焼き鳥
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ここでは日本料理の焼き鳥について記述する。
焼き鳥(やきとり,ヤキトリ)は、鶏肉などの肉を一口大に切ったものやニワトリの様々な内臓を、数個(1個から5個程度)竹串で刺し通しあぶり焼きした料理。
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[編集] 概要
焼き鳥は、多くの場合、焼き鳥屋という専門店で供される。焼き鳥屋の多くは、庶民的な居酒屋という位置づけをされている。特に焼き鳥屋では、肉とともに鶏の様々な部位も食べさせる。ネギやシイタケ、銀杏などを一緒に使うものもある。また、スズメなどの小鳥を切らずに串焼きにしたものも同じく焼き鳥と呼ばれる。
鳥肉ではなく豚肉を用いたものは普通焼きトンと呼ばれるが、地域によっては焼きトンも含めた串焼き料理全般を「焼き鳥」と呼ぶこともある。詳細は焼き鳥における地域差の項を参照のこと。
味付けは、主に二種類で、塩のみを使用した塩と、醤油、味醂、酒、砂糖などから調整された甘辛いタレをつけ焼いたタレがある。焼き鳥屋では通常、オーダー時に塩かタレかを聞かれるが、メニューによっては塩のみのものもある。炭火で焼いたものが、香りや食感がよく、美味とされている。
食べる際に付ける香辛料として、好みで一味唐辛子、七味唐辛子、粉山椒、ワサビ、胡椒などが用いられる。
[編集] 焼き鳥の種類
焼き鳥屋は、しばしばそのメニューに独特の用語を用いる。
- 精肉
- 皮
- ハツ:心臓
- セセリ:首の周りの肉
- ずり(スナズリ):砂肝
- ボンボチ(ヒップ・ぼんじり):尻の肉
- アカ(レバー):肝臓
- シロ:腸
- 手羽先
- チューリップ:手羽元の根元にぐるっと一回り包丁目入れて引っ張ると形が植物のチューリップの様になるのが名前の由来である。
- つくね:挽き肉を団子状にしたもの。卵黄と共に食べることもある。
- ねぎま(葱間):ネギと肉を交互に串に刺したもの
- いかだ(筏):ネギだけを串に刺したもの。ネギが回転しないようにしばしば2本の串が刺してある。
- マツバ(鎖骨): 笹身の付け根で鎖骨の部分。左右二本の一対がつながっており、V字型がちょうど松葉に似ていることから“マツバ”と呼ばれている。
- カッパ(胸なんこつ) : マツバ(鎖骨)のすぐ下にある胸の軟骨。マツバとカッパを一緒に見ると、河童の顔に似ていることから職人さんの間で使われたのが語源と言われる。Y字の形が生薬をすりつぶす道具、薬研(やげん)にも似ていることから、”やげん”または三角とも呼ぶ。
- ササミ
[編集] 全国やきとり連絡協議会
大衆グルメの真打「やきとり」を日本を代表する「和食」として、世界に通じる食文化に築き上げる全国組織である。2005年11月22日に東京で日本初「やきとりサミット」が開催され、「五大やきとりの街」の代表が集まった。煙・酒・夜・親父・涙といったイメージだけでなく、昼間女子高生がおやつ感覚で食べるもの、ファミリーで楽しむ和食の一つとしてのイメージアップを願い意気投合。2006年1月1日に設立された。
五大やきとりの街は、室蘭市・福島市・東松山市・今治市・久留米市。町おこしの一環としても期待されている。
[編集] 焼き鳥の地域差
同じ「焼き鳥」という呼称であっても、地域によっては味付けや付け合せ、使用する肉の部位、種類などが異なる。
[編集] 室蘭市・函館市及び渡島支庁・檜山支庁(北海道)
北海道室蘭市、函館市及び渡島支庁・檜山支庁では焼き鳥というと焼きトンを指すことが多い。室蘭市の焼き鳥の場合、タマネギがねぎまのネギとして使われ、それにマスタードをつけて食べる。函館市で展開するコンビニエンスストア「ハセガワストア」では名物として工場生産ではなく店内調理の「やきとり弁当」を24時間発売している。
[編集] 美唄(北海道)
北海道美唄市では鶏肉が使われているが多くの店での味付けは塩のみであり、肉の部位も精肉と、鳥皮・軟骨、ギョク等を他地域のように細分化せずに1本の串に刺したモツと呼ばれるものの2種類が出される。
[編集] 今治(愛媛)
愛媛県今治市は人口当たりの焼き鳥店の数が全国2位であるという調査がある(市町村合併前の旧今治市のデータ)。別の調査では全国3位となっている(2000年に室蘭市がNTTの電話帳で調べたところ、1位東松山市、2位室蘭市、3位今治市)。2006年現在、今治市内には旧・今治市街地を中心に焼き鳥店が約80店あり、うち14店で今治ヤキトリ料飲組合をつくっている。
今治では「ヤキトリ」とカタカナで表記することも多い。
今治の焼き鳥の特徴は、何と言っても鉄板焼と呼ばれる調理方法にある。直火ではなく、鉄板の上に材料を載せて、さらにコテ状のもので押さえつけて焼くのである。この起源については、諸説あるが、今治市には造船所が多く、鉄板は余っているからそれを用いたという説、あるいは早く焼けるからせっかちの人にぴったりだったという説などがある。
通の間では、「皮」にはじまり「せんざんき」(唐揚げのこと)に終わるといわれているとおり、一定のコースがある。もちろん、手羽など他のものも出すほか、今治名物の一つのレンコンなどもいっしょに出る。カリカリとした皮は特に通に好まれる。店により、調理方法やタレが微妙に異なり、通の間では、通う店を決めている。
今治市は「伊予の大阪」と呼ばれるほど商売気のある地域であるが、焼き鳥をまちおこしに活用し、市内の焼き鳥店を網羅した「ヤキトリマップ」なるものも作り、市役所やJR今治駅構内の観光案内所等で無料配布している。1999年「焼き鳥日本一宣言」を行い、同年ヤキトリ料飲組合も発足した。
[編集] 東松山(埼玉)
東松山市のやきとりは、豚肉である。特に頭肉(かしらにく)を利用したものが主流で、軽く塩焼きしたものを10種類以上の香辛料をブレンドしたピリ辛味噌だれで食べるのが一般的。豚肉も鶏肉も利用することから、平仮名で「やきとり」と呼んでいる。東松山駅を降りるとやきとり屋が多く点在しているが、売り切れ次第閉店の店もある。日本初のやきとり組合(正式名称:東松山焼鳥店組合)のある街でもある。組合に加盟している店ではやきとり1本100円で食べられる。最近はテイクアウト専門の店「やきとりひびき」もできている。また商工会青年部制作による「東松山市やきとり音頭」があり、商工会にてCDも販売している。
東松山市におけるやきとりの起源は1950年代にさかのぼる。当時、東松山市には食肉センターがあり、新鮮な豚肉を簡単に手に入れることが出来た。また駅周辺には、ホルモン焼きの屋台があり、その殆どはは在日韓国・朝鮮人によって出店されていた。彼らは料理には普段利用されていなかったかしら肉に目をつけ、ネギと一緒に串に刺し、コチジャンの唐辛子味噌をつけて売ったところ、地元の会社や工場帰りの人たちの評判となった。次第に屋台から店舗となり、初めは数軒だったやきとり屋も現在では50軒を越える店が市内に点在するようになった。
[編集] 九州地方
豚のバラ肉を串焼きにしたものも「焼き鳥」と呼ばれる。また、多くの場合、焼き鳥と一緒にキャベツに酢醤油をかけたものが出される。 福岡市を中心とした地区で変わったネタとしては豚足を焼いたものがある。鶏肉に限らず牛、豚、野菜、キノコなど様々なものが供される。
[編集] 海外への進出
海外においても日本料理の焼き鳥が食べられる店は増えている。居酒屋がメニューのひとつに加えているような例だけでなく、焼き鳥屋も出来ている地域がある。例えば、中国の北京市や上海市では1990年代から複数の焼き鳥屋が営業をしている。これらの中には、日本のチェーン店が出展している例もあれば、日本で働いて焼き方やたれの作り方を覚えた中国人が開いた店もある。
[編集] 販売形態
[編集] 飲食店
- 焼き鳥屋(持ち帰りも可能)
- 露天売り
- 居酒屋
- 小料理屋
[編集] 飲食店以外
[編集] 焼き鳥から転じた言葉
- コンピュータ関係
- コンピュータのCPUであるAMD・Athlonが冷却不足により熱で破損すること。Athlon CPUのうちコード名Thunderbirdコアを採用したものが熱に弱かったことから、熱破損がこう呼ばれるようになった。その後改良が施されたため、現在のAMDのCPUではこのような事例はほとんど起きていない。
- 写真関係
- 写真の用語で、人物などの背景に縦の線が写ってしまうこと。人物を串刺しにしているような絵になってしまうため。
- 航空関係
- 航空の俗語(主にターボファンジェットの旅客機のパイロットが使う)で、離陸時に鳥がジェットエンジンに突入すること(バードストライク)。また、その鳥のこと。鳥はコンプレッサによってバラバラになり、燃焼室によって黒焦げになるためこのような俗称が付いたと思われる。なお、このような事態が発生すると墜落事故に至る危険性も出てくる。
- 一度も和了をすることができなかったプレイヤーに対するペナルティを焼き鳥という。
[編集] その他
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 焼き鳥の雑談 - 焼き鳥にまつわる珍品を紹介
- 福島焼き鳥党 - 焼き鳥にまつわる研究、考察、アンケート結果、随筆他
- 全国やきとり連絡協議会 - 全国やきとり連絡協議会のホームページ