日本の救急車
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日本の救急車(にほんのきゅうきゅうしゃ)は、日本における救急車の事情などを紹介する。
日本において救急車は消防車やパトロールカーと同様に緊急自動車の一つで、サイレンを鳴らして緊急走行を行うことができる。正式名称は救急自動車(きゅうきゅうじどうしゃ)。
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[編集] 概要
救急車には、消防本部およびごく一部の消防団が保有するものと、病院などが保有するものがあるが、119番通報により出動するものは前者であり、後者は主に病院間の転院搬送・災害対応などに用いられる。これ以外にも、患者搬送を行うことを目的とした民間の車両がある(ただし、民間の車両については消防や病院の救急車と異なり、緊急自動車の指定は受けられないため、寝台車両・患者搬送車と呼ばれることが多い)。以上の他、日本赤十字社が運営する病院、自衛隊や大企業の工場・一部のテーマパークの自衛消防隊なども救急車を保有している。
日本の消防の救急車においては、隊員3人以上及び傷病者2名以上を収容でき、その他法令で構造や設備が定められている。
日本で救急業務が消防の任務とされた1963年以降、救急車の出動件数は例外なく増加の一途をたどっている。特に緊急性のない救急要請の増加が著しく、本当に救急車が必要とする傷病者への救急出動に支障が出ていることも多い。そのため、緊急性がなく安易な救急要請を抑制するため、軽微な傷病での救急車利用について、傷病者や医療機関から使用料を徴する救急車の有料化が総務省消防庁やいくつかの自治体で検討されている。
[編集] 歴史
- 1931年(昭和6年)- 救急車を大阪府大阪市にある日本赤十字社大阪支部に配備。日本における最初の救急車となる。
- 1933年(昭和8年)3月13日 - 神奈川県警察部(現在の神奈川県警察本部)に属する横浜市山下町消防署(現在の横浜市安全管理局中消防署)に配備、消防機関においては初めての導入となった。
- 1963年(昭和38年)- 消防法が改正され、各自治体消防が救急業務を行うように義務化され普及が進んだ。
- 1991年(平成3年) - 医師法が改正され、救急車内において救急隊員が処置を施すことが可能になり、また同時に救急救命士が全国で数多く誕生することに。
- 1992年(平成4年) - トヨタ自動車が日本初の高規格救急車「ハイメディック」を発表。
- 後に、他社が後を追いかけ数多くのモデルが登場。
[編集] 納入に至るまで
日本で救急車を納入する際には、基本的には競争入札(一般競争・指名競争)が行なわれる。納入までの主な手順は次の通り。
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- 救急自動車を納入する際は更新および増隊の必要の有無に基づいて本部で決定され、消防本部を運営する地方公共団体の議会(以下、議会)で新年度の計画を発表される。
- その後、各消防本部が運営する地方公共団体の入札業者名簿に登録されている販売業者に対し、入札の公告を告示をする。販売業者は期間内に仕様や金額を書いた各種用紙一式をまとめた封筒を各消防本部の指定先に届ける。
- 開札が行われた後、入札額が一番低い販売業者が落札し、仮契約を結ぶ。その後、議会で可決されれば、契約は成立する。
- その後販売業者は、自動車メーカーに対し発注し、その後、自動車メーカーから指示を受けた艤装メーカーがは車輌を生産する。なお、乗用車に比べて生産台数が少ない救急自動車は原則として受注生産車輌のため生産完了までは1~2ヶ月はかかる。
- 生産完了後、販売業者の元に救急自動車が届けられ、後付の装備を装着する。なお、救急自動車は改造車輌のため国土交通省直轄の運輸局にて持ち込み検査を行い、登録の完了後、各本部に納入される。
- 救急自動車をはじめ物品各種は、公共工事とは異なり談合があまり見られない為、インターネットのウェブサイト上で公告を行なわない地方公共団体は多い。
- 入札業者名簿に登録されている業者が1社しかない場合や、指示内容や諸事情(生産中止など)により納入が不可能になったりした場合は1社間との随意契約で済まされることが多い。
- 入札で救急自動車が納入されるだけでなく、個人や民間企業や各種法人から寄贈されることもある。(法人では日本損害保険協会や日本自動車工業会や日本宝くじ協会など、民間企業では安田生命(現在の明治安田生命)や山之内製薬(現在のアステラス製薬)などが有名である)この場合は車体に寄贈者名や「助成車両」のネームが入る。類似したケースでは日本赤十字社の新潟県支部などが消防本部に救急車を貸与している。この車両には赤十字マークが付けられている(ミニカーの救急車においては赤十字マークは定番であるが、日本においては日本赤十字社と自衛隊所属車両のみに許されるマークである)。
[編集] 搭載されている主な医療用資器材
- 観察用資器材-聴診器、血圧計(自動式・タイコス式)、検眼ライト、患者監視装置 (心電図・脈波・血圧・血中酸素飽和度)等- 傷病者のバイタルサインなどを測定する。
- 人工呼吸器(バックバルブマスク・デマンドバルブ・自動式人工呼吸器等)
- 自動式体外除細除器 - 電気ショックを与える医療器具。VF(心室細動)やpulselessVT(無脈性心室頻拍)の、致死的不整脈を治療するために使用する。法改正により、一般市民でも使用できるようになった自動体外除細動装置(AED)と救急車に積載されるものと異なる点は、隊員自らが心電図モニターにより除細動の適応を判断し解析を行い、除細動適応であれば通電する。※一般市民仕様のAEDを救急隊装備として使用するケースもある。
- 気道管理セット(吸引器、喉頭鏡、マギル鉗子、開口器、経口経鼻エアウェイ等)
- 搬送器材各種(メインストレッチャー・サブストレッチャー・布担架・スクープストレッチャー等)
- 毛布
- 感染予防用具(プラスチックグローブ、マスク、防護衣類、ゴーグル等)
- 脊柱固定用具(バックボード、頸椎固定カラー、ストラップ) -交通事故などの高エネルギー外傷で脊椎が損傷している可能性がある患者に対し全身固定を目的として使用。
- 外傷キット(滅菌ガーゼ・タオル包帯・三角巾・空気膨張型副木等)
- 救出用具(サイドウィンドウを割る為のハンマーとシートベルトカッター、バール、ベンケイ(消防士の使用する物と同じ)等)
- 医療用酸素(10リットルボンベ×2~3本)
- 特定行為セット(ラリンゲアルマスク、食道閉鎖式エアウェイ、気管チューブ、静脈留置針、輸液セット、アドレナリン)-医師の具体的指示を受けた「認定救急救命士」が使用できる。
[編集] 法令関係・デザインなど
車体の色は道路運送車両法に基づき白色のみと定められ、色の付いたテープ状の帯(赤色または青色)が入るのが一般的であるが、色帯のデザインや形状は本部ごとに異なる。例えば、札幌市消防局の場合は色帯を「Sapporo」の頭文字である「S」をモチーフに変形させたものや大阪市消防局のように全体に色帯が無いもの(ただし平成16年から配備された高規格救急車のリアのテールゲートのハンドル付近に赤帯が入った)や川崎市消防局のようにフロント部分のみ色帯が無いケース(平成17年度更新車両からはフロント部分にも色帯あり)もある。
上部に赤色回転灯(近年は高輝度LEDを用いたストロボ灯 前方側方以外には投光の必要がないため)を備え、自動車の追突事故防止に後面・出会い頭衝突防止に前面に赤色の点滅または回転灯(前方集中型警光灯)、また後部に指示方向点滅灯(以上の灯器は一部装着していない車両もある)、スピーカー、消防無線機などを備えている。なお、救急車のサイレン音「ピーポーピーポー」は厳密には法令上のサイレンではない(傷病者保護の為に例外的に認められた音)。法令上のサイレン(「ウーウー」音)は赤信号を通過するとき、またパトロールカーを想起させる為高速道路での緊急走行の際に鳴らす。近年はアメリカで使われているピアッシング音(“ピヨピヨピヨ”という鋭い音 車上荒らし警報と同種)をアンプに装備している車両もある。
また、最近では救急車のマーキングは本部名などを英語で表記したり、スター・オブ・ライフ(生命の星―アスクレピウスの杖を中に入れたものも)や消防本部または市町村章のマークを貼り付けたものや、火災予防や救命講習の呼びかけなどをはじめとした消防本部からの告知の目的としたものがある。車両前部の”救急”の表示は、左右を反転させた「鏡文字」にしているものがある(例:上の名古屋市消防局の車両)。これは走行中の一般車両が、後方から接近する救急車をバックミラーで認識しやすいようにするためで、ヨーロッパなどでは一般的である(“AMBURANCE”を反転させてある)。
[編集] 従来型(2B・3B型)と高規格の違い
- 2B型救急車 - 2(ツー)ベッド型の略であり、高規格救急車に対して在来型救急車とも呼ばれる。1970年代まではステーションワゴンをベースにしたものが大半だったが、同年代以降は車内での圧迫感を抑えるためにキャブオーバーのワンボックスカーが主流となり、現代へと脈々に受け継がれている。なお、海外では機動力などから現在もステーションワゴン型救急車が見られる地域がある。
- 3B型救急車- 3(スリー)ベッド型の略である。マイクロバスをベースとし、広さを売りに1980年代から1990年代にかけて一部の消防機関に配備されたが、取り回し、振動、燃費、騒音をはじめとしたマイクロバス特有のデメリットの影響や、高規格救急車の普及から現在は見かけることが少ない。
- 高規格救急車 - 在来型の要件に加え、救急救命士が活動できるように、スペースの大型化などが図られている。ベースシャーシには乗用車ベースとトラックベースがあるが、現在多く普及しているのは前者のほうである。今日においては排気ガス関連の環境問題や管轄先の道路事情や交通環境(車体の大きさや取り回しの悪さ)、振動が大きかったり騒音がひどい等のトラックのデメリットの影響から乗用車ベースが導入されるケースが多い。
[編集] 高規格救急車・ワークステーション
[編集] 日本・外国製車両一覧
1991年の医師法改正により、今までは「応急処置」の範囲を超えることの出来なかった救急車内で、一歩進んだ救急救命士による「救命処置」が出来るようになったが、当時の救急車は普通のワンボックスカーがベースだったため、車内での活動が制限されたり、高度な医療器具や処置器材が置けない等の問題が出てきた。そこで、救急救命士による効果的な救命処置を行う為に、従来型救急車よりも一段と救命処置を行うのに最適な救急車、すなわち「高規格救急車」を導入することになった。
[編集] フォード製
- F-250・E-350 (架装:ウィールドコーチ(E-350)・ジェイカブ・インダストリーズ(F-250) 車体:フォード)
- 高規格救急車が導入される以前、オーストラリア仕様のフォード・F-250型救急車が、東京消防庁や川崎市消防局などに導入された記録がある。この車両は、ディーラーの近鉄モータースがオーストラリア仕様を輸入したため、右ハンドル仕様だった。(外務省がODA物資として海外に輸出しようと購入したが、納入先が右ハンドル車が使用不可の地域だったため、止むを得ず納入を取りやめ、余剰分を国内に割り当てたとする説もある)
- その後、高規格救急車の導入に合わせ、アメリカ・WHEELEDCOACH社製のフォード・E-350型救急車が大都市圏(東京消防庁・京都市消防局・名古屋市消防局などに配備された。大都市以外には大垣地区消防組合がある。また、数台が民間の病院や患者搬送サービス業者等にも納入された。
[編集] メルセデス・ベンツ製
- 307D・310D(架装:クリスチャン・ミーセン(C.Miesen)社、ビンツ(BINZ)社 車体:メルセデス・ベンツ)
救急救命士法施行に伴い全国に初めて配備された高規格救急車の中で、忘れてはならないのがダイムラー・ベンツ社(現・ダイムラー・クライスラー)製の310D型高規格救急車である。投入当時は国産の高規格救急車はまだ初期段階にあり、本格的な高規格救急車として後の国産高規格救急車の手本となった点も多い車である。310型は救急車として、高度医療機関のドクターカーとして、また外国製の救急車として話題にもなったことから、配備された数が多く、全国各地でその姿を見ることが出来た。この車両は、1991年頃より導入され始め、平成7年まで大都市やその周辺都市に配備された。主要な大都市以外では都留市消防本部がある。配備された車両の大部分は既に退役したが、未だに使用している自治体や医療機関も数多くある。
310D型が高規格型救急車なのに対し、それ以前(1987年頃)に、東京消防庁と横浜市消防局、名古屋市消防局に従来型の2B型救急車として307D型救急車が配備されていた。これは、自治省消防庁が、後に施行される救急救命士法の検討段階において、従来のキャブオーバー型救急車に代わる新しいタイプの救急車の検討・比較材料として、輸入車ディーラーであるウエスタン自動車(のちにヤナセに吸収)を通じ東京消防庁に2台試験的に導入、運用させた。横浜市消防局にはウエスタン自動車が寄贈したという話である。
310型の前モデルにあたるこの307D型救急車は、車体が大きいので資器材の収容能力も高く、また大きな車体の中で行う搬送患者の処置、防振架台のテスト等、後の高規格救急車の仕様を検討する上で良い検討材料になった。しかし、遅いと言われた後の310型に比べ、エンジンの排気量/馬力共にさらに小さく、動力性能の点で明らかに国産車に劣ったことから、あまり積極的な運用はなされなかったようだ。しかし、この運用結果を踏まえ、後の高規格救急車につながるデータが築かれていった。なお、310D型救急車の架装メーカーはクリスチャン・ミーセン社とBINZ社の2社であった。この2社は、ドイツ本国で特装車架装を手がける大手メーカーであり、日本で言うところのトヨタテクノクラフトとオーテックの様なものである。ミーセン社架装モデルは、当時メルセデス・ベンツの商用車系車両を販売していた三菱ふそう系列のSTBが、同じく三菱自動車系列の三菱自動車テクノサービスで国内仕様に手直ししたものを「メルセデス・ベンツ救急車」として販売していた。これは数が多く、国内の310D救急車のほとんどはミーセン社製である。なお、一部ではあるが、帝国繊維もBINZ社架装の車両を「テイセン F-5型」として販売していた。
[編集] 日本国産車両一覧
[編集] 現行モデル
- HIMEDIC(ハイメディック、トヨタ自動車) (トヨタ・ハイエース)がベース。
- PARAMEDIC(パラメディック、日産自動車)(日産・エルグランド)がベース
- Tri-Heart(トライハート、札幌ボデー工業、三菱ふそう・キャンターフルタイム4WDベース)
- 通称:札消式高規格救急車。その名の通り札幌市消防局との共同開発によって1992年に発売され、日本で初めて4WDを搭載した高規格救急車である。
- もともと冬の環境が厳しい北海道向けに製作されたもので、最低地上高が高く、車内は広い。現行モデルは2代目で2000年に登場した。一部の日本赤十字社の病院にも導入されており、北海道以外に導入された主な自治体では四街道市消防本部などがある。
- 近年、札幌市消防局での救急車採用はパラメディックに移行している。
- 札幌市消防局現役救急隊員の証言によると、トライハートの様にトラックベースの救急車はスペースが広く機材も多数搭載出来るので使い勝手が良い反面、ディーゼルエンジン独特の騒音が聴診器を使用する際に妨げとなり救急活動に支障を期す場合があるらしい。また、札幌市等では除雪が行き届いているので乗用車ベースの救急車でも冬季の行動に問題は少なく、スペースもパラメディックならば問題なく敢えてトラックベースの採用する理由が少なくなっているらしい。
- Tri-Heartとは、人命救助に当たって最も重要な「愛」「信頼」「誠実」の三つの心を表している。
- また、この他には日野自動車の中型トラック「レンジャー」ベースの高規格救急車が北海道網走郡大空町東藻琴にある網走地区消防組合東藻琴分署に導入されている。参考資料(日野自動車ホームページより)
[編集] 製造中止モデル
- DIAMEDIC (ディアメディック、三菱自動車工業(現・三菱ふそうトラック・バス、キャンターベース)
- OPTIMA(オプティマ、帝国繊維、キャンターベース)
[編集] 中型・大型トラックベースなど
東京消防庁に配備されている京成自動車工業の「スーパーアンビュランス」に代表される救急車のことである。このほかにも日本赤十字社岡山県支部は多目的救急車(仕様は日野・レンジャー)を、熊本県支部は片側だけが拡張するタイプ(仕様はいすゞ・ギガ)を保有している。性格はいわゆる“救急車”ではなく、移動医務・処置室と言える。
[編集] 東京消防庁の特殊救急車(スーパーアンビュランスなど)
京成電鉄グループの京成自動車工業が艤装・発売する車両で、東京消防庁の消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)に配備されている。3軸仕様の大型トラックがベースとなっている。
1台目はザ・グレートをベースにしたモデルが1994年10月に丸の内消防署に配備され、1996年12月、第二方面消防救助機動部隊発足のため、同隊に配置換えされた。2004年に第二方面の車両新規導入に伴い第八方面に配置換え、2006年に車両を更新し引退した。この間、地下鉄サリン事件をはじめ都内外における大規模な災害に出動し、負傷者に対する応急処置などで活躍した。
2台目はスーパーグレートをベースに2004年に配備された。1台目に比べ、患者室のドアやドアステップの構造が見直されたりしている。現在は第二方面に所属。2006年には3台目がギガをベースに配備された。1台目の車両の更新車両である。第八方面所属。
また東京消防庁は現在、かつての3B型を思わせるマイクロバス型の特殊救急車が配備されている。現在の車両はコースターをベースに、アイソレーター等の感染症対策装備を有し、NBC災害対応部隊である第三方面消防救助機動部隊に配備されている。
[編集] 自衛隊の救急車
自衛隊の車両は陸・海自が緑、空自は紺色で、前面・側面に白地の赤十字マークを貼り付けてあり、サイレン・赤色灯も装備。ワンボックス車がベースの車両は駐屯地・基地に配備。陸上自衛隊の衛生隊は野外用にトラックをベースとした車両も保有している。
救急車ではないが、陸自・衛生科部隊では、野外手術システム(手術車・手術準備車・滅菌車・衛生補給車の4台で構成)を保有している。
[編集] ワークステーション
また、病院などと連携し、医師の救急車への乗り込みが行われている地域もあり、そのような救急車はドクターズカー(ドクターカー)と呼ばれ、このシステムをドクターカーシステムという。このシステムを効率的に利用するために、消防機関の救急車を総合病院や救急医療機関に配置していて、「ワークステーション」と呼ばれる。
[編集] 消救車・PA連携
消救車(しょうきゅうしゃ、正式名称:消防救急自動車)は、消防車の出動頻度に比べて、よく駆り出される救急車の運用効率化を図り、消火と救急の両方の機能を持つ車を配備することを目指して作られた車である。2台買うよりは若干安いが、効率的に運用できるかどうかはこれからの課題である(両方の機能を持つ車両は法令上も想定外だったため)。配備されている消防機関はまだ少なく、2004年12月にモリタが開発・製造した日野自動車のデュトロベースの車両が、千葉県松戸市消防局六実消防署に第1号として導入された。その一方で患者収容スペースを活かした指揮車仕様のタイプが2007年4月現在福岡市消防局、北九州市消防局に配備されている事が確認されている。
また、救急出場に消防車を先行で出場させ(救急隊員の資格を持ったポンプ隊員が乗車している)、現場整理と先行処置に当たらせている消防機関もある(PA連携―Pump and Amburance)。
[編集] 車内での救命処置
人工呼吸、心臓マッサージなどの他に、現在では免許取得後一定の講習を修了した「気管挿管(きかんそうかん)認定救急救命士」によって、気管挿管で呼吸の確保が行えるようになっている、また自動体外式除細動器(AED)の発達により電気的除細動を医師の指示なしに行うことも可能になっている。2006年4月からはやはり講習修了済みの「薬剤投与認定救急救命士」によって、薬剤(エピネフリン)の投与が可能になった。
心肺停止の時間をできるだけ短くするため、救急車の現場到着の時点で、救命処置が開始されることが望ましい。このため、医師が現場へ臨場したり、医師の指示の元で救命処置が行われるのが理想である。
[編集] 要員
多くの場合、救急隊長、運転担当の機関員、救急隊員の3名で構成され、午前9時から翌日午前9時までの24時間勤務である。従って、1台の救急車を維持するためには3交代とする必要上3個隊9名が必要であり(本部により1分署に2個隊6名の場合もあり、このような分署では隔日2交代勤務となる)、救急の専属でなく、消防隊(ポンプ・梯子)・救助隊との兼任で隊員資格を取得させ要員を確保している救急隊もある。
[編集] 運用状況
消防庁によると、近年救急車の出場回数は増え続けており、2002年度には445万件にも及んだ。しかし「虫歯が痛む」「深爪した」「病院まで歩くのが苦痛」などという救急車を出動させる意味が全く無い不適切な要件も多く(いわゆるタクシーのような利用)、そのために本当に救急車が必要な症状のケガ人・病人を搬送するための救急車を出動することができず、多大な迷惑となっている。そのため、消防庁では救急車出動を有料化する検討をしており、これについて国民の間では、40%が有料化に賛成している(国政モニター お答えします―救急車の有料化について)。また、一定の条件の下、民間の患者搬送車に緊急自動車認定をおろす事も検討されている。
[編集] 表記について
救急車は、消防法施行令第44条によると「救急自動車」と表記されており、特種用途自動車の緊急自動車の形状例示では「救急車」と表記されている。