101~B103編成)、計6本21両が配置されている。ともに予備編成を持たないため、検査時にはそれぞれ211系5000番台の4連・3連が代走する。
- 3両編成の電動車は1500番台と称し、中間電動車のモハ313形1500番台は主電動機を片側の台車のみに搭載することで、編成全体のMT比1:1を崩さないようにしている。
- 座席は0番台と同じ転換クロスシートが基本であるが、中央線名古屋近郊の混雑を想定して車端部のみロングシートとしているのが本番台の特徴である。ただし、運転室とトイレを備えるクハ312形は、車端部のロングシートが配置されないため、0番台が組み込まれる。したがって、本番台区分はクモハ313形、モハ313形、サハ313形のみが存在する。本番台は0番台に先駆けて新製されたため、クハ312形の車番1~6は本番台に組み込まれている。
- 車内のカラースキームは0番台と同様のブルー系であるが、貫通扉の塗色や網棚・天井の一部が薄紫色となっており若干の差異がある。
- 窓配置は0番台に準じている。
- 1999年5月6日に営業運転を開始。日中に中央線の快速(おもに名古屋~中津川間)として4両編成または3両×2の6両編成で用いられるほか、ラッシュ時には本番台同士または211系などと併結し最大10連で運用される。
- もっぱら中央本線で運用されるが、2005年日本国際博覧会(愛・地球博)開催時には211系が不足したことなどから関西本線や東海道本線(名古屋~岐阜間)で用いられたこともある。また、4両編成は2005年10月1日より定期列車として愛知環状鉄道線に乗入れている。
- 編成
- 4両編成 クモハ313-1000(Mc1) - サハ313-1000(T) - モハ313-1000(M1) - クハ312(Tc'1)
- 3両編成 クモハ313-1500(Mc1) - モハ313-1500(M2) - クハ312(Tc'1)
[編集] 3000番台
- 中央本線(中津川~塩尻間)・篠ノ井線(塩尻~松本間)・関西本線・御殿場線・身延線におけるワンマン運転用。2両編成のみが存在する。
- 静岡車両区に12本(24両、V1~V12編成)が御殿場線・身延線用として、また神領車両区に16本(32両、B301~B316編成)が中央本線・篠ノ井線・関西本線用として、計28本56両が配置されている。
- 車内のカラースキームはグリーン系でまとめられ、座席はセミクロスシート(車端部とドア付近がロングシート、トイレ付近とその他はボックスシート)としている。
- 前述のとおり、ワンマン運転設備が搭載されており、ドア横には出入口を表示するLED表示機、車内には運賃箱、電光式運賃表、整理券発行機、運転台には車外確認用ミラー、この他自動放送装置が搭載されている。電光式運賃表は神領車両区所属車と静岡車両区所属車で仕様が異なる。また、自動放送もそれぞれの車両区ごとにまったく異なる人物の声が使われている。
- 寒冷地での運用を考慮し、押ボタン式の半自動ドア機構(ワンマン運転時には先頭車前部のドアは車内からのみ開けられ、後部のドアは外からのみ開けられる仕様)を装備している。また、投入当初は霜取パンタグラフについて準備工事のみが施されていたが、2007年2月現在、静岡車両区所属分については増設工事が完了した。
- 扉間の窓配置はボックスシートのピッチに合わせ、中央の2枚が大きい不均等の4分割タイプとなっている。
- 列車密度の低い線区で運用されることから、クモハ313形に回生失効に備え発電ブレーキを搭載している。また、V1編成においては、電気二重層キャパシタを用いた鉄道車両用電力貯蔵システムの試験が行われた。[2]
- 営業運転は1999年5月6日中央本線(名古屋~中津川間)が最初である。運転当初は東海道本線で4編成を併結し8連で使用されていたこともあった。本来の運用区間においては、御殿場線・身延線が同年6月1日、中央本線・篠ノ井線(中津川~松本間)が同年7月15日、関西本線が同年12月4日にそれぞれ営業運転を開始している。当初、ワンマン運転は行われておらず、同年12月4日(関西本線は2000年3月3日)からの開始である。
- ワンマン線区での運用のほか、ラッシュ時の増結編成としても用いられる。中央本線(名古屋~中津川)では211系と併結し最大10連で運転され、東海道本線(名古屋~岐阜)でも朝ラッシュ帯に213系と併結した6連での運用が存在する。
- 編成
- クモハ313-3000(Mc3) - クハ312-3000(Tc'2)
[編集] 8000番台
- 中央本線(名古屋~中津川間)を走る有料定員制快速「セントラルライナー」専用番台。3両編成のみが存在する。
- すべて神領車両区に所属し、6本(18両、B201~B206編成)が配置されている。
- 1999年12月4日に3両編成4本(12両)が営業運転を開始。その後、列車の好評を受けて2000年度に3両編成2本(6両)が増備された。
- 前述の1500番台と同様、3両編成であることから電動車は8500番台と称し、中間電動車のモハ313形8500番台は片側の台車のみに主電動機を搭載している。
- 座席は扉間に転換クロスシートを5列配置し、扉に隣接するものを含めて転換可能である。座席間隔は910mmで、0番台などに比べてやや広く、背ずりも高い。車端部は「セミコンパートメント」と称するテーブル付のボックスシートとなっている。
- 「セントラルライナー」専用車両として、ドア付近には仕切があり、内装は373系に近いワインレッド系の色彩にまとめられている。客室中央部のドアは「セントラルライナー」運用時は常時締切となっており、押ボタン式半自動ドア機構は装備しているが、基本的に半自動扱いは行われない。またドア上部にあるLED式旅客案内表示器は中央部以外省略され、扉部の客室天井に枕木方向に吊下げる形で装備されている。窓は熱線吸収ガラスで、他の番台と違いカーテンは横引き(それ以外はフリーストップ式ロールカーテン)。
- 扉間の窓配置は中央の1枚の幅が狭い不均等の3分割タイプとなっている。
- 外装では特徴的なオレンジ色の帯6本を巻いており、新製時から転落防止用の外幌を装備している。幕板部には、号車および座席種別(指定/自由)表示幕用の小窓が2箇所にある。
- 日中から夕方にかけ、セントラルライナーとして3両もしくは6両編成で運転されるほか、朝ラッシュ帯や夜時間帯に211系・213系と併結して中央本線の一部の快速・普通列車にも用いられる。
- 2007年3月18日のダイヤ改正からは、313系初の130km/h運転を実施している。
- 編成
- クモハ313-8500(Mc1) - モハ313-8500(M2) - クハ312-8000(Tc'1)
[編集] 増備車の番台区分・編成・投入計画
[編集] 投入計画と配置状況
増備車は、同社における旧型車両(113系・115系・123系)を置換えるために計画された車両で、2006年8月から2007年2月までに順次製造・配備された。
番台区分 | 車内仕様 | 編成両数 | おもな運行路線 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
1000番台 増備車 |
転換クロスシート (車端部ロングシート) |
3両・4両 | 中央本線(名古屋~中津川) | 4両編成は1100番台、3両編成は1600番台 (いずれも制御車は400番台) |
3両 | 飯田・中央・篠ノ井・信越線 (豊橋~辰野~塩尻~長野) |
寒冷地仕様車・発電ブレーキ搭載 1700番台(制御車は400番台) |
||
2000番台 | ロングシート | 3両 | 東海道線(熱海~豊橋) 御殿場線(御殿場~沼津) |
2500番台 (制御車は2300番台) |
2両 | 東海道線(熱海~浜松) 御殿場線、身延線 |
2300番台(発電ブレーキ搭載・ワンマン準備) (ダブルパンタ付制御電動車は2350番台) |
||
3両 | 東海道線(熱海~豊橋) 御殿場線、身延線 |
2600番台(発電ブレーキ搭載) (制御車は2300番台) |
||
3000番台 増備車 |
セミクロスシート ワンマン運転対応 |
2両 | 御殿場線、身延線 | 3100番台 |
5000番台 | 転換クロスシート (全転換) |
6両 | 東海道本線(浜松~米原) | BT・SIV搭載の中間車は5300番台 セミアクティブダンパ・車体間ダンパ搭載 |
新たな番台区分として、5000番台(全席転換クロスシート車)と2000番台(全席ロングシート車)が登場した。また、初期車の増備型車両については、初期車と区別するため番台に100を付加している。3000番台増備車(2編成・4両)および5000番台(12編成・72両)は2006年10月のダイヤ改正において本格運用を開始した。また、1000番台増備車のうち中央本線名古屋地区向け(6編成・20両)が同年11月より、2000番台の一部は同年12月よりそれぞれ運用を開始している。
[編集] 仕様の変更
共通事項として以下の仕様変更が認められる。
- 行先表示器・前照灯・標識灯
- 行先表示器は前面・側面とも従来の幕式に代え、フルカラーLED表示器に変更された。側面の表示器は走行中消灯するタイプを採用している。また、前照灯・標識灯はプロジェクター式HID・白色LEDの併用に変更されており、初期車に比べ青白い光源が特徴となっている。
- 車内トイレ
- 車椅子による利用性を向上するため、トイレ面積の拡大と自動扉化が図られている。一方で、スペース拡大にともないトイレ横の座席は廃止された。
- ブレーキ関連
- 初期車においては、空気圧縮機(CP)をクハ312形に集中搭載し、4両(3両)編成には容量2kl/min、2両編成には容量1kl/minとして、編成両数によりCP容量を個別に設定していた。これに対し、増備車ではブレーキシステムの冗長性を確保することから、CP容量を1kl/min(2両分)に固定し、編成両数に応じて分散搭載することとしている。
- クハ312形 - CP容量が固定されたことにより編成両数による区別は廃止され、Tc'2のみとなる。
- モハ313形 - 3両編成の中間電動車(M2 0.5M車)にもCPを搭載。
- サハ313形 - 新たにCPを搭載。
- また、純電気ブレーキが採用されており、回生ブレーキおよび発電ブレーキのみで停止までの制動が可能となっている。
そのほか、細かな変更点として、列車無線アンテナおよび前面ワイパーの位置変更、運転席への電流計の設置や非常通報装置の搭載などが挙げられる。また、車内案内表示器については初期車をおおむね踏襲しているが、英語表示の文字間隔に若干の変更が見られる。
[編集] 1000番台増備車
[編集] 基本仕様車
- 中央本線(名古屋~中津川)用の増備車両。
- 神領車両区に4両編成2本(8両、B4~B5編成)、3両編成4本(12両、B104~B107編成)の計20両が配置されている。
- 車内は1000番台初期車に準じた転換クロスシート(車端部ロングシート)の構成であるが、仕様変更にともないトイレ横の座席は廃止されている。
- 初期車との区別のため番台には100が付加され、1100番台(3両編成の電動車は1600番台)と称する。また、初期車では0番台を組み込んでいたクハ312形は、CP容量の変更から300番台相当に変更されるとともに、仕様変更によりさらに100が付加されたことから400番台と称する。
- 2006年11月10日に中央本線の113系が定期運用を終了したことにともない、同線で運用を開始した。朝ラッシュには最大10両編成を組み、愛知環状鉄道線への乗入れも行っている。
- 編成
- 4両編成 クモハ313-1100(Mc1) - サハ313-1100(T2) - モハ313-1100(M1) - クハ312-400(Tc'2)
- 3両編成 クモハ313-1600(Mc1) - モハ313-1600(M2) - クハ312-400(Tc'2)
[編集] 寒冷地仕様車
- 神領車両区に3両編成3本(9両、B151~B153編成)が配置されている。
- 電動車は1700番台に区分され、回生失効対策として発電ブレーキ、および急勾配での粘着係数増強を図るためセラミック噴射装置が搭載されている。
- 他の1000番台車と異なり、半自動ドアを備えるほか、クモハ313形には霜取用としてパンタグラフを2基搭載、先頭車両にはスノープラウを装備するなど、寒冷地仕様の編成となっている。
- 2007年3月18日から飯田線で営業運転を開始した。JR東日本中央本線の上諏訪、信越本線長野までの運用もある。
- 編成
- クモハ313-1700(Mc4) - モハ313-1700(M4) - クハ312-400(Tc'2)
[編集] 2000番台
静岡支社管内の113系・115系置き換え用の車両。静岡支社管内の東海道本線・御殿場線・身延線で運用されている。 2006年12月2日に営業運転を一部で開始し、2007年3月18日のダイヤ改正より本格的に運用を開始した。これにより静岡地区の東海道本線は、大半が本番台と211系5000番台のいずれもロングシート車で運行されることとなった。
[編集] 基本仕様車
- 静岡車両区に3両編成17本(51両、T1~T17編成)が配置されている。
- 他の3両編成と同様に中間電動車モハ313形は0.5M車を組み込んでおり、電動車は2500番台が付番されている。また、クハ312形はCP容量の関係で、2300番台となっている。
- 車内は全席がロングシートで、扉間1ユニット10人がけ、スタンションポールが1ユニットにつき2本付いている。車端部は4人がけで、スタンションポールはない。スタンションポールは座席の間を突き通す形状になっている。カラースキームは転換クロスシート装備車と同様、ブルー系でまとめられ、座席の設計が1000・3000番台のロングシート部分のものと比べ、若干変更されている。例えば、仕切の形状はまったく異なり、さらに座席側にもモケットが張られているなどの違いがある。他の2006年度完成車両と同様、トイレ横の座席はない。
- 窓配置は3000番台に準じている。
- 半自動ドア機構を装備している。
- 編成
- クモハ313-2500(Mc1) - モハ313-2500(M2) - クハ312-2300(Tc'2)
[編集] 発電ブレーキ搭載車
- 2000番台車のうち発電ブレーキを併用するもので、静岡車両区に3両編成10本(30両、N1~N10編成)、2両編成9本(18両、W1~W9編成)が配置されている。
- 2両編成は2300番台を称する。このうち2編成(W1・W2編成)のクモハ313形はパンタグラフを2機搭載しており、車番は50が加えられ、2350番台として区別されている。
- 3両編成の電動車は2600番台と称し、基本仕様車と区分されている。クハ312形は他の2000番台車同様、2300番台が組み込まれる。
- 車内構成は基本仕様車に準じ、半自動ドア機構を備えている。また、2両編成はワンマン準備工事がされており、出入口表示用のLED表示機がドア横に装備されている(整理券発行機は筐体のみ設置、運賃箱と運賃表示器は設置されていない)。
- 編成
- 3両編成 クモハ313-2600(Mc4) - モハ313-2600(M4) - クハ312-2300(Tc'2)
- 2両編成 クモハ313-2300(2350)(Mc3) - クハ312-2300(Tc'2)
[編集] 3000番台増備車
- 御殿場線・身延線におけるワンマン運転用。3100番台と称し、2両編成のみが存在する。
- 静岡車両区に2本(4両、V13~V14編成)が配置されている。
- 車内は3000番台に準じたセミクロスシート仕様であるが、他の増備車と同じくトイレ向い側の座席は廃止している。
- 搭載機器についても初期車を踏襲しており、発電ブレーキを搭載しているほか、クモハ313形には霜取対策として当初からパンタグラフを2基備えている。
- この他、Mc車車端部のロングシートのモケットの色が他の座席と同じ緑系に変更、自動放送に一部補足(追加部分は従来と異なる声)が行われた。
- 2006年8月7日、増備車として最初に営業運転を開始。現在、3000番台初期編成と共通運用が組まれている。
- 編成
- クモハ313-3100(Mc3) - クハ312-3100(Tc'2)
[編集] 5000番台
- 東海道本線名古屋地区用。6両編成のみが存在する。
- 大垣車両区に12本(Y101~Y112編成)、計72両が配置されている。
- 車内仕様は0番台の転換クロスシートを基本に、扉横や車端部も含めたすべての座席を転換可能とした仕様となっている。この結果、0番台に比べ立客スペースが小さくなり、1両当たり約15名程度定員が減少している。
- カラースキームや窓配置は0番台に準じている。
- 乗り心地改善策として、セミアクティブダンパや車体間ダンパを装備する。
- 6両編成となったことから、一部の中間車にも補助電源装置(SIV)・蓄電池(BAT)を搭載しており、SIV・BATを搭載した中間車は5300番台と称する。また、空気圧縮機(CP)は、冗長性を高めるため、すべての付随車(クハを含む)に分散搭載している。そのほか、回生ブレーキ失効対策として発電ブレーキを搭載している。
- 2006年8月22日に営業運転を一部開始し、同年10月1日のダイヤ改正からは、東海道本線の快速系統列車(豊橋~大垣)を中心に運用されている。旧来、同線の快速列車は4両編成が中心で混雑が激しかったが、本番台の投入により日中はすべて6両編成で運転されることとなった。一部は浜松および米原まで運行されるほか、朝夕には、300番台2連と併結した8両編成の運用も見られる。
- 編成
- クモハ313-5000(Mc4) - サハ313-5300(T3) - モハ313-5000(M3) - サハ313-5000(T2) - モハ313-5300(M5) - クハ312-5000(Tc'2)
[編集] 脚注
[編集] 関連項目
- JR東海の在来線車両(国鉄引継車含む) (■一覧 / ■カテゴリ) ■Template ■ノート
- 愛知環状鉄道2000系
- 名古屋臨海高速鉄道1000形
[編集] 参考文献
- 平山富造 「新車ガイド 313系直流電車」『鉄道ファン』 1999年5月号 交友社
- (形式図) 『鉄道ファン』1999年6月号 交友社
- 「全391両を解析! 313系オールガイド」『鉄道ファン』2007年5月号 交友社
- JR東海 東海鉄道事業本部 車両部車両課/車両の導入目的および概要と番台区分別の仕様
- JR東海 東海鉄道事業本部 運輸営業部運用課/3次車投入にともなう車両動向と配置区別の車両運用
- 木野村晃 「JR東海313系電車」『鉄道ピクトリアル』1999年6月号 鉄道図書刊行会
- 松本正敏・前里孝 「313系電車のすべて」 『とれいん』1999年12月号 プレス・アイゼンバーン