立春
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立春(りっしゅん)は二十四節気の1つ。2月4日ごろ。および、この日から雨水までの期間。
太陽黄経が315度のときで、春の初め。正月節。『暦便覧』には「春の気たつをもつてなり」と記されている。 この日から立夏の前日までが春。冬至と春分の中間にあたる。九州など暖かい地方では梅が咲き始める。
立春の前日は節分である。立春から数えて88日目を八十八夜、210日目を二百十日、220日目を二百二十日と呼ぶ。
立春以降初めて吹く南よりの強風を春一番と呼ぶ。
立春の早朝、禅寺では門に「立春大吉」と書いた紙を貼る習慣がある。
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[編集] 旧暦と立春
旧暦(太陰太陽暦)では元日が立春前後に置かれる。 中国暦で立春の次の雨水を含む月を正月(一月)としたのは、立春の頃を年初にし、春の始まりと年の始まりを一致させるためである。 これを、夏正(かせい)(古代中国、夏(か)の正月)と云う。
節切りにおいては、立春が年初となる。 四柱推命や風水などの占いでは、節分までは前年に属し、立春を以て年が変わるとしているものが多い。 節分の豆撒きは、立春を年初として、新しい年の幸運を願っての昔からの習慣である。 但し、年内立春ではちょっと困る。 恵方巻は、昭和35年頃から、商業的に関西で始められたもので、昔からの行事とは言い難い。
二十四節気の 「立春」 は、『暦便覧』 では 「春の気立つを以って也」 とされるが、時候的な解説では、「大寒から立春までは一年のうちで最も寒い季節であり、立春を過ぎると少しずつ寒さが緩み始め、春の気配が忍び入ってくる」 とされるのが一般的でしょう。 だた、注意が必要なのは、このような気象的事象の故に 「立春」 が定められたのではなく、冬至から春分への中間点として、暦法上の要請から定められたものだと云うことです。 春の区分は、西欧では習慣的に暑くも寒くもない季節、つまり 『春分から夏至まで』 を 『 Spring (season) 』 とするのに対し、古代中国では春分を春の中心に据えた。 二至と二分で4つの区分となるが、二至二分が各季節の中心に来るようにするために、二至二分の真ん中に区切りをつけた。 それが、四立で、春に於いては 「立春」 となる。 ここに、中国暦法の1つの大きな特徴があります。
cf. 中国式陰陽暦(中国暦)には3つの大きな特徴がある。 1つは、西欧では春分起点(天文学として)であるのに対し、冬至起点であること。 2つ目は、二十四節気を用いた 『 歳中置閏法 』 であること。 最後は、二至二分を季節の区切りとせず (西欧では季節の区切りとする)、二至二分を各季節の主体として季節の真中に定めたことです。
cf. 西洋の陰陽暦(太陰太陽暦)(バビロニア暦、ギリシア暦、ユダヤ暦) では、共に19年7閏法 (メトン法、中国では 「章法」)を暦法の骨子とするが、19年のサイクルの中で閏年は機械的に暦法として定められ、また、閏月は年末に置かれる。 しかるに、中国陰陽暦(中国暦)では、初期の頃は年末に置かれたこともあったが、二十四節気の 「節月(平均約 30.4日)」 と月(moon) の朔望による 「暦月(平均約 29.5日)」 が織りなす微妙なハーモニーとずれが、自ずと 「閏月(中気のない月)」 を生み出してくれる。 この 「ずれ(閏月)」 は、平朔平気法では1年のスパンの中でどこにでも発生する。 年末だけに発生するものではない (歳中置閏法)。 現代の定数では、1太陽年=365.2422日、1朔望月=29.530589日であるが、この2つの定数は、極めて正確に 12+7/19 に近似する。 日本で使用された旧暦では(所謂、現代の旧暦を含め)、元嘉暦(章法)を除き暦法として章法の枠を離れているが、いずれも、近似ながらも、19年7閏のリズムをもって滔々(とうとう)と流れている。
前述のように、中国式陰陽暦(中国暦)の二十四節気では、『立春から立夏まで』 を 『春』 とする。 従って、季節の区切りでは、欧米での習慣的な天文的区切り(春分から夏至まで)とは、おおよそ1.5ヶ月ずれている。 明治以降、日本では陰陽暦(太陰太陽暦)を廃止し太陽暦とし、気象学も欧米より学んだ。 気象学的には、これも習慣的ではあるが、3月~5月が春、6月~8月が夏、9月~11月が秋、12月~2月が冬とされる。 明治以降、欧米的四季感覚に慣らされたこんにちの日本人とすれば、2月4日(頃)の立春に対し、季節感のずれを感ずるのは否めない。
ただ、これは、古人の季節感が現代の私たちとは違っていたと云うことではなく、中国式陰陽暦(中国暦)の仕組みによって、極論すればまだまだ寒かろうが、冬至と春分の真ん中が立春であり、観念上、立春から春だったのです。 但し、冬至と春分の真ん中である以上、この頃から冬が薄れ、春の気が立つ時期でもあったのです。
cf. 同様のことが立秋にも言えます。 まだまだ暑かろうが、夏至から秋分の真ん中が立秋であり、二十四節気では(暦の上では)観念上、立秋から秋だった ... と思えば、納得がいきます。
[編集] 年内立春
旧暦では、年によっては年が明けるよりも先に立春が来ることがある。これを年内立春(ねんないりっしゅん)という。古今和歌集の巻頭に以下のような歌がある。
年のうちに 春は來にけり 一年(ひととせ)を去年(こぞ)とやいはむ 今年とやいはむ 〔在原元方〕
「年が明けないうちに立春が来てしまった。年が明けてからは、同じ一年のうちである立春から大晦日までの間を去年(こぞ)と言おうか、今年と言おうか」と いう意味である。このように歌に詠まれるくらいの年内立春であるが、実はそんなに珍しいことではない。ここ数年の立春の日附を列挙する。
新暦 | 旧暦 |
---|---|
2000年02月04日 | 1999年12月29日 |
2001年02月04日 | 2001年01月12日 |
2002年02月04日 | 2001年12月23日 |
2003年02月04日 | 2003年01月04日 |
2004年02月04日 | 2004年01月14日 |
2005年02月04日 | 2004年12月26日 |
その後は2007年、2008年、2010年、2013年、2015年(いづれも新暦)が年内立春である。だいたい2年に1回は年内立春になることになる。
これをわざわざ「年内立春」と呼ぶのは、年が明けてからの立春よりも春らしさをあまり感じないなあという感慨からであろうと考えられる。
[編集] 七十二候
立春の期間の七十二候は以下の通り。
- 初候
- 東風解凍(はるかぜ こおりを とく):東風が厚い氷を解かし始める(日本)
- 東風解凍(とうふう こおりを とく):東風が厚い氷を解かし始める(中国)
- 次候
- 黄鶯睍睆({目見}{目完})(うぐいす なく):鶯が山里で鳴き始める(日本)
- 蟄虫始振(ちっちゅう はじめて ふるう):冬蘢りの虫が動き始める(中国)
- 末候
- 魚上氷(うお こおりを のぼる):割れた氷の間から魚が飛び出る(日本・中国)