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行政書士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

行政書士(ぎょうせいしょし)とは、行政書士法に基づき行政機関に提出する許認可申請書類等や契約書・遺言書等の「権利義務、事実証明に関する書類」の作成・代理などの法律事務を業とする者、またはその資格制度を言う。

バッジ等に用いられているシンボルマークはコスモス花弁の中に「行」の字をデザインしたものである。公的に用いられる英訳語は「Administrative Lawyer」(内閣府等による)、または 「Gyouseishoshi Lawyer」。


目次

[編集] 概要

 行政書士の資格は国家資格であり行政書士法にその根拠を持つ。監督官庁は総務省(旧自治省)である。近年、社会保険労務士の受験資格を得たり弁理士の科目免除を受ける為に行政書士資格を取得するものが増加し、またマンガ『カバチタレ!』(原作・田島隆/作画・東風孝広)が週刊モーニングで連載されたことや、同作品が連続ドラマ化されたことによる爆発的人気を背景に、試験の難度化が進んでいる。(なお、2006年秋の試験より試験内容が大幅に変更された)

 法定の除外事由がないのに、行政書士でない者が官公署に提出したり、権利義務に関する法律書類を作成することや、行政書士と類似の名称を使用することは、以下のとおり行政書士法により原則として禁じられている(非行政書士行為)。

  • 行政書士登録を行っていないものが、法定の除外事由なく行政書士の独占業務(第1条の2)を行うこと(第19条)
     →違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる(第21条)
  • 行政書士登録を行っていないものが行政書士と称すること(第19条の2)
     →違反した者は、30万円以下の罰金に処せられる(第22条の4)

[編集] 登録

 行政書士になるには、「行政書士となるための資格」を有する者が、日本行政書士会連合会の行政書士名簿に登録を受けなければならない。

[編集] 行政書士となるための資格

  1. 行政書士試験に合格した者(行政書士法第2条第1号)。
  2. 弁護士公認会計士税理士弁理士の資格を有する者(行政書士法第2条第2~5号)。
  3. 20年(高等学校を卒業した者は17年)以上公務員(又は特定独立行政法人、特定地方独立行政法人、日本郵政公社の役員又は職員)として「行政事務」に相当する事務に従事した者(第2条第6号)。
  • 一定の要件の下に無試験で登録を認めるいわゆる特認制度については、国家試験制度の根本に関わる問題であり、能力の担保が不十分であることや、不公平という批判が相次ぎ、司法制度改革が進む中、業務拡大を望んでいる行政書士としては、能力の担保を設定するためにも特認制度の廃止(もしくは科目免除制への移行)を求める声も少なくない。

[編集] 行政書士試験

  • 受験資格に制限はない。
  • 試験は11月第2日曜日に、都道府県知事財団法人行政書士試験研究センターに委託して全国47都道府県で行われる。
  • 試験科目は、業務に関する法令として憲法民法行政法商法、基礎法学があり、業務に関する一般知識として政治経済社会情報通信・個人情報保護、文章理解がある。また平成17年度まで試験科目であった行政書士法戸籍法住民基本台帳法労働法税法等も一般知識として出題されうる、としている。試験問題は、毎年度4月1日現在施行の法律に準拠して出題される。
  • 出題形式は、5つの選択肢から1つを選び、マークシートにマークする択一式と、40字程度の記述式(法令科目のみ)の組合せである。
  • 合格基準は、全体で60%以上の得点をしつつ、法令科目で50%、一般知識で40%の得点をしていることである。但し、問題の難易度により、補正的措置が採られることがある。
  • 難易度
 かつては、他の国家資格と比較して難易度は低く、長年法律系国家資格の「登竜門」として扱われてきた。しかしながら、「高卒以上」など学歴等による制限の撤廃や、人気漫画「カバチタレ!」による知名度の普及、近年の資格人気による受験者急増、法科大学院構想、また資格制度自体の見直し議論があったことなどによる状況変化で、ここ数年で試験内容は著しく難化している。
 新試験制度に移行した平成18年度では、難易度では依然として隔差があるものの、論理的思考を問う司法試験の短答式試験(択一試験)に類似した形式で出題された。
 従前は、幅広い分野の法律の基本を問う問題が出題されたが、ここ数年は幅広いだけでなく、より深い法律知識や論理的思考が要求される問題に移行している。その上、一般知識問題の難易度も年毎に安定していない。平成15年度以降の合格率は2.9%、平成16年度5.3%、平成17年度2.6%、平成18年度4.8%と極めて合格率の低い試験となっている。試験合格までの期間は、法律の純粋未習者で2年から3年、司法試験受験者で1年以内といったところである。
 なお、平成13年の10.96%と平成14年度の合格率19.23%は、試験センター側の出題ミス等の没問により、一般教養(現在の一般知識)の足切り点において救済措置がとられたためである。
  • 申込者数の変化
平成11年度まで4万人程度で安定していたが、「カバチタレ!」の影響で受験者は9万人程度まで増えた。週刊モーニングに「カバチタレ!」が連載開始されたのは平成11年5月であり、翌年に申込者数が1万人程度増えている。ドラマ版「カバチタレ!」が放送されたのは平成13年1月~3月であり、同年に申込者数が2万人程度増えている。以上のことから「カバチタレ!」の影響の大きさが伺い知れる。
行政書士試験合格率[1][2]
年度 申込者数 受験者数 合格者数 合格率
平成元年度 ? 21,167人 2,672人 12.62%
平成02年度 ? 22,406人 2,480人 11.07%
平成03年度 ? 26,228人 3,092人 11.79%
平成04年度 ? 30,446人 2,861人 9.40%
平成05年度 ? 35,581人 3,434人 9.65%
平成06年度 ? 39,781人 1,806人 4.54%
平成07年度 ? 39,438人 3,681人 9.33%
平成08年度 43,267人 36,655人 2,240人 6.11%
平成09年度 39,746人 33,957人 2,902人 8.55%
平成10年度 39,291人 33,408人 1,956人 5.85%
平成11年度 40,208人 34,742人 1,489人 4.29%
平成12年度 51,919人 44,446人 3,558人 8.01%
平成13年度 71,366人 61,065人 6,691人 10.96%
平成14年度 78,826人 67,040人 12,894人 19.23%
平成15年度 96,042人 81,242人 2,345人 2.89%
平成16年度 93,923人 78,683人 4,196人 5.33%
平成17年度 89,276人 74,762人 1,961人 2.62%
平成18年度 88,163人 70,713人 3,385人 4.79%

[編集] 行政書士の業務

[編集] 法定業務

行政書士の法定業務は第1条の2に規定する独占業務(書類作成業務)と、第1条の3の非独占業務(代理人として作成、提出代理、書類の作成相談)である。

[編集] 独占業務

第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

  • 第1条の2で、行政書士の独占業務とされているのは書類の作成である。行政書士または行政書士法人でない者が業として報酬を得て、これらの書類の作成を行うと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の適用がある。
  • 行政書士試験に合格しただけや弁護士・弁理士・公認会計士・税理士など第2条各号に規定する者は、それだけでは行政書士とはいえず、行政書士の独占業務が行えるわけではない。行政書士名簿に登録してはじめて行政書士となることができ、独占業務(書類の作成)を行うことができる。なお、行政書士が独占業務を行う場合だけでなく、第1条の3の非独占業務を行う際にも、行政書士法上の業務規定が適用される。
  • 「業として・・・書類作成を行う」の意味は、反復継続の意思で書類を作成することである。よって、反復継続性のない1度のみの書類作成行為は行政書士法違反とならない。
  • 「官公署」とは、又は地方公共団体の諸機関の事務所を意味し、形式上は行政機関のみならず広く立法機関及び司法機関のすべてを含む(「詳解行政書士法」地方自治制度研究会編、ぎょうせい)。但し、他の法律(弁護士法、弁理士法、司法書士法、税理士法、社会保険労務士法等)においてその業務を行うことが制限されている事項については業務を行えない。なお、公益法人特殊法人保険会社等を含まず(衆議院法制局見解)、住宅金融公庫も同様に含まなれい(昭和52年7月12日自治省行政課長回答)。但し、権利義務に関する書類として独占業務の対象となるので注意を要する。また次号の規定により契約その他に関する書類を代理人として作成することも可能である。
  • 警察署に提出する告訴状・告発状、検察審査会に提出する不起訴処分に対する審査申立書は行政書士の業務範囲とする先例(昭和53年2月3日自治省行政課決)がある一方、検察審査会に提出する書類(審査申立書、取下書、証人申出書等)の作成業務は司法書士法第2条(現3条)の業務に準ずる(昭和36年10月14日民事甲第2600号回答・民月16巻11号157頁)とする先例もあり、検察審査会に提出する書類については司法書士との競業状態といえる。なお、検察庁に提出する告訴状・告発状は司法書士の業務である(司法書士法3条1項4号)。
  • 法務局に提出する書類は、司法書士の業務となっているが(司法書士法3条1項2号)、帰化許可申請は行政書士も作成することが認められている。

[編集] 非独占業務

1条の3に規定する業務にあっては、行政書士または行政書士法人でない者も業として行うことができる。但し、これに付随して、1条の2に規定する書類の作成を業として行った場合は、処罰対象となる。

第1条の3 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

1.前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続について代理すること。


  • 行政手続法上の聴聞代理は官庁による処分の原案段階にとどまるため、紛争性がないと考えられている。このため、聴聞代理は合法的に行政書士の業務となる。
  • 誤解している者が多いところであるが、第一号の当該非独占業務は官公署に提出する書類を作成することではなく、提出を代理することである。
よって、警察署に提出する告訴状・告発状、不起訴処分に対しての検察審査会への不服申立、建設業許可、風俗営業許可、車庫証明申請、自動車登録申請、農地転用許可、開発許可、会社その他の法人設立手続(登記を除く)、経理帳簿の記帳、国籍帰化申請、交通事故における保険金請求などの「作成」は独占業務となる。が、これらの提出手続きを代理するにとどまる場合は非独占業務となる。

2.前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。

本号の意味は、委任契約の締結により民間対民間の契約書等の作成と契約の代理をすることである。

ここには借金の繰り延べの書類や債務支払い期日の延長など契約に付随する行為も含まれる。「代理人として契約書類等を作成する」のであり、書類の作成を代理するのではない(監督官庁である総務省見解)。

  • 官公署に提出する書類にはその性質上代理になじまないとされるものも多く、これらについては代理人としての作成をすることができないが、従来とおり本人名義での代書によって書類を作成し、前号によって提出の代理を行うことは可能である。
  • 契約の代理には、争訟性の無い契約等の契約代理も含まれる。この点について判例は、「法的紛争事件とは、権利義務や事実関係に関して関係当事者間に法的主張の対立があり、実務処理として法的な紛争解決を必要とする事件のことである」(東京地裁平成5.4.22判例タイムズ829号227P)「『事件』というにふさわしい程度に争いが成熟したものであることを要する」(札幌地裁昭和45.4.24)としている。
なお、「将来訴訟となる蓋然性が客観的に認められるような契約」の締結代理まではできない。具体的には、示談和解の締結のための示談交渉代理について、示談契約の締結が成立せず「訴訟に移行する蓋然性が客観的に認められるようなケース」では、示談交渉代理はできない。
反面、紛争性のある事案においても 「将来訴訟となる具体的な蓋然性が認められない事案」 については、行政書士も合法的に代理が可能である。たとえば加害者が事故責任を認めて賠償金を支払う意思を表明している場合に、過失割合や賠償額の交渉をするなどである。(事件性必要説)。
このように、紛争性の成熟性・予見性までもを勘案して行政書士業務と弁護士業務とを区別すべきである点に注意を要する。

3.前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

  • 相談業務とは、以上のような行政書士法1条の2で規定されている書類の作成に当たり、依頼の趣旨に沿って、どのような種類の書類を作成するべきか、または文書の内容にどのような事項を記述するべきかなどの質疑応答・指導・意見表明・法令、法制度、判例等の先例説明・手続の説明などの行為をいう。
  • 法律相談という名称は弁護士が独占しており(いわゆる「法律相談」の名称使用独占)それ以外の者(行政書士や司法書士など)は「法律相談」の名称は使えない。但し、一般的に弁護士法72条の取締の対象となるには報酬を得る目的があることが要件となる。従って、無料奉仕するような場合は、この制限を受けないことになる。

[編集] 法定外業務

条文に記されていない業務であり、法解釈上の業務、及び私人の地位において受任する業務。行政書士法の規定の適用は無く、民法その他の規定が適用される。

  • 行政手続法上の聴聞代理
    代理人の要件に弁護士・行政書士など資格制限は無い。但し、行政不服審査法による審査請求については、弁護士法72条の制約を受けうる(日行連先例)ため、行政書士が審査請求書類の作成を業(独占業務)として扱う場合には、依頼人の口授に基づいて作成を行うようにし、依頼の趣旨を逸脱しないよう特に留意する必要がある(日行連先例/事件性のある法律事務に関して)。
  • 成年後見人 - 最近は、法定後見人、任意後見人となる行政書士も増えている。

[編集] 業務の制限

行政書士は、弁護士法司法書士法公認会計士法税理士法弁理士法不動産の鑑定評価に関する法律社会保険労務士法土地家屋調査士法海事代理士法など、他の士業法等で禁じられている書類(裁判関係、登記、税務(但し不動産取得税など一部を除く)、特許(権利化後の移転手続等を除く)など)を作成することはできない(行政書士法第1条の2第2項)。

  • 司法書士との競合

 ・登記申請の際の添付書類の作成業務
登記申請手続きについては最高裁判決により行政書士は登記申請代理を業とすることはできないことが確認されている(平成12年2月8日最高裁第三小法廷判決)が、登記申請の際に必要な添付書類の作成権限については行政書士、司法書士双方に見解の相違があるものの、確定した司法判断はなく事実上競合状態にある。

最も最近の先例としては、『平18、1、20民事局商事課長回答、登研696号』がある。通知本文によれば、司法書士が代理作成した定款を受理しても差し支えない旨が記載されている。しかし、あくまでも『受理して差し支えない』であり、それが適法であるかどうかには触れていない。
登記研究の解説によれば、
1.昭29、1、13民事甲法務事務次官回答を変更するものではない。
2.定款の作成は司法書士の業務範囲に含まれない。(当然弁護士法72条ただし書きにもあたらない)
3.しかし、弁護士法72条(一般の法律事件に関して代理その他の法律事務を取り扱うこと)に該当する場合としない場合とが考えられる。
とされ、司法書士に作成できないとはいい切れないという、歯切れの悪い回答となっている。しかし、この回答では行政書士法との関係については一切触れていない。

 添付書類の作成権限について行政書士側の見解の根拠となっている先例の代表的なものは「会社設立に必要な書類のうち登記所に提出するものの作成は、司法書士の業務範囲に属するが、しからざるもの(定款、株式申込証等)の作成はそれに属しない。(昭29、1、13民事甲法務事務次官回答・先例集下2145頁、月報9巻3号61頁)」 や行政先例ではないものの「代理の方法による定款認証の形態として、嘱託代理のほか定款の作成代理の形態もある。平成13年法律第77号による改正後の行政書士法第1条の3第2号(平成14年7月1日施行)に「行政書士が作成する契約その他に関する書類を代理人として作成すること」と規定されたので、行政書士はその資格において、発起人又は社員から委任を受けて定款を代理作成できるものと考えられる。(平成15、7、15日行連宛、日本公証人連合会法規部発事務連絡)」などがある。
 司法書士側の見解の根拠となっている先例の代表的なものは「司法書士法第1条、第19条第1項本文の規定により、法務局若しくは地方法務局に提出する「登記申請書類」の作成は、「すべて」司法書士の業務範囲に属する。(昭33、9、25民事甲第2020号民事局長通達・先例集追II 329頁、登研132号38頁、月報13巻11号77頁)」、「司法書士は、法の示すとおり他人の嘱託を受けて、その者が裁判所、検察庁、法務局及び地方法務局に提出する書類を代わって作成することを業とする者であって、これらの官庁に提出する訴状、告訴状、登記申請書等の作成は勿論これらに添付を必要とする書類(例えば売買契約書、各種契約書、証拠写の作成、住所、氏名、租税、公課の証明願、戸籍謄本交付請求書等)の作成は司法書士の業務範囲に属する」(昭和39年9月15日法務省民事局長回答)や「不動産売渡証書、不動産抵当権設定証書は、行政書士法第1条の権利義務に関する書類であるから、その作成義務は当然行政書士の業務であると主張するものと、司法書士法第1条による法務局、若しくは地方法務局に提出する書類に該当するから行政書士法第1条第2項の他の法律において制限されている旨の規定が適用され、行政書士は作成することができないと主張するものがいるが、いずれが正しいか」との問いに対し、「設問の書類が登記を申請するために作成するものである場合には後段のお見込みのとおり」とした回答(昭和37年9月29日自治丁行第67号 日行連会長宛 行政課長回答)などがある。

 ・その他の業務
 その他法務局に提出する書類の作成のうち国籍帰化申請については提出先が法務大臣であり、法務局は提出窓口でしかないため、司法書士との競合業務とされる(行政先例)。また検察審査会や執行官への競売申立も検察庁、裁判所ではなく、それぞれ独立行政庁である検察審査会、執行官あてにすることから司法書士との競合業務であるとの考えがある。なお、検察審査会に提出する不起訴処分に対する審査申立書は行政書士の業務範囲とする先例(昭和53年2月3日自治省行政課決)、検察審査会に提出する書類(審査申立書、取下書、証人申出書等)の作成業務は司法書士法第2条(現3条)の業務に準ずる(昭和36年10月14日民事甲第2600号回答・民月16巻11号157頁)とする先例がある。

  • 社会保険労務士との競合

 歴史的に社会保険労務士は行政書士から分離したという事情があるため、社会保険労務士制度が誕生した1968年以前より行政書士であった者は社会保険労務士の資格を付与されている。また昭和55年9月1日までに登録した行政書士は、行政書士のままで社会保険労務士の独占業務に関わる申請書等の作成(社会保険労務士法第2条第1項第1号)および帳簿書類の作成(同第2号)を為すことが許される。

ただし、提出代行、及び事務代理は許されておらず、使者として行政機関に提出することができるのみである。当然、あっせん代理も出来ない。

  • 税理士との競合

 不動産取得税事業所税に関する申告などの一部税理士業務を行うことができる(税理士法第51条の2、同施行令第14条の2)他、印紙税などの税理士業務とされていない税務手続(税理士法第2条、同施行令第1条)を行うことができる。

  • 弁理士との競合

 産業財産権に関する諸手続きは、従前は弁理士の独占業務であったが、近年の弁理士法改正によって、その手続きの一部が行政書士との共管業務となった。

弁理士法75条により「特許実用新案意匠商標等に関する手続・異議申立・裁定に関する手続の代理(弁理士法施行令6条で定めるものを除く)、鑑定政令(弁理士法施行令7条)で定める書類・電磁的記録の作成」が弁理士の独占業務とされています。逆にいえば上記に該当しない産業財産権に関する書面作成は行政書士と弁理士の独占競合業務、手続きについては非独占競合業務となる。

  • 海事代理士との競合

 内航海運業法及び船員職業安定法に基づく諸手続は、従前は行政書士の独占業務であったが、近年の海事代理士法改正によって、海事代理士業務へと変更された。(但し、経過措置により当面は行政書士との共管業務。)

 また、総トン数20トン未満の小型船舶についての手続き書類の作成は、以前は一部が海事代理士の独占業務であったが、近年の小型船舶登録法の創設によって、行政書士の独占業務となった(総務省・国土交通省照会回答)

  • 弁護士法72条の解釈との職域関係

司法制度改革以前から「弁護士がやらない業務を行政書士や司法書士がやる」として、司法書士や行政書士が法律事務を行うケースが多々あった。この点、弁護士法72条の解釈と行政書士法に基づく行政書士業務との関係で問題が指摘されているところである。

    • 弁護士法72条の解釈については、弁護士法72条が禁止している弁護士業務を「事件性のある法律事務」と解する事件性必要説と、「事件性のない法律事務」と解する事件性不要説がある。
    • 日弁連は後者の不要説を支持しているが、不要説は刑罰法規である同規定を最大限に解することになるとして、法務省、総務省(それぞれ弁護士法、司法書士法、行政書士法の所管官庁)、検察庁等の実務では必要説が支持されている。学説においても必要説が通説とされているが、下級審での判例はそれぞれ必要説と不要説を支持するものがみられる。
    • 必要説からは、事件性の程度(=紛争の成熟性)が問題となるが、これは単に権利が対立するだけでは足らず、訴訟など弁護士法72条に列挙される事項と同程度に紛争が成熟している必要があるとする。さらに当初紛争性を帯びていなかった事案でも処理の過程において紛争性を帯びることがあるため、その予見性が問題とされる。この点について、紛争性は潜在的なものでは足りず、具体的な蓋然性が必要とする。必要説からはこれらは当然の帰結であろう。
    • 必要説によれば、弁護士以外の者が、「相当程度に紛争性を帯びる具体的蓋然性のない事件」、又は紛争性を帯びる場合でも 「訴訟等と同程度に紛争が成熟していない法律事件」 を取り扱う場合には、直ちには弁護士法違反にならないことになる。その限りで他の資格者による法律事務の取扱い、代理行為も合法となる余地がある。
    • 前者の例として、行政書士、司法書士、社会福祉士等が成年後見に関する相談を受けて手続きを行い報酬を得る場合、後者の例として、相手方が弁済の意思を表明している場合に行政書士が内容証明郵便や口頭で貸金返済請求を行う場合、事故責任を自認し損害賠償の意思を表明する加害者と行政書士がその和解内容について示談交渉をする場合などが好例である。
    • 漫画「カバチタレ!」は通説である必要説の立場で作られたもののようであるが、不要説の立場から、当該漫画で描かれている行政書士の業務内容には「非弁行為が含まれている」という指摘がある。

[編集] 行政書士の義務

  • 帳簿の備付及び保存(行政書士法第9条)。
帳簿には、事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名、その他都道府県知事の定める事項を記載する(第9条1項)。
帳簿は、閉鎖(余白ページがなくなり使用終了)の時から2年間保存する(第9条2項)。
この規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられる(第23条)。
  • 受ける報酬の額を掲示しなければならない(第10条の2)
  • 弁護士医師、他士業と同様に、職務上知りえた依頼人に関する知識を守秘する義務がある(第12条)。
使用人その他の従業者も同様の義務がある(第19条の3)
違反したものは、1年以下の懲役または50万円以下の罰金であるが、告訴がなければ公訴されない(第22条)。
  • 依頼を正当な理由なく拒むことが出来ず(第11条)、拒むときは事由を説明しなければならない(規則8条前段)。この規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられる(第23条)。
  • 補助者を置いたときは、行政書士会に届け出る(規則5条2項)。
  • 法令または依頼の趣旨に反する書類を作成してはならず、作成した書類には記名し職印を押さなければならない(規則第9条)。

[編集] 行政書士法人

行政法人法人とは、業務を組織的に行うことを目的として行政書士が共同して設立した法人をいう。

  • 行政書士法人の社員は行政書士でなければならない。(行政書士法第13条の5)
  • 行政書士法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。(第13条の7)
  • 行政書士法人は、その事務所に、当該事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会の会員である社員を常駐させなければならない。(第13条の14)

[編集] 行政書士会

  • 会則を定め都道府県知事の認可を受けなければならない(行政書士法第16条の2)
  • 組合等登記令により登記しなければならない(第16条の3)、登記を怠ったときは、代表者が30万円以下の過料に処せられる(第25条)。
  • 毎年1回、会員の事務所の所在地等を都道府県知事に報告しなければならない(第17条1項)
  • 行政書士として登録を受けたとき、その行政書士会の会員となる。(第16条の5)
  • 会員に対して会員証を交付しなければならない(規則第13条)

[編集] 日本行政書士会連合会

都道府県単位に設立された行政書士会の上部組織。

  • 登録
行政書士となる資格を有する者が、行政書士になるには行政書士名簿への登録を受ければならない(行政書士法第6条)。
資格を有しない者が虚偽の申請をし登録させた場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる(第21条)
  • 登録の取消し(第6条の5)
  • 行政書士会の指導および連絡事務をおこなう(第18条2項)
  • 資格審査会(第18条の4)
委員の任期は、2年である(6項)

[編集] 監督

  • 行政書士に対する懲戒は、都道府県知事が行う(行政書士法第14条)。
  • 都道府県知事は、行政書士会につき、報告を求め、または勧告することが出来る(第18条の6)

[編集] 資格商法との係わり

前述による知名度の向上と、「弁護士ほどの難関ではない」「らくらく一発合格できる」等の偏った認識により、いわゆる資格商法において行政書士資格講座・通信講座等が見受けられたが、近年では行政書士試験の難化にともない見受けられなくなっている。

[編集] 参考文献

  • 地方自治制度研究会『詳解 行政書士法』(ぎょうせい)
  • 兼子仁『行政書士法コンメンタール』(北樹出版)
  • 阿部泰隆『行政書士の未来像』(信山社)

[編集] 関連団体

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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